「オートモビルカウンシル」2023、イギリス車です。
前回欠席だったマクラーレン・オートモーティブジャパンは残念なことに今回も不参加。その代わりではありませんが、今年は超マニアックなブランド「ブリストル」が展示されていました。
そういえばマクラーレン。往年のF1マシン、マクラーレン・ホンダMP4/5BとMP4/6が展示されていました。これって半分は日本車枠?まぁいいですよね。ロータスのマシンもありましたのでまとめてアップします。
== マクラーレン ==
マクラーレン・ホンダMP4/5B(1990年)

今回、主催者展示としてアイルトン・セナ没後30年にちなみ3台のF1マシンが並べられていました。

マルボロカラーの、セナが乗ったマシンです。私はF1にまったく詳しくなく何も書けません。でもこのカラーリングは良く覚えています。

私があれこれ書くより、こちらの解説を。
マクラーレン・ホンダMP4/6(1991年)

翌年のマシンですね。

解説はこちら。斜めっていてすみません。V10のMP4/5Bに対しこちらはV12エンジン搭載。外見はまるで見かけがつかないのですが(私が)、エンジンはまったく違うわけですね。

いまや乗用車と同様にF1でもダウンサイジングが進み、1.6リッターのV6ですか。バブル時代の三菱にそういうエンジンありましたよね(?)
== ロータス ==
JPSロータス 97T ルノー(1985年)

セナに初優勝をもたらしたマシンだと説明にあります。

その説明です。1985年なんですね。セナのF1パイロットとしてのキャリアは、その後わずか9年で絶たれるわけですか。つくづくあの事故は悲劇だったと思います。

これを書いていて気がつきましたが、エイボン(AVON)ってイギリスのタイヤブランドですよね?ロールス・ロイスの純正タイヤに採用されていたと記憶していますが、F1マシンにも供給していたんですね。

セナがもしいまも生きていたら、引退後はF1界の重鎮として活躍していたでしょうか?それともF1ビジネスから早々に足を洗いまったく別のことをしていたでしょうか。案外YouTubeを舞台に車レビューなど自由に発信していたかも…

日本におけるF1ブームも、アイルトン・セナの死とともに終わりを告げます。
エスプリ S1(1971年)

ちょっと強引ですがF1マシンから一般向けの車に移ります。「AC MINDS」で展示されていたエスプリS1です。

ヨーロッパの後継として誕生したエスプリ。ジウジアーロデザインの代表作であり傑作ですね。28年という長寿モデルだったエスプリですが、豪華なGTカーという感じの後期型と比べ初期型はシンプルです。

AC MINDSでは、2021年にもエスプリS1(1978年式)を展示していました↓

同じ右ハンドルです。右のエスプリS1、いまやとても貴重だそうです。
フォード・コンサル コ-ティナ ロータスMk1 Sr1(1963年)

ロータス・コーティナはこの展示会で以前から何度も展示されていますが、ここで紹介したことは一度だけ。なぜだ?

英国フォードのごく普通のファミリーセダンの心臓を、ロータス製に置き換えたスポーツセダン。ロータス製DOHCエンジンは1.6Lで106馬力。標準モデルの倍近いパワーです。そして車重は1トンを切る。

テールフィン風というか、ちょっとつまんだ感じのリア。BMWの2002によく似た丸ランプ。当時のトレンドでしょう。この車は「羊の皮をかぶった狼」の先駆車かと。同時代の日本車にも大いに影響を与えたに違いありません。
== ベッドフォード ==
CA ドーモビル(1961年)

いきなりのキャンピングカー。「RANGERS / CCJ」ブースです。イギリスの商用車ベッドフォード。前回もここで1968年式ベースのキャンピングカー仕様が展示されていました。

改めて見るとすごいデザインです。突き出た鼻先がちょっとしたテーブル状態。イギリスの昔の商用車って個性的ですよね。

個性的な外観に対し、中はシンプルで普通に使いやすそう。ステアリングはそれほど寝ておらず、割と乗用車的に見えます。

こういう車で日本全国を回り、車中泊をするなんて人もいるのでしょうね。うらやましい!
== MG ==
マグネット ZB(1958年)

「ヴィンテージ宮田自動車」での展示です。ここのショップは守備範囲が広いですね。「超希少車、アポロ実働」と書いてありました。Bピラーにアポロウインカーが仕込まれています。

モーリス・ガレージの小型サルーンであり高級車ではないはずですが、ダッシュボード一面は木目張り。まるでジャガーサルーンのようです。

イギリス車に力があった頃の車。この時代は日産自動車が同クラスのオースティン・ケンブリッジをノックダウン生産し技術を吸収していました。

そんなMGもいまや中国企業の傘下になり新興国向けブランドとして使われており、かつての面影はありません。
== ジャガー ==
Mark Ⅰ 3.8(1965年)

