さてさて、そんなわけでPart2です。
2013年あたりからの話になります。
件の325iカブリオレが嫁いで来ることになり、一通り各所の消耗部品をリフレッシュして乗り始めました。
この個体、前オーナーが老紳士だったこともありデッキ以外はフルノーマルでした。
個人的にも、まずはノーマルの状態を知っておくことが大切と考えノーマルの良い状態に戻したわけです。
その際サス周辺に関してはディーラーにて足回りブッシュ・マウント類とダンパーを新品に交換しています。
ある程度クルマに慣れてきた時に思ったのが、「スポーツサスペンションて割には柔らかいな」ということです。
当時のBMWはストロークを生かした乗り味であることは知っていましたし、高速走行時のショック吸収は惚れ惚れするほどでした。
ところが、下手くそドライバーなりにカーブで頑張ると車重に負けている感じが割と感じられるのと、あまり純正スポーツサスという感じがしないな、と思ったのです。
もちろん、E90・87のMスポサスのように硬いを通り越して痛い部類の物と比べている訳ではないのですが・・。
折しもこの時期、現在お世話になっているショップにE90共々よく入庫しており(現在もですが)、何台かE36(どれも偶然にも状態の良いノーマル個体)に乗らせて頂くことが出来ました。
最初に乗ったのが96年の323iで、これに乗った時「あれ、サスの感じが自分のカブリオレとあまり変わらない?」と感じました。
もちろん、車重の違いやセダンとカブリオレのボディの差はあるのですが、サスの雰囲気というか、ロールの仕方やショック吸収の仕方がよく似ているな、と感じたのです。
ここで、「ひょっとして、自分のカブリオレにはスポーツサスペンションが付いていないんではないのか」と疑問に思い始めたのです。
実は、この他にもそう思わせる要素が幾つか出てきていました。
その一つが、新車オーダー時のオプションコード。
車体番号を入力すると新車時のオーダー内容を見られるページがあるのですが、
そこで出てくる我がカブリオレのオーダー内容には、「スポーツサスペンション」のオプションコードが見当たらなかったのです。
ただ、もし「日本仕様」のオプションコードにスポーツサスが含まれてしまっていたら、出てこない可能性もあるのかも、と素人なので考えました。
もう一つが、カタログ類です。
94モデルの325iカブリオレのカタログと、97モデルの328iカブリオレのカタログが手元にあるのですが、そのどちらにも装備内容に「スポーツ・サスペンション」の記述が無いのです。
さらに、2007年頃の旧型車向け純正アクセサリーカタログがあるのですが、その中に「Mスポーツサスペンション」(のE36向け後付キット)というものがあるのです。
この項目に、ti・セダンとともに、「カブリオーレ」の設定があります。
また、クーペは設定がありません。
クーペに設定がないのに、すでにスポーツサスペンションが付いているはずのカブリオレだけ後付キットがあるのは何でだろう、と思うわけです。
また、英国仕様の94モデルのカタログ(スポーツサスは全車オプション扱い)を見ても、日本仕様と全高が同じ(1348mm)なのです。(ただし、スポーツサスによって全高が下がる、とも書いていないのですが)
こんなこともあって色々と悶々としていた時、ショップに1台のE36セダンが現れました。
たまたま縁あって買い取りで入ってきたアヴスブルーのそれは、E36セダンの最終限定車「320i スペシャルエディション」だったのです。
この個体、その後代車として配備されファイナル変更のきっかけを作ったりもするのですが、その話はまた今度ということで。
さてさて、ここで勘の良い方なら既にお気づきだと思います。
このスペシャルエディション(海外ではスポーツエディションとも呼ばれていたようです)、純正スポーツサスペンションが標準装備なのです。
さらに、差し支えない範囲で伺った話ではこの個体もご高齢な方のワンオーナー車で、ホイールがスポパケ標準のダブルスポークに変わっているのとヘッドライト以外はフルノーマルというものでした。
