2012年01月23日
ブレーキペダルが床まで行きます。。。
ここ最近,ブレーキトラブルで悩んでいました。
発覚したのは,先日の美浜サーキットでのシェイクダウンのとき。
走行前,ドライビングモニターをセットしているときでした。
ドライビングモニターは,各ペダルのストロークを表示する装置です。
これを見て,「あ~ブレーキ踏めてるねor踏んでないね」がわかるわけです。
最初に校正をするわけで,ブレーキを思い切り踏んだとき・・・
フロアに付くまでいっちゃいました。。。w( ̄△ ̄;)w
要するに,ブレーキペダルがフッカフカなわけです。
まずは,ブレーキフルードの”エア噛み”を疑いました。
しかし,走行すると普通にブレーキが効くんです。
床まで踏み抜いちゃうわけでなく,半分くらいのストロークでブレーキロックもします。
15分くらい連続走行し,走り終わって,パッドから煙が出るくらいまでやっても,
踏み抜いてしまうこともなければ,ペダルタッチも悪化しません。
「”エア噛み”じゃない。。。」
次に疑ったのは”ブレーキフルード漏れ”。
しかし,リザーバタンクはフルード満タンです。。。
「”フルード漏れ”でもない。。。」
キャリパー,パッド,ロータ類も異常摩耗や剥離もありません。
ロデックスさんに電話すると,
「そうなると,マスターシリンダか,マスターバック(倍力装置)かなぁ?
あんまり壊れたことないけど。。。」
・・・と。実は,マスターシリンダとマスターバックってなんとなく機構は知っているけど,
ちゃんと理解しているというレベルではなく。。。この際,勉強することにしました。
なので,ここからはほぼ私の忘れ防止メモです。。。(^-^;
知ってる人には当たり前のことしか書けませんが,ご容赦ください。。。
そして,いつも以上に長~~いブログです。(^o^;
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まずは全体図から。。。

(出典:「自動車のメカはどうなっているか シャシー/ボディ系」,(1992/12/19),
GP企画センター編著,グランプリ出版発行 頁138)
図中の「ブレーキブースター」がマスターバックです。なんだかいろんな呼び方があるようで,
日本語では倍力装置。
マスターシリンダはそのままですね。
【マスターバック(倍力装置)の原理】
<何のためにあるのか>
・ドラムブレーキは,「自己倍力作用」があり,制動力そのものはディスクブレーキより上です。
ドラムブレーキと聞くと,「ショボい・・・」とか思ってしまいますが,
「自己倍力作用」により,ディスクブレーキより軽い力で,大きな制動力が得られます。
ただ,ブレーキドラム内に制動装置が収まっているため,放熱性が悪く,
安定した効きが得られないという欠点があります。
必要なブレーキ容量は車両重量に比例します。
例えば,車両重量800kgの車と,1,600kgの車がとでは,同じ100km/hで走行していても
運動エネルギーは2倍違います。(当然,車両重量が重いほうが運動エネルギーが大きい)
ブレーキは,運動エネルギーを熱エネルギーに変換する装置と言え,
車両重量の大きい車には,容量の大きなブレーキをつけなくてはいけません。
(このあたりをもう少し詳しく書いたのが,↓です。)
ECR33ローターとS15ローターの性能比較(入熱編)
ECR33ロータとS15ロータの性能比較(冷却編)
制動を加えても,ブレーキの温度が上がりにくく,それがすぐに冷める放熱性に優れている
ブレーキが理想なわけです。
放熱性の悪さは,ドラムブレーキの致命的な欠点と言え,衝突安全性能等でどんどん増加する
車両重量を受け持つブレーキとしては貧弱でした。
そのため,今ではほとんどの車に放熱性に優れたディスクブレーキが装着されていますが,
ディスクブレーキは「自己倍力作用」がなく,「軽い踏力で大きな制動力を得る」ことが課題でした。
そこで登場したのが,マスターバック(倍力装置)です。
スロットル閉のときに,エンジンのサージタンクで発生している負圧を活用し,
小さなブレーキ踏力で,大きな制動力を発生させる装置です。
<マスターバック(倍力装置)の原理>
・なかなかいい構造図がないので,書きました。(笑)
①負圧室は,エンジンのサージタンクと配管(S15の場合はゴムホース)で接続され,
負圧となっています。大気圧室もブレーキ踏むまでは同じく負圧です。
②パワーピストンにはリターンスプリングが取り付けられ,ブレーキを離せば戻る構造となってます。
③オペレーティングロッドにはバルブプランジャが取り付けられ,ブレーキペダルの操作により
連動して動きます。