「ワラシナカーズ」にて。この時代のジャガーサルーンといえば「マークⅡ」が有名だと思います。その前モデルに当たるのがこの「マークワン」。なおこの呼び方はモデル現役当時にはなく、マークⅡが登場してから逆算する形で付けられています。

マークⅡと違い、プレスドアを採用しています。この時代ならではの大きなバンパー。もう少し小さい方がいいかも…

この車は北米仕様左ハンドル。ダッシュボードのエンジンキー位置を見てください。ずいぶん遠い位置にあり、なんとこれは右ハンドル仕様のままなのだそうです。ボンネットリリースのレバーも右に残ったままで、ちょっと驚きましたね。

黒いボディにブラックレザーのシート。とても渋い。こういうのもいいですね!

ジャガー・カーズからの認定証です。
== オースティン・ヒーレー ==
スプライト Mark Ⅰ(1965年)

隣にはカニ目のスプライトがありました。こちらもマークワン。以前も書きましたがマーク○○とかシリーズ○○みたいな名前の付け方がイギリス車には多いですよね。前期、中期、後期みたいな言い方より、むしろわかりやすいかも知れません。

ハードトップを付けたカニ目。ヘッドスペースには結構余裕がありそう。
== アストンマーティン ==
DB7 GTA(2003年)

DB7といえば、ビッグネーム「DB」を復活させた割には地味目というか、フォードの影響が強かったためか埋もれがち…と勝手に思っていたのですが、改めて調べてみると、このDB7後期型はV12を積む相当なハイパフォーマンスカーなんですね。

それにしても、直6からV12に切替えるなんて思いきったものです。

それでもそのスタイリングは上品で控えめで、とてもいいですね。限定モデル「GTA」ですが、過剰な派手さはありません。
== ロールス・ロイス ==
カマルグ(1987年)

カマルグです。「Mars Inc.」で文字通り偉容を誇っていました。

パーソナルクーペの最高峰。初期型はシャドウベース、途中からスピリットベース。総生産台数わずか530台ほど。ピニンファリーナによるデザイン。センサーを使ったフルオートエアコンシステムは当時の最先端だったそうです。

車名の由来は南仏カマルグ。そういや「カマルグの塩」を成城石井かどこかで見かけました。オシャレな缶入りで、中身はべつにいいので缶だけでも欲しいと思いましたね(笑)

エンジンは6,750ccのV8。1987年式かつアメリカ仕様ベースということで、アメリカ向けのみ12台限定の「カマルグLTD」かと思いましたが、さすがにそれではありませんでした。

幅1.9メートル、全長5.2メートルですがそれ以上に大きく見えます。ちょっとびっくりするほど。ただ、とても端正です。ピニンファリーナに対するロールス・ロイスからのデザイン要件は「最高級の名に相応しく、威厳に満ち、決して古くならないこと」だけだったそうです。完璧にそれに応えていますね。

フロントのパルテノングリルは前方に傾いています。前の車のバックミラーにはグリルとフライングレディが3D効果?を伴って飛び込んでくるわけですね。かなり怖いかも…

そんな迫力のあるフロントに対しリアはとてもシンプル。そこはサルーンとも共通していますかね。トランクルームもさすがに広大で、旅行カバンなどいくらでも入りそうです。

カマルグは1975年登場ですが、同時代の車の中では明らかに直線基調。しかし1980年代には多くの車が直線的なスタイルを取り入れます。ようはカマルグは最高級であるとともに最先端でもあったということでしょう。
== アルヴィス ==
アルヴィスです。日本総代理店「明治産業」の出展。このところ連続して出ていますね。むっちゃ華やかです。

「コンティニュエーション」と銘打ち、過去の車を当時と同様の製法で、いま再生産しています。そんなモデルを3台展示。
3リッター グラバー・スーパークーペ(2022年)

このクーペは前回に展示されていたものと同じでしょうか?こんな貴重な車、そうそう何台もないでしょうし。

リアですが、ナンバープレート右側のリアフォグランプはその横のブレーキランプと光源が近すぎて保安基準的にNGでは?ってそんなこといったらサイドのウインカーもないか。少量生産車の特例措置ですかね。

内装は意外と現代的で、少し慣れれば普通に乗れるかも…

このレタリングにも時代を感じます。グラバーはスイスのベルンに存在したコーチビルダーです。
3リッター グラバー・スーパーカブリオレ(2024年)

オープン版です。とても洗練されていますね。伸びやかで本当にエレガントです。

真っ白い内装が目を惹きます。オーナーは少しぐらい汚れても気にしない…のでしょうか?

