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2011年12月01日 イイね!

ホールデン プレミア/ステーツマン・ドゥ・ヴィル

今回は、オーストラリアの自動車メーカー「ホールデン」を御紹介すると共に
その車種の中でも特に「プレミア/ステーツマン」について取り上げます。

GM傘下のホールデンは日本ではマイナーな存在ですが、最高級車である
ステーツマン・ドゥ・ビルを、いすゞが輸入し「いすゞステーツマン デ・ビル」という名で
自社ブランド車として販売したことがあります。

マツダはインターミディエートのプレミアのボディのみを輸入し、自製のロータリーエンジンを
搭載した上で「ロードペーサー」として販売したことなど、日本とは少なからぬ関わりがあります。

またホールデンもGMグループ内の国際提携の一環として、いすゞ車を輸入し
ホールデンのディーラー・ネットワークを通じて販売していました。

これは英国連邦の一員であるオーストラリアが右ハンドル圏であることが、同じ右ハンドル圏で
ある日本にとって、輸出・輸入のいずれに於いても有利であることから生まれた提携でした。

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それではまず、おおまかにホールデンの歴史を御紹介致します。

ホールデンはオーストラリア唯一の民族系メーカーで、その創業は1856年に遡ります。
創業当初は自動車ではなく、その前身とも云うべき馬具の製造を行っていましたが

時流に合わせて1925年には自動車の生産を開始します。
この頃は自動車がまだ「馬無し馬車」と呼ばれていた黎明期です。

1931年、世界各国への進出を積極的に推し進めていたGMの傘下企業となり
まずはシボレーのノックダウン生産を開始しました。
1940年代に入るとノックダウン生産の経験を基に、より国情にマッチした
独自モデルの開発・生産へと移行していきました。

広大な国土を持ち、なおかつその殆どが未開の荒野(アウトバック)であるオーストラリアの
国情にあわせて、大柄なボディに大排気量という組み合わせのクルマが求められましたが
それらの成り立ちは、良く似た環境を持つ当時のアメリカ車の性格と非常に近いものでした。

オーストラリアに於いては、その国土の広大さゆえに公共交通機関があまり発展しておらず
クルマはステータス・シンボルなどではなく、必要不可欠な生活必需品であり
比較的廉価なクルマが主流となっています。

民家ひとつない荒野でのトラブルは生死に関わる問題なので、高級であることや高性能である
ことよりも、頑丈で修理が容易であることが求められています。

戦後、GMグループ間に於ける車種の相互供給が進み様々なモデルが生産されるようになります。

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さて、日本との関係が最も深かった1970年代のホールデンのラインナップを御紹介致します。



こちらは小型車のトラーナです。
同じGMグループの英国ヴォクスホールのヴィヴァをベースとして、ホールデンで独自デザインの
ボディを被せたトラーナですが、そもそもヴィヴァ自体が西独のオペル・カデット(カデットC)を
ベースとしていた為、GMファミリーの一員らしいスタイルを持っています。



その顔付きや全体のフォルムからは、シボレー・シェビーⅡとの近似性も感じられます。

トラーナは、1967年のデビュー時点では1.2ℓのOHV4気筒のみでスタートしましたが
1970年に2.6ℓOHV6気筒が追加され、1974年にはオペル製1.9ℓSOHC4気筒が追加。
さらにOHV6気筒エンジンに加え、OHV・V8の4.2ℓ及び5ℓまでもが搭載されました。

寸法的にはトヨペット コロナ・マークⅡとほぼ同じに過ぎない小さなボディに
5000ccという大排気量の組み合わせは、アメリカ車的な性格と云えるでしょう。

1975年からはワールドワイドTカー、オペル・カデットの日本版である
いすゞジェミニを輸入するようになります。

1976年には4気筒車が独立モデルに昇格、サンバードというペットネームを与えられます。

1978年には西ドイツのオペル・コモドーレが導入され、1979年にトラーナが、
続いて1981年にサンバードが消滅しました。

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トラーナの上位モデルとして、インターミディエート(中型車)に相当するプレミアがあります。
マツダ・ロードペーサーのボディ・シェルはこれを使用しています。

日本でも御馴染みの顔付きですが、ロードペーサーではなく本国仕様のプレミアです。



リヤはかなり傾斜を付けたセミ・ファストバックスタイルで、パーソナルな性格が強調されています。
ステーツマンではCピラーが起こされて、明確なノッチバック・スタイルを採用しています。

