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2016年01月23日

トヨタ-7ターボ 《1》

トヨタ-7ターボ 《1》 “怪鳥マシン”ニッサン「R381」が勝利した次の年の1969年から、「日本グランプリ」は秋の10月に開催される祭りとなった。そして5月には、もうひとつのグランプリが企画された。フォーミュラ・マシンによる「JAFグランプリ」である。スポーツ・プロトタイプカーとフォーミュラと──。日本のモータースポーツ界は、ようやくこのような態勢を作ったが、もちろん、圧倒的な人気があったのはスポーツカーの方であった。

1969年の「日本グランプリ」は、68年に続いて、ニッサン、トヨタ、そして有力プライベート・チームのタキ・レーシング。この3チームによる“TNT対決”で沸いた。そして、何と言っても5・5リッター・エンジンの「R381」が勝利をさらった翌年だ。各チームはそれぞれにビッグマシンを準備して、秋のグランプリに備えていた。

この年のレギュレーションは、富士スピードウェイ一周6㎞(当時)のコースを120ラップする。720㎞という、そんな耐久イベントに近い距離を、スポーツ・プロトタイプカーが走り、クルマは実質的にはどんなものを持ってきても(作ってきても)いいというものだった。

このようなルールでは、必然的に情報戦争となる。出場マシンの内容や有力ドライバーの動向、誰が誰と組むのか(セミ耐久なので、ドライバーは二人でクルーを組むことができた)など、さまざまな憶測やニュースが乱れ飛び、グランプリに向けて盛り上がった。

3リッターの「トヨタ-7」で、シボレーV8/ニッサンに歯が立たなかったトヨタは、この年、ついに5リッターのエンジンを積んだ。タキは、ほぼ当時のポルシェ・ワークスに近い態勢を「日本グランプリ」のために作り、4・5リッター・エンジン搭載のポルシェ917まで自チーム内に用意した。ともに、「対R381」ということで大排気量化したのだ。これに対するニッサンは、“怪鳥”「R381」に続けて「R382」というニューマシンを開発し、受けて立つという格好になった。

有力3チームが、それぞれ5リッター級のビッグ・レーサーを持ち込んでの「富士」でのデッドヒート! ……になるはずだったのだが、実際はそういうグランプリにはならなかった。ニッサン・ワークス、1968年に続いて、日本グランプリを制す! 

なぜなら、“レース巧者”ニッサンが「富士」に持ち込んだ「R382」には、もはやシボレーV8(5・5リッター)は載っていなかったからだ。積まれていたのは、秘かに開発されていた自社製のV型12気筒DOHC4バルブ。その排気量は、「トヨタ-7」よりさらに大きい6・0リッターだった。

グランプリ・レースは、「R382」のワンツー・フィニッシュで終わった。1位黒沢元治、2位北野元。二人ともコ・ドライバーにステアリングを渡すことなく、720㎞のレースをひとりで走り切った。トヨタは完走したものの、3/4/5位を占めるにとどまった。

トヨタ・ワークスは2年続けて、ニッサンの大排気量パワーと情報戦略に屈したのである。このような経緯を経ての1970年、二連敗した側が考えるグランプリ戦略プランとは、おそらくたったひとつだ。そう、「もっとパワーを!」である。

そして、このような展開を支える背景が当時にはあった。それが「カンナム」(CAN-AM)という名のレースだった。カナディアン・アメリカン・チャレンジカップ、つまり「カンナム」。このレースのコンセプトは明快だった。要するに、何でもアリ。どんなクルマを持ってきてもいいから、速いのは誰かを決めようということである。

現実的には、エンジンはチューンド・アメリカンV8が主力となったが、ルール上は、エンジン排気量は無制限だった。ウイングもOKだし、ツイン・エンジン、トリプル・エンジン(エンジンを複数載せてしまう!)さえ出現した。そして重要なのは、この「カンナム」の場合、「インディ500」のようなオーバル(楕円)コースを回るのではなく、ヨーロッパ・スタイルのロードコースをその舞台としたことである。

(つづく) ── data by dr. shinji hayashi

(「スコラ」誌 1992年 コンペティションカー・シリーズより加筆修整)
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Posted at 2016/01/23 19:15:25

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