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  • ☆ジェット オン ドリーム ~夢幻飛行~  第2部
    elyming♂ 2006/11/23 22:35:55



        【 ジェット オン ドリーム 】

          ~ 夢幻飛行 第2部 ~  

            <第15幕>



  • elyming♂ 2007/01/04 23:26:36











        ~ 事故原因 圧力隔壁修理 ~



    だが、1枚であるはずの、つなぎ役のスプライスプレートは実際は2枚に分割されていた。
    これにより、下半分の新規隔壁部材とスティッフナー(放射状の補強材)とが直接接合して
    いない部分が発生していた。しかも分割されて脆弱になった部分にフィレットシール(※)
    が塗られていた為、外部からの点検で‘修理ミス’を見抜く事は困難になっていた。


    (※)与圧の機密性を保つための上塗りペイントシール


    上下の隔壁をつなぐはずのスプライスプレートは2枚に分割されたため、与圧の張力は
    構造的脆弱箇所の特定のリベット周辺に集中することになる。


    「事故報告書」によると ―――――
    『後部圧力隔壁の修理作業が完了した後からでは、当該接続部分の縁がフィレット
     シールで覆われているために、指示とは異なる作業結果を目視点検で発見する
     ことは不可能であったと考えられる』という見解であった。



    高度1万メートルを飛行する旅客機の客室与圧は、1平方メートルあたり約6トンもの
    荷重になるが、地上に戻れば、その荷重はゼロになる。こうして、繰り返し荷重が加わる。
    繰り返し荷重による疲労亀裂は、構造的脆弱箇所の特定リベット周辺に発生してゆくこと
    になる。

    この亀裂は、第2ストラップの左右両側に集中していた。この周辺では、各リベット間の
    距離を100%とした場合、亀裂の発生は平均70%以上に達していたと推定されている。

    外部から見える亀裂は19箇所、最大で10ミリメートルに達していたと見られる。
    しかし、非常に細い亀裂であった。定期点検で発見することはできなかったのか?
    それは作業内容、整備士の技量、発見の確率など、さまざまな要因に左右される。


    例えば、マイカーのタイヤに小さなヒビ割れ(亀裂)を発見したユーザーが
    高速走行時における危険なバースト発生の確率をどう判断するか? 
    すぐにタイヤを交換するか?それともスリップサインが出るまでは
    そのまま使い続けるか?(あくまで、身近な例え話である)



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:27:40











    「事故報告書」は、こう述べている ―――――

    『目視点検でどの程度の長さの亀裂まで発見できるかについては、亀裂の長さ・形状と
     発生部位、点検のための接近性の程度、塗装/汚れの有無、点検従事者の経験と能力
     など種々の要因が関与する。』

    『可視亀裂長さ10ミリメートル程度の一つの亀裂の発見確率は、10パーセント程度と
     計算された。L18(スティッフナー番号:隔壁中心から放射状にのびる補強材の1本)
     接続部で進展していた多数の疲労亀裂のうち、少なくとも一つを発見できる確率は
     14~16パーセント程度と計算された。』

    『後部圧力隔壁のC整備時の点検方法は、隔壁が正規に製作されている場合、また、その
     修理が適正に行われた場合には、当該C整備の時点では疲労亀裂がこの部位に多数発生
     するとは考えられないので、妥当な点検方法であったと考えられる。
     しかしながら、今回の場合のように不適切な修理作業の結果ではあるが、後部圧力隔壁
     の損傷に至るような疲労破壊が発見されなかったことは、点検方法に十分とはいえない
     点があったためと考えられる。』



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:29:13










         ~ 事故原因 ~



    修理されたJA8119号機は、再びライン運航に復帰した。
    その後、飛行時間ごとに定期整備や点検、検査が何度となく行われたが、修理後
    における‘フェイルセーフ機能の脆弱性’を見抜くことはできなかった。

    1978年6月~7月。JA8119号機は、しりもち事故修理の期間中に
    就航5回目のC整備(作業記号05C)を受けていた。この時の飛行時間は
    8834時間であった。

