「オートモビルカウンシル」2024、イタリア車とフランス車、アメリカ車にスペイン車などです。
3月に亡くなったマルチェロ・ガンディーニ氏への追悼として「In Memory of Marcello Gandini」と銘打った特別展示がありました。当初はピニンファリーナをテーマにした展示が計画されていたのですが、急遽変更。その対応の早さにも驚かされます。
また、アメリカ車の展示が増えていました。5台ずらりと並べた特別展示がありましたね。
まずイタリア車から。
== フェラーリ ==
365 GT4 BB(1974年)

「RENDEZ-VOUS」にて展示のフェラーリBB。右ハンドルです。当時の日本で右ハンドル仕様をオーダーした人がいたのか?と思ったのですが、さにあらず。この車は元々イギリス向けです。

イギリスに存在した「Ferrari U.K. Maranello Concessionaires Ltd」。フェラーリを駆り1958年のF1世界チャンピオンを獲得したマイク・ホーソーンが、エンツォ・フェラーリから直々にイギリスでのフェラーリ販売の許可を得て設立した由緒正しいディーラー。この車は最初にそこで販売されたとのことです。

人に歴史あり、車にも歴史あり。
365 GT4 BB(1975年)

こちらにも365BBが。「WANNA DRIVE」での展示です。

同じく右ハンドル。調べたところ、365BBの総生産台数は387台で、うち右ハンドルは58台とのこと。希少ですね。

この車も、ずっと日本国内にいてほしい。
テスタロッサ(1989年)

「ガレージイガラシ」にて展示のテスタロッサ。今となっては、どことなく華奢な印象すら受けます。

広いけれども狭いエンジンルーム。車名の由来である赤いエンジンヘッド。

内装。贅沢ですね。豪華なGTカーとしての要素はテスタロッサから強められたと思います。
ディーノ 308gt4(1974年)

最初に書きましたガンディーニ追悼特別展示から。名車ディーノ246の後継ですが、2+2とされたのが興味深い。

「gt4」は小文字が正しいようですね。フェラーリといえばピニンファリーナで、ガンディーニ率いるベルトーネのフェラーリは珍しい。

この直線的でコンパクトなシルエットには独特の魅力があります。
== ランボルギーニ ==
ミウラ P400(1968年)

ミウラです。言わずと知れたガンディーニデザイン。1966年にランボルギーニはこれを世に出しており、その先進性に改めて驚きます。キューブリックの名作「2001年宇宙の旅」が1968年なので、それと同じくらいに先進的です(?)

リアですが、バンパーに見える部分って、これはエアアウトレットなんですね。今まで気がつきませんでした…
エスパーダ シリーズ2(1970年)

こちらもガンディーニ。設計はジャンパオロ・ダラーラ。この組み合わせはミウラと同様ですね。

V12を、ミウラとは逆にフロントに積む。最速の4座GTカーとして生み出された車。

リアガラスは上下2分割式。
カウンタック LP400(1975年)

カウンタック、ガンディーニの代表作ですね。もはやコメント不要だと思います。

デザインで言えば、カウンタックの影響は現在のランボルギーニにも脈々と引き継がれています。これはすごいことです。
カウンタック LP400S(1976年)

こちらはエアロパーツが装備されたLP400Sです。受ける印象がだいぶ違います。「ガレージ伊太利屋」での展示。

改めて調べてみて、あれ?と思ったのは年式。LP400Sは1978年からのはずです。LP400を「LP400S化」したということでしょうか。
イスレロ(1968年)

ランボルギーニ初期のモデルですね。350GTや400GTの流れをくみ、それら同様にエレガントで高級感を感じます。今のランボのイメージとはだいぶ違います。「イタリア版アストンマーティン」という印象すら。

ミウラやカウンタックで一気に路線変更したということになるのでしょうか。そしてそれは大成功しました。
== マセラティ ==
セブリング シリーズ2(1966年)

「3500GT」の後継モデル。名称はセブリング12時間レースでの勝利から。ジョヴァンニ・ミケロッティによる美しいスタイルです。

トランクリッドの開口部が下端まで下りているのは、この年代としては珍しいと思います。
クアトロポルテ 2.8エヴォルツィオーネ(1998年)

マセラティ・ジャパンにて展示の4代目クワトロポルテ。個人的に、私は歴代マセラティのなかでこれが最も好きです。この車もマルチェロ・ガンディーニ作ですね。上品なのに精悍、コンパクトなのにグラマラス。前傾姿勢そのもののシルエット。カウンタックを思わせるリアホイールアーチなど、さすがはガンディーニ。

