岐阜羽島駅
県内唯一の新幹線駅に貼られた「政治駅」のレッテル
2014年07月23日
東海道新幹線を管轄する東海旅客鉄道(JR東海)の本社所在地にして、中部地方の中心都市・名古屋の一つ大阪(下り)寄りの駅。
名古屋始発の列車を滞泊させたり、更に下った先の積雪地帯・関ヶ原でのダイヤ乱れに対処するため、2面4線のホームが上下の通過線を挟む形で配置されており、東海道・山陽新幹線で同じ規模の駅は当駅以外にない。
新幹線網全体を眺めても、福島(東北新幹線)・高崎・越後湯沢(以上、上越新幹線)の4駅のみとなってる。
ただし開業時点では、上りホーム1線が準備工事の状態で通じておらず、1979(昭和54)年に増設。1番線の奥だったことから珍しい「0番線ホーム」となっている。
東海道新幹線の開業当初(1964年)から開設されている駅だが、その当時は駅前に商店や人家がなく、ただ田んぼが広がる中に最新鋭の高速鉄道駅が所在無げに佇む状態だった。
1982(昭和57)年に名鉄羽島線が乗入れ(名鉄の駅名は「新羽島」)、県都の玄関口・岐阜駅へ接続するルートができたが、東京方面から岐阜へ出る場合は「のぞみ」が停車する名古屋から在来線に乗り継いでも然程時間が変わらないため、割高になる新幹線~名鉄線の乗継き客は多くない。
所在地も岐阜市ではなく、南側の羽島市。その羽島市の中心部からも外れているこの地に、新幹線駅が忽然と出来た経緯について様々憶測がなされてきた。
駅前広場に地元選出の大物国会議員・大野伴睦夫妻の銅像が設置されていることから、政治家が無理繰り「我田引鉄」で新幹線駅を誘致した……というストーリーが実しやかに語られてきたが、実態は違う。
東京オリンピック開幕までの開業を目指し、急ピッチで建設が進められた国家プロジェクト・東海道新幹線。軌道が敷かれる岐阜県の行政側が新幹線駅設置の要望を上げるのは当然のこと、事業主体の国鉄側でも公共性や、先に記した通り関ヶ原の積雪対策から岐阜県内に駅を設置する必要性を感じていた。
岐阜県側としては、県庁所在地の玄関口である岐阜駅への新幹線駅併設を求めていたが、それではルートが大きく北寄りに迂回することとなり大阪への到達時間が伸びてしまうのに加え、ただでさえタイトな建設スケジュールが更に遅れるリスクを負ってしまう。
そこで国鉄は一計を案じた。
国鉄側からは駅を造る必要性を一切表に出さず、一方で大野伴睦に地元自治体との仲介を依頼。あたかも政治家(=大野)の尽力で何とか羽島市に一駅造ってもらった……という演出をし、岐阜市内への迂回案を撤回させた、というのが実際のところだったようだ。
国鉄としてはオリンピックに間に合わせるべく、背に腹は代えられない状況下で形振り構わず政治家の力を利用したのだろう。
それだけ新幹線プロジェクトは、今も昔も政界へインパクトを及ぼす出来事なのだ。
しかし晴れの東海道新幹線開業後から、国鉄は慢性的な赤字収支に転落。昭和の末期には解体され、累積債務は莫大な額の税金を投入し清算。鉄道運営は民間会社として再発足したJR各社へと移管されてしまう。
国鉄を苦しめた債務の原因は、地方選出の政治家が要求した、明らかに採算の取れないローカル線の建設費用負担だった。
国鉄が頼った政治力は、結局国鉄自身を破滅に追いやることとなる。
岐阜県内にたった一つしかない新幹線駅が「政治駅」と批判されるなら、開設が確定している未開業駅(執筆時点)をふくめ岩手県・新潟県に7駅、静岡県に6駅、広島県・山口県・福岡県に5駅も新幹線駅がある状況を、どう評価すればいいのか。
それぞれの県から選出された有力政治家の顔を、思い浮かべずにはいられない。
新幹線を含め鉄道建設が、政治家にとって魅力的な公共事業であり続けるうちは、やはり「政治駅」も造られつづけることになるのだろう。
住所: 岐阜県羽島市福寿町平方645-1 ※電話番号は車イス利用受付専用
電話 : 058-391-3045
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