標準ウィールベースのプレミアは、オーナードリブンのパーソナル・カー/ファミリー・カーとしての
性格を強調するスタイリングで、ロング・ウィールベースのステーツマンは後席を重視した
ショーファードリブンと、役割分担を狙っていたことがわかります。

この角度から見ると、フロント・ドアに比してリヤドアが短いのがよくわかります。



ホールデン プレミア(1975年モデル 型式HJ)

エンジン:直列6気筒 OHV シングルキャブ 3298cc 92.1×77.8mm 9.4:1
137ps/4400rpm 26.8mkg/2000rpm

ボディ:モノコック 4ドア・セダン 最小回転半径:6m
駆動方式:RWD 3段MT/AT コラム ステアリング:ボール循環式

サスペンション:前 独立 ダブルウィッシュボーン/コイル 後 固定 4リンク/コイル
ブレーキ:前 ドラム サーボ 後:ドラム サーボ タイヤ:6.95-14

寸法:全長4840×1880×1370mm ウィールベース:2819mm トレッド:前1510 後1530
燃料容量:75ℓ 車輌重量:1390kg 乗車定員:6名 最高速度:155~165km/h

インターミディエートのラインナップは、セダンが下位グレードからベルモント/キングスウッド/
プレミアとなっており、2ドア・ハードトップクーペと4ドア・セダンの2種のボディが用意された
モナーロには、スポーツモデルたるGTSが設定されています。
モナーロ・クーペには、ラクシュリーなLSとスポーティーなGTSの2グレードが用意されています。

エンジン・ラインナップは、小型車のトラーナと共通のOHV6気筒の2834cc/118psがベルモントに、
キングスウッドとプレミア及びモナーロLSクーペには3310cc/135psが設定されています。

スポーツ・グレードのモナーロGTSセダン/クーペには
オーストラリア製4146cc/185psのV8・OHVエンジンが奢られています。


こちらがスポーツグレードのGTSで、4ドアセダンと2ドア・ハードトップクーペの2種がありました。

ブラックアウトされたライトベゼル、ウィンドウサッシュ、フロント・グリルで睨みを効かせ
5スポーク・ウィールやレーシーなストライプで飾っています。
フロントフェンダーには、高性能を主張する3連の放熱スリットが刻まれています。



リヤビューでは、2ndカマロのようなトランクと一体化したリヤスポイラーが特徴的です。



アメリカ車に倣って、毎年デザインを変更するイヤーモデル制を採っていた為
顔付きは頻繁に変更されました。
こちらは丸型2灯ヘッドライトを採用したキングスウッドです。



インターミディエートには4ドア・セダンと2ドア・クーペ、ステーション・ワゴンに加え
セダン・ピックアップなど、豊富なボディ・バリエーションが用意されていました。

こちらは、オーストラリアで人気の高いステーション・ワゴンです。
このボディに13Bロータリーを載せれば「ロードペーサー・ロータリーワゴン」が作れます。



プレミアはオーナー・ドリブン向けのファミリーカーであり、装備類も決して豪華とは云えません。
4840mmという全長に対して、ウィールベースは2819mmと比較的短めなことがわかります。

センチュリーの全長4980mm/WB2860mm、プレジデントの全長5280mm/WB2850mmと
比して短く、後席重視のショーファー・ドリブンとしては不向きであったと言わざるを得ません。

また、前席を優先した作りとなっており、日本に於いて競合することになるセンチュリーや
プレジデントが後席を広くとっているのとは正反対でした。

マツダが、それでもステーツマンではなくプレミアのボディを選んだのには
センチュリーを大きく越え、プレジデントに迫らんとするステーツマンの巨体が
日本国内での販売に不利であることや、オリジナルのV8エンジンと比して低速トルクに
劣るロータリーエンジンとの適正を鑑みての判断であったと推測されます。

プレミアの車重が1390kgなのに対し、ステーツマンでは豪華装備の増加も影響して
1575kgとかなり増加しています。
ちなみに豪華装備で満艦飾としたセンチュリーは、ボディサイズはプレミアと
ほぼ同じながら車重は実に1875kgにも達します。

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そして、ホールデンの旗艦として君臨する最上級車種が「ステーツマン」です。

ステーツマンは、インターミディエートであるプレミアのウィールベースを延長し後席の
居住性を向上させ、内外装を豪華に仕立て上げたモデルです。



リヤも独自のデザインが施され、プレミアの台形に対して
よりフォーマルな印象を与える縦長のテールレンズとなっています。

緩やかに傾斜した平坦なトランク・リッドが、ピンと張ったリヤフェンダーの峰を
強調する効果を発揮しています。

縦長のテールレンズは、キャディラックやオールズモビルといった高級車の象徴とも云うべき
デザインで、ホールデンの最高級車に相応しい格式高いアピアランスを魅せています。