ぜいたくな内装。思わず見入ってしまいます。

リアも最高。ハイデッキなのにぜんぜん野暮に見えないのはなぜだろう。高く配置されたシンプルなリアコンビネーションランプ。カッコイイ。それにしても大きなバックランプとリアフォグです。
グランカブリオ・フェンディ(2013年)

マセラティとフェンディのコラボ。よくある特別仕様車かと思ったのですが、世界限定50台で日本向けには2台のみです。

このボディカラーも特別。地味なグレーに見えますが金色の粒子というかフレーク処理がされています。よく見ると派手です。

「コレツィオーネ」での出品です。なお、展示初日にして既に売れていました。
== ランチア ==
ストラトス HF ストラダーレ(1975年)

この車はカウンタックと同じ時期に世に出たんですよね。直線を極めたカウンタックに対しこっちは丸い。ガンディーニはまさに天才。

特徴的なオーバーフェンダーやウインドウの形状など、どこかユーモラスでもあります。
== アルファロメオ ==
モントリオール(1970年)

「VISCO」にて展示の白いモントリオール。V8を積むイタリアンGT。この車名はプロトタイプが1967年のモントリオール万博に出品されたからだとか。そんな理由なの?

モントリオールには排気ガス規制のからみで北米仕様が用意されなかった。その車名にも関わらずカナダでは売られなかったわけです。

ですが、この車はイタリアで販売されたあとアメリカに渡り、10万ドル以上の費用をかけレストアされたとのこと。この展示会ではそういうすごいエピソードを持つ車がたくさんあります。
モントリオール(1971年)

こちらは「AUTO ALPHA ONE」の黄色いモントリオール。しかし、このボディはコストというか生産性など考慮しないぞという感じです。総生産台数も4000台に満たず、これは当時のアルファロメオとしても格段に少ない。

ここからの眺めなど、まるでコンセプトカーのよう。
ジュリア スプリント GTV(1967年)

そして隣にはジュリアが。

リアはとても端正。シンプルでもあり、モントリオールとは対照的です。

GTサルーンのお手本のようなコクピット。当時の日本では、多くのドライバーがここに座ることを夢見たのだろうと思います。
次はフランス車。今回、フランス車がとても少なかった…
== アルピーヌ ==
A110 1300S(1969年)

老舗「ジロン自動車」での展示です。スパルタンな軽量スポーツカーであるアルピーヌA110ですが、そのスタイルには愛嬌があります。個人的にフロントバンパーのオーバーライダーがおもしろいなと。

リアに積まれた小さなエンジン。これと軽いボディの組み合わせで当時のラリー界のトップを押さえたわけです。
== シトロエン ==
2CV 6スペシャル(1987年)

所沢のヘリテージカー専門店「DUPRO」。そこにさりげなく置かれた2CV。

1987年というとモデル末期ですね。当時は「チャールストン」という2トーンの綺麗で豪華なモデルも導入されていたことを覚えています。2CVといえば素朴な仕様のほうが「らしい」のでしょうが、私はどちらも好きですね。
== プジョー ==
406(2004年)

常連「原工房」、今回も美しい406クーペが展示されていました。

チラッと見えるブラウンの革シートが魅力的です。

2台のメタリックブルー、去年も出ていた?と思いましたが、前回展示されていた車は左ハンドルの2002年式でした。

細かいところですがサイドモールとつながるよう配置されたサイドウインカー。これがとてもいい。なぜかこの手法を取り入れるメーカーがあまりなかったように思います。なおこのボディカラーの名称は「ハイペリン・ブルー」だそうです。
次はアメリカ車です。今回、アメ車の展示が増えています。今まであまり見慣れていないというのもありますが、とても新鮮で魅力的です。
== AMC ==
イーグル・ワゴン(1983年)

かつて存在したAMC(アメリカン・モーターカンパニー)。ビッグスリーとはまた違う、個性的なモデルがありました。ピクサーの映画「カーズ2」に登場したグレムリンやペーサーもAMCの車です。

このイーグル・ワゴン、「クロスオーバーSUV」の先駆車ですね。見た目だけでなく車高もガッツリ上げられていて、悪路走破性は相当なのでは。その割に大型高級車的でもあり、ボンネットマスコットもついているのがおもしろい。このスタイルでセダンもありました。

ワゴンボディですがリアゲートがクーペ風に寝かされているのも、1980年代という時代を考えたら相当進んでいます。アウディが3代目100(C3系)でリアゲートを寝かせたワゴンを登場させましたが、それより前です。
ジープ J-10(1977年)