    1984年11月~12月。JA8119号機は、11回目のC整備(作業記号11C)
    を受けた。その時の飛行時間は2万3329時間であった。

    この間の平均的な整備間隔は、およそ2416時間であった。Cチェックの整備間隔は
    おおむね3000時間ごとに行うこととされていた。

    修理から7年後、1万2319回目の飛行で、非情なる魔の手が忍び寄っていた・・・


    日航123便の「事故報告書」によると ―――――
    第1ストラップ、第2ストラップの間で破断が起こり、ついで第2ストラップの
    内側で破断が起きたと推定している。破断の前に周囲が支えていた与圧の荷重は
    第2ストラップ1本に集中することになり、これでこのストラップは耐えきれず
    破断してしまう。1本のストラップ破断は、さらに周辺のストラップや構造部材
    に与圧荷重を集中させることになり、今度は別の場所が破断する。

    こうして、破断の連鎖が起こり、圧力隔壁は一瞬のうちに大破裂してしまった
    と考えられている。

    こうして、日航123便JA8119号機は、巡航高度2万4000フィートに
    到達する直前で、胴体後部圧力隔壁が破裂したと考えられたのであった。



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:32:00










        ~ 奇跡の生存 ~



    墜落現場は、山の中腹、ちょうど稜線上にあたる樹林帯であった。
    衝突の衝撃で樹木は、なぎ倒され、その稜線上にはⅤ字状に剥き出しになった地肌と
    大破炎上した無残な機体の残骸が燃え残った。

    激突の衝撃で胴体後部はちぎれ、尾根をさらに飛び越えて右奥の斜面を滑り落ちていた。

    このような惨状にもかかわらず、この胴体後部に座っていた4名が奇跡的に生存していたのは
    奇跡としか言いようがない。

    旅客機の座席は、耐空性審査要領により座席の強度が決められている。非常時の緊急不時着水
    条件において機体構造部が損傷しても、乗客乗員を傷つけないように設計しなければならない。
    このため設計強度は、座席が9Gまで、シートベルトが12Gまで耐えうる強度を持っている。

    しかしながら、日航123便の御巣鷹尾根の墜落事故の場合には、衝突時に数十Gを超える
    衝撃が加わったと推定されている。遺体の多くは、こなごなに離断し、身元の特定を困難に
    した。座席のシートベルトで切断された遺体も少なくなかったという。また、大人の体内に
    子供の体がのめり込んでいる遺体などは、最後まで子供をかばおうとしていたのだろうか。
    目を覆いたくなるような凄惨な光景を前に、遺体捜索と収容にあたる隊員らの涙を誘った。



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:33:40











     ~ 事故原因と真相の闇 ~


     123便の事故後 ―――――


    航空会社では123便と同じ同型機B747SR100シミュレーターを使い
    尾翼が破壊され全油圧系統を失った場合の再現実験を試み、有志の機長たちが
    この過酷な飛行に挑戦した。

    しかし、参加したベテランパイロットの多くは、この極限の状況で機体を
    コントロールすることはできず、ほとんどの場合、機体を大きくダイブして
    墜落してしまったのだった。

    その中で、一部のパイロットは滑走路のある陸地への帰還はあきらめたが
    海上着水の直前まで機体をコントロールすることができた。しかし機体は
    それでも時速400km近いスピードが出ており(事故機123便は時速
    600km以上)姿勢の制御は、接水時にどうなるかは全く予想できない
    ものであった。



    最終の事故報告書は300ページにもわたる膨大な内容であった。

    限られたサンプル、フライトレコーダー、ボイスレコーダー、シミュレーションなど
    その道の専門家が解析した内容は、ほぼ妥当な公式見解であろう。しかし、現在でも
    これに対するさまざまな見解があり、事故原因、事故調査への疑念がは、すべて払拭
    されているわけではない現実がある。


    123便は、爆発音発生以前から何らかの異常な状態(それが何であるのかは明確ではないが)
    をかかえていたとする説。また、垂直尾翼の損失は、胴体圧力隔壁の破裂以外に、何かの飛行
    物体との衝突(無人標的機など)によるものであるとする説などなど・・・




                         <第26幕につづく>



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:34:20




    【 ジェット オン ドリーム 】

      ~ 夢幻飛行 第2部 ~
      
        <第26幕>



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:36:26











       ~ 遠きにありて ~




     そして、再び 8月12日。

     群馬県 上野村 御巣鷹の尾根 ――――― 


    あの忌まわしい事故が起き、昇魂した人たちの命日である。
    時は昭和から平成へと年号が変わり、すでに20年もの歳月が流れていた。

    墜落事故の修羅場と化した尾根の中腹は、きれいに整地され、遭難慰霊碑に献花と祈りを捧げる
    人が絶えない。あの夏の日の遠い記憶は、静かな焼香の煙の中で、その時を封印されているかの
    ようであった。年老いた老夫婦、無邪気に遊ぶ幼児のすがた、赤ん坊を抱く若い夫婦、さまざま
    であった。

