オートモビルカウンシル2025、展示車の紹介を続けます。国別ではなく、これはと思った車をランダム的に紹介していこうと思います。
コロナ禍も乗り越え、回数を重ねるごとに順調に規模を拡大しているこの展示会。今回もすごい車がたくさんありました。国内メーカー(トヨタ、マツダ、三菱、日産、ホンダ)も公式ブースを用意していました。
まずは世界トップのメーカーとして好調を維持するトヨタ。
トヨタ 4500GT(1989年)

そのトヨタがかつてのバブル期に計画した2プラス2の高級クーペ。そのネーミングからも、かの名車「2000GT」の直接的後継車とも言われました。発表は日本ではなくドイツ、フランクフルト・モータショーでした。この車はその出品車そのものとのことです。

このスタイルはとても個性的。写真では少々ぼってりとした印象があるかも知れませんが、実車は凝縮感があり不思議な威圧感すら感じます。CD値は0.29と、当時としても非常に低い空気抵抗係数を誇ります。

心臓部には当時最新の「1UZ-FE」V8エンジンを。初代セルシオ(レクサスLS400)に積まれたものを4500ccへ排気量アップしています。時速300kmで4人の乗員を快適に…という、その名の通りの「GT」。いや、もはやスーパーカーのスペックです。

テールレンズのひび割れに年月の流れを感じます。

残念ながらバブル崩壊もあって市販はされず、幻に終わりました。しかし続く市販車へフィードバックされたものは大きかったと思います。インパネのデザインは2代目スープラがそっくりの意匠を採用しています。
トヨタ スープラ A80系

こちらはその80スープラです。

国内向けとしては「2代目」ですがスープラそのものとしては4代目?ちょっとややこしい。

後期型ですね。後期型は前後フェンダーにマーカーが付き、北米仕様に近い見た目です。

80スープラには一度乗せてもらった経験があります。速いうえにかなり快適でもありました。完成度が高いんでしょうね。
トヨタ スープラ A70系

そして先代にあたる70スープラも。豪華なGTとしてのポジションにはこのモデルで到達したという印象です。

ここの2台の旧いスープラは、トヨタ自身の手によって徹底的なレストアがなされています。隅々までまるで新車のようです。若いスタッフからの熱心な説明を聞きながら、ちょっと嬉しくもなりましたね。

A70スープラといえば、高市早苗新首相が22年間乗り続けた車でもあります。車好きの女性がトップになり、さっそくガソリン価格が下がるとのこと。さすがです。
トヨタ GRスープラ(2025年)

そしてこちらは最新モデル。BMWとのコラボで産まれた1台で、インテリアなどBMW色が色濃いのは事実ですが、それでも「スープラ」としての魅力にあふれていると思います。

残念ながら今年2025年で生産終了…オーナーは大切に乗り続けて欲しいと思います。
トヨタのブースには、最後にとっておきの1台がありました。
トヨタ セリカ 初代

初代セリカです。この新車のような1台。まさにトヨタ自身が新車レベルまで復活させたのだそうです。

欠品した各パーツは、驚くことに部品メーカーではなくトヨタが図面から作り直したのだとか…

リアランプユニットは、傘下のランプメーカーに依頼するのではなくこれもトヨタ自ら作ったそうです。

なぜそこまで?と聞いてみたところ、「車を作ることの大変さを忘れないためのチャレンジ」と。

運転席に座らせていただきました。ピンぼけですみません…興奮で手元が狂ってしまったのです。

シートは柔らかく(そのシートもトヨタ制作)、低いポジションですが細いピラーなどもあいまって視界は良好です。足元も広かった。フットレストはありませんが別に問題という気もしませんでしたね。

トヨタというメーカーの強さを実感した時間でもありました。
次はマツダを。
マツダ S8P(1964年)

これはマツダがベルトーネに依頼した試作モデル。当時所属していたジウジアーロの手によるデザインです。

角目2灯に見えますが、実際には丸目4灯。カバーが被されています。

非常に洗練されていて、繊細で、まるでフィアットかアルファロメオあたりの上級サルーンです。トリノで制作されたこのモデルは広島に送られ、このスタイルを踏襲して初代ルーチェが登場しました。

「ルーチェ」は「光」という意味だそうですが、この広いグラスエリアはまさにその名を象徴しています。

しかしというかやはりというか、当時の日本で欧州的デザインは難しく、2代目ルーチェは一転してマッチョなアメリカンスタイルになります。
ユーノス500(1992年)

この車の素晴らしいスタイリングは現役当時から絶賛されていましたね。にも関わらずマツダは経営危機を迎えてしまいますが、このデザインコンシャスっぷりは今も続いているわけで、もはやマツダの血筋かも知れません。

上級モデルのマツダ・センティア/アンフィニMS-9などとも共通した方向のデザインだと思いますが、このユーノス500は凝縮感というか塊感が強く、コンパクトながらとても印象に残ります。細かいところですが、リアフォグランプを装備した国内セダンということでも当時は異色だった記憶があります。

この凝縮感、のちの「魂動」デザインにつながるのでしょうか。
VISION COUPE(2017年)

