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- Roonとラズパイで遊ぶ
まとめ記事(コンテンツ)
なかるうさん
2016/05/04
Roonとラズパイで遊ぶ
欧米のオーディオシーンで大人気、かどうかは知りませんが、日本でも一部で盛り上がりを見せ始めているRoonが面白そうなので導入してみました。
ルーンって何?Roonなのかroonなのかはっきりしない公式サイトではこう説明されています。
"Roon is a music management and listening solution that takes a very different approach to interacting with your music."
「ルーンとは、あなたと音楽の関係に画期的なアプローチをもたらす、楽曲管理およびリスニングソリューションです。」
とでも訳しましょうか(ヘタクソ!)。あちらさんのソフトらしく、ごたいそうな口上です。サブスクリプション(課金)制をとっているのも単なるアプリケーションとは違うところ。
「なんだよ有料かよ。じゃあiTunesでいいや」
なんて言わないで。どのあたりがiTunesやfoobar2000と「very different」なのか、レビューします。
Roonツアー
まずはこの画面を見てください。(クリックで拡大表示します)

非常に完成度の高い画面。軽く血の気が引きますw
楽曲管理ソフトというより、アーティストのWebサイトを見ているかのような画面です。
この美しい画面だけでも、Roonの特徴の一端が垣間見えます。
アルバムの説明、作曲者といった情報は楽曲ファイルのタグに入力してあるものではありません。他にもアルバムアート、歌詞などRoonにより膨大な情報が補完・置換され表示されます。
(自分のファイルが書き換えられることはないのでご安心を。ファイルのタグを優先表示させることもできます。)
表示するだけでなく、「発見」も演出されています。
たとえばこんな感じ。先ほどの画面からアーティストの説明へ。

アルバム一覧へ。

別のアルバムに来ました。画面の美しさは別として、これだけの機能なら他のソフトと変わりませんが・・・

説明に、フィリー・ジョー・ジョーンズが出ていますね。名前が青く(クリッカブル)表示されていることに注目。では彼が「参加」している作品は?

マイルス・デイヴィスへ飛びました。アーティストタグだけでは、こうはいきません。

このように、ライブラリが大きいほど、どんどんつながります。
「この作曲者は?」「この指揮者は?」「このオケは?」クラシックのCD-BOXを買い込んでいるミチョラー(未聴er)さんなどには強力なコンシェルジュとなってくれることでしょう。
音楽と出会うための工夫にあふれていて、情報を手繰っていく間に再生リスト(キュー)の曲目が増えてゆきます。リスニングに浸ってキューが空になると、今度はラジオと称する自動選曲機能がスタートします。とにかく使っていて楽しく、楽曲管理ソフトの近未来を感じさせるに十分なものがあります。

スマホ(Xperia Z3 Compact)にコントロールアプリのRoon Remoteを入れてみました。手元リモコンとして使えます。画面サイズに応じてきちんと表示が最適化されていますね。
Roonのシステム構成
どんなオーディオシステムでRoonを使うことができるのか。その柔軟性もRoonの特徴の一つとして挙げられます。

最近増えている、Roon対応(Roonレディ)のネットワークプレーヤーを使ったシステム。音楽サーバーとしてPCを、リモコンとしてスマホやタブレットを使う標準的な構成です。
なおRoonレディの製品としては、プレーヤーだけでなくサーバーも登場しているので、オーディオシステムにPCを組み込むことが嫌いな人は「オーディオ機器らしい」ルックスのRoonシステムを構築することも可能です。それなりの投資は必要になりますが。

手軽にRoonを体験したいならこちら。Roonレディのオーディオ機器がなくても、PCとUSBオーディオ、あるいはPCのみの最小構成でRoonを使うことができます。つまり、普通にPCオーディオを実践している人ならハードウェアの追加なしでいけます。

最小構成にスマホやタブレットを追加したシステム。PCオーディオがネットオーディオっぽくなります。

Linux機器を出力デバイスに使った例。超小型のボード型コンピュータ、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)をLAN/USBトランスポートにしています。今回試したのはこの構成です。
PC、スマホ、タブレット、対応オーディオ機器、さらにラズパイ、NASと縦横無尽にデバイスを組み合わせて展開するRoonシステム。音楽ファンにも、ハードウェア好きにも、なかなか面白そうでしょ?
Roonのアプリ
次に、Roonのアプリ群を見てみます。ダウンロードのページにあるこの図をじーっと眺めてみるとルーンの全体像が把握できます。

