一般社団法人徳島県建設業協会

2014(平成26)年6月。徳島県内の建設業者で構成される「一般社団法人徳島県建設業界」が、ショッキングな発表を行った。会員企業を対象としたアンケートを集計したところ、従業員の実に半数以上がが50歳を超えているというのだ。
どの業界においても、50代と云えばヴェテランの領域。定年までの残り時間を睨みつつ、キャリアの集大成に取り掛かる年代である。
私自身の経験でも、或る現場に入られた作業員名簿を拝見して、平均年齢を計算するのが怖くなるようなヴェテラン揃いの企業が複数社あったのを憶えている。
最年少が50代なんてのは序の口。60代ならひ弱な10代20代よりも力持ち、70代でも欠勤なんて有り得ず勤務態度はピカ一、稀に齢80を超えても元気溌剌現場で大活躍……というのが、地方の建設業界の現状である。
一口に建設作業員といっても、比較的女性や高齢者が携わりやすい「軽作業員」(現場内の片付けや散水・草むしり等の軽易な作業に従事)、資格が必要だが力仕事は然程多くない「一般運転手」(ダンプ・ユニック等の運転)/「特殊運転手」(ブルドーザ・ローラー・クレーン等の建設機械を操縦)など職種は多岐に亘る。
米どころ始め農業が盛んな地域では、農作業の無い(できない)冬場に建設業でアルバイトをし、孫のお年玉を稼ぐお爺ちゃん・お婆ちゃんも多い。
なので高齢者が多いことそのものは何ら問題ではなく、むしろ来たるべき超高齢化社会・年金財政の逼迫へ対応すべく、老人の社会参加・経済的自立が進んでいる業界として賞賛されるべきだろう。
問題の核心は技能労働者の不足。スキルとノウハウを持った現役の職人さんが年々高齢化する一方で、若い新規参入者が無い状況が続けば、いずれ技能は消滅し建設産業そのものが成り立たなくなる点にある。
アンケート結果を発表したのは徳島県の建設業協会だが、同様の組織は全国に置かれており、主に土木一式工事業または建築一式工事業を営む地場の建設業者で構成される。
会員企業の経営改善・技術向上の指導、環境・安全・災害防止に関する啓発活動、業界共通の問題・課題解決を図るための陳情などを行っている。
一部に保守政党の集票マシーンだの、談合組織だの誤解が生じている向きもあるが、その全てを否定し得ないとしても概ね誠実かつ真摯に建設業の発展に尽くしている公益団体である。
そして技術継承・世代交代の問題は全国的に共通しており、建設業界の監督・政策官庁である国土交通省も対策に本腰を入れ乗り出した。
一例としては
若手技術者の登用に対し有利な配点をする入札契約制度
最低限の福利厚生たる社会保険未加入の業者排除
予定価積算の基礎となる労務単価の引上げ
無線操縦の建機など情報化施工の推進
外国人労働者の導入検討
などが導入・実施ないし議論された。
業界内部に暮らす人間(=私)の個人的感想としては、政権交代前の自民党政権末期~民主党政権にかけて公共事業費を大幅に削減、苛烈な受注競争に曝して建設業界を散々に傷めつけ、業者数・従事者数を大幅に減らしておきながら、今さら「人が足りない」と嘆かれても「何だかなぁ」と思わずにはいられない。
建設業界に絶望し離職してしまった人が、少々景気が良くなってきたからといってホイホイ戻ってきてくれるはずもない。受け入れる側の企業とて、つい数年前までの政治・行政の動きを振り返れば、また東京オリンピック後に大きなリセッションが来ることが確実である点を考慮すれば、大量採用には慎重にならざるを得ないだろう。
一度破壊されてしまった雇用関係や事業環境は、直ぐには旧に復さない。
そして人手不足や雇用にまつわる重篤な問題は、建設業界に限らない。
劣悪な労働条件と貧弱な防犯体制で働き手を喪った某牛丼チェーン
店長が自殺してしまったと聞き及び酒を愉しむ気が失せる某居酒屋
子弟まで動員して年賀状を売らせようと躍起になる元国営郵便企業
そして自社製品すら買えない低賃金で若者を酷使しながら、クルマが売れないと嘆く自動車メーカー
各業界をリードする企業経営者、および経済・規制改革と称し雇用破壊を推進した行政・政治家は皆「天に唾する」とはどういう意味か、噛み締めながら対応策を練り上げて貰いたい。
TEL:088-622-3113
住所: 徳島市富田浜2-10 徳島県建設センター
電話 : 086-622-3113
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