
◆軽自動車の展開
1966年は『サニー』と『カローラ』が登場した年。つまり、日本の本格的なモータリゼーション元年になる。この二つのモデルは、トヨタとニッサンという上級車を作っていたメーカーが一般ピープルのためのコンパクト車を作ったという意味で、マーケット的に重要だ。両社による大々的な販売作戦が展開されたこともあるが、大メーカーによるこの二車が、クルマという商品全体への一種の安心感を生み、それへのアコガレをいっそう加速させた。
この60年代後半から70年代はじめの軽自動車では、何といってもホンダの参入がニュースである。レース活動も含む二輪分野での世界的な成功、四輪スポーツカー『S系』の存在を背景に登場したホンダの軽自動車は、31.5万円できちんと四人が乗れて、最高速は115km/h。これは驚異のバリュー・フォー・マネーであり、1967年の春に発売されるや、あっという間にベストセラーの座に駆け上った。
そのホンダ『N360』は、1970年の『Z』、そして1971年登場の『ライフ』に発展し、コンパクトカー分野でのホンダの地歩を確かなものにした。今日の“大メーカー”ホンダの基礎となった1972年『シビック』の成功も、これらの軽自動車で築いたイメージがその基盤だったはずだ。同社にとって重要なこの二つの名前(『Z』と『ライフ』)は、ともに90年代に復活することになる。
もうひとつ、この時期の軽自動車の新展開として、1970年に登場したスズキ『ジムニー』に注目しておきたい。軽サイズにまとめた、この「純・オフローダー」は、70年代こそさほど目立たなかったが、後年に、軽自動車というレギュレーション内で「何でもやってみよう!」という日本メーカーの挑戦意欲をかき立てる源泉となったと見る。
90年代に華々しく登場するオープンカーにしても、さらにニュー・コンセプト車としてのミニバン・タイプにしても、軽自動車の世界に『ジムニー』という異ジャンル・カーが存在し続けたが故に、各社は、提案性に充ちた新ジャンル車の開発をためらわなかったと思うのだ。
(「カーセンサー」誌、2001年10月。軽自動車特集より加筆)
♯タイトルフォトはホンダN360。「ホンダ・コレクション 1 創造と挑戦」から複写。
(つづく)
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2015/06/25 22:48:45