「オートモビルカウンシル2022」、日本車編です。
今回、例年に比べ日本車の展示が減り気味でした。海外勢に押されてしまったのかな?ちょっと残念でしたが、それでも見どころはたくさんありましたね。
== トヨタ ==
2000GT(1970年)

「ヴィンテージ宮田自動車」にて真っ赤な2000GT、後期型。
前回2021年の展示と同じ車でしょう。

2000GTは、後期型になりフロントに上品さが増した印象です。

今さらですが、2000GTは前後のバンパーがなく大きなオーバーライダーのみがその役目を担っています。もう少しあとの時代なら成立し得えません。

ヤマハの楽器製造技術が生かされた美しい内装。
スプリンタートレノ(1974年)

初代トレノ。兄弟車レビンともども野性味ある外観です。

リアにはオーナメント類がなくシンプルです。コンビネーションランプの造形は兄弟車レビンより凝っているようにも思えます。
2020年には、そのレビンを展示していました↓

トレノの方が少し上級指向?セダンのカローラとスプリンターの関係性と同じかも。

黒一色の内装はスパルタンでストイック。1970年代の国産スポーツモデルはみなこんな感じかと思います。穴あきスポークを模したイタリア車風ステアリングが良い雰囲気ですね。穴の代わりにホーンボタンを配置し、合計6つも付いています。

ビニールレザーの内装。夏は暑く冬は寒いでしょうね…しかし丈夫で手入れも楽でしょう。現在の合成皮革シートならもはや本革と変わらない見た目と風合いだったりしますが、昭和のビニールシートにも独特の雰囲気があります。
トヨタ7(1970年)
今回、トヨタ車は3台のみ。

トヨタ7。日本のモータースポーツ史にその名を残す、悲劇の1台ですね。

当時存在したレースレギュレーション「グループ7」のために設計されたレーシングカー。グループ7は、2座オープンが特徴です。この車は1970年の日本グランプリのために用意され、わずか620kgの車体に5リッターV8ターボエンジンを積んだモンスターです。

しかし、グランプリ中止そして不幸な死亡事故のため、トヨタ7の未来は永遠に閉じられました。

この車は富士スピードウェイ併設「富士モータースポーツミュージアム」に展示予定とのことです。
== 日産 ==

今回、日産自動車がブースを設けていました。「FAIRLADYの系譜」と銘打ち、最新モデルを含む4台のフェアレディZを一堂に展示していました。今回一番の見どころだったかも知れません。
フェアレディZ-L(1970年)

初代S30系です。このカラーリングはブリティッシュレーシンググリーンを思わせます。ソリッドカラーというのが旧車らしくて良いですね。

初代フェアレディZはダットサン・フェアレディの後継として生まれました。開発時、デザインの決定にあたり日産社内で同時に進められた競合案には、まるでイタリアンGTのような繊細な印象のものもありました。製品化されたS30系はワイルドな貴婦人です。

既存のコンポーネンツを多く流用しつつ、本格的なスポーツカーとして開発されたこの車。特に北米では「Zカー」として爆発的に売れ、それまで人気を博していた英国製スポーツカーを駆逐しました。日産自動車が飛躍するきっかけになった車であるのは間違いないでしょう。
フェアレディ280Z Tバールーフ(1982年)

2代目S130系。フェアレディZといえば、歴代モデルを通してロングノーズ&ショートデッキという典型的スポーツカーのシルエットが特徴ですね。この長い鼻先、私は子供の頃から「運転しにくそうだなぁ」なんて思っていました(笑)

実際には、フロントがまったく見えないことも多い今の車の方が運転しにくいかも知れません。横いっぱいに広がったリアランプは1980年代の日本車に多かったデザインです。真横一列のウインカーなど、今になって再び流行しだしている(しかもドイツ車から)というのがおもしろい。

この2代目は初代の良さをうまく発展させていますね。こういう上手なモデルチェンジは今の日産車にも必要だと思います。
フェアレディZ 300ZX ツインターボ 2by2 2by2(1989年)

4代目、Z32系。バブル景気まっただなかに登場した車です。張りのあるグラマラスな造形はこの時代ならではでしょう。

日米共作で、高性能スポーツと高級GTカーの色彩を併せ持っています。先代より短く幅広く、それでいてぜいたくで手の込んだ作りです。

フロントマスクは亡き徳大寺有恒さんが「ハロウィンのカボチャ」と評していました。たしかに愛嬌ある個性的な顔つきです。しかし徳大寺さんはうまいこと仰るものです。

「スポーツカーに乗ろうと思う」というキャッチコピーが使われていました。その広告も、懐に余裕のある中高年をターゲットにしていたのが明らかでした。
フェアレディZ CUSTOMIZED PROTO(2022年)

