新佐呂間トンネル
北海道佐呂間町の竜巻災害で、トンネル工事の現場事務所に詰めていた方々が巻き込まれて亡くなった事故。
日本の竜巻災害としては最大の被害をもたらしましたが、被災を乗越えトンネルは既に貫通、供用されています。
事故の直後はちょうど北海道へ出張していて、私の担当ではありませんでしたが、同僚が当該現場事務所の方と仕事の用事で面会する予定になっていました(もちろん面会は中止)。
高倉健・吉永小百合らの出演で映画化もされた小説「海峡」。鉄道建設公団のトンネル技術者「阿久津剛」を主人公に、青函トンネルの先進導抗貫通までの苦難と人間模様を描いた傑作です。
発注者と受注者(いわゆる甲乙関係)の埋め難い溝のため、現場作業員たちから信頼を得られなかった阿久津に、ある転機が訪れます。
事故で無残にもバラバラになった作業員の遺体を、阿久津は率先して素手で回収し、元通りに整えようと四苦八苦します。その姿を見て作業員たちは意気に感じ、無用な反目をやめトンネル貫通という目標に向けて、現場が一枚岩になる、、、、という、物語の転換点になる描写です。
この小説は、一応「フィクション」ということになっていますが、映画では高倉健が演じた主人公:阿久津のモデルが、鉄道建設公団(現・鉄道建設運輸施設整備支援機構)のトンネル技術者として実在します。他にも阿久津の属する組織名称、実際に起きたエピソードなど、現実のものも多数ありますから、限りなくノンフィクションにちかいフィクションなのだとすれば、実際の現場も小説の描写と同様、かなり過酷なものだったのでしょう。
工事現場ですから、現実問題として事故はおきます。残念ながら少なからず亡くなる方もいらっしゃいます。しかし、作業員さんの注意力や、請負企業の安全管理とは別の問題で命を落とした方々の無念を想うと、胸が痛みます。
佐呂間町のトンネルが貫通した際の記念式典には、遺児たちが招かれて貫通地点の石を拾い、事故現場に建立された慰霊碑の周辺に埋めたという新聞記事がありました。
かけがえのない父を失った悲しみは消えることはないでしょうが、地元住民やトンネルを利用する人たちが、ことある毎に事故を思い出し手を合わせてくれれば、多少は慰めになるでしょう。私も機会があれば、訪れて手を合わせたいと思っています。
事故はあってはならないことです。
でも、無念にも命を落とした方々の想いを抱えて、この国のインフラが整備されてきたこともまた、忘れてはならない事実です。
亡くなった方々への哀悼と感謝を込めて。
「今日もご安全に」
住所: 北海道佐呂間町若佐
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