
メルセデスAMGパフォーマンスツアー最終回を締めくくるのはやはりこの車です。
E63の後に呆然としながらも席でコーヒーとお菓子で一息ついていたら「こんな車も空いてるんだよなぁ」と担当がキーを持ってきました。
タグを見たらとんでもない車が...
「SLS AMG GT」とタグに書かれていました。
そんなの乗っていいのかな?...と思っていると「せっかくなんで空いてるし行っちゃいましょうよ」と嬉しい返事が(*´д`*)
それではまず写真をどうぞ!
今回のSLS AMG GTロードスターは特注仕様車で全身ホワイトに固められた、スペシャル仕様でした(*´д`*)
毎回思うのですが迫力は凄いです!!
リアもスーパーカーならではの色気といいますか、これでしか出せない雰囲気があります(*´∀`)
ホイールはパフォーマンス仕様と同じデザイン、サイズですが特注のホワイトカラーにペイントされています。
AMGの中で特別な存在のSLS...その中でもさらに特別なSLSにのみ与えられる「GT AMG」のエンブレムです...
内装もダークレッド×ホワイトレザーの特注仕様です(*´ω`*)
昨年のSLSロードスターのレッド内装とは違うエロさに包まれています。
SLS GT専用のブラック盤360km/hスケールのメーターが出迎えてくれます。
フルカーボンパネルの操作盤には色々なスイッチが集約されています。
この仕様はカタログオーダーできない特注仕様で、内外装はドイツ本国のAMGエキスパートセンターでオールハンドメイドで作られた、世界にこれ1台という貴重な車両でした。
今回の試乗会でも一際オーラを放っていたこの車ですが、次々と出かけるフル回転のA45やC63と違って寂しそうに駐車場にずっといました。
同じオープンモデルでもSL63はかなりの頻度で乗っていかれていましたが、これだけは駐車場に...
敬遠されてしまいなかなか乗ってくれる人がいないのだとか...
乗り込み自体はガルウィングのクローズド仕様ほどサイドシルは高く太いものではないので乗り込みはしやすいですが、着座位置が異様に低いので思いっきり屈まないと乗り込みはできません。
あのコンソール上にあるエンジンスタートボタンを押すと、物凄い始動音に包まれて目覚めるのは昨年体験済みですが、やっぱり何回でも緊張するものは緊張しますね...
ブレーキを踏みながら押すと「キュルルルル...ブォォォォォォン!!!!!!!!!!!!!」とエンジンかけた瞬間周りが振り返って見てくるほどの迫力に満ちた始動です。
アイドリングもこれぞAMGと言うか、AMGの中のAMGと言えるような「ボボボボボ.....」という低く迫力に満ちたアイドリング音に包まれながら落ち着かせて発進すると、車幅感覚が掴みにくいなんてものではなく途方もなく前方に伸びたボンネットと、横が何処まであるかわからないほどの幅で嫌でもとんでもない車に乗っているのが全身に沁みます。
今回のSLS GTはM159型という、AMGが数年前1から開発した初のユニットであるM156型6.3リッターV8自然吸気ユニットのドライサンプ高出力版です。
知っている方も多いとは思いますが昨今のCO2削減対策で、この珠玉の大排気量高回転NAはあっと言う間に淘汰されてメルセデス4.7リッターの排気量アップ版である、M157型5.5リッターV8ツインターボに置き換わっています。
長い間コンプレッサー付きV8に縛られ、やっとの事自分で作りたかったエンジンを作りAMGならではの愉しさを広められると思ったら、後にも先にもこれ1代となってしまった、メルセデスのエンジン系相から外れた6リッターオーバーのAMG専用NAエンジン...
