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2014年09月16日

セミ・レーシング感覚、サンクGTとこれを許容する社会について

セミ・レーシング感覚、サンクGTとこれを許容する社会について §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

コイツは本気のクルマなんだなと、乗り出してすぐ、全身で実感した。この「距離」はちょっと凄いね。

たとえばGT仕様とかターボ・バージョンとか言ったって、われわれの日本車の場合は、比較すれば速いとか、パワーのサービスに加えて装備品もオゴったんでこうなりましたとかいう場合が多く、「じゃあ一番高いヤツ買うワ。ああ、GTターボっていうの? ウン、それ持ってきて」と“普通の人”がやっても、取りたてて問題は起きないのだが、コイツはそうはいかない。

──いや、いかないだろうと思う。べつにこのクルマを攻め切ってこう言ってるんじゃなく、あくまで公道レベルの話であり、サーキットなんぞで限界付近の挙動を試したりして言ってるわけではありませぬが、ともかく、甘いクルマではない。本気なのだ、クルマの方が!

欧州では、市販状態のままで、ワンメイク・レースなどでサーキットを走っているというが、さもありなんと思う。既に、それなりの“武装”が施してあり、ちょっとばかしノーマルより速いというのじゃない。パワーにしても足にしても、ケタ違いに速いのだ。それは、楽しみというより、ある種の苦行のようですらある“速さ”であって、乗り手はそのようなクルマ側のパフォーマンスに、しっかり対峙するだけの覚悟を要求される。

ルノー・サンクGTターボとは、そのようなクルマであり、サンク特有の愛らしい表情や雰囲気はそのままだが、ノーマルとはまったく別種のクルマだ。

ここまで違うと、ここまで「違える」ことを許すクルマ社会というものに、むしろ興味が湧く。たとえば、ビギナーは、このGTターボのようなクルマを買うはずがないという作り手側の自信、もしくは安心。同じく、そういう無謀なことは誰もしませんよ……という、受け手側の選択眼、カテゴリー感覚。そのようなコンセンサスの存在を抜きにしては考えられないと推察できるし、また、彼の地には強固な階級制度があることも、ここには投影されているかもしれない。

──といったようなことから、だからァ、日本車はいつもハンパなんだァ、ターゲットがはっきりしないクルマばかり出て来るんだァ、クルマ文化が未成熟で青臭いんだァ……といった論を立てるやつがいそうだが、でも、その立場は俺は採らないよ。スポーツカーでもGTでも、決してシロートが乗ってアブナくないという国、ニッポン。それは、遅れ進みとか熟成度の問題ではなく、単なるディファレンス(差異)だと思う。

さて、サンクである。GTターボ以外の普通のサンクは、たとえば郊外の空いた道を60㎞/hくらいで流す時、そのユックリズムの魅力は極まる。ワインをやりながら(同乗者として)喋くりまくって走りたいと言ったフランス在住経験のある友人がいたが、その感じもわかる気がする。

ルノー・サンクはたぶん、そのような文化に棲息しているクルマであり、その奇妙なほどの穏やかさがこの国のマーケットでのサンクのレゾンデートルであろう。(だからこそ、いったん「GT」を作ろうとした場合の“翔ばし方”と距離の設定には、あらためて驚くのだ……)

(1987/10/13)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
ルノー・サンクGTターボ(87年~  )
◆ノーマル・サンクとGTターボとの比較で、もうひとつ、書いておきたいなと思うことがある。それは、日本のメーカーなら、このターボエンジンがあるなら、まったくの別機種をひとつ作ってしまうだろうということ。“狼”には、ちゃんとそれらしく、オオカミとしての衣装をまとわせる。それだけの余裕があるのが、今日の日本メーカーでもある。一方でフランスには、あくまでサンクの姿のままで速いこと。こういうニーズも、また、あるのだと思う。彼の地とのディファレンスはさまざまにあり、「先達/後進」だけではクルマは語れない。
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Posted at 2014/09/16 18:39:40

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