現行バージョンのRoon 1.2で利用可能なアプリはこうなっています。
「サーバー」「リモート」「ブリッジ」という3つのアプリと、全部入りのRoonアプリの計4種類があります。PC、Mac、iOS、Android、Linuxの各プラットフォームで利用することができます。「全部入り」をPCにインストールすれば、iTunesなどと同様にスタンドアロンで使えますし、それぞれのアプリを組み合わせればルーンらしいシステムが作れます。
各アプリには、次の3つの機能が振り分けられます。
「コア」
-文字通りRoonの核。楽曲ライブラリとその管理、再生機能を司ります。
「コントロール」
-再生制御を行うユーザーインターフェース(UI)部分です。
「アウトプット」
-音声信号の出力部です。DACなど、ハードウェアでRoon対応した製品もあります。
ここまでの6つの単語と後に出てくる「RAAT」を覚えれば、ルーンは知ったかできます。
基本的にはRoon Serverは「コア」、Roon Remoteは「コントロール」、Roon Bridgeは「アウトプット」を実現するものですが、例えばRoon Serverには「アウトプット」の機能もあるので、サーバーにするPCにスピーカーをつないで音楽再生させることも可能です。
DLNAを使ったことのある人なら
「コア」=DMS(デジタルメディアサーバー)
「コントロール」=DMC(デジタルメディアコントローラー)
「アウトプット」=DMR(デジタルメディアレンダラー)
と置き換えれば理解しやすいでしょう(厳密にはちょっと違いがあります)。それぞれの機能が一体となったり別々にしたり自由に組み合わせることが可能な点もDLNAによく似ています。
課金はコアごとに発生します。有効なコアが1つであれば、他の機能をいくつ使っても追加料金は発生しません。1台のサーバーによるマルチルーム再生を念頭に置いていることが伺えます。
ここで上の図をもう一度よく見てみると、単純なマルチプラットフォーム、つまり複数のOSで同じことができるものではないことに気がつくと思います。
PC/Macはサーバー、スマホやタブレットはリモコンとして、よりハードウェア寄りのLinux搭載機器は出力デバイスとして使えるよう、周到に考えられたアプリ群となっています。
システムプラン
今回はクロスプラットフォームであることを生かしてこんな環境を構築してみました。
ハードウェア的には、ちょうど1年前のシステムにラズベリーパイを加えただけです。

スタンドアロンで動作する全部入りRoonのインストール要件を見ると、それなりのスペックが必要です。ウチのメインPCでは無理だったので、3つの機能を別々のハードウェアが受け持つ分散環境にしました。Roon Serverは「全部入り」には必須のOpenGL3.0対応が外れる分だけ敷居が低くなり、要件より古いCPUでも動きます。
(2016/5/8追記)
公式にRoon 1.2をインストールできる要件は、コードネームIvy Bridge以降でIntel Core i3以上のプロセッサとなっているので、概ね2012年モデル以降のPCであれば利用可能でしょう。1つ前の世代となるSandy Bridgeで動いたという情報もあり、このあたりが「全部入り」を動かせる境界のようです。(CPU内蔵グラフィックでOpenGL3.0をサポートしているのはSandy Bridge以降です。)
自分のはサーバー・メインPCともそれよりさらに古いCore2 Duo世代ですが、全部入りとRemoteはインストール不可、ServerとBridgeは可能でした。
そろそろ更新したいのう・・・
コントロールは家庭用AndroidセットトップBOXのNexus Player(標準Android OSに書き換え済み)を使いました。
普通にスマホでも良いのですが、上で紹介したようにRoonの表示は豪華なので高解像度のモニターを使える方が楽しいです。タブレットも便利ですよ。
Bridgeはラズパイでも動作します。僅かな消費電力で常時稼働でき、手持ちのUSB-DACをRoonシステムに組み入れることができるラズパイはRoonのキラーデバイスじゃないかと。
Pi3になってWi-Fiを内蔵しましたが、ハイレゾ再生するなら有線LANを使います。
インストール
自宅で稼働中のWindowsサーバーにRoon Serverをインストール。
Nexus PlayerにはGoogle PlayからRoon Remoteアプリをインストール。
ラズパイ推奨のOSはRaspbian Jessie Liteです。OSのイメージをmicroSDカードに焼いて起動、Roon Bridgeはインストーラがあるのでコマンド一発で入ります。公式フォーラムに詳細な初心者ガイドがあります。
さらっと書きましたけど、本当に簡単。着荷して1時間で音が出ました。
注意点は、大文字のOをゼロと間違えないこと(やればわかる笑)位です。
(2020/3/3追記)
このブログをアップした当時はOSと別にRoon Bridgeをインストールしましたが、現在はRoonに対応したLinuxのディストリビューションがあります。リンクした初心者ガイドに追記されているDietPiやRopieeeの他、HiFiBerryOSなどもRoonに対応しています。OSイメージをmicroSDに書き込むだけで済むので、さらに簡単になりました。
設定
インストール後、サーバー側での作業はファイアウォールを開けるだけで、ラズパイに至っては電源を入れておく以外何もする必要はありません。以降の設定は全てRoon Remoteからできます。
Roon Remoteを起動すると、普通は自動でサーバーを見つけてくれます。(自分の環境ではサーバーがWi-Fiの向こうにいるためIPアドレスの指定が必要でした。)
ライブラリのフォルダ指定などを済ませるとバックグラウンドでライブラリのスキャンが始まり、冒頭の画面へ。すぐ使用可能になります。
この手の「ネットサービス統合型」の再生環境では、見栄えは良くても音質はOSまかせでイマイチなんて場合もありますが、Roonはこの点でも魅力的な側面をもっています。
むしろ、こっちがRoonの真骨頂。
LAN、USBといったハードウェア、さらにOSやドライバなどソフトウェア上の伝送経路まで含めて劣化のない音声データ伝送を確保できる
「RAAT(Roon Advanced Audio Transport)」
という、オーディオファイル向けといえるデータ配信技術を採用しています。DSDなどハイレゾにも普通に対応した上で、ナレッジベースのRAATの項に見られるように相当高い目標を掲げており、LUMINやdCSといった錚々たるハイエンドオーディオメーカーがパートナーとして名を連ねているのも頷けるところです。