で、その320が代車となりお店に置いてあったある時に店長さんが言う訳です。
「Step-tronicさん、この320乗ってきてみて下さい。割と調子いいですよ。」と。
思いもかけず純正スポーツサスペンション車に乗る機会が訪れました。
お言葉に甘えて当時好きだったアヴスブルーに乗り込み、お店を出て片道15分ほどのドライブ。
運転ヘタクソ鈍感ドライバーの僕でも流石にこう感じました。
「これ、どう考えても自分のと足回りの味付けが全然違う」
ダンパーは抜けかかっていましたしブッシュ類も完調とは言いがたい状態でしたが、
それでも曲がり方がぜんぜん違うのです。
ハンドルを切り始めて外側に車重が乗っかり始めて乗っかり切るまでの動きが、自分のカブリオレや323セダンの「ストン」ではなく「スッ」と自然に行ける。
ハンドルの切り方とロールの仕方がシンクロしている感じ、というのでしょうか。
小難しい専門的な事はよく知らないので上手く書けませんが。
もちろん、軽量なM52エンジン車かつ6発中最軽量の320であること、セダンとカブリオレの違いはありますが、それを込みにしてもこの曲がり方は違いがありすぎる。
ここで感覚としては、自分のカブリオレにスポーツサスペンションが付いていないことは確信していました。
(後に323iクーペ スポーツパッケージに短時間触れる機会があり、同様の感触を得て確信が深まるのですが。)
ただ、本当にそうなのかどうかを確かめるのが難しいと考え始めました。
何か確証が得られるものはないのか、とETKを見ていた時、ふと気付きました。
ノーマルサス車とスポーツサス車でスタビの径が異なる、ということです。
M3以外のE36は、ボディ形状やエンジンに関係なく基本的にスタビの径(というか品番)は共通になっていることがわかりました。
ノーマルサス
F:24mm
R:15mm
スポーツサス
F:25.5mm
R:18mm
となっています。
フロントはともかく、リアは3mmも違うわけですから、自分のカブリオレに付いているスタビとスポーツサス車のスタビを測って比べてみれば良いじゃないかと思ったのです。
さすがに、スタビだけスポーツで他がノーマルなんてトンチンカンなことはないでしょうし。
ところが、先の320iスペシャルエディションは生憎代車で出ずっぱりとなった後、良縁に恵まれ遠隔地に嫁いで行ってしまいました。
お店に入庫するのはM3とノーマルサス車ばかりでスポーツサス車がなかなか来ない。
さて困ったと思った矢先にようやくお見えになったのが323iセダンのスポーツパッケージ。
おまけに天が味方したのか作業内容が社外スタビへの交換。
当然純正スタビは外されるわけです。
早速自分のカブリオレのスタビとそのセダンのスタビを並べて同一箇所で測って頂くことに。
まずは差の大きいリアから。
先にセダンの方を測って頂きます。
「18ミリですね。」
で、ドキドキの自分のリアスタビ。
「Step-tronicさん、15ミリですよ15ミリ。言うとおりですね!」
もうこの瞬間よっしゃあという感じでした。
念のためフロントも測ってみると、こちらも細かい数字ながら正確に24ミリと25.5ミリでした。
ここでようやく、自分のカブリオレにはスポーツサスペンションが付いていないことが確実になったわけです。
こうなったら自分のカブリオレをスポーツサスペンション仕様にしてやろうではないの、と意気込み一式揃えて(スタビはラッキーにも先述のセダンから外したものを頂けました)付けました。
結果から言うと、カブリオレだとちょっと話が難しくなるのかな、と。
スタビの効きが良いのかロールのし始めは確かに良かったのですが、その後が320ほどしっくりこないというか、もう一段傾いてしまうような感じがしたのです。
その割に跳ねが出るように感じ、悪くはないんだけどこれじゃない感じというか。
一因として、少し前から付けていた17インチホイールの影響があると思います。
個人的には、乗り心地最優先なら205/60の15インチ、運動性と乗り心地のバランスが良いのが205/55の16インチではないかなと思っています(実際に履いていました)。
