「オートモビルカウンシル」2023、イタリア車、フランス車、アメリカ車にスペイン車、そして中国車です。
今回、イタリア/フランス車の展示はちょっと少なめでした。それ自体は少々残念ですが、滅多に見ることができないレアな車が展示されていることは例年通りです。
まずイタリア車から。
== フェラーリ ==
主催者テーマ展示「フェラーリ・スペチャーレ」。エンツォ・フェラーリ生誕125周年を記念した企画です。
GTO(1984年)

そのスタイリングは獰猛です。止まっていても、エンジンを切っていても音が聞こえてきそう。今どき流行らない言葉ですが、男らしい。
F40(1990年)

エンツォ・フェラーリが最期に遺した名車F40。改めてよく見ると、こちらはどこか禍々しさすら感じます。なんというか、サーキットに散っていった男たちの血を吸ってきたかのような。

すみません、なんか酔ったこと書いてますね…
F50(1997年)

ほかと比べるとちょっと影が薄い?当時はマクラーレンF1という強烈なライバルも存在していましたし。

しかし、フェラーリ初のフルカーボン製センターモノコックにF1マシン(F92A)から流用したエンジンなど、まさに「ロードゴーイングF1マシン」であることは事実です。

1990年代後半の、曲線を多用したデザインにも独特のものがあると思います。
エンツォ・フェラーリ(2004年)

この車、正式名称が「エンツォ・フェラーリ」。私はずっと「エンツォ」、フェラーリ・エンツォだと思っていました。フェラーリ・エンツォ・フェラーリなんですね。ちょっとくどくないですか(笑)

それはともかく、この車は奥山清行氏によるデザイン。日本人がデザインしたフェラーリであることも有名です。奥山氏によると「ガンダムからインスピレーションを受けた。当時は言えなかった」とのこと。
奥山氏談:フロントがコアファイターの形です。
たしかに!
J50(2018年)

488スパイダーをベースにした、10台限定のスペシャル。「J」とは日本のこと。フェラーリの日本進出50周年を記念した限定車です。

この流麗でエレガントなスタイリング、本当に素晴らしい。実物を目の前にすると、まさに息を飲みます。GTOやF40の獰猛さとは真逆ですが、これも「フェラーリ」を感じさせる。まさに世界最高峰!

SF90やローマなど、現在のフェラーリデザインはこの車の流れを組んでいるのではないかと思っています。
モンツァSP1(2020年)

812スーパーファストがベースの異色モデル。1950年代のレーシングカー「750モンツァ」をイメージしたそうです。

「SP2」もあり、そちらは2座。このカラーリングのためか、英国のレーシングカーにも見えます。

最近のフェラーリは、既存のイメージを積極的に塗り直そうとしているよう。新たなフェラーリ像の再構築を進めているというか。
ディーノ246 GT(1973年)

「Auto Speciale」のブースに2台のフェラーリが。

ディーノ。アメリカ仕様でしょうか。サイドマーカーが付き、フロントウインカーの形状が違いますね。

アメリカで前後サイドマーカー装着が義務づけられたのはこの年代あたりからだったでしょうか。ちょっと取って付けた感が強くて残念…
512 BBi(1982年)

フェラーリのフラッグシップモデルって昔から赤以外がよく似合うように思います。

この上品なメタリックグレー、ボディラインをよく引き立てています。
ディーノ246 GT(1973年)

「Vintage Car VISCO」にもディーノが。

Auto Specialeにあったディーノ246GTと同じ年式ですが、ワイパーが違いますね。
テスタロッサ(1988年)

テスタロッサもありました。「MOTOR Logic Company」です。

こちらも濃紺のボディがよく似合う。
== マセラティ ==
MC20 チェロ(2023年)

マセラティの最新モデル。見た目の印象は上品で、荒々しさをまるで感じません。

それでいてランボルギーニばりのシザーズドアを採用していたりと、スーパーカーアイコンを充分に備えている。

マセラティジャパンによる日本初展示です。
ミストラル・スパイダー(1964年)

そして隣にはこの旧いスパイダーが。59年もの時間的な差があるはずが、どこか共通のイメージを受けます。いつも思いますが、あちらのメーカーはブランド戦略がほんとうに巧み。
== ランチア ==
しかし、そのブランド戦略からスッパリ切り落とされたのがランチア。きら星のような名車が残ってるのに…
デルタ HF インテグラーレ・エヴォルツィオーネⅡ レストモッド(1994年)

こちらは「WANNA DRIVE」のデルタHFエボ2です。

レストモッドとは?単なるレストアではなく、いまの技術でモディファイすること。この会場でもナローポルシェなどがその手法で仕上げられていましたね。

ブランドは消え去っても、車は残る。

…って、なんか来年に復活するらしいです。ホント?
== アルファロメオ ==
1900SSザガート

「THE MAGARIGAWA CLUB」で展示されていた超希少車。1954から2年間、たったの39台しか生産されなかった車です。

なお「THE MAGARIGAWA CLUB」はサーキットを有する複合レジャー施設で、対象は富裕層。一口3,600万円だそうで…
スパイダー・ヴェローチェ(1991年)

長寿モデルといえばいろいろありますが、このアルファロメオの初代スパイダーもその1台でしょう。

改良を重ねながら27年間、1966年から1993年まで販売されました。これはその最終型、シリーズ4です。

「ガレージイガラシ」での展示。

Wikipediaに同じアングル、同じシルバーのシリーズ1の画像がありました。
トナーレ(2023年)

