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2012年08月19日

アツタ(熱田)21型エンジン

アツタ(熱田)21型エンジン これは自分の覚書のブログなので興味のない方はスルーでお願いします。

トップの画像は帝国海軍の彗星艦上爆撃機11型に搭載されていた愛知航空製アツタ21型水冷倒立V12気筒エンジンです。



データー(Wikipediaより)
ボア×ストローク:150 mm×160 mm
排気量:33.93 L
全長:2,097 mm
全幅:712 mm
乾燥重量:655 kg
燃料供給方式:燃料直接噴射式
過給機:遠心式軸駆動式過給器1段流体継手式(フルカン継手)無段階変速
離昇出力 1,200 HP/2,500 RPM

言わずと知れたドイツのダイムラー・ベンツDB601を基にして日本でライセンス生産されたEgです。
ドイツではメッサーシュミットBf109のF型まで搭載されていました。陸軍でもハ40の名称で川崎重工で製作されました。

今年の河口湖自動車博物館・飛行館での一式陸攻胴体完成と並び注目だったのが、貴重なEgを1基破壊してエンジンの中身を分解展示したところです。
一応、自動車整備士の勉強したのでその構造には大変興味があります。
また航空機Egと自動車Egとの違いも興味あります。

アツタ21型エンジンの正面と側面です。正面に減速ギヤなどのクランクケースがつきます。倒立V型Egなので上がクランク室、した側がシリンダーヘッドになります。上下が逆さな訳は上がヘッドだとそのスペースに機関銃が置けないということと、操縦席の視界を良くできるためといわれています。

構造は大きく分けて3つシリンダーブロック左右にクランク室です。自動車Egなら通常、シリンダーブロックとクランク室が一体でシリンダーヘッドが別ですがシリンダーとヘッドが一体鋳造でスリーブを入れてスリーブの淵に特殊な歯車状リングナットでクランク室と結合されています。

クランク室側撮影、ここで注目なのはコンロッドの形状、1つのクランクピンに左右バンクのコンロッドが結合されているのは自動車エンジンのV型エンジンと一緒ですが、大胆部が3つに見えます。
実はこれ、左右でコンロッドの形状が違っていて、一方は通常のI断面コンロッド、もう一方はH断面で大胆部が2つに別れています。つまりH断面の真ん中にI断面のコンロッドがサンドされています。
どう言うことかというと左右のシリンダー位置が一緒ということ、V6などでは対向するシリンダーはオフセットされていますが、V12ともなると全長が伸びてしまうため、少しでもコンパクトにしようとした結果だと思います。
更に大胆部の軸受けベアリングはボールベアリングになってフリクションロス低減も考えているようです。最高回転数が3000rpmも満たないからというのもありますが、自動車Egでも最近になって軸受けベアリングにボールベアリングを使用するようになりましたが、既に60年以上前に採用されていたなんて驚きですね。
メーンベアリングキャップは2個づつのボルトで結合されていて、キャップを縦貫するようにボルトが走っています。あのハコスカGT-R(PGC10)のS20エンジンでも採用していた、ブロック剛性を上げるためのボルトだと思われます。

これは片バンク(向かって右側)のシリンダーブロックです。その上に少し写っているのがクランクシャフトです。
これが、クランク室と合体しますが、右から2番目のスリーブにある歯車状のリングで結合されています。
こちらは排気側で、各気筒側面に2つ穴があってそこから何か出ていますが、これがスパークプラグでツインスパークになっています。わかりにくいですが、その上に細長く見えるのが排気口です。

シリンダー内です。4バルブで下がIN側、上がEX側です。駆動方式はSOHCになります。
燃焼室はシリンダーヘッドが独立してないためほとんど平らでペントルーフ(加工上無理だが)ではありません。燃料はINバルブとの間から直接噴射方式で供給されて、EXバルブの下にプラグ穴があります。ロータリーEgと同じで燃焼室には電極は出ません。
それにしてもEX側は不活性ガスが溜まりやすい場所にスパークプラグ置いても着火しにくそうな気もしますが・・・・・

ピストンです。直径が150mmもあるのでトラックのEg並です。ピストントップは凹んでいてターボ用Egのような形状でピストンリングが3つ、オイルリングが2つあります。スカート部のオイルリングは倒立Egだからというのと、首振り防止用とのこと、空冷の栄Egにもありました。
コンロッド合わせ面はギザギザになっていてコンロッドキャップがずれない様な加工がされています。現行Egでもコンロッドを一体で成形加工し合わせ面を割ってあえて破断面を作り同じ効果を狙った、カチ割りコンロッドがあります。