出力デバイスの設定画面です。
ネットワークにぶら下がっている全てのRoon対応デバイスが表示されています。同じ機器でもドライバが複数あれば別のものとして列挙されるのがRAATの特徴です。リストの一番下にラズパイ経由のUSB-DACが見えています。
使うデバイスだけEnableにしておくと、以降右下のスピーカーアイコンで簡単に選択できます。デバイスには自由に名前をつけられます。再生する楽曲はデバイスごとに独立しているので、家じゅうにラズパイをばらまいて、みんなのスマホでそれぞれ自由にコントロール、なんてことも出来そうです。(それに耐えるだけのサーバーやネットワークの性能は必要になりますが。)
Roon Bridgeでは、それをインストールしたOSのオーディオドライバを使います。
したがって、ラズパイであればLinuxのALSAがサポートするデバイスが使用可能です。USB-DACならUSB Audio Class対応品、もちろんIQ Audio Pi-DAC+やHifiberry Digi+といったラズパイ専用DAC/DDCも大丈夫。

えっと、何から何にアクセスしてるんでしたっけ?Androidで、PCサーバーの画面を表示して、設定しているのはUSB-DAC・・・全く意識せず操作できるのがスゴイ。
DSDのファイルもネイティブ再生可能です。ALSAなのでDoPを選択しています。CPUの性能により、ラズパイ2でDSD64まで、Pi3でDSD128、CuBox-iならDSD256までイケるそうです。
そういえば384kHzが選べていませんね・・・これは何の制限だろう?まぁいいか。
こんな複雑なシステムでも操作系は破綻することなく見事に統一されているし、再生動作はド安定、しかも高音質。なんかもう・・・
スマートでコレクトでクレバーでパーフェクト。
完璧すぎて泣けてきた。世の中凄い仕事をする人たちがいるもんだ。
(2016/6/13追記)1週間くらい放っておくとサーバーアプリがいつの間にか落ちていることがあります。再生中に停止した経験はありませんが、「ド安定」という表現はひとまず取り消します。
このあたりでもう口あんぐり状態なワケですが、まだまだ。間違い探しのようなスクリーンショットをいくつか。

再生画面で出力経路(シグナルパス)の品質が確認できます。
紫色(藤色?)のアイコンは最高品質で、ロスレスを示しています。これは単にロスレスフォーマットの音源を再生しているだけではなく、ラズパイのUSB出力までの伝送経路がビットパーフェクトを確保できているという意味で、少なくともデータ的には音質劣化の要素はないとみてよいと思います。

PCにRoon BridgeをインストールしてUSB-DACを接続した場合。
この場合もPCのASIOドライバー経由でロスレス伝送が確保できています。

同じPC、DACでドライバのみ変えたもの。音源は同じでも、「ロスレス」から一段階落ちた「ハイクォリティ」になっています。音質劣化の原因が最終出力段にあることがわかります。
WASAPIは共有モードで使っちゃダメ、って習いましたよね?

