1965年に当時のフォード社副社長だったリー・アイアコッカは、1967年にモデルチェンジが予定されていた第5世代のフォード・サンダーバードをベースとして、ロールスロイススタイルのグリルを装着したパーソナルラグジュアリークーペを企画するよう指示し、コンチネンタル・マークIIIが誕生します。
ミシガン州のウィクソム工場で生産を開始したコンチネンタル・マークIIIは、フォード・サンダーバードを約140lb(64 kg)上回る4,866lb(2,207 kg)の車重がありましたが、リンカーン・コンチネンタルと共通の365bhpを発生するフォード385シリーズ460cu in(7.5L)のエンジンにより、十分な動力性能を備えていました。
コンチネンタル・マークIIIはデビューした当初、メディアではさんざんな評価がなされましたが、1971年までの3年間、ライバルであるキャデラック・エルドラードとほぼ同数を販売し、その高い利益率と相まって著しい商業的成功を収めました。
1972年には、マークシリーズの第二世代であるコンチネンタル・マークIVが、兄弟車である第6世代のフォード・サンダーバードと共に発売されました。
1972年 フォード・サンダーバード
コンチネンタル・マークIVは一層のコストダウンを図るために、フレームだけでなくルーフラインとドア、インナーボディパネルをフォード・サンダーバードと共用していましたが、よりシャープなエッジのフェンダーとロールスロイススタイルのグリル、バキューム開閉式のヘッドライトカバー、 コンチネンタルスペアタイヤスタイルのデッキリッド等、コンチネンタル・マークIIIからの伝統的なスタイルをうまく引き継いでいました。エンジンはコンチネンタル・マークIIIから引き続いて365bhpの460cu in(7.5L)が搭載されています。
また、この年から全てのグレードでバイナルトップが標準装備となり、クォーターピラーにはオプションでオペラウインドウが設定されました。このオペラウインドウは1983年にコンチネンタル・マークVIが生産を終了するまで、コンチネンタル・マークシリーズに継続して採用されることになりました。
1972年 コンチネンタル・マークIV(前後とも5mphバンパーが装備されない唯一のモデルイヤーでした)
1973年になると、米国国道交通安全局(NHTSA)の規制により、フロントエンドに5mphバンパーが装備され、オプションだったオペラウインドウは全てのグレードで標準装備となります。また、この年からEPAの排ガス規制が始まり、触媒装着に伴う無鉛ガソリンに対応するため、圧縮比が落とされたエンジンの出力は、同時に開始されたSAEネット馬力での表示と相まって、212hpに低下しています。
1973年 コンチネンタル・マークIV(フロントには5mphバンパーが装着されています)
1974年、リアエンドにも 5mphバンパーが装備されたのに伴い、テールランプがバンパー内から車体側に移設され、 ブレーキブースタが真空式から油圧式に変更されました。また、新しいフルトランジスタ点火システムによって、機関出力は220hpに向上しました。
1974年 コンチネンタル・マークIV(この年から前後とも5mphバンパーが装着されます)
1975年には4輪ディスクブレーキが標準となり、スピードコントロール、チルトステアリングホイール、パワードアロック、リモコントランクリリース等の新たなオプションが設定されました。
1975年 コンチネンタル・マークIV リップスティック・エディション
1976年、マークIVの最終年度です。この年は、ますます厳しくなる排ガス規制の影響で、エンジンの出力が202hpに低下しましたが、4種類の「デザイナーズシリーズ」特別版オプションパッケージが新たに導入されました。デザイナーズシリーズは、当時のトップファッションとジュエリーデザイナーである、Bill Blass、Cartier、Givenchy、Emilio Pucciの各ブランドを冠した4種のスペシャルエディションで、オペラウインドウに各デザイナーブランドのロゴが配されており、各々のボディカラーは下記のような組み合わせとなっていました。
シリーズ名 | ボディカラー | トップ&モールカラー |
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Bill Blass | ダークブルー | クリーム |
Cartier | ダブグレー | ダブグレー |
Givenchy | アクアブルー | ホワイト |
Emilio Pucci | レッド | シルバー |
1976年 コンチネンタル・マークIV カルティエ・エディション
1972年からの5年間、コンチネンタル・マークIVは常にキャデラック・エルドラードの販売台数を上回り、空前のヒット作としてフォード社の歴史にその名を刻みました。
そして、1977年、マークシリーズの第三世代となるコンチネンタル・マークVにバトンタッチします。
1977年 コンチネンタル・マークV
次回からは本稿の主題である、コンチネンタル・マークVについて書いていきたいと思います。