最新型7代目。東京オートサロン2022出品車とのこと。オレンジとブラックの大胆なカラーリングは、ファンにはたまらないでしょう。

新型(RZ34)は過去のモデルを強く意識したディティールが魅力ですね。フロントは初代や2代目を思わせ、リアは4代目を強く想起させます。エンブレムロゴのフォントは初代と共通。「RZ34」という型式名すら、先代6代目の「Z34」を引き継いでいるというのが興味深い点です。

素晴しい車だと思います。都会的で洗練された中にも野性味を感じます。本来、日産車の魅力とはこういうものだったはずと思わざるを得ません。
ダットサン・フェアレディ2000(1967年)

「ヴィンテージ宮田自動車」に展示のダットサン・フェアレディ2000です。先ほど初代フェアレディZについて「英国製スポーツカーを駆逐した」と書きましたが、このダットサン・フェアレディはその英国車からの影響を伺わせます。

この眺めなど、英国のライトウェイトスポーツを思わせます。

内装は年代の割にかなりモダンな印象です。トグルスイッチこそ時代を感じさせますが、全体の造形は1960年代というより70年代もしくはそれ以降っぽくありませんかね?

ひとくちに旧車といっても、メーカーや車種による個性が実にはっきりしています。
Z432(1970年)

そしてZ432を。このショップにはすごい車しかないのかな…プレートへの手書きの書き込みがまた良い雰囲気。

このカラーリング、新型Zでも「イナヅマイエロー」という名で引き継がれているとのこと。

432=4バルブ/3キャブレター/2カムシャフト。スカイラインGT-Rと基本的に共通のエンジンそして5速トランスミッション。

総生産台数は419台のみ。現存するのはわずか数十台とのこと。
== ホンダ ==
ホンダも公式ブースを設置。シビック誕生50周年を記念した展示です。
シビック(1972年)

ホンダを代表する車、シビック。

北米の厳しい排出ガス規制をいち早くクリアしたCVCCエンジンを搭載し、世界に衝撃を与えた名車です。
TEAM YAMATO CIVIC(1984年)

「TEAM YAMATO」は、1965年に創部された本田技術研究所の社内チームだそうです。いわばホンダのワークスチームですね。プレートに説明がありましたのであとで貼ってみます。

初代シビックをベースに1974年に制作されたこの車、まるでプライベーターのような泥臭さというか自由さを感じませんか?ホンダというメーカーの空気を感じます。

ヘッドライトに無限!ちょっと族車っぽい?

ここにも無限。バケットシートが時代を感じさせます。

シビック記念展示。歴代モデルのデザインスケッチがパネル化されています。

これは貴重です。せっかくですので、他の人がいないのを見計らい、すべてのパネルの写真を撮りまくりました。せっかくですから(笑)
初代(1972年~1979年)

ボディの各ラインが一点に集約されるようにという、カーデザインの基本が忠実に守られています。不要なお遊びがどこにもなく、まじめに取り組まれています。
2代目(1979年~1983年)

ホンダはこの時代からヨーロッパ進出を積極的に推し進め、同時代のバラードはイギリスに新設された工場で現地生産され「トライアンフ・アクレイム」としてブリティッシュ・レイランドにOEM供給されました。その車は大ヒットしたそうです。
3代目(1983年~1987年)

ワンダーシビックですね。1980年代テイスト100%の角張ったボディ。こうしてみるとずいぶん先進的です。この時代、シビックからロールス・ロイスまで車が一斉に四角くなりました。
4代目(1987年~1991年)

平たく、ボンネットが低く、フロントウインドウが大きくキャビンが広大な、この時代のホンダ車の特徴と美点がひと通り備わっていますね。ローバー車のベースにもなりました。VTECエンジンの採用もこのモデルからです。
5代目(1991年~1995年)

再び丸みを帯びたデザインへ。自動車のデザイントレンドとは丸と角の繰り返し?このシビックはVTECを武器にスポーツハッチとしても高い人気を博しました。
6代目(1995年~2000年)

このモデルから「タイプR」が出ましたね。車好きの若者が苦労して手に入れるというパターンもよく見られたと思います。
7代目(2000年~2005年)

2001年に登場したフィットと直結するデザインですね。この頃からホンダは日本国内における小型ハッチバックの主力をフィットに任せようとしていたのでしょう。7代目は少々影の薄い存在かも知れません。
8代目(2005年~2011年)

