７０年代特撮変身ヒーローの名悪役・安藤三男を語る

７０年代特撮変身ヒーロー作品を語る上で、そのヒーロー役ばかりに目がいきがちだが、その対極の存在である悪役にも特徴ある役者が出演していた。

その中で、多くの作品で名悪役を演じたのが安藤三男さん（故人）である。

安藤さんの特撮の悪役デビューは、「ジャイアントロボ」での悪の組織・BF団の幹部、ドクトル・オーヴァだった。
ドクトル・オーヴァは宇宙人という設定で、スキンヘッドに眉の部分を大きく盛り上げ、顔を銀色に塗りつぶした独特のメイクを実施。

そんな宇宙人なのに、喋りは“べらんめい”な江戸弁というのが、今見ると妙におかしいというか、愛すべき悪役といった感じだ。

次に演じたのは「人造人間キカイダー」のダークを率いるプロフェッサー・ギル。

ドクトル・オーヴァと比べると一応人間ということで、容姿はかなり普通に見えるが、恐奇の科学者と言った風貌で、いかにも不健康そうな顔色。

髪は伸び、ドラマが進行していくにつれ、顔はどんどんやつれていくようなメイクを実施したとか。

安藤さん自身が凝り性ということで、こういうメイクに関してどんどんアイデアを出していたという。

プロフェッサー・ギルは後にハカイダーを作り上げたが、そのハカイダーに裏切られ殺害され、脳だけがハカイダーに移植されるという終焉を迎えた。


その後に挑んだ役は「イナズマンF（フラッシュ）」のデスパー軍団を率いるガイゼル総統だ。 

 プロフェッサー・ギルとは違い、今度は再び銀色のメイクを実施。

ギルやオーヴァが動きのある役だったのに対し、ガイゼル総統は静かに部下に指示を出す存在だった。

番組OPでガイゼル総統の顔が出るのだが、その一瞬だけでもかなり怖いと思ってしまうメイクに、安藤さんの悪役に対する意気込みを感じる。






そのガイゼル総統の後は、「秘密戦隊ゴレンジャー」の敵、黒十字軍の総統（特に名前は無かったような）

当初、黒十字軍総統は白装束で顔を出さない姿だったが、さすがに名だたる名悪役を演じてきた安藤さんには物足りなかったとかで、途中から顔出しスタイルに変更。

それも、段々と白装束が変化（顔の部分に切れ目が出来、それがどんどん大きくなっていく）する演出がされ、毎回失敗する幹部たちにいらだちを見せ、怒りが爆発した瞬間に顔出しバージョンへ変化した（↓を参照）












若干、顔出し版がコントの被りモノっぽくなってしまっているのが残念な気もするが、声だけではなく顔も出さなきゃ…という安藤さんの悪役魂故の変化であろう。

しかし、この頃から安藤さんの体調が悪化し、途中降板するという事態に（黒十字軍総統は八名信夫さんに交代した）

その後、スパイダーマンや宇宙刑事シャリバンで悪役を演じたのを最後に引退。

残念なことに、すでに他界されてしまっているが、正確な没年月が不明のままというのは…。

そんな安藤さんが悪役を演じたおかげで、ヒーローたちの輝きが一層増したのは事実で、安藤さんの怪演に拍手を贈りたいと思う。