切り立ったリヤ・ウィンドウは、セミ・ファストバックのプレミアよりも落ち着いた格式高いもので
ショーファードリブンにとって重視される、後席のヘッドクリアランスの確保にも役立っています。
また、プレミアよりもロングデッキに見せる視覚効果も持ち合わせています。



彫りの深い2分割グリルや、奥まった位置にレンズが収まるテール・レンズの配置は
1970年型オールズモビルの影響が感じられます。



こちらは1971年型ポンティアックで、独立したグリルや4灯を離して配置するヘッドライトなどは
当時GMが好んで採用したデザインでした。
GM傘下のホールデンもその例外ではなく、同じ系統のデザイン・トレンドを身に纏っています。



以下の2つの動画は、ステーツマンのアドバタイジング・フィルムです。
まずは1971年~1974年までの、2分割グリルを備える前期型(HQ)です。

いすゞステーツマン デ・ビルは、この前期型がベースとなっています。
オーバーライダーが備わらないことから、ステーツマン ドゥ・ビルと思われます。



続いては、クラシックな角型センターグリルを与えられた74年以降の後期型(HJ~HX~HZ)です。

この車輌はステーツマン カプリースで、もともと豪華な仕上げのステーツマン ドゥ・ビルに
エアコンディショナーやパワーウィンドウなどを標準装備とした最上級モデルです。

前後バンパーに、大きなオーバーライダーが備わっている点が識別点です。



ホールデン ステーツマン・ドゥ・ヴィル(1977年モデル 型式HZ)

エンジン:V8 OHV シングルキャブ 5044cc 101.6×77.77mm 9.7:1 
235ps/5000rpm 44.3mkg/3400rpm

ボディ:モノコック 4ドア・セダン 最小回転半径:6m 
駆動方式:RWD 4段MT/3段AT コラム/フロア

ステアリング:ボール循環式 サスペンション:前 独立 ダブルウィッシュボーン/コイル
後 固定 4リンク/コイル ブレーキ:前 ディスク サーボ 後 ドラム サーボ

タイヤ:6.95-14 寸法:全長5180mm×全幅1880mm×全高1370mm 
ウィールベース:2895mm トレッド:前 1510 後 1530

燃料容量:75ℓ 車輌重量:1575kg 乗車定員:5/6名 最高速度:170~195km/h
ドゥ・ヴィル:10,813オーストラリア$ カプリース:15,819オーストラリア$ 

ベースとなったプレミアのWB2819mmに対して、ステーツマンではWBが2895mmとなり
76mm延長されていますが、全幅や全高に変更はありません。
延長された76mmは、後席のゆとりの為に費やされています。

サスペンションや機関系も基本的にも共通となっており
主な違いは装備面や外装の装飾品に集中しています。

エンジンは下位モデルとも共通するワイド・バリエーションで、直列6気筒OHV2.8ℓ/3.3ℓ
及びV8 4.2ℓ/5.0ℓが用意されていました。
トランスミッションはGM製ターボ・ハイドラマティック3段ATを組み合わせています。

タイヤはドゥ・ヴィルがE78S14、カプリースがFR78S14を奢っていました。

ステーツマンは4ドア・セダンの1ボディで基本となるドゥ・ヴィルと、より上級志向の
カプリースの2車種が設定されていました。
ボディそのものは基本的に共通ですが、カプリースは前後にバンパー・オーバーライダーが
備わる為、全長が26mm長くなっています。

バリアブル・レシオのパワーステアリングは両車とも標準装備ですが、豪華仕様の
カプリースには、さらにエア・コンディショナーとパワーウィンドウが標準装備となります。

いすゞステーツマン デ・ビルは日本での販売を鑑み、オーバーライダーが備わらず全長が短い
ドゥ・ビルをベースに、最高級車に相応しいカプリース用の各種豪華装備を標準としています。

日本ではまず見かけない車種であり、認知度も低いですが
本国豪州では高い人気を誇り、現存車も多く確認されています。

精巧な造りのミニチュア・カーも販売されています。



それでは、ここで御紹介したホールデン・オリジナルのモデルを踏まえた上で
”国産版”である、いすゞステーツマン デ・ビルとマツダ・ロードペーサーを御紹介致します。
Posted at 2011/12/01 00:03:58 | コメント(11) | トラックバック(0) | GM | クルマ

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