その魂動デザインによるデザインコンセプト。もう8年前ですが、未だに古さを感じさせません。
魁 CONCEPT(2017年)

こちらは現行「3」(旧名アクセラ)のデザインコンセプトですね。

他のメーカーでは生産性や視界の面などアレコレ理由を付けられてお蔵入りしそうなものですが、マツダはほぼこの方向で実際に世に出した。マツダ3、後方視界など欠点があるのは事実ですが今なお国産小型ハッチとしてはトップレベルに魅力的な車だと思います。
先駆(2005年)

この頃から、マツダはコンセプトモデルに漢字を使い始めたように思います。

真横から見るとよく分かるのですが、この車は超ロングホイールベースです。4座のロータリースポーツというコンセプトでした。現状、ロータリーエンジンの復活は難しいようですがなんとかその技術は残して欲しい。
三菱です。
三菱 デボネア(1964年)

三菱の最高級車として君臨したデボネア。初代はその長寿っぷりから「シーラカンス」とも言われましたね。じっくり見ることができたのは久しぶりですが、正直、むちゃくちゃカッコイイです。

自社の最高級セダンをつくるにあたり、三菱にはフィアット1800セダンをノックダウン生産する計画もあったとか。結局は自社開発を実現するわけですが、もしフィアットとの交渉が成功していたら三菱グループの偉い人たちはイタ車の後席をくつろぎの場にしていたわけか。

説明員の方がドアの開閉音を聞かせてくださいました。「コトン」と、まるでイギリスの高級車のようなドア音でしたね。このデボネアは最初期型で、L字型で赤一色のリアランプ(いわゆるワンテール)が特徴。

GM出身のデザイナーを招き作られたこのスタイルは、5ナンバー枠とは思えない堂々としたものです。とはいえ、その車幅縛りに苦労したという話も伝わっています。ボディサイドの切り立ったエッジはアメリカ車風であるとともに、限られたサイズで高級車らしい風格を出すことに成功しています。
三菱 ギャランGTO MR(1970年)

今となってはもう数えるほどしかない国産スポーツクーペ。三菱にもこういう車がありましたね。一見、走り一辺倒の硬派な車にも見えますが、居住空間もきちんと確保されていることは外からでもよく分かります。実用性を重視するのは三菱の長所です。昭和45年式…それにしては同年代の他車種と比べ5年くらいデザインが新しいように思います。

初期型で、これもワンテール。ブレーキランプとウインカーが兼用の赤一色テールは安全性に問題ありでしょうけど、旧車らしいのはやはりこちら。

三菱のスポーツモデルって、先進性とワルっぽさが共存した独特の雰囲気があると思います。これはトヨタとも日産とも違う。
三菱 ギャラン・ラムダ スーパーツーリング(1979年)

ギャランの高級2ドアクーペ。フロントグリルに「Astron 80」のエンブレム。これは搭載エンジンのこと。当時の三菱は星にまつわる愛称をエンジンに付けていました。車名かグレード名にしか見えないという感じもします…

ピラーレスのクーペは流麗で贅沢な印象を受けます。今や世界的に絶滅危惧種でもある。伝統的にこの形式を採用していたSクラスクーペも消滅してしまった。

フェンダー先端の側面ウインカーは位置が先端過ぎる気もしましたが、この角度から見るとちゃんと機能しそう。それにしてもギャランって車種は実に幅広いレンジを担当していたんですね。トヨタで言えばコロナからソアラまで?
三菱 ディアマンテ(1990年)

個人的に、とても懐かしい初代ディアマンテ。物品税が存在した当時、トヨタや日産が5ナンバー枠にとらわれる中、税制改正のタイミングでイチ抜けたとばかりに3ナンバー枠のボディで登場した上級セダン。これは三菱セダンとしては考えられないほど(失礼)、大ヒットしました。街中でも本当によく見かけましたね。

1775mmという車幅、当時は相当にワイドに見えましたね。ディアマンテと比べると、5ナンバー縛りのために車幅を抑えた他の競合車はかなり貧弱に見えたのも事実。CMコピーの「あの車とは違う」というのは確かでした。

初代ディアマンテには2度ほど乗せてもらったことがあります。凝ったデザインのインパネと重厚な乗り心地、そして横方向の余裕を今でも覚えていますね。
三菱 HSR-Ⅱ(1989年)

第26回東京モーターショーで発表されたコンセプトカー。

「HSR」とは?「ハイ・ソフィスティケーテッド・トランスポート・リサーチ」の略とのこと。なんか凄いです。21世紀に向けて、安心で安全かつ新しい交通巣ステムに対応した車…と。それがこのスーパーカー。

各種電子制御はもちろん、追尾走行や自動車庫入れのシステムまで備えているそうです。1989年ですよ?ホントに凄いなぁ三菱…
三菱 トレディア スーパーシフト(1990年)

こちらは「DUPRO」が展示していたトレディア。そういやそんな車もあったっけ感が強い…いやいや、今となってはとても貴重な三菱車。シフトレバーが2本生えています。副変速機付き。まるで本格クロスカントリー車のようです。

