
GW連休中ですが渋滞に巻き込まれたりしませんでしたか?
私はと云えば毎度おなじみの「連休修理」だったのですが、今回はいつもと違ってずっと誰かしらお客さんも出て来なければいけない程の多忙ぶりで、既にフルではありませんが、今来ているお客様は操業に入っておられます。
んで、本来ならば今夜は帰る前の日で来てくれた皆さんと「一杯」飲むハズだったんですけど…
ま、深残業にはならなかったんですけど、もう一日延期になったのも有って、で、前々から紹介したいなと思っていた本と記事をと思って一応ネット検索したんですけど、記事が見当たらないので「セイコー」さんが機械式腕時計の復活した頃に「赤池学」さんがウェッジというJR東海さんが月刊で出している99年6月掲載分(ちょっと旧いですが)で、今の時代にも当てはまる日本の製造業のこれからを見つめるのに良い内容だと思いましたので、もしかしたら誤字脱字が有るかも知れませんが「丸写し」しましたので、お時間許す方は読んでみて下さい。
尚、この本には36社の当時の「最先端」が乗っていて知らない分野の話もたくさん有り、なかなか良い本ですよ。まだ新幹線内にネットでどうのこうのしていなかったのでウェッジ読みながらというのが多かったんですけどね。
※「赤池学」さんは「メルセデスベンツに乗るという事」を書いた人です。
(コレは偏向というか対比が無いので私はオススメではないです。勉強にはなりましたが)
以下、丸写しですw
セイコー…【高級メカ時計製造】
1000分の1ミリ精度で削り取るゼンマイ調整の秘技
◆ロングライフな本物志向で名品グランドセイコー復活
あらゆるモノづくりの世界でいま、エコデザイン開発への取り組みが積極的に行われ始めた。法的、国際的な環境規制、ISO14001に代表される環境認証の取得、市場サイドからはグリーンコンシュマリズムの台頭と、環境対応を図らざるを得ない社会的要請がその背景にある。大量生産、大量消費、大量廃棄という20世紀型製造業の反省に立ち返り、
ロングライフな製品開発やモデルチェンジ抑制、リユース、フルユースを意図したモノづくりが徐々にではあるが形になり始めている。
だれもが数個はもっている腕時計の世界でも、こうした胎動が確実に起こっている。過去5年間を振り返っても、スウォッチに代表されるデザイン時計ブーム、Gショックに代表される限定モデル購入ブームが終焉したなかで、ロレックスに象徴される高級メカ時計の再評価がここにきて急速に高まり始めている。
1881年に創業した服部時計店、現セイコーは、1913年に国産初の腕時計を形にして以来、1969年までメカ時計のみをつくってきた。しかし、翌70年からクォーツ時計への転換を図り、メカ時計の製造を縮小したのである。確かに、メカ時計はゼンマイを巻かないと動かないという煩わしさがあるが、同時に希少性とあわせて、そこに愛着を感じる根強いファンが存在する。かねてから、ユーザーのなかからメカ時計復活を求める声が高まっていたが、社内的にもその必然が認識され始めたのである。
その理由は技能伝承であった。92年当時、すでにスイスメーカーを凌駕していた熟練技能者たちは退職していた。しかし、その教え子たちはかろうじて健在で、いまをおいてメカ時計の製造技能を伝承するチャンスはないと判断されたのである。かくして同年からメカ時計の製造が復活。クレドールシリーズの発表を経て、98年、往年の名品「グランドセイコー」の復刻に結実した。
◆時を刻む精度は熟練技能者の手仕事次第
すべての腕時計は、基本的に動力源、時計信号源、そして伝達転換機構と表示機構から成り立っている。クォーツ時計でいえば、それは電池、水晶振動子、電子回路、液晶パネル及び文字盤に相当する。メカ時計では、電池代わりのゼンマイに始まり、ムーブメントに組み込まれた振動源となる調速機を中心に、その微小な機構部品の点数は、実に二百数十点にのぼる。
こうしたチリのようにしか見えない大きさの高精度な部品は、最新技術を搭載したNCマシンなどで製造されるが、それを組んだだけでは実はメカ時計は動かない。そこには、調整と呼ばれる複雑な熟練技能者の手仕事が不可欠なのである。実際の製造を担当するグループ会社である盛岡セイコー工業・高級時計工房班長(当時)の桜田守さんは語る。
「高級メカ時計に求められる精度は、調整によるつくり込みに掛かっています。腕時計はあらゆる使用条件や作業姿勢に対して、正確に時を刻むことが求められます。専門的には、『姿勢差の短縮』と呼んでいますが、要は机上作業でも屋外の土木作業中でも、進んだり、遅れたりすることのない精度を調整段階で制御するのです。
メカ時計の心臓部は、振動源となる調速機です。調速機は、らせん状のヒゲゼンマイとテンプと呼ばれる微小ホイールから成り立っていますが、これが表、裏、そして12時、3時、6時、9時という傾きを持っても、ゼンマイトルクが下がらず、パワーがダウンすることのないよう調整するのです。テンプは、高精度のマシンで真円に加工され、工場でも粗調整を受けていますが、一点一点微妙な歪みが存在します。テンプの一部分がほんのわずかでもバランス的に重いと、その傾きの時に遅れが生じます。ならば、その重いところをさらってやることで、歩度(ほど)と呼ばれる姿勢差を縮めてあげるんですね」
