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2014年06月15日

6月の季語は『ル・マン』、1995年にニッサンは……《3》

6月の季語は『ル・マン』、1995年にニッサンは……《3》 1995レーシングR33GT-Rの記録

(4) タイムアタック 

タイムアタックは予選二日目のファースト・セッション、その後半に行なう。これも最初からの予定だった。ル・マンの予選は、まず午後7時からの2時間。そこで1時間のインターバルを置いて、ふたたび、10時からセカンド・セッションが始まる。二日間とも、そういうスケジュールである。

夜の7時からサーキットでレーシング・カーが走りはじめるというのは、日本の常識からはちょっと異様かもしれないが、夏至にあたるこの時期、そして緯度が高いヨーロッパのこの地域では、9時半を回って、ようやく薄暗くなってきたかなという感じでしかない。また、仮に6月のル・マンがとても暑かったとしても、ファースト・セッションの後半なら、日暮れ前で気温が下がることも見込める。そこまで見通してのスケジューリングであった。

タイムアタックのドライバーは、最もクルマに慣れている鈴木利男だ。彼については、初日でも、走れたら、軽くアタックしてもいいという指示が出ていた。1日目のトップタイムを鈴木が出したのも、そういう理由による。

ル・マンという24時間のレースで、予選のグリッドで何番目に並ぶかというのは、実はほとんど意味を持たない。だが、水野はタイムアタックにはこだわった。絶対にやりたかった。それは目一杯走った時の、GT-Rのタイムを知りたかったからだ。本番では、マクラーレンでもフェラーリF40でも、本番なりの(抑えた)速さでしか周回しないはずなのだ。クルマの能力として、GT-Rはどのへんにいるのか。全開で、マクラーレンと何秒違うのか──。

GT-Rのタイムアタックの時が来た。ソフトタイヤを装着した鈴木利男は快調に、テルトル・ルージュを抜けてユノディエールへと23号車を操った。今日のレーシング・カーとピットはテレメーター・システムによって結ばれており、エンジンの状態からアクセルの開度まで、すべてピットで把握することができる。

この時の利男は、それまでのベストラップから確実に3~4秒速いペースで、サルテの各コーナーを攻めていた。これは速い! このペースなら4分ギリギリのタイムが出る! スタッフがこう思った時、利男は突如ペースを落とした。ユノディエールの終わりでアクシデントがあり、ペースカーがコースに入ってしまったのだ。

このため、GT-R23号車のタイムアタックはセカンド・セッションに行なうことになった。このインターバルの間にミッションを交換。そのため、10時にふたたびコースがオープンしても、すぐにコースインできず、陽が暮れてからのアタックになってしまった。しかし鈴木利男は果敢に夜のサルテを攻め、午後10時半頃、4分10秒を切る「4分09秒61」をマークした。

「タイム以外は、すべてうまく行った……」と水野は残念がったが、それでもこのタイムは日本車の中ではトップだった。ちなみに、GT1クラスの最上位は、フェラーリF40の3分55秒15。マクラーレン車の最速タイムは3分57秒18だった。

(5) ルーティンワーク

1995年6月17日の土曜日、午後4時。24時間の彼方に向けてのレースが始まった。スタートしてすぐ、雨になった。久々の、雨のル・マンだ。

23号車は、最初のピットインのみ、12ラップで給油した。スターティング・ドライバーは星野一義である。12ラップでのピットインは、この23号車の一回目のみが例外で、これ以後は22号車(福山がスタートを担当)と同じように、「13ラップでピットイン」というのがニッサン・チームのルーティンとなった。

ドライバーは、それぞれ2スティントを一人で周回した。つまり、各ドライバーの一度目のピットインで行なわれる作業は給油のみだ。今年から、ル・マンのレギュレーションでは、給油時に、給油以外の作業を同時に行なうことは許されなくなった。2台のGT-Rは、ドライバー交代をしない時には、およそ90リッターの燃料補給の時間のみで、次々とピットアウトして行った。

タイヤは一応念のため、ドライバー交代(2スティント)ごとに交換した。雨というのはテストではなかったことだったが、レイン用のBSタイヤのライフはドライ・タイヤとまったく変わることがなく、水野のプランに何ら影響はなかった。

こうして着々とルーティンをこなすGT-Rは、順調に順位を上げて行った。630psのチューンドRB26とシーケンシャル6速ミッションの組み合わせである23号車はとりわけ速く、スタートして6時間後には、何と「5位」というポジションにいた。

この時、23号車より上位にいたのは、マクラーレンの4台だけだった。フェラーリF40、ポルシェRSR、ジャガーXJ220といったスポーツカー&GTカー、またクラージュやクレマーといったプロトタイプのレーシングカーまで、トラブルで脱落したクルマも含めてだが、23号車GT-Rは、予選28番手という位置からすべて抜き去ったことになる。

一方、たった450psでH型の5速ミッション(!)の22号車もまた、福山/粕谷/近藤のステディなドライブで、ジワジワとその順位を上げていた。ノー・トラブル、ロスタイムなし。12時間を過ぎての22号車のポジションは総合で10位だった。ナイト・セクションを担当した近藤のタイムを落とさない走りは、このチームのリーダー格である福山を唸らせた。

初挑戦ながら、何らの“事件”もなく、サルテに着々とタイムを刻みつづける2台のGT-Rを、地元紙の日曜・朝刊は「GT-Rの驚くべきデビュー」と報じた。

(つづく) ──文中敬称略

(本稿は、1995年5月、雑誌『スコラ』に掲載された記事をベースに加筆修正したものです)
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Posted at 2014/06/15 09:53:40

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