まとめ記事(コンテンツ)

2016/10/27

けいよん! 「翼をひろげて」

「だから、チューニング!」08:Corner の三年前の事だ。
松田AZU、18歳で高校生の夏………。

ドカッ!







松田AZUはいきなり親友の日和八千穂に蹴りを入れられた。
確か日和八千穂は昨日までは黒髪だったはずだが、いきなり金髪ヤンキーになってるんで一瞬誰だか解らなかった。





(Before)



「何すんだよ、いきなり!痛いじねえかか‼︎ 」と、松田AZUはガードはしたものの結構痛かったのでちょっとムッとしている。
幼なじみで中学まで一緒だった同級生の日和八千穂はじゃれてるつもりなのだ。







「ちょっと前まではよくケンカしたな、AZU!」と、イタズラっ子のように笑いながら殴ってくる。

「中学の時だろ、それ?もういい歳なんだから止めろって!あと、そうやって私の事を英語のニュアンスでAZUって呼ぶのもアンタだけだよ、八千穂。恥ずかしいから止めて!」







「何でぇ?『あずみ』より『AZU』の方が可愛いじゃん!」

「可愛いくないわ、ただ恥ずかしいだけよ!」

「一文字短くなるし、呼びやすいと思うけどなあ〜」







「そういえば昨日、ウチの妹がからわれた時、助けてくれたのアンタでしょ?」と日和八千穂に妹の事を聞いた。

「ああ、昨日の……。ウチラの学校の下級生がアンタの妹をからかっていたから穏便に注意しただけよ。よってたかって中学生にさ、みっともねえって。そしたら突然ブチキレて殴りかかってきたから、アタシは専守防衛しただけさ。極めて日本的で慎ましやかなセルフ・ディフェンスしただけよ……」

「そんな大した理由も動機もなく他人にケンカ売ったり非難したり中傷したり……。世の中から戦争や紛争、テロリズムがなくならないはずだわ………」とAZUはイヤになるが、八千穂には感謝した。







「ねえ、八千穂…………何で金髪にしたの?」

「ん?おかしいか??」

「全然似合ってないわよ。元に戻したら?」







「そう?………………………………………金髪にしたくてした訳じゃないのよ。なあ、AZU、私のクルマを乗ってやってくんねえか?」

「えっ?」
松田AZUは八千穂がクルマを所有していた事と唐突な申し出に驚く。

「私はもう乗れなくなるんだ……。全然知らねえヤツに乗られるよりAZUに乗って欲しい……。いや、アンタだから乗って欲しいの」


「アンタ、クルマ持ってたの?」


「うん、兄貴のお下がりというか、兄貴から譲り受けたというか……」

「ああ、お兄ちゃん、クルマ持ってたんだ?学校の先生だよね?じゃあ、自分で乗ればいいじゃん。何で私に乗れなんていうのよ?」


バサッ!


「な、何?」

聞こえる筈のない羽音が松田AZUの耳に響く。









「鳥の羽根……………………?」


日和八千穂は儚げに微笑い自分の事を話しだした。

「時間が来たみたい。………………二週間前の朝、突然兄貴がひよこになった」

「えっ?」







「正確にはひよこ人間よ。高校教師の兄はひよこ人間になったにも関わらず変わらずに高校に通勤している。普通に授業して普通に職員室にいるんだ。しかも誰もひよこ人間になった兄貴を疑問に思わない。同僚の先生も自分のクラスの生徒も。最初は悪質な冗談かなんかと思った……。私だけがひよこに見えているのかと思ったよ………」

親友とはいえ八千穂の言っている事が突然過ぎてAZUには全く理解出来ない。

「だけど、違う、違うんだよ!兄貴はひよこ人間だって皆んな知ってるんだ…………。アンタ、私の髪、金髪に染めていると言っただろ?こいつは染めている訳じゃない……。一週間前に急に黄色になってきたの!体毛も全て黄色に……。私もなるのよ、兄貴みたいに…………」







「…………………何……、言ってんだ?」
意味が解らず現実感が奪われAZUはただ立ち尽くしている。

「理由は今の科学ではハッキリ解らない。おそらくウィルスが私たち兄弟の細胞のRNAに侵入しDNAに合成獣の遺伝情報を転写した。塩基配列の書き換えが行われ、人とひよこのキメラが突然変異したと、先生達は言っていたわ。そのウィルスは『ひよこウィルス』と呼ばれていた。手は羽根になり、唇はくちばしに変化し、そして三頭身になるのよ!」







「そうなると運転なんか出来やしない!だから、アニキから譲り受けた愛車にアンタに乗って欲しいんだ‼︎」

理不尽で不条理でにわかには受け入れ難い話だが、八千穂が嘘をついているように見えないし、確かにAZUは羽音を聞き黄色い羽根が舞っているのを見た。
そして八千穂の身体に変化が現れる…。

「解った。解ったから!そのクルマ、アタシが貰うよ。そしてアンタを乗せて何処にでも行くよ‼︎八千穂だけのドライバーになる‼︎! 何にもしてやれないけど、ただ側にいるだけならアタシにでも出来るから。クルマのメンテナンスだろうがなんだろうがアタシが全部してやるから………」







「AZU、ありがとう…………、アンタはきっとそう言ってくれると思ったよ。………………あのクルマ、大事にしてやってくれ…………………………」
とだけ言葉と羽根の欠片を残し八千穂は消えてしまった。







「八千穂………………………………………自分勝手な女………。一方的に押しつけていきやがった………」



















日和八千穂のクルマの駐車場に行くと青い小さなスポーツカーが停まっていた。
左右のドアの開き方が特殊なガルウイングのクルマだ。

「な、何だ、このクルマ?小さなスポーツカーなのか?」







この日、松田AZUの愛車になったAZ-1は翼をひろげたぴよ八先生の妹、日和八千穂にそっくりなクルマだった。









つづく
Posted at 2016/10/27 19:05:54

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