現在ではクライスラー、というかステランティス傘下のブランド「JEEP」。クライスラー以前はAMC傘下でした。軍用ジープから連綿と続く縦線のフロントグリルがいいですね。当時、フルサイズの4輪駆動ピックアップはアメリカでも珍しく、この車は幅広い人気を得たそうです。

悪路走破性はいかにも良さそうですが、決して無骨一辺倒ではなく乗用車的でもあります。ボディサイドを貫くクロームのラインなど、ちょっと豪華な印象です。
== GM ==
シボレー・コルベット(1963年)

2代目コルベット。この美しいデザインは当時の欧州勢の向こうを張ります。

しかもこの1台は1963年式のみの「スプリットウインドウ」モデルです。2019年にも「AUTO ROMAN」で
赤いスプリットウインドウが展示されていました。

ワイパーは対向式。そういえばコルベットって4代目モデルまでずっとこの形式のワイパーでした。それはそうと助手席側が上に配置されています。飛沫がドライバーの目前に飛ぶのでは?
シボレー・カマロ RS(2023年)

初代カマロ。個人的にカマロの初代はあまり印象になく「こんな形だっけ?」という感じなのですが(失礼)、ヒドゥンヘッドライトを採用した面構え、それから古典的な3ボックススタイルなどとても魅力的です。

個人的にカマロって大きなリアゲートを持つクーペというイメージなのですが、初代は立派なトランクを持ちますね。というかリアゲート付きのカマロって歴代の中で3代目と4代目だけですよね?私のイメージって不正確ですねぇ…
== クライスラー ==
ダッジ・チャレンジャー R/T 440+6 コンバーチブル(1970年)

チャレンジャーは日本国内でも、この初代モデルを強くイメージしたデザインの3代目に人気がありますね。並行輸入しかないにもかかわらず時々見かけます。そういや2代目ってどんなだっけ…と調べたら三菱ギャラン・ラムダのOEMだったんですね。

この車、会場で見たときはてっきりレザートップのクーペだと思っていました。実際は車名の通りコンバーチブル。この幌、とても頑丈に見えませんか?
== パッカード ==
スーパーエイト リムジン(1935年)

「DUPRO」での展示。この綺麗なマルーンのボディ、映画「ラストエンペラー」に登場した愛新覚羅溥儀専用車を思い出します。あちらはキャデラックですが。

運転席を見て驚いたのは、シートバックが直角であること。これは運転手にとって過酷な労働環境だったのでは。場合によっては数時間の運転をすることもあったはず。

この時代のサルーンやリムジンは皆そうだと思いますが、後部座席が後輪の車軸の真上にある。実際のところ、乗り心地はどうなのでしょうか。

ボンネットの先端を飾る特徴的なマスコット。スピードの女神「Goddess of Speed」。どことなくユーモラスです。
次はスペインの車。
== HURTAN ==
グランドアルバイシン・ビスポーク(2024年)
前回も展示されていたHURTAN(フータン)。出展は日本代理店「HURTAN JAPAN」。

現行マツダ・ロードスター(ND系)をベースに外装は1930年代風に、内装は豪華に仕上げています。前回はダークブルーメタのオープンモデル「ヘリテージ」でしたが、これは「RF」がベースですね。ベースよりかなり大型化されていますが、車重は変わらないそうです。

それはそうと「フータン」という公式のカナ表記は本国オリジナル的に正しいのでしょうか?Youtubeでは「ウルタン」って発音していましたよ。フータンだと、なんだか中華料理みたいで…

内装はとてもぜいたくです。造形自体はNDロードスターそのものですが、印象はかなり違います。

どうしてもアップで撮りたかったリアコンビランプ。見覚えがないのですが、どの車からの流用でしょうか。それとも汎用品かな?いずれにせよカッコイイ。この車、いったん見慣れるとかなりイイですよ。
最後に中国車。
== BYD ==
ATTO 3(2024年)

去年の展示車ではリアに大きく「BUILD YOUR DREAMS」と貼られていましたが、今は「BYD」に変更されたようですね。去年↓
SEAL(2024年)

今回のBYDは2台ともに真っ黒なボディ。ブース自体が黒基調のため、正直あまり映えていませんでした。ここでメタリック強めのシルバーだったら綺麗に映えたと思うのですが。

内装も赤だったらベントレーみたいだったりして。んなことないか。
BYDはこの車でテスラあたりの市場に食い込もうとしているのでしょう。ただ現状、BYDの日本での売れ行きはどうなのでしょうね。私もテスラは結構見かけますが、BYDを路上で見たのは一度だけです。
←次回はラスト。日本車編を。