飛行第56戦隊、中村少尉戦死。

昭和20年7月9日。
電探情報で敵機来襲を知った、飛行第56戦隊戦隊長古川少佐は焦っていた。
来襲する米軍機の機種が不明だったからだ。



伊丹飛行場にいた56戦隊は3式戦「飛燕」を装備していた。
B-29爆撃機なら、邀撃せねばならない。
P-51戦闘機では、空中退避せねばならない。
対爆撃機戦闘訓練に励んできた56戦隊では、対戦闘機訓練をほとんど実施してこなかった。
空中勤務者たちは学生上がりの「学鷲」ばかりで、戦闘機戦闘は望めない。



そんな古川少佐の心配は的中してしまう。
上昇中の最悪の状況で、敵P-51戦闘機の攻撃を受けてしまった。

17機の飛燕で出撃した56戦隊は、3人の空中勤務者が戦死した。
その中の一人が、中村純一少尉である。



中村少尉はP-51の射弾を受け、落下傘降下。
落下傘を切断され大阪府交野市の水田へ墜落、戦死する。
中村少尉の遺体は地元の看護師に手で清められ、部隊へ帰還。
その後、故郷である鹿児島まで帰る事ができた。
到着したのは終戦の翌日、8月16日であった。



空戦の一部始終を目撃した交野市住民は中村少尉の慰霊碑を建立し、「中村少尉の魂よ、安らかなれ」と祈ったのである。
そんな中村少尉の「飛燕」の一部が見つかったのは2005年。




道路工事中にハ40エンジン、ホ5機関砲、ホ103機関砲、その他部品が大量に発見され、現在は「いきいきランド交野」に保管展示されている。

合掌。