『白ゆき姫殺人事件』

ず～っと気になっていた映画でしたが、劇場へ脚を運ぶ事に躊躇してました。
近所のシネコンでの上映が最終日となった今日、勇気を出して観に行きました。

なぜこれほど観に行くのをためらっていたのかというと、原作が湊かなえ女史だからです。
このひとの小説は一冊も読んではいませんが、原作の映画化作品は何本か観ています。
どの作品観ても、この作者が描いている本質部分を感じ取れて、それが常に琴線を刺激してきます。
四半世紀を越え半世紀に近い時間を生きてきて、ココロの大部分に鎧をまとい、ちょっとやそっとの事では心が傷つかないようになっているハズなのに、湊かなえ女史の作品の本質部分はその鎧の隙間から自分の心の一番弱い処をえぐってきます、いつも。

この映画化作品は従来型の日本映画らしい演出手法でしたが、自分が感じている湊かなえ作品の本質部分は健在でした。
岩井俊二監督の『リリィ・シュシュのすべて』のようなスタイリッシュさが映画化に際してあれば、もの凄い作品になっていたでしょう。
でも、そんな完成体だったら正視もできなかったかも。

いま自由に個人が映像を発信できる時代になりました。
映像を発信するにあたり「映像を意図的に演出できる」事を誰でもが無意識に感じているハズです。
具体的には「編集」による映像演出です。
実は演出の本質は「編集」である事をこの作品は改めて伝えようとしていました。
この点は非常に評価できます。
しかし、現在のインターネット媒体に関しては、リリィシュシュの時から退化してしまった感じです。
リリィシュシュは電子掲示板。今作品では短文投稿。
映画の中にどのようにインターネット媒体を表現させるかという演出方法では、劣っているし退化した感じでした。
それでも満足できる作品となっているのは原作が優れている（であろう）事と同時に、キャストの熱演のおかげかも知れません。
なにげに怪演している生瀬勝久が素晴らしい。
彼の演技がこの作品の監督の意図している事を体現していると思いました。
でも一番の熱演は、主人公を演じた井上真央です。
彼女にぞっこんになりました（汗