繰り返しになりますが、ラズパイからPC、Nexus Playerと次々渡り歩いています。手元のエアマウス一本で。
こちらはNexus PlayerのUSB出力で再生した場合。
当ページおなじみUAPPとは異なりAndroid OSのUSBオーディオドライバによる再生のため、途中でサンプルレート変換やOSのミキサーを通ってしまっていることが一目瞭然。
ここまで明確な表示は類のないものです。
これオーディオ的には極めて重要なことで、難しいことを考えなくても、とにかくここを見て紫色になっていればDACまで同じデータを届けられることが担保されます。PCオーディオ、ネットオーディオ時代になって発生した、
「PCスキルがないと性能を発揮できない」
「発揮できているか確認する方法がない」
という課題に対するアプローチとして注目すべきものです。ようやくCDプレーヤー時代の「再現性」(誰が使っても一定レベル以上の音が出るって意味ね)に追いついてきたというか。
あとはUSBバスの波形的な品質が心配というなら、ノイズフィルターでも強化電源でも電源分離ケーブルでもアイソレータでも好きなのを入れればよろし。
論理的な整合性はRoonがきっちり面倒見てくれるので、ユーザーはオカルトアナログ部分に専念できる。
正しい。実に正しい。
冷静になって、ここからは残念なところ。
邦楽アルバムになると自慢の情報補完はほとんど機能せず、見た目はその辺の再生ソフトと大して変わらないものになってしまいます(日本語のタグ表示は普通に可能です)。
試しに手持ちの国内アーティストを表示させてみると、

・・・この方たちは例外らしい。
「トラディショナルなJ-Popサウンドのさくら学院」という解説にはツッコミ入れたいw
また高音質の音楽配信サービス・TIDALが統合されていますが、これも日本では使えず。これらが解決すれば、年間$119のサブスクリプションフィーも妥当に思えるのですが。
車載運用については、Roon Serverが今のところPC(Windows/Mac/Linux)でしか動作しないので、ノートPCかSurface Pro級のハイエンドWinタブでも持ち込まなければならずちょっと大変です。
クルマで使うのにこれほどリッチなUXも必要ないので、将来もう少し軽量なサーバーアプリが出たら、火がつきそう。その時はライセンス形態もぜひ考慮していただきたいものです。
てゆーか、Surface ProとかVAIO Z Canvas買えば、今すぐこの豪華環境をクルマに持ち込めるのか。ゴクリ。

VoomPC-2 Enclosure for Car PC Applications (オリオスペック)
こんなのもありますけどね。
RAATによる高音質再生というメリットを買って、しばらくホームオーディオで使ってみようと思っています。1年分の課金払ったし・・・いや、永年契約に移行しようかと本気で考えています。
以上、Roonの紹介でした。「魅せるだけ」の再生ソフトではないことが伝わったでしょうか?
近い将来クルマにもこんな環境がやってくるかもしれません。
そこの国内メーカーさん!flacや日本語タグも読めないのが新製品では、そろそろ2周遅れになっちゃいますよ。超頑張って下さい!
(2016/5/8追記)
「1年以上USBオーディオをやってきて、そんな薄っぺらな事しか書かないのか?」
と思い直して追記。
RoonでUSBオーディオ機器を使用する場合、RAATがOSのUSBオーディオドライバを使う仕組み上、この部分での音質差は依然として残ります。ドライバによる音質差などというとオカルトっぽく聞こえるかもしれませんが、例えばドライバがAsynchronousモードを「きちんと」実装できているかどうかは、アイコンの色では判断できません。ビットパーフェクトだからといってどんなドライバでも全く同じ音になると考えるのは早計です。
が、ばらつきの多いPC/ネットオーディオのレベルを底上げするための第一歩として歓迎すべきことだと思います。
(2021/9追記)
Linux版のRoonコアをインストールしてみました。それだけでは面白くないので、仮想化基盤のESXiの上でファイルサーバーとRoonコアを並列動作させています。Roonは3回シリーズの最終回で。
仮想化オーディオサーバーの製作(1)
仮想化オーディオサーバーの製作(2)
仮想化オーディオサーバーの製作(3)
(2022/12追記)
Roonが2.0にバージョンアップ、新たに登場したスマホアプリのRoon ARCと組み合わせると自宅のRoonコアに保存した音楽ライブラリを外出先で聴けるようになりました。
このブログを読み返してみれば、当時の自分はモバイル用にサーバーのサブセットができるのでは?と想像していたのに対して、「ライブラリは一元管理」の原則を崩さず展開してきたワケです。
もちろんRoonだけあってハイレゾロスレスの配信も可能。ギガがすごいことになりそうですが、こんな時代が来てしまったのですね・・・
Roon ARCを試す(1)
Roon ARCを試す(2)
ルーンって何?Roonなのかroonなのかはっきりしない公式サイトではこう説明されています。
"Roon is a music management and listening solution that takes a very different approach to interacting with your music."
「ルーンとは、あなたと音楽の関係に画期的なアプローチをもたらす、楽曲管理およびリスニングソリューションです。」
とでも訳しましょうか(ヘタクソ!)。あちらさんのソフトらしく、ごたいそうな口上です。サブスクリプション(課金)制をとっているのも単なるアプリケーションとは違うところ。
「なんだよ有料かよ。じゃあiTunesでいいや」
なんて言わないで。どのあたりがiTunesやfoobar2000と「very different」なのか、レビューします。
Roonツアー
まずはこの画面を見てください。(クリックで拡大表示します)