      「おじいちゃ~ん だっこしてぇ~♪」 「はいよ~♪」


    冷酷すぎる宿命の歯車が動いてしまったあの日、何事も起きなければ、今頃はきっと
    かわいい孫たちに囲まれた幸せな余生を送っていた人もあっただろう。絶え間ない時
    の流れの中で、いつしか遺族の世代も変わろうとしているのだろう・・・

    そんな慰霊登山の人たちが行き交う山道は、ふもとの谷から事故現場へと
    きびしい登りが続く。




    日航機墜落事故後に切り開かれた登山道は、ところどころ夏草が茂り、コケむした岩角や木の根が
    20年という歳月を感じさせつつも、この命日の日に行き交う遺族たちを静かに見守っているかの
    ようであった。登山道の維持管理を行ってきた地元ボランティアの方々にも高齢化が進み、山道の
    手入れも行き届かなくなってくるのだろう。ひとたび、台風や大雨などで登山道が荒れてしまうと
    その手入れは大変な労力を必要とするものである。

    ポツリ ポツリ と行き交う人々の中に、事故で父親を失った 富士 峰子 と、その母親のすがたが
    あった。杖をつきながら一歩一歩足をあゆむ母をいたわるしぐさ。やはり、親子の絆であろうか。

    そして、その光景を、ひたいの汗をぬぐいながら、木かげから見守る婦人がいた。かたわらには
    壮年の男性もいる。彼女は、123便で殉職した故機長夫人であった。

    かたわらの男性は、その後輩にあたるJANAの現役機長、雄山 参二(おやま さんじ)である。



    0

  • 2007/01/04 23:37:34

    <この発言は削除されました>

  • 2007/01/04 23:41:22

    <この発言は削除されました>

  • elyming♂ 2007/01/04 23:42:44


    ━━━━━━ シアター間奏曲 ━━━━━━


       ♪少年時代

              歌:井上 陽水





    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:45:43










       ~ 遠きにありて ~



    故機長夫人「・・・雄山さん、胸がつまりますわ・・・」

    雄山参二 「ですね。・・・あの彼女、JALのCA訓練生に内定していましてね・・・
           いずれ、われわれのJANA機にも乗務するんじゃないかと・・・」


    そばで二人の会話を聞いていた遺族らしき人が、声をかけてきた。
    同伴しているのは実の娘だろうか。小さな赤ん坊を背負っていた。


    遺 族  「あのう、航空会社の方で・・・?」

    雄山参二 「ええ、そうですが・・・ご遺族の方ですね。」

    故機長夫人も、伏せ目がちに挨拶をした。    


    遺 族  「妻とこいつ(娘)の兄が事故機に乗ってましてね・・・」

    雄山参二 「・・・」

    遺 族  「仲のいい兄妹でしたから・・・亡くなった二人は、比較的きれいな体だったんで
           すぐにわかりましたけどね・・・こいつ(娘)のショックは相当だったでしょう。」

    故機長夫人「・・・」

    遺 族  「おにいちゃん、おにいちゃん って夜中じゅう泣きじゃくっていましてね。そんな
           こいつも、もうご覧の通り1児の母ですわ。(苦笑)」

    故機長夫人「・・・ほんとに申し訳ありません・・・」深々と頭を下げる婦人・・・

    遺 族  「・・・!?・・・何も、あなたが謝らなくても?・・・ええ、まさか!?」

    雄山参二 「・・・実はですね、この方、その便でキャプテンだった機長の奥さんなんですよ。」

    遺 族  「え! やっぱり、そうなんですか!」

    雄山参二 「あ、余計なこと言ってしまいましたか・・・」

    故機長夫人「はじめまして・・・娘さん、ほんとにごめんなさい・・・」



    しばらく、無言の時間が過ぎていた。
    近くで小鳥のさえずりがしている。遠く沢の流れる音も、かすかに聞こえる。
    木々が風にふるえる音も聞こえてくる。

    静かにしていると、山は一見何の変化のないようで、生きとし生けるものの
    気配が感じられるものである。

    重い口を開いたのは遺族の方であった。



    遺 族  「そうでしたか。そういえば、ボイスレコーダー 以前テレビ局にスクープされましたね。」

    雄山参二 「ええ、運輸省の方針だったと思いますが、レコーダーの破棄が決まったあとのことでして
           ・・・その音声レコーダーがですね・・・この婦人宅に匿名で送られてきましてね・・・」


