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イイね!
2015年07月07日

スポーツcolumn 【女子W杯】リメンバー・バンクーバー! 《1》

女子ワールドカップの決勝戦を終えたアメリカ代表の監督、ジル・エリスは、精一杯控えめな表現(?)で、次のように語った。

「(試合開始から)15分が過ぎて、夢を見ているんじゃないかと確認するために、自分を抓らねばなりませんでした」
「開始から相手にプレッシャーをかけたかったのですが、すべてが完璧にいった」
「今夜は我々が完璧に集中し、完璧に自分たちのプレースタイルを遂行できました」

……「開始から相手にプレッシャーをかける」ために「自分たちのプレースタイルを遂行」したとは、試合が開始されてすぐのアメリカ最初のコーナーキックのことであろう。この時に「何」をするか、彼らは事前に決めていたはずだ。

何よりこのコーナーキックは、わざわざ「獲りに」行った気配が濃厚である。せっかくゴール付近まで攻め入っているのに、センタリングのトライもさして行なわず、簡単に諦めて、相手に当ててボールを外に出すことを選んだ。もちろん、こうしてコーナーキックを「獲る」のはどのチームでもやることだから、日本代表もべつにフシギには思わず、いつものように対応する。しかし、これは「ワナ」だったのだ。

また、コーナーキックを蹴る前には、宮間あやにしても、ニアに誰がいるのだろうとか、どういう態勢で味方がボールを待っているのかといったことを確認する。そして、日本チームの場合、何かの暗号になっているのかもしれないが、宮間はいつも高く手を上げ、合図をしてからボールを蹴る。

しかし、アメリカ最初のコーナーキックのキッカー、ミーガン・ラピノーは、蹴る際に軽く手を上げることはしたものの、その前のターゲットを探るような動きはほとんど見せなかったと思う。これはつまり、どんなボールをどんな速さで、そしてどの方向に蹴るかが決まっていたからではないか。

一方でラピノーがボールをコーナーに置いた時、カーリ・ロイドはゴール前の密集から遠く離れたところにいた。彼女はフリーだった……というより、そんな遠くにいる選手は誰もマークしたりはしない。ほとんど“ステルス機”の状態で、この時ロイドは待機できた。

その“ステルス・ロイド”は、キッカーのラピノーによる合図とともに、ゴールに向かって発進する。中継のTVカメラは、米選手の「誰か」(背番10=ロイド)が猛烈な勢いで前方に走る、その背中を映していた。

ラピノーが、コーナーから蹴り出したボールはグラウンダーだった。ゴール前の密集は避けてのキックだったから、誰の身体にも当たらない。ボールはきれいなゴロになって転がり、そのラインと、“ステルス・ロイド”が駆け抜けようとするラインがクロスする。長い助走による、ロイドの強烈なシュート! 日本のDFとGKは為す術なく、ゴールネットが揺れるのを見た。

「15分間で4点」という悪夢のような時間は、こうして始まった。

この先制ゴールは、グラウンダーだったから意表を突かれたのではないと思う。それもたしかに想定外だっただろうが、それ以上に、“米軍”が用意した地上の“ステルス機”に注目すべきだ。コーナーキックはむしろ、その“ステルス”の動きに合わせて撃たれたのではないか。

このアメリカの「奇襲」に驚愕し、浮き足立った日本チームは、その数刻後、ふたたびグラウンダーのフリーキックから2点目を決められる。

「2対0」──。それに慌てたのか日本代表は、得点がほしいとばかりに、いつものパス交換より、縦一本のパスという攻撃を仕掛けはじめる。しかし、こうした“前がかり”も、アメリカが待っていたところだった。日本の縦パスをインターセプトしての、アメリカの鋭いカウンター。自軍のミスも重なって、日本はさらに2点を失う。

決勝戦の結末は、残念ながら、この「4点」で見えてしまった。もちろん「4対0」以後に発揮された、日本女子代表の飽くなき敢闘精神は賞賛に値する。しかし、それはワールドカップの勝利に届くものではなかった。

アメリカとの試合では、先取点を取って主導権を握りたい──。このことは、実は宮間あやも語っていた。ただ、どうやってそれを取るか。この点についての具体的な何か、作戦、戦術、またプランが日本代表にあったか? 

しかし、アメリカには、それがあったと思う。そして、「アビー・ワンバック+ヘディング」では“ステルス”にはならないが、カーリ・ロイドならどこかに“隠せる”とも企図しただろう。さらには、ロイドが優れたキッカーであったから、彼女へのラスト・パスは浮き球ではなく、グラウンダーが選ばれた。

ワールドカップ決勝の日本対アメリカ戦。アメリカによる最初のコーナーキックは、以上のようなシナリオと演出で行なわれたと思えてならない。そして、そんな「奇襲」だったからこそ、“戦争”が終わった後でも情報公開はされず、ただ「自分たちのプレースタイルを遂行した」だけと、監督のエリスは語ったのだ。

(つづく)
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Posted at 2015/07/07 08:20:34

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