まとめ記事(コンテンツ)

2026/02/10

ABSは、なぜ最短距離で止まれる? 【摩擦力とタイヤ(3)】


では、鉄道の車輪ではなく、タイヤの場合はどう考えれば良いのでしょうか。


【ゴムの摩擦は鉄とは異なる?】

ネット上には、クーロンの摩擦法則を根拠に、「ワイドタイヤにしてもグリップ力は上がらない。あれはタイヤメーカーが高価なタイヤを売りつけたいがための詭弁だ」などと主張する人もいますが、ゴムのような弾性体の場合、荷重が同じでも接触面積が増えると、摩擦力は増大します。
※レーシングカーのタイヤを思い起こせば、さすがにおかしいと気づくはずですが・・・中途半端に頭の良い人ほど、自信過剰で多弁な人が多いように思う。

この事は、仮に同じタイヤでも、空気圧が低いと摩擦力は上がり、空気圧が高いと摩擦力は下がる事を意味するので、燃費を気にする場合は、空気圧を高めにしておく方が良いという話になります。

以上のように、ゴムのような弾性体にクーロンの摩擦法則を当て嵌めて考えるのは誤りです。


【凝着摩擦とヒステリシス摩擦】

まずゴムの場合、その弾性力によって、路面の凸凹に併せて変形して食い込む→元に戻るを繰り返すために、特有の摩擦挙動を示します。

つまり、より強い凝着、つまり凝着摩擦が起こると同時に、変形が元に戻る際に、ゴム内部の分子間摩擦による発熱(ヒステリシスロス)が発生し、これが摩擦仕事となり、ヒステリシス摩擦が発生します。

このように、トータルの摩擦力は、
・f=fa+fh(a=adhesion、h=hysteresis)
となります。


【凝着域と滑り域】

また、タイヤのように空気入り場合は、タイヤが空気ばねとなるために、接地面のたわみ量が増えることで摩擦力も増えますが、実際の接地面の挙動は複雑です。


画像は「タイヤの摩擦と粘弾性(J-STAGE)」より

図のように、走行中は常に凝着域と滑り域とが同時発生していますが、これは(実効半径が変化することで)タイヤの周速とタイヤと路面間の相対速度に差が生じるためであり、その比率は車の運動状態(スリップ率の変化)によって刻々と変化します。

以前ブレーキの話を書いたときに、「タイヤの摩擦力は、スリップ率10~20%(概ねABSが効いている領域)で最大になる」と書きましたが、これはトータルの摩擦力(f=fa+fh)が最大になる凝着域と滑り域との組み合わせが、スリップ率10~20%の時だという事です。


同じく「タイヤの摩擦と粘弾性(J-STAGE)」より


ただ、スリップ率が100%になっても、上図を見れば解かる通り、高い摩擦力が維持されるため、先の大学教授が言うような「タイヤがロックすれば、走行抵抗だけになるのでなかなか止まれない」という事はありません。
今まで考察してきたように、鉄道の車輪と違いタイヤの摩擦力は段違いなので(鉄に比べてゴムが持っている摩擦力は概ね5倍程度)、実際にはマンガのようにキキーと止まることが可能です。
※実際に、時速100キロからのフルブレーキングで、ABS(EBDなし)の有無による制動距離の差は概ね1割、つまり車1台分程度です(アスファルト乾燥路の場合)

昭和のTV刑事ドラマを見て育った人は、車が白煙を上げて急停止するようなカーアクションシーンをよく見たはずですが・・・大学教授の場合、自信過剰云々より、勉強しかしてこなかったのかも?

Posted at 2026/02/10 21:03:12

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