非常に完成度の高い画面。軽く血の気が引きますw
楽曲管理ソフトというより、アーティストのWebサイトを見ているかのような画面です。
この美しい画面だけでも、Roonの特徴の一端が垣間見えます。
アルバムの説明、作曲者といった情報は楽曲ファイルのタグに入力してあるものではありません。他にもアルバムアート、歌詞などRoonにより膨大な情報が補完・置換され表示されます。
(自分のファイルが書き換えられることはないのでご安心を。ファイルのタグを優先表示させることもできます。)
表示するだけでなく、「発見」も演出されています。
たとえばこんな感じ。先ほどの画面からアーティストの説明へ。

アルバム一覧へ。

別のアルバムに来ました。画面の美しさは別として、これだけの機能なら他のソフトと変わりませんが・・・

説明に、フィリー・ジョー・ジョーンズが出ていますね。名前が青く(クリッカブル)表示されていることに注目。では彼が「参加」している作品は?

マイルス・デイヴィスへ飛びました。アーティストタグだけでは、こうはいきません。

このように、ライブラリが大きいほど、どんどんつながります。
「この作曲者は?」「この指揮者は?」「このオケは?」クラシックのCD-BOXを買い込んでいるミチョラー(未聴er)さんなどには強力なコンシェルジュとなってくれることでしょう。
音楽と出会うための工夫にあふれていて、情報を手繰っていく間に再生リスト(キュー)の曲目が増えてゆきます。リスニングに浸ってキューが空になると、今度はラジオと称する自動選曲機能がスタートします。とにかく使っていて楽しく、楽曲管理ソフトの近未来を感じさせるに十分なものがあります。

スマホ(Xperia Z3 Compact)にコントロールアプリのRoon Remoteを入れてみました。手元リモコンとして使えます。画面サイズに応じてきちんと表示が最適化されていますね。
Roonのシステム構成
どんなオーディオシステムでRoonを使うことができるのか。その柔軟性もRoonの特徴の一つとして挙げられます。

最近増えている、Roon対応(Roonレディ)のネットワークプレーヤーを使ったシステム。音楽サーバーとしてPCを、リモコンとしてスマホやタブレットを使う標準的な構成です。
なおRoonレディの製品としては、プレーヤーだけでなくサーバーも登場しているので、オーディオシステムにPCを組み込むことが嫌いな人は「オーディオ機器らしい」ルックスのRoonシステムを構築することも可能です。それなりの投資は必要になりますが。

手軽にRoonを体験したいならこちら。Roonレディのオーディオ機器がなくても、PCとUSBオーディオ、あるいはPCのみの最小構成でRoonを使うことができます。つまり、普通にPCオーディオを実践している人ならハードウェアの追加なしでいけます。

最小構成にスマホやタブレットを追加したシステム。PCオーディオがネットオーディオっぽくなります。

Linux機器を出力デバイスに使った例。超小型のボード型コンピュータ、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)をLAN/USBトランスポートにしています。今回試したのはこの構成です。
PC、スマホ、タブレット、対応オーディオ機器、さらにラズパイ、NASと縦横無尽にデバイスを組み合わせて展開するRoonシステム。音楽ファンにも、ハードウェア好きにも、なかなか面白そうでしょ?
Roonのアプリ
次に、Roonのアプリ群を見てみます。ダウンロードのページにあるこの図をじーっと眺めてみるとルーンの全体像が把握できます。