    遺 族  「じゃ、最初にそれを聞いたのは、こちらの奥さんが?」

    故機長夫人「はい・・・丁寧な手紙が同封されておりました。事故を風化させずに、これを役立たせて
           広く伝えてくださいと書いてありました。」



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:49:48













       ~ 遠きにありて ~



    雄山参二 「CVR、あ、いや、ボイスレコーダーを破棄するとの当時の運輸省方針に反発した
           心ある内部関係者がいた、ということでしょうね・・・それが‘事故調’メンバー
           の方なのか、それとも運輸省内部の方なのかは、わかりませんが・・・」


    故機長夫人は、それに小さくうなずき、静かに語り始めた。


    故機長夫人「送られたテープを、さっそく再生してみて驚きました・・・あまりにも鮮明な
           音声だったもので・・・すぐに主人の・・声・・だ・・と・・・」


    言葉は、涙で声にならなかった・・・


    遺 族  「そうですよねぇ・・・私もねぇ、今でも妻がひょっこり玄関をあけて帰って
           くるんじゃないかと・・・今思うと、いつも、ケンカばかりしてましてね
           もっと優しい思いやりのある夫でいればよかっ・・・た・・・と・・・」


    彼も言葉は、涙になった。
    会話を進めてゆくうちに、4人とも思わず目頭にタオルを当て、あふれる涙をおさえた。



    遺 族  「正直言って、事故の直後は‘パイロットは何をしてるんだ!’っていう
           何と言うかやるせない気持ちで一杯でしたが・・あの公開された音声
           聞いて始めて・・・・最後の時までパイロットや乗員の方々が懸命に
           職務をまっとうされていたんだと知りまして・・・言葉がでません。」

    故機長夫人「娘さん・・・ほんとにごめんなさい・・・」

    遺族の娘 「いえ・・・若かった頃の兄とは、今でも夢の中で逢えますから。(微笑)
           ・・・ず~っと、いつまでも逢えますから・・・」


    故機長夫人「ほんとに 申し訳ありません・・・」

    遺 族  「・・・いいぇ、奥さん、思いは同じです・・・どうか、お体に気をつけて・・・」

    故機長夫人「はい、ありがとうございます。」


    遺 族  「では、私どもはこれで・・・お二人とも、お元気で。」


    故機長夫人と雄山参二は、遺族に深々と頭を下げ、その場を離れた。
    男ながらに気恥ずかしいほど目の奥を赤く泣き腫らした雄山三二であった。
    故機長夫人や遺族の気丈なすがたを見ると、わが胸が痛むのをどうすることもできないでいた・・・

    二人は、再び、遭難慰霊碑への長くけわしい山道を歩き始めていた。

    山あいの はるか雲上の高空を巡航するジェット機のカン高い響きだけが
    あたりの静寂を破っていた。







         ――――― シアター間奏曲 ―――――


           ♪涙そうそう
                   歌:夏川りみ



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:50:41




       東京国際空港 羽田 午後7時45分



    0

  • elyming♂ 2007/01/04 23:52:43











       ~ もう一つの再開 ~


       羽田ビックバード 旅客ターミナル ――――



    故機長夫人「白矢キャプテン、お忙しいのに、こんな所へ呼び出したりして、ごめんなさいね。」


    白矢義参 「あ、いやいや・・・今日は深夜のチャーター便ですんでね、フライトまでは
            まだ時間がありますんで、気にせんでください(笑)」

    故機長夫人「あれから、もう羽田には来ないつもりでしたの・・・でも、こんなにキレイに
            変わっていたんですね。」

    白矢義参 「でしょう? ここビックバード オープン前の機材移動、つまり飛行機なんかの
            お引越し大変だったですよ。グランドなんか徹夜がかりで(笑)」

    故機長夫人「グランドの方々も大変だったんでしょうね。ちょっと作業が遅れれば
            翌朝からの運航に即影響ですものねえ。」

    白矢義参 「東京も、けっこう変わったでしょう? あ、そうそう・・・よろしければ
            空港の喫茶でコーヒーでも飲みますかね?」

    故機長夫人「あ、そうですね・・・でも、お時間、大丈夫?」


    白矢義参 「え、余裕持ってショウアップにのぞんでいますんで、はい(笑)・・・
            これも亡くなった先輩、いやキャプテンに仕込んでもらったおかげで(笑)」