桜田さんが覗く顕微鏡下のテンプの直径は、9ミリの大きさだ。その外周幅0.8ミリ部分を、先端がキリになっている手作りのドライバーでネジを回すように、何と1000分の1ミリの精度でかき削っていくのである。何時部分を何回転で削るのか。すべては経験と勘に基づく手作業である。
同様の微調整作業は、ヒゲゼンマイに対しても行われている。「ヒゲふれ取り」と呼ばれる調整だ。ゼンマイの巻き方に上下のブレがないか、らせんの巻き方がスムーズな波紋を描くように縮んだり、戻ったりするか。こうした曲がり、歪みをピンセットで直したり、カーブづけをしながら、ずれていた重心を調整し、なめらかなゼンマイ形状になるよう微調整しているのである。
ちなみにヒゲゼンマイの幅は0.1ミリ、厚みは32ミクロンである。現在、グランドセイコーなどの高級メカ時計に求められるこうした調整とメンテナンスは、桜田さんを含めたわずか3名しかできないことを教えられた。
◆経験と勘だけではどうにもならない部分
同社は、こうした熟練技能を継承するために、国内の系列製造拠点である盛岡セイコー工業に、そのためのシステムを計32名体制で集結されつつある。地の利を考慮し、高級メカ時計の製造とメンテナンス部門を兼ねた千葉県大野工場の高級時計工房は、同社のブランチであると同時に、高度な技能教授者の養成工房でもある。
再び桜田さんが語る。
「クォーツ時計の製造は、比較的簡単な電気理論で読み切れますが、メカ時計の場合は複雑な物理理論が前提になります。伝承教育に際しては、まず舶来メカ時計にも共通する理論教育から入り、次に教材を用いた課題教育に移ります。これを何秒以内の姿勢差で調整せよ、といった具合です」
現在、同社ではメカ時計に従事する作業者から順次人選して、部品製造から外装、精度調整からメンテナンスに至る一連の技能を習熟させるために、部門ごとの継承プランを構築している。桜田さんが担当するムーブメント部門では、まず組み立てに従事する各作業者の技能検証を行い、何ができて何ができないかという技術練磨表作成する。そのうえで個人別の技能育成計画書に基づき、理論教育と実践教育に入るのである。
なぜ理論教育が必要なのか。桜田さんによれば、「調整によるメカ時計のつくり込みには、経験と勘だけではどうにもならない部分がある。メカ時計のきっちりした理論が頭にたたき込まれていなければ身に着くものではない」という。そうした理論が植え付けられたうえで、グランドセイコーのような高級時計の調整技能の習熟には、通常5年から10年を要するという。
月に2時間、メカにかかわる削りや磨きといった固有技能の理論を段階的に学び、実際の作業ラインのなかで実践していく。生産の歩留まりなどの問題はあるが、実作業のなかで体感しないと身に着かない。こうしたOJTによる技術習熟は工程別にポイント評価され、最終的には技能検定や技能競技大会への参加を目標とする。
当然、一足飛びに技能が習熟できるわけではない。しかし、ポイント評価や技能検定という目的意識をもたせることが、技能習得への動機づけとなるのだ。
このようにしてつくられる同社の高級メカ時計は、数十万円、なかには100万円を超えるものもある。しかし、月産30個しかできないスケルトンの限定記名モデルは発売直後に完売、製造から検定までに1カ月以上を要するグランドセイコーも受注後3カ月待ちの状態である。
これを貴族趣味ととるか、希少性に対する投資ととるかについてはさまざまな議論があろう。しかし、セイコーは、復刻したグランドセイコー、クレドールについては、製造中止後も30年メンテナンス対応を打ち出しており、孫子の代まで使えるロングライフ製品の長期対応を戦略にしようとしていることに疑いの余地はない。同時に、同社のメカ時計には、重要なエコデザインの哲学が込められている。重厚、堅牢、そして陳腐化しない美的価値を訴求する商品デザインそのものが、長期使用の重要性という「心」そのものを伝える「エコ・メッセージ」として機能している次世代的な意味に、多くの企業は気づくべきである。(99年6月掲載)
趣味性の高い嗜好品なので、セイコーを是非皆さんで買いましょうとかは云いませんけども、もしあなたが「1個くらい高級な機械式腕時計が欲しいけど、どれにしようか迷ってる」なんて人が居ましたら、この記事を読んで、できればその志に感銘を受けて頂けたらなぁとか思ってしまいます。
時計だけではないんですが「日本製」って良い製品が多いんですよ。
ただ宣伝が下手なだけなんですよね。
ではまた~♪
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2012/05/06 00:58:53