
根津甚八さんは、深夜の本牧:小港のカフェバーのロケ場所に350SS MACH II (S2)で乗り付けて来た。
映画「
無力の王」の撮影のためである。
「元帥」という役がらであった。
シーン「アロハ」
(マッハの写真はWikiより)
なぜ私が「そんな場所に居たのか?」というと大学の同級生(10歳ほど年上)が経営している動物プロダクションでのバイトのため。
早い話が犬(
ボクサー:バーのマスターの飼い犬)に監督の要望する演技をさせるお手伝い。
立ち上がってバーのドアを開ける、ビリヤード台の打った球をかすめ取る、といった演技。
借りてきたボクサーの演技指導(最初はエサでつる、合図で演るように自動化)に手間取り、悪戦苦闘。犬笛を使って一連の動きをすり込もうとしたがどうも聞こえないらしい(聴力障害?)、人間の合図動作でやらせようとするとフレームの中に僕が入ってしまう・・・。あたりまえだけど演技者以外はフレームの外にいなければならない。
犬との絡みもあるので、ボクサーの演技を興味深げに観察していた根津さんは、犬の集中力(飽きてこないようおだてて休憩)を維持するための休憩時間に350SSを磨いていた。

外へでてカフェのコーヒーを飲みながら一服付けていると、
「いやー犬に演技を付けるってたいへんだね、普段からそういう調教してある犬なの?」と話かけてきた。
「いえ、ある程度の種類の犬は自分達で飼って基本訓練をしていますが、CMや映画によって使う動物や犬種・猫種が変わってしまうので、あらかじめ目星をつけてあった犬等を飼い主さんにお願いして借りてきます。あとは習性を利用しながら現地で調整します。「犬笛」のように犬が主題の映画ではアイヌ犬を5頭飼っていて演技によって使い分けました」
「訓練っていろいろなことを教えるの?」
「訓練は基本となるマテ、スワレ、タテ、フセ、コイ、ネロしか教えません」
「へ~そうなんだー」
「根津さんのマッハは小道具ですか?」
「いや、これは僕のバイク。竜童さんや風間くんにそそのかされて風間くんのお店で買ったの。中型免許とりたてでこいつは危ないよって言われたけど、どうしても欲しくてさ!」
「アロハ」のシーンその後のテイクで「チビ」をのせて走り、タンクローリーと接触して死ぬのだそうだ。
「バイク乗ってるの?」
「CB400FとTX500とDAXに乗ってます」
「え~、次の撮影の時に400F乗ってきてよ」「いや動物を連れてくるのでクルマじゃないと、、」
「君さ、「影武者」のときも居なかった?」
「はい、うんと隅っこに」
「この業界で続けるの?俳優よりはマシだけどさ」
「・・・・・」
TVや映画での印象からは異なった、明るい気さくな人柄。
最近みかけないな、とおもったら現在は闘病生活を送っておられるとの事・・・・・・
高樹澪はその場に居たはずだけど、記憶無し。
犬のテイクを何度も我慢強く撮り直した監督の印象「大」。
監督:石黒健治の製作コメント
愛する「無力の王」たちへ
「今日の正午から、明日の朝五時まで、十七時間。あなたはどう過ごしますか?
どんな夢を見ますか? ショッピングですか? 誰に逢いますか? 大げさに言えばどう生きようとするのですか?
僕たちのヒロインは二十才の女子大生。彼女はある横浜のカフェテラスの窓際から十七時間の旅にでます。特別な目的も何もなく。まるで宇宙遊泳のような、感覚だけを頼りに、あてどもない都会遊泳の旅です。
それはたぶん、今日の日本をさまようあなた自身に似ているはずです。青春を泳いでいるようでいて、実は泳がされているだけかも知れない。---そのことを僕たちのヒロインはうすうす感じています。だから彼女は何ものにも従属しない王のようであるけれど、同時に自分が無力だということも分かってしまうのです。
彼女は十人ほどのバイト学生グループに出逢います。元帥と呼ばれる大学八年生、また胸の火をことこと燃やし続ける男、寂しさのためかセックスにルーズな女、歌手になるために大学をやめた男・・・・・・。
彼等もまた「無力の王」たちなのです。
僕たちのヒロインは、その中の最年少で、まだ無力感さえ知らない十八才の男の子に惹かれて行きます。
「無力の王」とは、今日の青春を送るすべての者たちのことであり、人々はみな、王たることをやめた時から大人に変身し、青春を終わるのでしょう。」
いつから「王」たることをやめてしまったのだろう・・・・・・
Posted at 2013/02/16 12:03:08 | |
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