
§日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection
いま、FFすなわち前輪駆動ではないクルマを探すことは、とくに小さいクラスでは困難である。そのくらいに、FF当たり前という時代であるが、この今日メジャーである「横置きFF」というのは、ほんの30年前に「発明」されたものに過ぎず(注1)、出始めの頃には、特有のクセがあるだの、果ては「危ない!」とまで言われたものであった。
1959年のアレック・イシゴニスによる「ミニ」から、はやと言うべきか既にというべきか、これだけの歴史が経った今日、「FFだから……」というケア(不安?)やスペシャル性(差別化かな)は、きれいさっぱりと皆無になりました。いま誰も、心構えなんぞをしてからFF車に乗ったりはしない。また、そうしなければならないようなFFモデルは存在し得ない。
その結果、室内有効スペースの広さ、深いトランクの獲得、直進性・安定性の高さ等々、FF化によるメリットだけをわれわれは享受できる。そのような状況になっております。
4WDというシステムも、やはり、FFと同じような“成長”の過程を示して後に、同レベルの達成を成すのであろう。ややコスト高につくことと、2輪駆動でもクルマは十分に走るから、2WDがマイナーになってしまうことは多分ないだろうが、4WDによるクセとか違和感、それを意識しつつのコーナリングといった余計な特質は、おそらくなくなるのだ。
すでに、ブルーバード・アテーサとかミラージュ4ドアなどで、4駆と気づかせぬ4WDが実現されている。またギャランは、高出力エンジンのアウトプットを4輪で受けることによる速さと凄さを見せつけた。
センターデフ(+ビスカス・カップリング)を持つ、完全なフルタイムの4輪駆動は、ハイパワー車と高性能車だけのものであり、なかなか「下」までは降りまい……。センターデフの代わりにビスカス・カップリングを使うという巧みな方法もあることだし、コストの問題もあるし……。
こう踏んでいたのだが、どっこい、ダイハツにやられた! シャレードの1300EFI版に加わった4WDは、94psの出力とは言え、むしろ“生活4駆”としての性格を与えられているクルマで、さらに「大衆車」クラスでもあるのだが、あっさりと、センターデフ/ビスカスの4WDが載ってしまった。123万円(東京・3ドアTXF)は安い。「決して、たんと儲けようという値段ではない……つもりです」と開発陣、同感である。
そして、“生活4駆”として、誰でも普通のクルマ(2WD)から乗り換えて、何らかの注釈が要らないドライビング感覚とハンドリング。これも出色! 雪や泥は知らない。試乗したのは、舗装のワインディング・ロード。
「こういうところで、もし何か(4WDであることによる)イヤな面が出たということなら、それは失敗だと思ってます」(シャシー設計部駆動担当・北浦照雄氏)。その通りであろう。その苦手種目を、シャレードは見事にクリアした。「失敗」に終わってはいないと評価する。
まだ、同車2WDと比べるなら、ややノイズレベルが高いかと思われるが、この音の件は現在の4WD車の多くが抱えている問題で、ひとり「大衆車」シャレードのみのマイナス点ではない。
(1988/03/15)
○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
シャレード1300EFI・4WD(88年2月~ )
◆4WD乗用車は、安心感と“ひろがり”のイメージはある。これで少しくらい雪に降られても大丈夫、いろんなところへ突入していっても走り続けられる……。一方で、どうしても出て来る騒音や燃費の悪化を、日常的に抱え込む必要が果たしてあるのか、2WDでいいじゃないか? このようにも評せる。いっそ「速さの4WD」にまで跳んでしまうという手はあるが、しかしそれは「生活」からも離れてしまう。4駆に関して、ぼくはいまでも揺れている……。
○注1:前輪を駆動するという方策は、歴史を探れば、クルマ史のごく初期から存在したようだ。また、シトロエンの「トラクシオン・アヴァン」(前輪駆動の意)である「7CV」は1934年に登場していて、第二次大戦後も「11CV」として生き残り、販売的にも成功した前輪駆動車となった。ただ、このシトロエンは「縦置き」エンジン。ここで、今日メジャーとなったとしているのは、モーリス/オースチンの「ミニ」に始まる、エンジンを「横置き」にしたタイプのことである。
○2014年のための注釈的メモ
80年代後半は、各社が「新メカとしての4WD」にトライした時代だったと思う。そしてこのコラムで見るように、乗用車としてその日常化をめざしたモデルもあったが、結局、4WDというか「全輪駆動」(AWD=オール・ホイール・ドライブ)タイプを「普通の人が普通に使う時代」は来なかった。
その理由はいくつか考えられるが、ひとつはやはり燃費であろう。4WDは部品点数が多くなり、車重の増加を招き、この点が燃費に影響する。とくに90年代末になってハイブリッド・システムが出現し、省燃費の競争が激化すると、4輪駆動はメカニズムとしてそれに対応できなくなった。さらには、クルマは2WDで十分に走れるとして、二輪駆動が成熟したことも大きかったはずだ。
ただし、冬期に雪上走行を余儀なくされる地域では、今日でも「乗用4WD」が求められ、各社がこのニーズに対応した“生活4駆”を各モデルにバージョンとして加えている。
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80年代こんなコラムを | 日記
Posted at
2014/10/14 13:04:06