今週末はいよいよルマン24時間レースなんだけど、ここ数年は日本でこの話題はあんまり盛り上がっていないんだよね。
つい10年ほど前までは地上波で生中継したり、日本の自動車メーカーがワークス参戦してたというのに、今やCS放送も含めて全く放映されない有様。
今年は1992年に総合優勝したマツダ787Bがデモ走行したり、日産やトヨタ、ホンダがエンジンを供給するチームが出てたりするというのに。
そんな、ちと寂しい状況だけど、かつての日本のルマンチャレンジャーだった日産のグループCカーを懐古してみようかと。
80年代に入り、WEC(世界耐久選手権)の車両規定が変わり、主役がグループCに移行したことにより、ポルシェが956Cという当時最強と言われたグループCカーを登場させた。
ルマン24時間レースはもちろんのこと、WEC各レースを席巻した。
そのポルシェに対抗しようとして、日本のメーカーも立ち上がるのだが、当初はツーリングカーベースのマシンでお茶を濁したようなもので、到底ポルシェ956Cの敵になれるような状況では無かった。
日産はそれまで国内レースで走っていたシルエットフォーミュラのスカイライン(↑)をベースに、即席グループCカーを作り上げた(↓)
シルエットフォーミュラのスカイラインは姿こそスカイラインだったが、モノコックはレース用に新造されたもの。
しかし、ミッドシップエンジンのポルシェ956Cに対し、直42リットルターボをフロントに載せた急造マシンでは到底…。
このマシンは海外のレースに数度出ただけで、国内耐久レース用に転用された。
やはり、専用のグループCシャシーが必要と判断した日産は、国内コンストラクターのルマンガレージにシャシーを作らせた(ニスモが誕生したのはこの頃で、以降レース参戦はニスモが担当することに)
それと同時に、アメリカのIMSAや欧州のチームが他のエンジンを載せて使用していたマーチ製シャシーを購入し、それに2リットル直4ターボエンジン(LZ20B)を載せて、国内耐久レースに参戦した。
当時、秋にWECの1戦ということで富士スピードウェイで「WEC JAPAN」が開催されていたので、そこに参戦するワークスポルシェに対抗しようと目論んでいたようだ。


しかし、マシンはトラブル続きで、速さも耐久性もポルシェに全く及ばず、惨敗することに。
そこで出た結論は、やはり2リットルターボでは2.6リットルターボのポルシェには敵わないと。
そこで、当時日産の市販車に載せていた3リットルV6エンジン(VG30)をターボ化して、それで対抗しようと。
シャシーはマーチとローラに開発させた。

これで大幅にポテンシャルアップし、WEC JAPANでは大雨で海外組が棄権する中とは言え、日産が優勝。
予選でも、ワークスポルシェが本気を出さざるを得ない状況になるなど、確実に速さは身に付けた。
その翌年、ついにルマンに2台のマシンでワークス参戦を果すのだが、トラブル続きで1台が完走するに留まった。
ポルシェはさらに速くなり、他にもライバルが出てきた。
更なる底上げが必要となり、市販車用エンジンではなくレース専用エンジンを作り上げてしまう。
3リットルV8ターボエンジンを開発し、マーチ製シャシーに載せたものの、これもポルシェの牙城を崩せずに…。
そこで更なるレベルにあげるために、ほとんど新開発の3.5リットルV8エンジンとローラ製シャシーを組み合わせた日産R88C(↓)が登場。
これは国内ではなく欧州のニスモで開発されたもので、それまでのマシンとは全く次元が違うのでは思えるほどのポテンシャルを発揮し、3台で挑んだルマンではポールポジションを獲得。
決勝ではトラブルやアクシデントで後退するものの、ポルシェをはじめとするライバルと充分戦えるレベルにまで来た。

マシンはR89Cに発展するが、それとは別に北米ではR88C以前のローラ製マシンベースでIMSA・GTレースに参戦し、好成績をあげていた。

そのマシンのエッセンスを取り入れ、国内のニスモが独自にR89Cをベースに開発したのが、R90CP。
ルマンでは欧州ニスモ組と国内ニスモ組が協力して参戦したが、マシンは国内組は独自開発のR90CP、欧州組はまんまローラ製のR90CK。
結果は国内勢のR90CPが上位でフィニッシュし、以降このマシンをベースに発展していくことに。
マシンはローラ製モノコックをベースとしていたが、R92CPからは国内で製作したカーボン製モノコックとなり、完全に国産マシンとなった。
このマシンはルマンや国内耐久レースだけではなく、アメリカのデイトナ24時間レースで優勝するなど、完全に世界で1、2を争うグループCカーと成長した。
予選で1200馬力、決勝でも800~1000馬力というとてつもないモンスターマシンで、グランドエフェクト効果でスピードが増すにつれ安定するという。
ドライバーは常に全開走行を求められ、あの星野一義、長谷見昌弘両選手ですら、このマシンでレースをする前には心の準備が必要だったと。
グループCカーが無くなってすでに20年が経とうとしてるケド、今のテクノロジーでグループCカーを作ったら、どんなバケモノになるか見てみたい気がする。
最も、ここ数年のLMPカーであるアウディやプジョーのマシンは、ほとんどグループCカーと変わらない内容だけどね。
↓の動画は、後にイベントでR92CPをドライブしたドリキン土屋圭市のインプレ。
↓の動画は、TVでグループCカーの解説をしているもの。解説はF1中継でお馴染みの森脇さん。
↓参考動画 1986年のルマン24時間レースのスタート前の模様。
ナレーターはなぜか三田村邦彦。