④ブレーキペダルを踏むと,バルブプランジャも動き,大気圧室側のバキュームバルブが閉となり,
エアバルブが開放し,大気圧室に,大気が流れ込みます。
⑤パワーピストンは負圧室側(図中左)は負圧,大気圧室側(図中右)が大気圧となり,
パワーピストン左右に圧力差が生じます。
⑥圧力差により,パワーピストンは負圧室側に動き,プッシュロッドがマスターシリンダーを押します。
以上がマスターバック(倍力装置)の原理です。
空気の圧力差により生ずる力を利用して,少ない踏力を倍増させているわけですね。
はい,ここで質問です。
「サージタンクが正圧になるターボ車の場合,倍力装置はどうなるの??」
サージタンクと負圧室は配管で繋がれていますから,アクセル全開でブーストがかかっているとき,
サージタンクは正圧になりますよね?そしたら,負圧室も正圧になり,倍力装置が逆に作用し,
ブレーキが超カタイ・・・ってことになるんじゃないでしょうか??
・・・と考えましたが,大丈夫。そんなことは自動車メーカさん考えてます。
S15の場合,サージタンクと倍力装置の間のゴムホースにはワンウェイバルブ(逆止弁)が
入っています。サージタンクが負圧の場合は吸い込みますが,正圧のときは流れないようになっています。
ワンウェイバルブはNAにも付いていると思います。
サージタンクには,ブローバイガスも入ってきますから,そういったものが倍力装置内に
入らないように・・・という役目もあるそうです。
<故障するとどうなるか>
・今回のトラブルで,最初「ブレーキアシストが強い感じがするな」と思ったため,
倍力装置が壊れたかと思いました。
そのため,サージタンクと倍力装置の間のゴムホースも換えましたが症状は改善せず。。。
それもそのはず。私が考えうる限りでは,倍力装置が故障した場合,
「ブレーキペダルが重くなることはあっても,軽くなることはない」
と思います。
(よほど特異な壊れ方をすれば,軽くなることもあるかもしれませんが。)
逆止弁が壊れたら,詰まってしまうかそれともどちらにも流れるようになるか。
詰まってしまえば,負圧にならず,倍力装置は働かない=ペダル重い
どちらにも流れる場合は,ブーストかけているときに踏まないと気付かないけど,
ペダルは重くなる方向。
エアバルブから大気圧以上の圧力を入れない限り,倍力装置が強く働くことはないと思います。
仮にもし,エアバルブが開きっぱなしになることがあれば,ペダル踏んでないのに
ブレーキが効いてしまうってことはあるかもしれませんが。。。
・・・というわけで,「マスターバック故障」はほぼ消えました。
となると,マスターシリンダか。。。
【マスターシリンダの原理】
・断面図を示します。

(出典:「シャシ構造 2-3訂 (自動車教科書)」,(2004/4/5),
全国自動車整備専門学校著、山海堂発行 頁30-図6-48)
・こちらも,分かりにくいので図を書きました。部品はかなり省略してあります。

①マスターシリンダは,倍力装置のプッシュロッドに押されることで動きます。
②ブレーキホース等からのフルード漏れがあった場合,全てのブレーキが効かなくなる
ことを避けるため,シリンダは2つあります。
一般的にFR車では前後のブレーキ系統を分け,FF車では右前輪&左後輪と左前輪&右後輪
のように,”たすき掛け”の系統になっているようです。
なんでFRとFFで換えるのか・・・わかる人いたら教えてください。
また,片系統が死んだ場合のシリンダの動きの説明については,本題と逸れるため割愛します。
この動き方については,ネット上でも沢山説明があるので,そちらを参照ください。
③プッシュロッドにより,1段目のプライマリピストンが動きます。ピストンカップで
インレット&リターンポートを遮断した後,S15の場合リアブレーキ系統にフルードを送ります。
④プライマリピストンでリアブレーキ系統の圧力が高まると同時に,同じ圧力でセカンダリ
ピストンも押し出され,フロントブレーキ系統にフルードが供給されます。
<故障するとどうなるか>
・シンプルな装置なので,ほとんど壊れることはないでしょう。
ただ,「ピストンカップキット」なるO/Hキットがあるということからもわかるように,
ピストンカップ自体は劣化します。
劣化してしまうと,シリンダー内の圧力を保持できず,圧力の高められたフルードが
ピストンカップの隙間を通って,リザーバタンク内に戻ります。
これが「内部リーク」という現象で,ブレーキホースから漏れたのと同じように,
フルード圧力が低下し,ブレーキがスカスカになります。
但し,ブレーキホースからの漏れは系外部に漏れるので,フルードが減りますが,
この「内部リーク」の場合,漏れたフルードはリザーバタンクに戻ってしまうため,
外観上から判断することは困難です。
この「マスターシリンダの内部リーク」が疑わしいということで,
ロデックス師匠にマスターシリンダーの新品と入れ替えてもらったところ,
今回のトラブルの症状は収まりました。
ロデックス師匠ですら,初めてのトラブルということでしたが,やはりシルビアも年式が古くなり,
こういうトラブルが出始めたということなんでしょう。
マスターシリンダー自体は,「ピストンカップキット」というO/Hキットが\6,000~7,000程度で
手に入りますから,ブレーキキャリパーと合わせてO/Hしてしまうというのがよいのかもしれません。
以上,今回のトラブル報告レポートでした。
しかし・・・長い。。。(-。-;
最後まで読んで頂き,ありがとうございました。m(_ _)m
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トラブル事例&延命化 | 日記
Posted at
2012/01/23 23:43:25
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