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2016年04月11日

【クルマ史を愉しむ】vol.14 『自動車の世紀』を読む 《07》

○飛行機の起源と “ル・マン”
1903:アメリカでライト兄弟による初飛行。「フライヤーⅠ号」で、場所は米国ノースカロライナのキティホーク海岸。搭載されていたのは水冷直列4気筒、12馬力のエンジンで、ライト兄弟の自製だった。気化器を使わず、燃料噴射システムを採用。この時の飛行時間は12秒、距離37m。時速は約48キロ。

1908:ライト兄弟がフランスでデモ飛行。
パリ南西約180キロ、史上初の自動車のグランプリレースが行なわれた(1906年)ル・マンにて。1905年製のフライヤーⅡ号を使用。急角度の上昇、バンク旋回、8の字飛行などを見せた。飛行機への産業界の関心が一気に高まる。

○飛行機の発達と自動車工業
航空機は、自動車工業の戦争への参加を促した。新たに“武器”となった飛行機とその技術は、自動車工業の発展と充実によって発達した。

第一次大戦の初期、飛行機は偵察のみ。それを駆逐するために戦闘機が現われる。この時に、機関銃を飛行機のどこに配置するかという問題が生じた。

オランダのフォッカーが、プロペラの回転と機関銃の発射とをシンクロさせる機構、銃口の前面にプロペラが来たときは発射されない「遮断」システムを考案。
1915:フォッカー・アインデッカー。
その遮断システムと機関銃を装備した戦闘機、最初の例。ドイツ空軍の単葉機EⅢ型。

これ以後、飛行機による空中戦と制空権の争いが始まる。

○エンジンの軽量化と高性能化
エンジン自体を軽量化する方向へ。1912年のグランプリ・レースに、プジョーがDOHCエンジンを持ち込んで以後、DOHCが常識化。同時に、半球型燃焼室を採用。
軽量で高出力のエンジンは、飛行機にとっても不可欠。自動車メーカーによる航空機エンジンの開発へ。

○イスパノ・スイザ
第一次大戦中、連合国の主力航空機エンジンを開発したのはイスパノ・スイザ。
1904:イスパノ・スイザ、設立。
スイス人マルク・ビルキヒトがスペインに創立。小型車のレースで活躍。自動車の熱烈な愛好家だったスペイン王アルフォンソ4世が援助し、名車アルフォンソを生む。(1912年)

第一次大戦が始まると、スペイン政府の要請で航空用エンジンを設計。水冷式V型8気筒、SOHC、軽合金モノブロック(=各気筒が一体となって鋳造されている)。出力150馬力、大戦末期には200馬力に。

当時の航空機エンジンは、空冷式の星形ロータリータイプが主流。これはエンジン本体も回転した。イスパノ・スイザのV8は、それと同じ馬力荷重でありながら、前面投影面積が少なかった。
1915:連合国空軍、イスパノ・スイザV8を競って採用。

○ダイムラー社の航空エンジン
イスパノ・スイザに対抗したのがダイムラー社のエンジン。直列6気筒SOHC、1気筒あたり4バルブ、出力160馬力。

1914:フランスGP、リヨン。
同じ構造のエンジンがメルセデス車に積まれて、大戦前夜のグランプリー・レースに出場した。メルセデスは、ライバルのプジョーを抑えて1~3位を独占。

○英国とアメリカの航空エンジン
イギリスではロールス・ロイスが飛行機用エンジンで大きな成果。イーグル(後にファルコン)エンジン。その後、鷲や鷹の名をつけたシリーズ(マーリンなど)が第二次大戦まで英空軍の主力であり続けた。ベントレー社のW・ベントレーもロータリー・タイプの航空エンジンを開発した。

アメリカではパッカード社のヴィンセント大佐が、リバティ航空エンジンを設計。フランスでクルマ作りをしたイタリア人、エットーレ・ブガッティも航空分野に進出した。

1913:飛行機のスピードが時速200キロ超へ。
大戦末期には、急降下の際には時速300キロ・オーバーに。自動車に代わって、飛行機がスピードの王者の座に就く。

○第一次大戦と自動車工業
戦争が四年以上も続くとは、誰も思っていなかった。飛行機、タンク(戦車)、毒ガスなどの近代兵器が戦場に登場。戦死者の数は880万人。この戦争によって科学技術は飛躍的に発展した。

自動車の分野では、冶金技術が進歩。軽量で高速回転のエンジンが安価にできるようになり、大衆車量産への道を開いた。
そして戦争中、自動車メーカーは軍需生産で莫大な利益を得る。自動車工業の基盤が強固になった。

(つづく)

(このシリーズは、折口透さんの快著『自動車の世紀』(岩波新書)をナビゲーターに、クルマ史におけるさまざまなシーンを学習していきます)
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Posted at 2016/04/11 18:33:21

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