現行バージョンのRoon 1.2で利用可能なアプリはこうなっています。
「サーバー」「リモート」「ブリッジ」という3つのアプリと、全部入りのRoonアプリの計4種類があります。PC、Mac、iOS、Android、Linuxの各プラットフォームで利用することができます。「全部入り」をPCにインストールすれば、iTunesなどと同様にスタンドアロンで使えますし、それぞれのアプリを組み合わせればルーンらしいシステムが作れます。
各アプリには、次の3つの機能が振り分けられます。
「コア」
-文字通りRoonの核。楽曲ライブラリとその管理、再生機能を司ります。
「コントロール」
-再生制御を行うユーザーインターフェース(UI)部分です。
「アウトプット」
-音声信号の出力部です。DACなど、ハードウェアでRoon対応した製品もあります。
ここまでの6つの単語と後に出てくる「RAAT」を覚えれば、ルーンは知ったかできます。
基本的にはRoon Serverは「コア」、Roon Remoteは「コントロール」、Roon Bridgeは「アウトプット」を実現するものですが、例えばRoon Serverには「アウトプット」の機能もあるので、サーバーにするPCにスピーカーをつないで音楽再生させることも可能です。
DLNAを使ったことのある人なら
「コア」=DMS(デジタルメディアサーバー)
「コントロール」=DMC(デジタルメディアコントローラー)
「アウトプット」=DMR(デジタルメディアレンダラー)
と置き換えれば理解しやすいでしょう(厳密にはちょっと違いがあります)。それぞれの機能が一体となったり別々にしたり自由に組み合わせることが可能な点もDLNAによく似ています。
課金はコアごとに発生します。有効なコアが1つであれば、他の機能をいくつ使っても追加料金は発生しません。1台のサーバーによるマルチルーム再生を念頭に置いていることが伺えます。
ここで上の図をもう一度よく見てみると、単純なマルチプラットフォーム、つまり複数のOSで同じことができるものではないことに気がつくと思います。
PC/Macはサーバー、スマホやタブレットはリモコンとして、よりハードウェア寄りのLinux搭載機器は出力デバイスとして使えるよう、周到に考えられたアプリ群となっています。
システムプラン
今回はクロスプラットフォームであることを生かしてこんな環境を構築してみました。
ハードウェア的には、ちょうど1年前のシステムにラズベリーパイを加えただけです。

スタンドアロンで動作する全部入りRoonのインストール要件を見ると、それなりのスペックが必要です。ウチのメインPCでは無理だったので、3つの機能を別々のハードウェアが受け持つ分散環境にしました。Roon Serverは「全部入り」には必須のOpenGL3.0対応が外れる分だけ敷居が低くなり、要件より古いCPUでも動きます。
(2016/5/8追記)
公式にRoon 1.2をインストールできる要件は、コードネームIvy Bridge以降でIntel Core i3以上のプロセッサとなっているので、概ね2012年モデル以降のPCであれば利用可能でしょう。1つ前の世代となるSandy Bridgeで動いたという情報もあり、このあたりが「全部入り」を動かせる境界のようです。(CPU内蔵グラフィックでOpenGL3.0をサポートしているのはSandy Bridge以降です。)
自分のはサーバー・メインPCともそれよりさらに古いCore2 Duo世代ですが、全部入りとRemoteはインストール不可、ServerとBridgeは可能でした。
そろそろ更新したいのう・・・
コントロールは家庭用AndroidセットトップBOXのNexus Player(標準Android OSに書き換え済み)を使いました。
普通にスマホでも良いのですが、上で紹介したようにRoonの表示は豪華なので高解像度のモニターを使える方が楽しいです。タブレットも便利ですよ。
Bridgeはラズパイでも動作します。僅かな消費電力で常時稼働でき、手持ちのUSB-DACをRoonシステムに組み入れることができるラズパイはRoonのキラーデバイスじゃないかと。
Pi3になってWi-Fiを内蔵しましたが、ハイレゾ再生するなら有線LANを使います。
インストール
自宅で稼働中のWindowsサーバーにRoon Serverをインストール。
Nexus PlayerにはGoogle PlayからRoon Remoteアプリをインストール。
ラズパイ推奨のOSはRaspbian Jessie Liteです。OSのイメージをmicroSDカードに焼いて起動、Roon Bridgeはインストーラがあるのでコマンド一発で入ります。公式フォーラムに詳細な初心者ガイドがあります。
さらっと書きましたけど、本当に簡単。着荷して1時間で音が出ました。
注意点は、大文字のOをゼロと間違えないこと(やればわかる笑)位です。
(2020/3/3追記)
このブログをアップした当時はOSと別にRoon Bridgeをインストールしましたが、現在はRoonに対応したLinuxのディストリビューションがあります。リンクした初心者ガイドに追記されているDietPiやRopieeeの他、HiFiBerryOSなどもRoonに対応しています。OSイメージをmicroSDに書き込むだけで済むので、さらに簡単になりました。
設定
インストール後、サーバー側での作業はファイアウォールを開けるだけで、ラズパイに至っては電源を入れておく以外何もする必要はありません。以降の設定は全てRoon Remoteからできます。
Roon Remoteを起動すると、普通は自動でサーバーを見つけてくれます。(自分の環境ではサーバーがWi-Fiの向こうにいるためIPアドレスの指定が必要でした。)
ライブラリのフォルダ指定などを済ませるとバックグラウンドでライブラリのスキャンが始まり、冒頭の画面へ。すぐ使用可能になります。
この手の「ネットサービス統合型」の再生環境では、見栄えは良くても音質はOSまかせでイマイチなんて場合もありますが、Roonはこの点でも魅力的な側面をもっています。
むしろ、こっちがRoonの真骨頂。
LAN、USBといったハードウェア、さらにOSやドライバなどソフトウェア上の伝送経路まで含めて劣化のない音声データ伝送を確保できる
「RAAT(Roon Advanced Audio Transport)」
という、オーディオファイル向けといえるデータ配信技術を採用しています。DSDなどハイレゾにも普通に対応した上で、ナレッジベースのRAATの項に見られるように相当高い目標を掲げており、LUMINやdCSといった錚々たるハイエンドオーディオメーカーがパートナーとして名を連ねているのも頷けるところです。

