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2015年01月20日

小さなセダン、ソシアルは2ボックス時代への挽歌か?

小さなセダン、ソシアルは2ボックス時代への挽歌か? §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

わがクルマ・マーケットで、おもしろいポジションを得そうなモデルが出現した。シャレード・ソシアルである。2ドア+ハッチバック(3ドア)の代表のようなあのシャレードを、何と4ドア・セダンにしつらえたもので、そうでありながらも、全長は4mを超えない。写真では比較するものがないので実感しにくいかもしれないが、実車はいわばセダンのミニチュアのようであり、なかなかに可愛い。

2ボックス+トランク。リヤの車室まではまったくハッチバック車と同じで、それを3ボックス化するというのは、初代VWジェッタと同じ手法。それでいて、かつてのジェッタのような、いかにも(トランクを)取って付けた感じがないのがシャレード・ソシアルの注目点だが、聞けば、現行シャレードのプランニング時点で、3ドア/5ドアと並行して、この4ドア/3ボックス・セダンも(企画として)存在していたのだという。

そう言われたせいではないが、あらためて現車を見ると、シャレードはこの4ドア版がオリジナルで、3ドア/5ドア・モデルはここからトランクを取り去った……とも見えるのは、このソシアルの造形的な成功を意味するものだろう。

このようなレベルのクルマで、つまり、小っちゃなリッター・カー級のコンパクト車で、果たして、3ボックス・セダンが要るのか? この一種サベツ的な懸念をダイハツの社内段階でなかなかクリアできなかったために、このモデルは今日まで陽の目を見なかったというが、何をくだらん“自主規制”を……と、ぼくは言いたい。

この国の自動車マーケットは、80年代以降、何を出しても許されるマーケット。あるいは、何が売れるかわからんという「包容性」と「視界不良」の時代に入っているのだ。FFファミリア、ソアラ、プレリュード、みんな作ってる側がヒットとニーズを読めなかった製品ばかりではないか。(この点、わが軽自動車界のフットワークの軽さと、マーケット創造能力というのは、実にビビッドでアクティブだ)ソアラと同様に、こんなモノなかったから……という一点で、もう、このシャレード・ソシアルは意味があるのだ。

ぼくはこの国のクルマ市場が持つ、そんな「包容性」と「視界不良」を考える時だけは、いわれるところの“カネ余り現象”をちょっぴり信じる気になれる。みんなと同じだからとして売れるモノ(マークⅡ)がある一方で、「差異性」というだけでハンランしてしまうクルマがいくつかあるからだ。昨今の“外車ブーム”というのも、実はこういう内容なのではないか。

そしてもうひとつ、ヒット商品に付きものであるハード的な性能はきちんと備えてあることという要件でも、このシャレード・ソシアルは十分なものがある。ただカワイイだけであった初代シティとは違うのだ。良い意味での“重量感のある”乗り心地、好フィールのドライバビリティ、攻めてもよく粘るサスペンションなどがそれである。だいたいシャレードのシャシーというのは、ソシアルに限らず、2ボックス版でもなかなかのスグレモノであり、買われたあとのクチコミ段階で失速してしまうような水準ではないのだった。

……まァたしかに、いまは小っちゃなクルマへのニーズが減っている傾向にはあり、その点では、このソシアルの前途もきびしいものがありそうだ。しかし、ハードの面でも、またソフト的な意味でも、シャレード・ソシアルは決して恐る恐る売ってみるようなシロモノではないと言いたい。

たとえば軽自動車からステップアップして、何か新しいクルマを……と物色しているような時。カローラやサニー、ファミリアは「大衆車」として、あまりにも大きくなりすぎたし、気軽さも失われてるし……という時。あるいは、フッとクルマというものに醒めて、簡潔さや適度さといった言葉や要素が愛おしく思える時──。そんな時に、このシャレード・ソシアルは選ばれると思うのだが。

(1989/05/09)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
シャレード・ソシアル(89年3月~  )
◆これは売れそうだとか、これはダメでしょうとか、その種のことは、本当にうっかり語れない時代だ。メーカーやジャーナリズムよりマーケットの方がずっと先を行っているというか、フリーであるというか、ともかく大胆である。こんな状況に、作って売るのに四年近くもかかるような製品(クルマ)で対抗しようというのは、まことに困難であるとも思う。一方で、単なる「新しさ」だけでは、すぐに風化する。欧州車を選ぶ理由として、「はじめから古いから」という説を成す人がいるが、こういう“戦線離脱”も理解できるというものだ。

○2015年のための注釈的メモ
いま読み返すとこのコラムは、タイトルでは「挽歌」と言いかけているものの、内容としては、小さな3ボックスにひたすらエールを送っている気配だ。60~70年代の「乗用車こそ3ボックス」という時代にクルマ・ウォッチを始めた世代としては、それに拘りすぎることのないようにという意識があり、90年代に向けての読みも含めて、ソシアルには「挽歌」という言葉を贈ったようだ。とはいえ、この3ボックス造型はけっこう息が長く、2010年代になっても、あるサイズ以上のクルマでは好んで用いられている。ただ、SUVそして「クロスオーバー」という概念が出現している今日、2020年代あたりの日本市場では、一部の例外を除いて、3ボックスは「クロスオーバー」に溶けてしまって見えなくなるのではないかと思う。
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Posted at 2015/01/20 20:52:39

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