首都圏タクシー、後輪だけスタッドレス　危なくないの？

スタッドレスタイヤを装着して客を待つタクシー＝ＪＲ大宮駅東口
朝日新聞デジタル

　先月、２週連続で大雪に見舞われた都心では、雪道でスリップする乗用車や、あわてて冬用タイヤを購入するドライバーが相次いだ。一方、首都圏のタクシーは早々にスタッドレスタイヤを着けていたが、実は駆動する後輪２本だけに装着している車が少なくない。雪国では４本装着が常識。２本だけって、危なくないのだろうか。

　「４本着けるとね、運転手が油断するんですよ」。さいたま市内のタクシー会社の総務担当者はそう説明した。後輪２本だけのスタッドレス装着車を４本装着車より多く使っており、同社では２本のほうが事故率が低いのだという。

　記録的な大雪を観測した２月８日。さいたま市内でこの会社の「後輪だけスタッドレス」のタクシーに乗ってみた。運転技術は高く、スリップは一度もなかった。「２本で大丈夫ですか」と運転手に尋ねると、「そりゃ全部着けた方が安心ですけどねぇ」。

　東京都江東区にあるタクシー会社は、所有車のすべてが後輪のみの装着だ。同社は「都内で積雪する日は少なく、経費と保管場所の問題が大きい」という。

　タクシー用のスタッドレスタイヤは１本１万円弱とそれほど高くない。とはいえ、走行距離の長いタクシーはタイヤ交換も頻繁で費用もかさむ。コストに悩みながらも、さいたま市南区の会社は昨年末から４本装着に踏み切った。運転手からは「ブレーキの利きがよくなった」と好評という。

　２本装着問題をどう考えるか。タイヤメーカーに聞いてみた。

　横浜ゴム（東京都港区）は「２本だけでは、事故につながる可能性が４本より高くなる」と説明する。スタッドレスタイヤは、軟らかい材質に多く刻まれた溝がタイヤと路面との間に出来る水の膜を効率良く排水し、タイヤを滑りにくくする。２本ではその機能が十分に発揮できないという。

　タクシー業界の全国団体、全国ハイヤー・タクシー連合会（東京都千代田区）は「スタッドレスが２本だけでは効果がない」として、４本すべてのタイヤに装着するよう傘下の都道府県団体に指導している。昨秋、全国の団体が集まる会合にタイヤメーカーの専門家を招き、４本装着を周知した。関東運輸局も昨年２月、タクシー各社に文書で注意喚起をした。

　ところが、各都県の業界団体に取材すると、地域によっては４本装着が徹底されていなかった。スタッドレスの装着本数に法律上の決まりはなく、指導に従わなくても罰則がないことも背景にあるようだ。

　東京ハイヤー・タクシー協会の昨年２月の調査では、大半の車両は２本だけの装着。首都圏のほかのタクシー協会の多くは装着状況は調べておらず、加盟各社に対して「４本着用」の指導もしていなかった。

　毎冬、降雪や積雪に備えてスタッドレスタイヤを装着するよう県内各社に通達を出している埼玉運輸支局は「いちいち装着本数は指示しない。４本つけるのが当然と思っていますので」と困惑気味に話した。





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