出力デバイスの設定画面です。
ネットワークにぶら下がっている全てのRoon対応デバイスが表示されています。同じ機器でもドライバが複数あれば別のものとして列挙されるのがRAATの特徴です。リストの一番下にラズパイ経由のUSB-DACが見えています。
使うデバイスだけEnableにしておくと、以降右下のスピーカーアイコンで簡単に選択できます。デバイスには自由に名前をつけられます。再生する楽曲はデバイスごとに独立しているので、家じゅうにラズパイをばらまいて、みんなのスマホでそれぞれ自由にコントロール、なんてことも出来そうです。(それに耐えるだけのサーバーやネットワークの性能は必要になりますが。)
Roon Bridgeでは、それをインストールしたOSのオーディオドライバを使います。
したがって、ラズパイであればLinuxのALSAがサポートするデバイスが使用可能です。USB-DACならUSB Audio Class対応品、もちろんIQ Audio Pi-DAC+やHifiberry Digi+といったラズパイ専用DAC/DDCも大丈夫。

えっと、何から何にアクセスしてるんでしたっけ?Androidで、PCサーバーの画面を表示して、設定しているのはUSB-DAC・・・全く意識せず操作できるのがスゴイ。
DSDのファイルもネイティブ再生可能です。ALSAなのでDoPを選択しています。CPUの性能により、ラズパイ2でDSD64まで、Pi3でDSD128、CuBox-iならDSD256までイケるそうです。
そういえば384kHzが選べていませんね・・・これは何の制限だろう?まぁいいか。
こんな複雑なシステムでも操作系は破綻することなく見事に統一されているし、再生動作は
スマートでコレクトでクレバーでパーフェクト。
完璧すぎて泣けてきた。世の中凄い仕事をする人たちがいるもんだ。
(2016/6/13追記)1週間くらい放っておくとサーバーアプリがいつの間にか落ちていることがあります。再生中に停止した経験はありませんが、「ド安定」という表現はひとまず取り消します。
このあたりでもう口あんぐり状態なワケですが、まだまだ。間違い探しのようなスクリーンショットをいくつか。

再生画面で出力経路(シグナルパス)の品質が確認できます。
紫色(藤色?)のアイコンは最高品質で、ロスレスを示しています。これは単にロスレスフォーマットの音源を再生しているだけではなく、ラズパイのUSB出力までの伝送経路がビットパーフェクトを確保できているという意味で、少なくともデータ的には音質劣化の要素はないとみてよいと思います。

PCにRoon BridgeをインストールしてUSB-DACを接続した場合。
この場合もPCのASIOドライバー経由でロスレス伝送が確保できています。

同じPC、DACでドライバのみ変えたもの。音源は同じでも、「ロスレス」から一段階落ちた「ハイクォリティ」になっています。音質劣化の原因が最終出力段にあることがわかります。
WASAPIは共有モードで使っちゃダメ、って習いましたよね?

