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(株)銀河高原ビール

酒税を地方に還元せよ
2014年07月15日
 アルコールを嗜む人間なら、呑んだ経験が無い人は絶無であろうビール。
 国内醸造品は長らく大手4社(アサヒ・キリン・サッポロ・サントリー)および沖縄のオリオンしか供給がなかったが、1994平成6)年4月の酒税法改正に伴い、ビールの最低製造数量基準が2000klから60klに緩和されたことから新規参入が相次いだ。

 所謂「地ビールブーム」である。


 参入企業のうち、日本酒の蔵元などは種類は違えど酒の醸造に関するノウハウや相応の敷地を持っており、比較的参入しやすかったと思われるが、経営多角化の一環としてゼロからビール事業を始める異業種の企業も現れた。

 盛岡市に本社を置く東日本ハウス(株)がその代表的な例で、1996(平成8)年に最初の銀河高原ビール(株)を設立。
 ブームに乗って、一時は阿蘇・高山・那須の3工場を立ち上げ、独特の味わい有るドイツビールを出荷していた。


 ところが不景気の長期化・飲酒人口の減少に因り、ビールの消費が激減。需要の中心が割安な発泡酒に移行する中、比較的高い値段の地ビールは敬遠されてブームは一挙に下火となり、銀河高原ビールは苦境に陥ってしまう。

 地ビールの高価格は、美味しさや希少性など付加価値の高さのみならず、賞味期限が短く大量生産が利かないなど、生産効率の低さから来る高コスト体質も影響している。
 また醸造に関する規制が少なかったワインは、以前から「一村一品運動」の一環として自治体が深く関与する第三セクターを設立しての参入が見られたが、設立当初こそ物珍しさから賑わうものの早晩飽きられ集客力を喪失したところが少なくない。
 地ビールの醸造所も、地方のワイナリーと似たような道を辿ることになってしまった。


 最初の銀河高原ビールは2002(平成14)年、関連会社を含め207億円もの負債を抱え進退窮まり特別清算。ビール生産を那須の工場に集約し、新たに「銀河高原ビール(株)」を立ち上げ、地ビール生産を続けることになった。
 ところが債務を切り離し身軽になったはずの新・銀河高原ビール(株)も経営が上向かず、126億円もの負債を抱えて2006(平成18)年に再度経営破綻してしまう。

 この頃まで、私の勤務先がある銀座で東日本ハウスが所有する自社ビル「チャンドラボースビル」のテナントとして銀河高原ビールの販売拠点が置かれ、社員が早朝の街頭清掃や、気合の入った掛け声を上げてのジョギング(ワイシャツにネクタイ・革靴で)をする光景が見られた。
 このビル自体が、親会社・東日本ハウスの債務返済のため売却、銀河高原ビールの販売拠点も、早朝ジョギングに勤しむ社員と共に消え去ってしまった。


 330億円以上もの損失を出し、「銀河高原ビール」はもはやこれまでかと思われたが、三度目の正直を期したか、ビール事業は再び新会社に引き継がれ、現在は前株の(株)銀河高原ビールとして供給を続けている。




 私は酒は嗜むが、煙草は呑まない。
 昔は自治体の重要な収入源だった「たばこ消費税」が流出しないよう「たばこは地元で買いましょう」なんてスローガンがあったが、リアルで目にしたのは私が最期の世代(昭和40年代後半生まれ)だろうか。

 私は昔から「たばこ消費税(地方税)と酒税(国税)を逆にすべき」という持論を、仲間で酒を飲む度に主張している。
 煙草は、喫煙者か否か差別なく汎く国民の健康を害する恐れがある一方、お酒は完全に無害ではないが、少なくとも直接飲んでない人の健康を害する恐れは皆無だ(飲酒運転の上での事故などは論外)。

 地ビールブームの停滞だけでなく、日本酒の蔵元も後継者不足はじめ経営環境の悪化で閉鎖が続いている。地域再生のためにも、美味しいお酒を生産する地域には酒税が還元されるような制度にすれば、現在の産地が潤うだけでなく、新しい銘酒産地が登場することも考えられる。

 もっとも、お酒の流通量のほとんどはビール4社始め大手が握っているので、全額地方税にしてしまうと新たな不公平を生む可能性がある。一定量以上の生産量(=税収)がある場合は都道府県税にして各市町村に分配するなど、工夫が必要だろう。




 旧・銀河高原ビール、旧々・銀河高原ビールとも、地ビールブームに乗り強力な牽引役を担いながら、実は本社を東京都内に置き、全国流通を志して過大とも言える設備投資をしていた。

 現行の「株式会社銀河高原ビール」になって、ようやく岩手の地に根ざし本来あるべき「地ビール」のポジションを獲得したようにも思える。

 日本に本当の意味でのビール文化が根付くかどうかも含め、三度目のチャレンジを赦された「銀河高原ビール」の正念場である。



住所: 岩手県和賀郡西和賀町沢内貝沢3-647-1
電話 : 0197-85-5321

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