    故機長夫人「白矢さん、その明るさ、昔とちっとも変わってないですわ(微笑)」

    白矢義参 「え? そうですかねぇ・・・ちょっとは成長したつもりなんですがね(笑)」



    二人は、JANAのグループ会社が運営する旅客ターミナル内にある喫茶室で席を共にした。
    空港カフェの窓辺には、色とりどりの光を散りばめた夜のエアポート風景があった。





       ☆☆☆☆☆ シアター バックグランド ミュージック ☆☆☆☆☆ 

           ♪見上げてごらん夜の星を

                   歌:平井 堅 ( with 坂本 九 )



    0

  • 2007/01/04 23:58:13

    <この発言は削除されました>

  • elyming♂ 2007/01/05 00:00:02











       ~ もう一つの再開 ~


       羽田ビックバード 旅客ターミナル ――――


    故機長夫人「へぇ~ すてきな眺めなんですねぇ。」

    白矢義参 「でしょう?(笑)」

    故機長夫人「白矢さん。で、今夜のフライトは、どちらの方へ?」

    白矢義参 「今夜のフライトはね、チャーター便ですよ。インチョン経由のグアム行きですよ。
            グアムはILSがロ=カライザーアプローチに変更されていることがありますから
            CFITには要注意ですがね(苦笑)」

    故機長夫人「ええ、亡くなった主人も、よく‘夜のグアムは危ないな’って話しておりましたわ。
            春さきの‘香港 カイタック’もパイロット泣かせだったとか。」


    白矢義参 「ま、今夜のフライトプランだと、グアムに着く頃には夜が明けてますけどね。」

    故機長夫人「じゃ、そのまま、ホテルへ直行して、バタンキュですね。」

    白矢義参 「そのとおり(笑) ま、人間、夜昼逆になるのは長生きしませんね(苦笑)
            これも好きで選んだ道ですから(苦笑)・・・」

    故機長夫人「そうですね・・・主人も私も不規則な生活だったかもしれませんね。」



    白矢義参 「事故の2年前でしたか・・・丹波キャプテンの香港カーブランディング
            見事なものでしたよ。私は、まだ副操縦士のヒヨッ子でしたが(笑)」

    白矢義参 「亡くなられたキャプテンには、よく叱られましたよ、羽田の早朝訓練でもね。」




    昔は、早朝の羽田でもタッチアンドゴーやサークリングアプローチ(場周回経路進入)などの
    訓練飛行が見られた。

    現在の羽田空港ビックバードは、旧羽田空港の沖合い事業に伴って拡張移転されたものである。
    以前の旧羽田飛行場では、定期便が運航する前の早朝時間帯に、副操縦士や機長の昇格訓練の
    ための離着陸のタッチ・アンド・ゴーや場周回経路飛行シーンを見ることができたが、今では
    それも昔がたりになった。

    白矢 義参は、羽田で訓練飛行が行われていた当時、副操縦士から機長への昇格訓練期間中であった。
    彼とって123便で殉職した機長は、かけがえのない先輩パイロットの一人だったのである。




    白矢 義参「今じゃ、下地島(南西諸島)や、モーゼスレイク(米国)のローカル訓練じゃ
            指導する側の立場ですからね(笑)」



    0

  • 2007/01/05 00:03:59

    <この発言は削除されました>

  • elyming♂ 2007/01/05 00:05:25











          ピンポンピン パ~ン



    『羽田空港ビックバードより、現在出発を予定しております便のご案内をいたします。』

    『19時40分発 日本航空 951便 小松行きは、只今ご搭乗手続き中です。』

     ☆この便は、ボーイング747-400D型機。パイロットは ―――
      小松 方名(こまつ ほうみょう)機長、日出見 栃郎(ひでみ とちお)副操縦士。



    『19時50分発 ジャパン エアネット アライアンス 369便 福岡行きは
     只今ご搭乗手続き中です。ご利用のお客さまはお急ぎください。』 
          
     ☆この便は、ボーイング777-300型機。パイロットは ―――
      来賀 鉄蔵(くるが てつぞう)機長、仁屋 悟郎(にや ごろう)副操縦士。



    『20時00分発 ジャパン エアネット アライアンス 1037便 大阪行きは
     只今ご搭乗手続き中です。』

     ☆この便は、ボーイング777-200型機。パイロットは ―――
      喜多野 大知(きたの だいち)機長、江里 広司(えざと ひろし)副操縦士。

            (※このあと、この便が物語りの主役になる予定)