4速のギアを「POWER」「ECONOMY」2段で切替えられる。4X2の8速マニュアル!ただ、操作はとても難しいそうです。

ルノーを思わせるシンプルなこのセダンが、他にはない凝ったトランスミッションを搭載している。三菱の車は実におもしろいです。
日産です。
プリンス スカイラインスポーツ(1960年)

こちらは日産自動車公式ブースが展示していた1台。日産が大切に所有する、トリノショーに出品された車そのもの。以前からこのブログでも何度か取り上げていますね。なお、奥の人垣は来日しているジョルジェット・ジウジアーロ御大のサイン会です。

この車はトリノの工房で製造されており、日本製ではありません。もちろん量産型は国内製造。量産といってもほんの60台ほどです。

日産自動車は現在苦境に陥っていますが、今年もこの展示会に参加しています。去年と比べ規模はだいぶ縮小しているものの、これは嬉しいことです。日産を応援している人はたくさんいます。それに応えて復活してほしい、本当に。
ダットサン ブルーバード 1200デラックス(1964年)

ピニンファリーナに委託したこのスタイルはとても洗練されています。アメリカ車調そのものだったトヨタ・コロナとはきわめて対照的です。車自体も、軽量化と高剛性の両立を図るなど進んだ設計でした。

ただ、その欧州スタイルは当時は不評だったそうですね。特にこの尻下がりのリア周りなど。私はとても良いと思うのですけどね。このシンプルなリアランプも素晴らしいです。しかし尻下がりってどうして日本国内でずっと不評だったんでしょうね。トランクにものが入らなそうだから?今では空力の追求だとかクーペルックの流行とかもあって尻下がり的デザインが普通になっているような…というかそういう意識もないか。ベンツの現行Sクラス(W223)なんて、尻下がりそのものです。
日産 マーチ コレット(1985年)

これは懐かしい初代マーチ。初代マーチもジウジアーロによるデザイン。直線基調という点は一連のジウジアーロ作の小型車と共通していますが、このマーチには当時の日産らしさもある。

ターボとスーパーチャージャーを一緒に備えたスーパーターボ、それにBe-1やパオ、フィガロといった派生パイクカーなどバリエーションも豊富でした。今の日産に必要なのは、この初代マーチのような傑作小型車でしょう。
GT-R 50 by Italdesign(2021年)

これはまたすごい車です。R35をベースに、その名の通りイタルデザインが仕立てた車。世界限定50台。お値段1億円超!これはハイパーカーでいいですよね。大迫力です。

リアの造形。これカーボンですよね。丸型テールの造形が、かつていろいろなメーカーで流行した戦闘機イメージの取り込みを彷彿とさせます。先鋭的かつ、どこかノスタルジックな印象も受けました。
日産 スカイライン2000 GT-R(1972年)

こちらは「ヴィンテージ宮田自動車」、新旧スカイラインGT-Rです。

フルレストア済みの最終型ハコスカ。この白いペイントはオリジナルだそうです。

内外装ともに完全に仕上げられていますが、過剰なほどにピカピカにしているわけではなく車そのものの歴史も感じさせます。見事です。
日産 スカイライン2000 M-Spec(2002年)

こちらもR34のGT-Rとして最終モデル。フルオリジナルで、走行距離はたったの3.5万キロ。

「国内オーナー求む」とのショップの声がありました。確かに、この1台はずっと日本にいて欲しいと思います。
日本車勢はあとホンダが公式ブースを出していて、すべての歴代プレリュード&最新プレリュードを並べていましたがうっかりスルーしてしまいました…なんという不覚!
ランダムといいつつ日本車でまとめてしまいました…
ではロールスロイスを2台。今回、2台の極上コーニッシュがそれぞれ別のショップで展示されていました。思わず見入ってしまいましたね。
ロールスロイス コーニッシュ シリーズⅠ(1972年)

こちらは白のシリーズⅠ。「ガレージイガラシ」からです。

これがシリーズⅠ?思った方はマニアですね(笑)
コーニッシュのシリーズⅠって元々はクロームのアイアンバンパーを装備しているのですが、この車はそれをシリーズⅡのものに交換しています。素人目にはシリーズⅡと区別が付きません。ペイントはオリジナルのカラーコードで塗り替え、幌も新品に張り替え済みとのこと。内装もシートやウッドパネル、トリム類を全面的にリペアしています。

なおここでトリビア。「コーニッシュ」というモデル名は元々ベントレーのものでした。
ロールスロイス コーニッシュ シリーズⅡ(1989年)

そしてダークグリーンのシリーズⅡ。「Kitasando garage」での出展です。

偶然ですがどちらも右ハンドルです。このシリーズⅡはコーンズの正規輸入車ですね。当時の日本で右ハンドル仕様のコーニッシュはむしろ珍しかったはずです。

大柄のボディですが車内は案外タイト。エアバッグ装備前のクラシカルなステアリング。分厚いシート、そそり立つ豪華なウッドパネル。まさに究極のパーソナルカーですね…
←続きます。