明るいガンメタリックですが、少しパープルがかって見えます。綺麗です。給油口の形がユニーク。
4.3リッター ヴァンデンプラ・ツアラー(2020年)

この車も以前から何度か展示されていますが、見るたびに圧倒されます。こういう車が日本にあること、売る人がいること、購入する人がいてビジネスとして成り立っていること自体が素晴らしいことです。

明治産業の方と話をすることができ、どんな人がアルヴィスを欲しがるのか率直なところを聞いてみました。

やはり本当のカーマニアで、ほかの車と決してかぶらず、ホンモノの高級車を求める人がいるのだと。そんな話を聞くことができました。とんでもなく希少で高価ですが、それでもブガッティより遥かに安いわけです。確かにそうですね…
== ブリストル ==

「ワクイミュージアム」で知られる涌井清春氏が新たに設立した「ブリストル研究所」です。
401(1949年)

ブリストル・カーズ。超レアなイギリスの高級車です。どのくらいレアか?ディーラーがロンドンにひとつしか置かれなかったくらいです。広告もまったく出さなかった。「ブリストルが存在することを知ることも、所有する上でのテストだ」みたいな話をYouTubeの動画で聞きました。マジか…

そんな自動車メーカーです。生産台数は年間100台ほど。残念ながら2020年に会社を清算しており、いまはもうありません。

第二次世界大戦でイギリスの空を護ったブリストル・エアロプレーン。戦後、自動車製造にも進出。戦前の名車BMW326/328のシャシと6気筒エンジンをもとに車を作り始めました。

前置きが長くなりましたが、そのブリストル最初の車がこの「400」です。キドニーグリルも踏襲していますね。
401(1953年)

ブリストルはアルミニウムボディ。航空機メーカーの技術が生かされています。上記400はもちろん未塗装の状態。

こちらの401、オールドイングリッシュホワイトでしょうか?とても綺麗な白に塗られています。なおこれには驚いたのですが、400/401の空気抵抗はCD値0.36。ここも航空機技術でしょう。普通にいまの高速道路を走ることができるし、風切り音も少なく普通に会話ができるとのことです。
406(1960年)

優雅なボディに豪華な内装、そこにドイツ生まれの高性能エンジンを組み合わせた車。「小型ベントレー」というコンセプトというか位置づけなのですが、希少性はベントレー以上。いまは亡き川上完さんも406を所有されていました。その1台もブリストル研究所にあるそうです。

ブリストルの特徴といえばコレ。こんなところがガバッと開き、スペアタイヤが格納されています。反対側も同様に開き、バッテリーが入っています。FR車の特徴「プレミアムレングス」(にしてもすごく長い)を、ブリストルはまさに有効活用しています。

当時の流行だったテールフィンが控えめに品良く付けられています。そして丸い小さなウインカーやテールランプ。この406はBMWエンジン最後のモデルです。なお1958年からブリストルは4輪ディスクブレーキも採用。ずいぶん早いですよね。
410(1968年)

407からはクライスラー製のV8に切り替え、同じくクライスラーのATとペアで搭載しています。クライスラーV8は汎用的だったのか、同様のパワーユニットはフランスのファセル・ヴェガも採用しています。さぞかしパワフルで丈夫なのだろうと思います。

綺麗にまとまっているリアです。少量生産メーカーだけにランプユニットは他車からの流用。調べたところ、この410はヒルマン・ミンクスから。
後年のモデル、ブリタニア/ブリガンドではベッドフォードCF(商用バン)から流用しています↓

ハイエースのを流用するようなもの?ですがとても上品だと思います。

少し野暮ったくも見えますが、おそらくは意図的なものなのでしょう。あえて、ボンドカーには選ばれないように。あまり目立たないように。成金に選ばれないように…

スタッフ様のご厚意で410の運転席に座らせていただきました。飛行機の操縦桿を模したステアリングホイール、重厚な革シート。インテリアの作り込みはまるで高級家具です。見た目は地味でも中に入ればまごうことなき高級車。足元は意外と広く、またこれだけのロングノーズにも関わらず車体の見切りはとても良い。なんというか、座っただけですごく不思議な幸福感に包まれましたね。なんですかねこれは…

ドア内張りというより装飾です。これを引っ張りドアを閉めるのってちょっと勇気が要る…

この眺めを見ることができたのはとても幸運なこと。

控えめな外観に強力なエンジンと豪華で繊細な内装を持つGTカー。そしてその存在はまるで知られていない。率直に言ってとても魅力的です。このブランドが消滅したのはとても残念なことです。
なんだか、イギリス車の深淵をちょっと覗いた気がします。
←次回はイタリアにフランス車、それからアメリカ車などを紹介します。