今回のGTはM156-M159集大成とも言えるようなチューニングメニューが施されています。
鍛造コンロッド、ピストンに始まり、専用のオイルクーラーなどを追加することによってNAエンジン搭載のAMG、そしてV8エンジン最強スペックの最高出力591psを回転で、最大トルク64.2kgmを回転で発生させるというE63Sとは違った意味でため息ものの数値をたたき出しています。
走ってみると、やっぱりターボでは出すことのできない気持ちよさと楽しさに溢れたエンジンです。
E63Sの底なしのターボパワーも勿論凄かったですが、音であったり吹け上がりの滑らかさといったフィーリング面では圧勝です。
最初はコンフォートモードで走りました。
E63では感じなかった、「とんでもないバケモノ感」というのはSLSでは街中モードでもはっきりと感じます。
今回はオープンにして走りましたが、直にチューンドV8のドゥルルル...というドロドロ感のあのサウンドが聴こえて来ます(*´д`*)
ドロドロしていて迫力に満ちてはいるんですが何処かきめ細かくて繊細な感じもあるのは、このM159型NAでしか出せないものです。
コンフォートモードでは音はすごいけど、流石に大人しいもので扱いにくさはありません。むしろまったり走れる位です。
2000回転も行かぬうちに変速していき、スロットルレスポンスも穏やかなので雰囲気からは想像もつかない程まったり流せます。
ここまでまったり流せるスーパーカーも珍しいのでは?と思うほど穏やかなレスポンスです。
そしてトルクに押される感じではありませんが、大排気量ならではの豊かなトルク感はパワーアップを果たしても相変わらずで5.5ターボみたいに力強い走りもアクセル一踏みで自由自在に引き出せます。
豊満なトルク感もターボみたいに押し出していると言うよりも無限に溢れ出てくるような感覚で、E63Sとは似て非なるものです。
屋根開けてV8サウンド響かせながらまったり走っても様になるというか、ロードスターではサーキットよりもこういった街中を優雅に流す方がにあっています。
昨年乗った、ノーマル仕様のSLSロードスターでもここは変わらないところでした。
でもS+モードに入れてしまえば、これぞ本当のAMGだ!!!と言えるような激しい正確に変わります。
排気音も少し変わるようで、一段と迫力を増したものになって「バララララララ!!!!!!!!!!」とちょっと割れるような音質になって、響かせるというよりは撒き散らすと言ったほうが相応しいぐらいの音量になります( ̄◇ ̄;)
でも純粋なNAの63ユニットを体感したことがある人ならば、E63Sなどの最新ターボAMGよりもこっちのほうが刺さるでしょう。
私もE63Sのライバルどころか本職のスーパースポーツをも打ち負かす速さを認めつつも、気持ちとしてはやはりこっちがよりAMGらしいと感じます。
高回転NAらしく、上でもキレッキレの吹け上がりでハーフスロットルで様子見程度に踏んでも物凄いパワー感...もうこれ以上は止めとこうかと言うぐらいの勢いで加速していきます。
でも車はまだまだ朝飯前レベルの物で、もっと上まで回せる感覚が残っています。
NAなのに低回転でも自在にパワーを引き出せて、3500回転ぐらいから本気ではないのにESPが作動してしまうほどのパワーを持ったエンジンです(;´Д`)
でもせっかくなので前方がすいた時を見計らって全開加速をかけてみました。
停止状態からESPオン、ミッションはS+のレーススタートモード一歩手前の通常モードでは本気の加速をしてみました。
アクセルを全開にするだけなのにここまで緊張感が漂うのも珍しいものです( ̄◇ ̄;)
ブレーキから一気にアクセルに踏み変えた瞬間...
ESPが作動しているにもかかわらずリアタイヤは暴れる一歩手前でハンドルが左右に振られます((((;゚Д゚))))
すぐさま2速に入れてもESP警告ランプはチカチカしっぱなし...ちょっとおとなしくなったかと思いきやォォォォッァァァァと変な声が出てしまうほどの最早言葉では言い表せない加速が来ます...
