オデッセイ購入録(その5:最終話)

散歩から戻って一息付いた時だった。

家の電話が、突然鳴った。
さっきのディーラーの店員だった。

「驚かずに聞いてください」
彼はそう前置きして話し始めた。

今日(9月13日)が決算期の締め日であること。
よって、今日決めてくれたら特別割引をすると言う。

今日が締め日というのは怪しい。
恐らく、他店に行かれないようにする常套句だな。

嫁が居ない今日決めるのは難しい。
まあ、来週決める為の参考値になるな。
軽い気持ちで聞いた。
で、幾ら？

「驚かずに聞いてください」

それはさっき聞いたセリフだ。
どうせ、目標の40万円台に乗るか乗らないか微妙な線を出してくるのだろう。

「他店には、絶対に言わないでくださいね。」

やけに勿体振るな。
で、幾ら？

「あの後、店長にも相談したんですよ。」

だぁかぁらぁ、幾ら！？

「今日決めてくれたら、(ピー)万円値引きします！！」

え。。。今、なんと仰いました？？

耳を疑った。今までのオデッセイの値引き額を10万円上乗せされた額だった。
あれだけ念押しされていたにも関わらず、不覚にも驚いてしまった。

今からもう一度そちらに伺います！！
詳しい話を聞かせてください！！

家を飛び出た僕の手には、何故か印鑑が握られていた。

片道30分の道を2往復。
今度は、足取りは軽い。
行きすがら、嫁に電話して事情を説明する。
計画と違うと愚図る嫁。
では、値引き額が大台に乗ったら決めようという事でなんとか嫁の了承が取れた。

あと3万。。。

店に着くなり粘った。
LEDフォグを付けてもらえませんか？
これが通れば、大台に乗る。
前からつけるかどうか迷っていたDOP。
1時間に及ぶ戦いの結果。。。

ダメだった。

最後に嫁に電話して結果を伝えた。
「わかった。今の条件で手を打ちましょ。でも、色はロッソだからね！
値引き額は譲れても、これだけは譲れないからね！！」
店員に嫁の言葉を伝えた。
今の条件で契約しますとも。

嫁が最後に店員に挨拶とお礼をしたいので、電話を変われという。
電話を店員に渡した。
店員は話しながら店の奥に消えた。

10分後、店員は店長と共に戻ってきた。
その手には契約書が握られてていた。

契約書を確認した。

ん？
あの〜LEDフォグが付いているんですけど。。。

「結婚記念日おめでとうございます！！
奥様からお聞きしました。当店から心ばかりのサービスです。」

乗ったよ大台に。
恐るべしうちの嫁。

そのあとどんな話を店員としたのかよく覚えていない。
気が付けば、僕は店の外にいた。

印が押された契約書と共に。