    『20時05分発 全日空 3011便 高松行きは、まもなく、ご搭乗の手続き
     を行います。ご利用のお客さまは、ANA出発カウンターにお越しください。』

     ☆この便は、エアバスA320型機。パイロットは ―――
      四国 家夢(しのくに いえゆめ)機長、ロータスフォース・カンツリーヌードル 副操縦士。



    『20時10分発 日本トランスオーシャン航空 7053便 岡山行きは、まもなく
     ご搭乗の手続きを行います。ご利用のお客さま、出発カウンターにお越し下さい。』

     ☆この便は、JTA B737-400型機が予定されていたが、運航の乱れから
      JANA A300-600R型機に機材変更された。系列会社間で機材の運用
      を融通することは、よくあることである。パイロットは ―――
      綿理 斗利幸(わたり とりゆき)機長、花布佐 衿好(はなぶさ えりよし)副操縦士。



    0

  • elyming♂ 2007/01/05 00:07:30











       ~ もう一つの再開 ~


       羽田ビックバード 旅客ターミナル ――――


    JANA機長、白矢 義参は、すでに今夜のフライトプラン概要を入手していた。
    フライトのデータベースや気象などのさまざまな情報を事前に知ることができる
    システムが試験的に運用されており、白矢 義参は今夜のフライトでそれを初めて
    使ってみることにした。

    乗員用の試験的端末機、カービューエレクトロニクス社製 CV-771SAから
    プリントアウトしたフライトデータに視線を落とし、何やらボソボソとひとりごと
    をつぶやいている。


    使用機材は、すでにライン運航前整備を終え、予定のオープンエプロンに待機していた。
    JANA ジャパン エアネット アライアンスカラー ボーイング777-200ERである。
    このシップは、夕方、関西国際空港からフェリー(空輸)されてきていた。 


    羽田空港は、チャーター便にかぎり、深夜時間帯の使用が認められている。
    深夜便の場合、騒音を考慮したSID(羽田出発方式)を使うことになる。

    今夜のチャーター便は、深夜に羽田を離陸後、韓国の仁川国際空港であらたにチャーター客を乗せ
    グアム国際空港に向かうというスケジュールであった。 



     白矢 義参
    「え~ オープンスポットまでバスで移動だな・・・SIDが、OPPER ワン でと
     OPPER のフィックスが9000フィート以上・・横須賀ボルデメ、浜松ボルデメ
     オッパー ウェスト トランスでと・・・・予定の航路が、V17、河和ボルタックで
     G597に乗り、美保ボルタック、G585でインチョンFIR・・・・・
     ポンハン ボルデメ、イエチョン ボルデメ、・・・アニャン ボルデメのディセンドで
     ウェスト アプローチ・・・OK・・・ランウェイが15L・・・フライト時間・・・
     2時間半といった感じで・・・現地の天候は雨 オルタネートが北九州空港・・・。」


    カバンの中から、事前に入手したフライト資料を見ながら、なにやらボソボソと独り言を発する
    白矢 義参キャプテンの態度に、故機長夫人は、ちょっと苦笑いである。

    故機長夫人「やっぱり、フライトのことは気になりますものね・・・(微笑)」

    白矢義参 「あ、いやいや、これは失礼(苦笑)・・・ちょっと気になることがあったもんでね。」



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  • elyming♂ 2007/01/05 00:10:27











       ~ もう一つの再開 ~


       羽田ビックバード 旅客ターミナル ――――


        
         ピンポン

         ジェー ティー エー 
         日本トランスオーシャン航空より ご案内いたします。
         遅れておりました沖縄からの5318便は、只今到着しました。
         お出迎えのお客さまは・・・


      沖縄空域の管制障害で、運航ダイヤが遅れていた JTA ボーイング737-400が
      予定スポット変更で、羽田のターミナルにランプインしていた。本来なら、このあとの
      岡山便に使用される予定だったが、今夜は急遽、機材変更になったようである。



    故機長夫人「ご遺族の方々も、かなり高齢化が進んでいますし・・・あの(御巣鷹)尾根を毎年
            登るをためらう方もいらっしゃると聞いております。」