昨年のノーマルSLSもそうでしたが、加速Gが凄すぎて体が押しつぶされるんじゃないか...と持ってしまうほどのあのパワー感がまたもや来ました...
もうパワーゾーンに乗る4000回転前後からはE63Sでも置いていかれそうになるんじゃないかと思うぐらいの圧倒的すぎる加速感...
硬めに作られていて簡単には沈まないレザーシートが沈みこみ、押し込められるような加速感は何回味わっても恐ろしいです...
2速でも物凄い吹けようで、中央にあるレブインジケーターが一瞬で真っ赤になります...
M157型のツインターボでは決して味わえない狂気に満ちたこの雰囲気はM156-M159でしか味わえない、他のメーカーのスポーツV8でもここまで荒々しくも扱いやすさとちょっとだけ繊細さを残したエンジンは作れないでしょう。
ここで感じたのは、GT用のユニットは高回転の吹け上がりが物凄くいいという事でした。
今までもキレのある吹けで7500回転まで回りましたが、今回のはキレが良すぎるぐらいのもので6.3リッターもの大排気量がここまで7000回転オーバーまで軽々と回ってしまうとは!!と感動すらしてしまうほどでした。
天井知らずでまだまだ回り続けてしまいそうなほど元気に回るエンジンで、低回転のドロドロ感漂う感じからはとても想像がつきません。
音も「カァァァァン!!!!」とフェラーリのV8とも全く違えばアウディの高回転V8とも全く違う世界を持った乾いた中音域のサウンドが響きます。
このM159ユニットは何度乗っても心揺さぶられるV8です(*´д`*)
この車にはAMGスピードシフトMCTが搭載されます。
E63Sも同じですが、SLSの物はよりスポーツ向けに振られたセットです。
なので日常域ではトルコンATとなんら変わらないイージーさを兼ねていたE63Sや他のスピードシフトMCT車とはちょっと印象が違います。
シングルクラッチセミATやフェラーリカリフォルニアのような癖こそないものの、何処か雰囲気的には特殊なミッションを積んでいる感が拭えません。
ブレーキを離せば機構は同じなので、クリープはしてくれるもののそれほどスムーズでもなくクリープ自体もかなり弱いです。
なので低速走行時はアクセル操作で助ける必要があります。
でもアクセルで一瞬だけサポートしてやればクラッチがつながってあとはスルスル勝手に進んでくれるので渋滞でも苦にならないでしょう。
コンフォートモードでの変速マナーは相変わらずいい物で、ガツガツ繋ぐようなことはありません。
変速時もクラッチを若干すべらせながらスムーズにつないでいくようなもので、ショックは勿論のことギクシャク感は全く感じません。
そしてSやS+に入れると本領発揮と言わんばかりに車が変わります。
エンジン同様、ミッションもアグレッシブな制御になって低速マナーや変速マナーなんてほぼお構いなしのスピード重視のモノになります。
これに乗ると、E63Sもシフトスピードが早いと思いましたがまだ加減していたんだな...と思うぐらいのシフトレスポンスになります。
完全なMモードにしない限りは自動変速ではあるんですが、その時もショックは多少容認していて常にクラッチがつながっている状態...コンフォートではアクセルを離せばクラッチも同時に離されるようでエンブレの効きすぎ感はありませんでした。
でもレスポンス命のこのモードではアクセルとエンジンが直結してるのかぐらいの過敏なレスポンスになるのでアクセルを離せば気持ち悪いぐらいにエンブレも効きます。
そして再度アクセルを踏み込む時はギクシャクすることも多々あります。
でもMに入れてパドル操作モードに移行した時のシフトスピードのキレの良さと感覚に何処までも忠実に合う感覚は一度乗ると病みつきになります(*´д`*)
シフトダウンもダブルクラッチ動作を一瞬のうちに車が勝手にやってくれて派手にブリッピングも入れてさらにはアフターファイアーも音だけなら容赦なく出すので屋根開けているともう凄いなんてものではなく、これはやっぱり恐ろしい車((((;゚Д゚))))と乗っていてビビってしまいますw