繰り返しになりますが、ラズパイからPC、Nexus Playerと次々渡り歩いています。手元のエアマウス一本で。
こちらはNexus PlayerのUSB出力で再生した場合。
当ページおなじみUAPPとは異なりAndroid OSのUSBオーディオドライバによる再生のため、途中でサンプルレート変換やOSのミキサーを通ってしまっていることが一目瞭然。
ここまで明確な表示は類のないものです。
これオーディオ的には極めて重要なことで、難しいことを考えなくても、とにかくここを見て紫色になっていればDACまで同じデータを届けられることが担保されます。PCオーディオ、ネットオーディオ時代になって発生した、
「PCスキルがないと性能を発揮できない」
「発揮できているか確認する方法がない」
という課題に対するアプローチとして注目すべきものです。ようやくCDプレーヤー時代の「再現性」(誰が使っても一定レベル以上の音が出るって意味ね)に追いついてきたというか。
あとはUSBバスの波形的な品質が心配というなら、ノイズフィルターでも強化電源でも電源分離ケーブルでもアイソレータでも好きなのを入れればよろし。
論理的な整合性はRoonがきっちり面倒見てくれるので、ユーザーは
正しい。実に正しい。
冷静になって、ここからは残念なところ。
邦楽アルバムになると自慢の情報補完はほとんど機能せず、見た目はその辺の再生ソフトと大して変わらないものになってしまいます(日本語のタグ表示は普通に可能です)。
試しに手持ちの国内アーティストを表示させてみると、

・・・この方たちは例外らしい。
「トラディショナルなJ-Popサウンドのさくら学院」という解説にはツッコミ入れたいw
また高音質の音楽配信サービス・TIDALが統合されていますが、これも日本では使えず。これらが解決すれば、年間$119のサブスクリプションフィーも妥当に思えるのですが。
車載運用については、Roon Serverが今のところPC(Windows/Mac/Linux)でしか動作しないので、ノートPCかSurface Pro級のハイエンドWinタブでも持ち込まなければならずちょっと大変です。
クルマで使うのにこれほどリッチなUXも必要ないので、将来もう少し軽量なサーバーアプリが出たら、火がつきそう。その時はライセンス形態もぜひ考慮していただきたいものです。
てゆーか、Surface ProとかVAIO Z Canvas買えば、今すぐこの豪華環境をクルマに持ち込めるのか。ゴクリ。

VoomPC-2 Enclosure for Car PC Applications (オリオスペック)
こんなのもありますけどね。
RAATによる高音質再生というメリットを買って、しばらくホームオーディオで使ってみようと思っています。1年分の課金払ったし・・・いや、永年契約に移行しようかと本気で考えています。
以上、Roonの紹介でした。「魅せるだけ」の再生ソフトではないことが伝わったでしょうか?
近い将来クルマにもこんな環境がやってくるかもしれません。
そこの国内メーカーさん!flacや日本語タグも読めないのが新製品では、そろそろ2周遅れになっちゃいますよ。超頑張って下さい!
(2016/5/8追記)
「1年以上USBオーディオをやってきて、そんな薄っぺらな事しか書かないのか?」
と思い直して追記。
RoonでUSBオーディオ機器を使用する場合、RAATがOSのUSBオーディオドライバを使う仕組み上、この部分での音質差は依然として残ります。ドライバによる音質差などというとオカルトっぽく聞こえるかもしれませんが、例えばドライバがAsynchronousモードを「きちんと」実装できているかどうかは、アイコンの色では判断できません。ビットパーフェクトだからといってどんなドライバでも全く同じ音になると考えるのは早計です。
が、ばらつきの多いPC/ネットオーディオのレベルを底上げするための第一歩として歓迎すべきことだと思います。
(2021/9追記)
Linux版のRoonコアをインストールしてみました。それだけでは面白くないので、仮想化基盤のESXiの上でファイルサーバーとRoonコアを並列動作させています。Roonは3回シリーズの最終回で。
仮想化オーディオサーバーの製作(1)
仮想化オーディオサーバーの製作(2)
仮想化オーディオサーバーの製作(3)
(2022/12追記)
Roonが2.0にバージョンアップ、新たに登場したスマホアプリのRoon ARCと組み合わせると自宅のRoonコアに保存した音楽ライブラリを外出先で聴けるようになりました。
このブログを読み返してみれば、当時の自分はモバイル用にサーバーのサブセットができるのでは?と想像していたのに対して、「ライブラリは一元管理」の原則を崩さず展開してきたワケです。
もちろんRoonだけあってハイレゾロスレスの配信も可能。ギガがすごいことになりそうですが、こんな時代が来てしまったのですね・・・
Roon ARCを試す(1)
Roon ARCを試す(2)
関連情報URL : https://roonlabs.com/index.html
Posted at 2016/05/04 11:34:57
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