この年代はアメリカ向けベースのセダンと欧州向けのハッチが本来は別で、型式も違います。このパネルでは一緒にされていますね。日本国内では当初セダンのみでタイプRも4ドアセダン化。追って欧州仕様ベースの3ドアハッチ「タイプRユーロ」も導入され、こちらはイギリス生産の輸入車でした。どちらも今ではプレミアム価格で取引されています。
9代目(2011年~2015年)

9代目シビックは日本に導入されず。そのため日本国内ではまったく馴染みがありません。いや、セダンのみ「グレイス」として導入されましたが…
10代目(2015年~2021年)

このモデルの日本導入決定時は「シビック復活」としてちょっとしたニュースになったかと。安全運転サポート機能の充実もこの代からで、ユーザーが必要としメーカーが開発を進めてきた装備の変遷も伺えます。
11代目(2021年~)

最新モデル11代目は先代10代目の正常進化ですね。外見上、ぱっと見は区別が付かないかも。それもまた正しいと思います。運転サポートはさらに進み、自動運転の領域に入っています。

「シビック」という車は形を変えつつも根っこの所は不変ですね。挑戦的で、スポーティさも忘れず、しかも垢抜けていて、いかにもホンダらしい。
Red Bull Racing Honda RB16B(2021年)

レッドブル・レーシング・ホンダのF1マシン。トルコGPスペシャルカラーです。

フロントウイングの造形がちょっとすごい。今のF1マシンはみんなこういう感じなんですね。

個人的な話ですが、思えばずっとF1からは離れています。現役F1ドライバーの名前も、皇帝シューマッハーの息子さんしか分かりません。
== スバル ==
ヴィンテージ宮田自動車には、とても魅力的なスバル360が2台展示されていました。初期型のいわゆる「デメキン」です。
360(1960年)

1960年、昭和35年式のこの車。まさに最初期型です。サイドミラーもありません。

給油キャップの簡素さがすごい。初期型は燃料計もなく、レベルゲージを差し込んで残量を調べるんでしたね。ガス欠怖い…

誰が名付けたか「デメキン」、今は極めて希少です。
360 コマーシャル(1962年)

キャビン後半が開くスバル360です。オシャレな軽オープンカー…ではなく、商用車です。

後席部分をこうして開き、荷物を積むのです。当時の商店街にはオート三輪や軽トラックに混じってこんな車も走り回っていたのでしょう。

去年の記事でも書きましたが、デメキンのリアランプは特徴的。左右の小さなランプがウインカー兼ブレーキランプで、ナンバープレート上の四角いランプが番号灯兼テールライトです。

後席は折りたたみ式で、少々ガマンすれば「スバル360ランドレー」として使うこともできるかも?

幌を上げればキャンバストップ仕様にしか見えませんね。当時の人は、仕事用と家庭用の両方に使っていたのでしょう。

後方視界も犠牲になっておらず、良くできています。というか、酷使された個体ばかりだと思いますが、よく残っていましたね…

スバル360は2016年、日本機械学会により「機械遺産」に認定されました。
== マツダ ==
マツダの公式ブースです。「MAZDA SPIRIT RACING」がテーマ。
コスモスポーツ(1968年)

ニュルブルクリング「マラソン デ・ラ・ルート」84時間耐久レース仕様。

なんともすごいマフラーです。
ファミリア・プレスト ロータリークーペ(1969年)

この頃はメーカーのレース活動がユーザーを大いに刺激していたのでしょう。「俺のファミリアがサーキットで活躍している!」と。

今は時代が時代なだけにそういうことはないのかも。これも時代の流れか?
マツダ・スピリット レーシング ロードスター(2022年)

いやいや、いま盛んに叫ばれているエコロジーにサステナブルにSDGs…これらだってモータースポーツと相反するものでは決してないと思います。
以上、オートモビルカウンシル2022でした。今回、有名なチェリストの溝口肇さんによる演奏会があったり、現代アートの展示が増やされていたりと、車の展示だけではない充実した空間が実現され、大いに楽しめました。
来客者も他のショーとは明らかに違う雰囲気で、なんというか余裕のありそうな方ばかり。なかにはびっくりするほと大きな金額の話を展示車の前でスタッフと交わしている方もいて(ようは商談ですね)、ある意味でとても非日常的な空間でもありました。

コロナウイルス感染症のプレッシャーはまだありますが、それでも少しずつ自由と楽しみを取り戻してきた感もあります。来年2023年は、4月14日(金)から16日(日)の3日間と決定しました。
もちろん行きますよ!!