
80年代の稀少車のひとつ。さらにいえば、「名車」になりそこねた個性車のひとつが、このスタリオンであるかもしれない。
80年代前半、クルマは「FFの時代」を迎えていた。FFこそが新鋭のメカであり、さらには、もっと先端のメカとして4WDも予見されていた。この90年代半ばになって、FRが“fun”なメカニズムとして一部で脚光を浴びているが、それは80年代から始まった「FF大攻勢」の裏返しと見るべきであろう。スタリオンは、そのような80年代に、いわば、遅れてきたFR車としてデビューすることになってしまった。(1982年)
メーカーとしては、スポーツカーであるなら最新のメカで作りたかったが、当時、まだ4WDは(スポーツカーの方式としては)解明しきれていない部分があったと、いまにして開発陣が明かす。そこから、やむなく……という感じで、スタリオンをFRとしたのだが、こうしたメーカーの及び腰はマーケットにも何となく伝わったのかもしれない。一部の好事家にはウケたものの、スタリオンはマイナーな機種として終わってしまった。
スポーツカーというのは、メカニズムの先端性を競うものではない。このことに当時は、右肩上がりで「進化」だけを見ていたメーカーも、そして、エクィップメント面から高性能を切望するマーケット&カスタマーも、どうも気づけなかったようだ。もし、スタリオンのデビューが10年違っていたら、このクルマの生涯はまったく違ったものになっていたのではないかと思う。
(「カーセンサー」誌、1995年。「昭和名車伝」より加筆)
♯このシリーズの連載、もう少し続けます。
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2015/05/27 23:22:26