噴射ポンプです。DB601はボッシュ製でした。それをコピーしたヤツです。形は一昔前のディーゼルEgの直列式噴射ポンプの12気筒番です。ここの精度は1/1000ミリが必要ですが、当時の日本の工業技術では難しくて、職人さんの手作業ですり合わせしていたみたいです。大量生産の工業品でなくて手工業品です。
因みに、噴射圧力はDB601で9気圧だそうですので、ディーゼルEgの200気圧に比べれば低いです。
最新式のコモンレール方式の噴射圧は更に10倍の2000気圧近くです。普通のガソリンEgのインジェクターは4~5気圧です。

画像はトップ画像の彗星のEg(展示は天地が逆)の彗星のEgバンクの間に噴射ポンプがあります。

展示場にアツタ21型の持ち主の方がいてお話聞けましたが、とにかく当時の日本では手に余る品物で製造精度から整備までドイツのレベルに終戦まで届かなかったようです。
それでも陸軍のハ40、ハ140よりかはマシでアツタ21型、発展型の32型イ400潜水艦に載せた特殊攻撃機、晴嵐に詰まれた31型を含め1600基以上生産されたようです。
ハ40は三式戦闘機、飛燕のEgで現在の岐阜県各務原の川崎重工で生産されていたようですが、神戸で作っていたEgが追いつかず、現国道21号バイパスの道までEgナシの機体が並べられて、最終的には三菱ハ112(金星)空冷エンジンに付け替えられ5式戦闘機となりました。
彗星も同様に金星Egに乗せかえられ特攻機として使われました。

最後に製造会社の愛知航空は現在は愛知機械工業となり、日産のHR15やR35GT-RのGR6トランスミッションの製造をしています。
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Posted at 2012/08/19 11:05:56

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この記事へのコメント

2012年8月19日 23:05
なかなか面白いものを見たなぁ~笑。

当時の技術なんでツッコミどころも修正も沢山有るけれど、この時代にできる最高の技術だね。

今やこのエンジンの2/3の重さで同等以上のモノは出来るけれど、初めにやったのはすごいと思う。

しかし、コンロッドキャップがズレないためにギザギザって・・・今や化石の技術だなぁww(コンロッドはどこまで精度を上げてもクローズイン&アウトは起こるので今はあえて起こる事を前提に設計されてるww)
コメントへの返答
2012年8月20日 5:51
自動車エンジンと違い航空機用や船舶用は定速回転で使う事が多いですよね。
プロペラ効率の問題で回転がペラ先端部で音速を超えることができないので、大きなプロペラをゆっくり回した方が効率が良いみたいです。
リノのエアーレース機でVG30を改造したエンジンを載せた機体があったようですが、トラブルで墜落してしまったようです。
RB26のドラッグ仕様で1000馬力出せるエンジンもあるようですが、3000回転ほどで1000馬力の航空機用エンジンってやっぱり凄いと思います。
2012年8月22日 20:31
お久しぶりです(^-^)
珍しいネタですね(笑)

当時最高の技術の集合体ですね、このエンジン。もっとも、高精度の工作機械を満足に持っていなかった日本ではおっしゃる通り手に余りすぎる代物でしたが・・・ヨーロッパではさらに高出力化に驀進し、近い寸法ながら終戦時2500馬力級のエンジンを量産していました。基礎工業力の違いを見せつけられてますね。。

蛇足ながら、コンロッド大端部の軸受けですが、油圧が急激に変動しても焼き付かないようにボールベアリングにしたとか(イギリスはプレーンベアリングでしたが)。プラグもオイル汚損を抑えるためにあの位置になっています。
苦労の跡がうかがえますね。。
コメントへの返答
2012年8月23日 22:52
こんばんは、今週から仕事でしたが、毎日の猛暑でやっつけられていました。

なるほど!軸受けにはそういう理由もあったんですね。
持ち主の話だとエンジンオイルも戦前に輸入したアメリカの自動車用を使っていたらしいです。
イギリスは燃料供給装置もキャブレータで曲芸飛行でエンジンが息継ぎしたそうです。
映画「バトル・オブ・ブリテン」の最初に避難民の上空をローリングしながら飛行していたハリケーンか何かは途中で息継ぎしてました。
それを解決したのが、ボッシュの噴射ポンプでした。
日本の工業力は今では一流ですが、こんな時代もあったんですね。

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