    白矢義参 「それだけ、年月が流れたということでしょうか・・・」

    故機長夫人「あの事故のあと、涙枯れるほど泣きましたよ・・・でも多くの人命が散ったことへの
            罪悪感は、日に日に強くなっていくばかりでした・・いっそ主人の後を追おうと何度
            思ったことか・・・」


    白矢 義参「・・・当時、機長夫人として、相当な心労があったことでしょうねぇ・・・」


    故機長夫人「わたくしだけではないでしょうが・・・あの時、本当に主人たちのチームは最善の
            フライトをしたのだろうか? と・・・あの苦悩は、もう誰にも味わってほしく
            ないものです。」


    白矢義参 「僕はキャプテンの人柄もよく知ってましたから・・・あの極限の状態で最善の
            オペレーションだったとボクは今でも信じています。」

    白矢義参 「ご存知でしょうけど‘事故調(事故調査委員会)’からの調査協力要請があって
            事故機と同じ条件でシミュレーションを使った飛行実験ありましたけど・・・」

    故機長夫人「ええ、存じております。」

    白矢義参 「あのとき、同僚の日航のパイロットだけでなく、全日空のパイロット有志も参加しましてね
            ・・・尾翼とすべての油圧を失っての異常なフライトはとても‘飛行’じゃなかったですよ。
            あのとき感じたのは、誰しもみな生還の可能性があるフライトは不可能だったですね。」

    白矢義参 「なにしろ、世界中のパイロット誰ひとりとして、あのような経験はなかった。だからフライト
            シミュレーションテストに参加したパイロットの多くは、ジャンボ機の機体をひっくり返して
            墜落させてしまいましたよ・・・ごく一部の方が着水寸前までいきましたけど。あのような
            コントロール不能の機体じゃ、失速なしで 時速400km以下の速度で海面に安定した姿勢
            で突っ込むことは不可能です。つまり、どのような形で高度を下げることが できたとしても
            生還は未知数で絶望的だと・・・それほど困難な状況でした・・・それでも あの123便は
            30分間以上も飛行を続けていた・・・」

    故機長夫人「はい‘事故調’の報告書にも、そのようなこと書かれて・・・」

    白矢義参 「奥さんも、あの300ページもの膨大な内容、すべて目を通されていたんでしたっけね。」

    故機長夫人「ええ・・・でも、ご遺族の前では、言葉を失うんですよね。」

    白矢義参 「奥さん、ボクはご主人、いやキャプテンのチームは、最善の努力をしたと。」



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  • elyming♂ 2007/01/05 00:13:22











          ~ 遠きにありて ~




    故機長夫人「・・・事故後何年たった後でしたか、家のポストの中に差出人不明の小包み・・・
            何かのテープ。それを再生したときに、心臓が張り裂けるほど驚きましたからね。」

    白矢義参 「ええ、鮮明に記録されたボイスレコーダーのテープ・・・結局、公開されましたね。
            あれで よかったんだと思いますよ。」

    故機長夫人「すぐに、主人の声だと・・・今でも、どなたが届けたのか判りませんけど・・・」

    白矢義参 「それまで、不鮮明な音声記録しか存在しないと思われていたんですからね・・・
           ‘事故調’関係者の良心だと思っていいんじゃないでしょうか。」

    故機長夫人「あのとき、何故、主人が右旋回を選んだのかとか、わたくしなりに、あの人のこと
            を思い巡ったものです。実際には、気流の気まぐれに翻弄されたのでしょうけど。」

    白矢義参 「奥さん、これはボクの想像ですが、キャプテンが右側に座っていましたからね。
            伊豆半島沖にある訓練空域をキャプテンが意識していたかもしれませんし・・・」


    故機長夫人「ちまたでは、毎年3万人の自殺者がいるって聞きますよね・・・単純計算だと
            毎日90人の方が、自ら命を絶っていかれるんですよね・・・。きっと人には
            言えないような苦しみを抱えて自らの命を絶っていかれるんでしょうけど。
            一方で、あの事故みたいに生きながらにして、無念にも生涯を閉じざるを
            えなかった多くの方々がいましたし・・・運命というか宿命のいたずらと
            いいましょうか・・・わたくしは何ともやりきれませんわ・・・」


    白矢義参 「奥さん・・・本当に ご苦労なさって・・・」(ちょっと目頭が熱くなる)