トンネルの中でシフトダウンしてアクセルを踏み込めばめちゃくちゃ気持ちいいんだろうなぁ...と思います(*´д`*)
乗り心地に関してはAMGのフラッグシップにふさわしいものです。
SL63などがアクティブボディコントロール付きAIRマチックDCサスなどの電子制御バリバリのハイテク武装しているのに対し、これはAMGライドコントロールという可変減衰ダンパー+金属コイルサスの組み合わせです。
なので乗り味は基本スポーツ向けです。
でも不思議とコンフォートで走る分には不快感は感じないです。
硬いことは硬いです。でも路面のギャップを拾っても一発で仕留めるのでガツンとくる硬さはありません。なので揺すられ感や常にゴツゴツ来るという感じではないのが印象的です。
昨年乗ったSLSロードスターのノーマル仕様車と然程変わらない乗り心地の良さで、SLSクーペの初期モデルよりも断然乗り心地がいいというものです。
SLSクーペの初期モデルにあった、エクスクルーシブパッケージ車のスポーツサスは硬いなんてものではなく街中では乗れないぐらいにハードなものでした。
昨年、ドライビングPKGはAMGパフォーマンスPKG 1と2といった形に改められた際に足回りのセッティング変更がありました。
今回のGTはそのパフォーマンスパッケージがフルで入ったモノなんですが、ここまで進化しているとは思ってもいなかったので驚いてしまいました。
下手したらノーマルの金属サス仕様の脚よりも乗り心地が良いかも...と思えるシーンもあって、轍などでは車の特性上キックバックはそれなりにありますがノーマル仕様よりも減っているのが印象的でした。
Sモードではそれが全体的にさらに硬めのものになって、スーパースポーツらしい雰囲気になります。
でも硬さが増しても扱いにくくなることもないし、路面からの入力があればうまい具合にいなしてもくれるので安心してスポーツ走行ができるセッティングです。
S+に入れると完全なサーキット走行モードになって、初期のエクスクルーシブPKGサスのようなガチガチの感じになります。
サスが常に突っ張るような形で、路面状況が悪いとそのまま伝えてきて時にはガツン!!と衝撃も伝えてきます。
なのでちゃんと整備されたようなサーキットではないと扱いにくく、逆に速く走れないセッティングになっています。
ここまで来るとAMGのなかでもSLSでしか到達できない世界でありラグジュアリーなだけではない、スポーツを極めてもはやレースの世界をそのまま持ってきたと言わんばかりのこのハードな脚回りは本気を感じますね。
SLSも生産終了間近で、このGTモデルを含めたSLSシリーズのオーダーは締め切っているということです。
ラストモデルである、SLS GTファイナルエディションが20日から開催されるLAショーと東京モーターショーで同時公開されるという情報が出た中、さらにM156を搭載したC63もオーダーストップが来月かかるということです。
C63とSLSが終わればM156-M159の6.3リッター自然吸気V8の幕も降りることになります。
昔からいつかはAMGと思っている私の中でもこのM156-M159エンジン搭載車たちは特に印象に残るクルマばかりでした。
W221初期のM156搭載S63は普段はジェントルなのにSクラスのくせに本気になれば7300回転まで一気に回ってスポーティすぎるアンバランス感が面白かったし、初期のC63も無理やり積んでパワーはすごいけど足回りが追いつかないというちぐはぐな感じもAMGらしい物でした。
そしてその中でもメルセデスAMGの本気どころか狂気を感じるこのSLS GTは6.3リッターV8を締めくくるにふさわしいモデルであると断言しても良さそうです(*´ω`*)
試乗中、昨年もそうでしたがこのまま逃げてしまいたい..と思ってしまうほど魅力的な車でした(*´д`*)
人生の最終目標はアストンですが、やっぱりいつかはAMGです(*´д`*)