いくら純正オプション品(クロススポーク コンポジット2)とはいえ前後225/45R17はカブリオレにはオーバーサイズで荷が重いことは分かっているのですが、こればかりはE36に乗るなら絶対にこのホイールを付けたい、と昔から思っていたものなので誰に文句を言われようと外せないものなのです。
あとは、「カブリオレのスポーツサス」であることもあるのかな、と思っています。
スプリングに関してはモデル個々で品番が違うそうで、そこから恐らくカブリオレの車重に合わせたものが設定されているのではないかと思うのです。
それもあって、320セダンのようにはいかなかったのではないか、と。
それなりの期間をスポーツサスで過ごした後、最終的にはスポーツサス用スタビ+ビルシュタイン B12プロキットという組み合わせに落ち着きました。
色々と意見はあるとは思いますが、僕は見た目含めて現状に満足しています。
他に試してみるとすれば、アルピナのシャーシキットかな、というところです。
(日頃の行いが悪いせいか、スポーツサスを揃えた段階でたまたまカブリオレ用アルピナサスキットの話が来てしまったという経緯があります。)
さて、えらい長くなってしまいましたが、最後に一つ疑問が残っています。
なぜ当時の一部雑誌媒体はカブリオレにスポーツサスが付いているという記述をしていたのかということです。
先に紹介した「くるまにあ」以外にも、雑誌名は思い出せませんが他にもそう書いている雑誌はいくつかあったと記憶しています。
あり得るのは、クーペにスポーツサスが付いているのでカブリオレにも付いていると勘違いした。
当時の雑誌はテキトーな記事が多く、誤った記述はザラにありました。
もう一つ考えられるのは、僕の勝手な憶測なのですが初期に導入された広報車にはスポーツサスが本当に付いていたんじゃないかということです。
というのも、導入初期に雑誌に登場していた325iカブリオレの広報車は主だったもので2台存在し(千葉33 43-29 モントリオールブルー/千葉33 43-33 カリプソレッド 他にアルピンホワイトがあったはず)、そのどちらもどういう訳かサイドスカートがM仕様のものが付いているのです。
その後の広報車では、通常のものが付いています。
この「サイドスカートだけM仕様」というのは、カタログにも何カットか登場しており、わざわざ注釈で「サイドスカート形状が異なります」と書かれています。
ご存知の通りカタログ写真は海外仕様と共用しており、同じカットがあるのですが例えばイギリス仕様では同じカットが逆に通常のサイドスカートになっています。
こうした「ゴタゴタ感」から、本当に憶測に過ぎませんが初期の広報車には何かの事情でスポーツサスペンションが付いていたのではないかと思うのです。
たまにありますよね、広報車や初期導入車にだけ付いていた装備が無くなるようなケースが。
まぁ、単純に僕のカブリオレにだけスポーツサスペンションが付いていなかった、というオチなのかもしれませんが・・・。
年次改良で95モデルには付いていなかったのかもしれませんし、今となっては本当のところは当時ジャパンの中に居た人くらいしかわからないのかもしれませんね。
長々とした駄文にここまでお付き合い頂いた方、本当にありがとうございました。
訂正などあればお気軽にどうぞ。
ーおまけー
くるまにあ 1998年9月号のE36特集で車種別の解説を書いているのが、数少ない信頼の置ける自動車評論家である「沢村慎太朗」氏でした。
(以前紹介したE39 スポーツに着眼している方でもあります。)
現在より文章はややチャラいですが、内容はさすがでグレード別の違いのみならず、M50からM52への変更点にも触れられていたり、悪い所は悪いとズバッと書いており現在でもとても有用です。
BMWの言いなりで右に習えの提灯評論家の方々(誰とはいいませんよ、誰とは。H.HさんとかK.Kさんとか誰ですか知りません)とは大違いですね。
それにしても、「くるまにあ」は号によってクオリティに差がありすぎますね・・・。