    故機長夫人「このところ、管制や運航トラブル多いですものね・・・」

    白矢義参 「運航にたずさわるパイロットにしろ整備にしろ、現場の人間は真剣に取り組んで
            いるとボクは思います・・・事故やアクシデントというのは、一つだけの要因で
            起きるよりも、複合的に不幸なことが重なって起きるのが多いんじゃないかと。」


    故機長夫人「たしかに そうかもしれませんね。」

    白矢義参 「‘事故の芽’というのは、見過ごされやすいほど小さなものであったりしますから。」

    白矢義参 「これは航空の世界だけじゃなくて、鉄道とか運輸全般にも言えるんでしょうが・・・
            経済のグローバル化や規制緩和の下で、いつの間にか効率が優先されて、安全のための
            コストが置き去りにされている実態もあるんじゃないかと思いますけどね。
            今の日航やANA、JANAは、自前で整備人員とか整備システムを持っていますけど
            これは、世界的に見てもトップクラスの技術力なんですよ。でも、コストアップの整備
            をすべて外注に丸投げしてる会社も多いわけで、そうなると責任の所在がね・・・」




      白矢義参の業務用携帯電話が鳴った。JANA運航部からの連絡であった。
      深夜チャーター便に使用されるフライトシップ、B777-200ERは
      機体状態ノーマルで、予定通り羽田を出発するとのことだ。羽田空港出発
      を2時間半後に控えている。




    白矢義参 「では、そろそろショーアップ(運航管理本部への出勤)ですので・・・」

    故機長夫人「お忙しい時間なのに、お付き合いしてもらって・・・」

    白矢義参 「あ、いいんですよ、コーヒ代は割り勘で、恨みっこなしで(笑)」

    故機長夫人「ええ(笑) お仕事 頑張ってくださいね。」

    白矢義参 「はい、ありがとうございます・・・また機会あったら、ゆっくり話を。」



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  • elyming♂ 2007/01/05 00:14:20



        ―――― シアター バックグランド ミュージック ―――― 
     
               
         ♪ディア・ハンターのカヴァティナ

                     演奏:スタンリー・ブラック楽団

         (JAL ジェットストリーム アルバム「ナイト・フライト」より)



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  • elyming♂ 2007/01/05 00:16:01











          ~ 遠きにありて ~




       空港の喫茶室を出ると――――白矢キャプテンは、ターミナル内の雑踏が、何故か
       まるで安全と定時運航を要求するかのような響きをもって、ザワザワと押し寄せて
       くる錯覚に襲われた。



    故機長夫人「私はどんどん歳をとって、おばあちゃんになっていくんですよね。亡くなった
           ‘あの人’と・・・勿論、乗客乗員の方々もですけどね・・・あの当時の面影は
            ずっと心の中に消えることないんですよね。」


    白矢義参 「生きているかぎり、私も同様ですよ。時間の流れを止めることはできませんからね。」


    故機長夫人「最近ね、遺影の前でね‘あなただけ、いつも若いなんて、ズルイわ’って話し
            かけるんですよ。‘安心しなさい、いつもお前を守っているから’
            そんな言葉が帰ってくればいいんですけどね。」


    白矢義参 「・・・じゃ、奥さん、いつまでも お元気でね・・・」

    故機長夫人「ええ、白矢キャプテンも。お仕事 頑張ってください。」

    白矢義参 「はい、ありがとうございます。じゃ、また逢いましょう!」



       故機長夫人は、白矢 義参キャプテンの後姿を見送りながら、亡き夫のすがたを
       重ね合わせていたのかもしれない・・・





      
       その数日後、彼女は不思議な夢を見た。何故か、空に四つの輪が拡がっていた。
       ぼんやりと・・・しかし静かに微笑んでいる亡き夫のすがたを見たような気がした。

       『・・・4つの命しか救えんかった・・・すまんな 』

       そのような言葉を語りかけてきた彼の影は、はるか空の彼方へと消えていった。

       『あ・な・た・・・お願い、行かないで!・・・あなたぁぁぁ・・・』



       夢中で追いかけようとするが、思うように体が動かない。・・・はっと目が覚めた。
       気がつくと一人寝室の暗闇の中にいた。となりの部屋の天井に灯る小さなマメ電球が
       目の中で にじんで見えた。とめどもない涙があふれていたのだった。

       しかし、何か暖かいものに包まれているような妙な感覚が不思議だった・・・
      





        ―――― シアター間奏曲 ―――― 

         ♪ 雪月花
                歌:松任谷 由美   






                             <第27幕につづく>



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