こちらは日本公式の展示。ステランティスジャパンから。

ステルヴィオに続くアルファロメオのSUV。個性的だけれども奇抜ではなく、さすがうまくまとまっている。アルファ独自の盾グリルは、むしろ車高の高いSUVに向いているのかも。

個人的には、シルバーやグレーメタリックあるいはホワイトのカラーリングのほうが似合うのではないかと思いましたね。
== フィアット ==
デュカト(2023年)

フィアットの商用バン、デュカト。こちら、名古屋の「ホワイトハウス」出品車。

てっきり並行輸入車かと思ったのですが…ホワイトハウスさんはフィアット・デュカト正規販売代理店のひとつ。輸入車販売とキャンピングカービルダーとしての実績を買われてのことだそうです。

元々は商用車のはずですが、運転環境や車内の作りは並の乗用車以上では?分厚いシートをはじめ、質素ではあるけれど決して貧弱でない内装。ここはさすがです。

広大なラゲッジにすっぽり収まっているのは、ホワイトハウスさんで扱っているオフロードバギー「ポラリス」です。
次はフランス車。
== アルピーヌ ==
アルピーヌ・ジャポン公式。新旧のアルピーヌA110を並べるという、実に気の利いた展示です。
A110 R(2023年)

車名の「R」はレーシングのことかと思いきや、ラディカルのこと。

徹底した軽量化。ボンネットやルーフをカーボンにするだけでなく、リアウインドウを撤去しカーボンパネルで埋めてしまうというラディカルさ。バックカメラは付けられますよね?(汗)
A110 1600S(1972年)

軽量を武器に他車を圧倒した、アルピーヌA110。

同じ名前を引き継いた現行型が、これだけ時代を隔てているにもかかわらず同じコンセプトを共有しているということがすごい。
== シトロエン ==
SM(1971年)

シトロエン専門店「アウトニーズ」。独創的なオールド・シトロエンのなかでも、このSMはとびきりの珍車いや名車…
マセラティエンジンを積んだ高性能クーペ。でも変わったカッコです。

ナンバープレートの取り付け方法からして独特です。ヘッドライトだけでなくナンバープレートまでクリアパネルで覆っています。日本では、ナンバープレートは陸運支局からの借りものであり個人の所有物ではない。シトロエンSMなら、ナンバープレートをキズひとつない綺麗な状態に保てます。いやはや素晴らしい…って??

SMのスタイルはどこを見ても奇妙というか個性的ですが、このリアは後年のXMもどこか共通するイメージを受け継いでいると思います。
XM(1992年)

初期型XMの5速MTです。シトロエンのフラッグシップですが、とてもプレーンでイイ感じ。

もちろんこれは日本で正規販売されたものではなく、欧州からの並行輸入車両。国内ではワンオーナーとのこと。

例によってシートはフカフカ。PWスイッチが前席のみなのが分かりますでしょうか。後席窓は手回しです。XMの上位モデルはギミックだらけでしたが、これはシンプル。この車はXMご自慢のセルフセンタリング機構も省かれています。

XMってリアランプの光り方が面白いと知っていますか?ウインカーは上、車名ロゴ横の三角部分。バックランプは内側に組み込まれ、テールランプは下側二層の上側、リフレクター部分(四灯式)です。その内側下部がリアフォグ。

で、ブレーキランプは外側上下が光る。後ろからは縦に光って見えます。電球の交換がややこしそう(笑)
== プジョー ==
406(2002年)

フランス車のスペシャリスト「原工房」。

406は今や路上ではほとんど見かけなくなりました。この美しい後ろ姿、今の路上ではもったいないのかも。
308 GT BlueHDi(2023年)

ステランティスジャパンから新型308。

最近のフランス車はドイツ車風味を強めていますが、プジョーに関しても、かつてのシャレオツイメージから離れているようです。

特にこのリアなど、アメ車っぽさも私は感じます。改めてよく見るとすごい造形。巨大な彫刻刀でえぐったかのよう。小型ハッチバック車とは思えない大胆さ。
次はアメリカ車。クラシックカーです。
== パッカード ==
ワン・トゥエンティ コンバーティブルセダン(1937年)

今は亡き、というかとっくの昔に消滅した超高級車パッカード。戦前の日本でも知られ、非常に高価で「宮様か株屋の車」と言われたそうです。昭和天皇御料車の護衛車(倶奉車)としても使われました。

個人的にパッカードといえば、スティーヴン・スピルバーグの映画「太陽の帝国」に登場した黒いセダンが印象に残っています。あと、H.P.ラヴクラフトの「戸口にあらわれたもの」にも登場しました。病弱だったはずの彼が、馬力のあるパッカードで、周りの車を次々に追い抜く…この小説は結末がマジでキモイです(汗)

車というより家具のような内装です。この時代の高級車はみなそうなのでしょうか。
スペインの車がありました。
== HURTAN ==
グランドアルバイシン・ヘリテージ(2023年)

スペインのフータン。1991年に設立され「アルバイシン」というモデルをずっと作り続けているそうです。展示は日本代理店「HURTAN JAPAN」です。

日本車を元にした車なのですが、ベースがなにか分かりますか?

現行ND系マツダ・ロードスターです。前後だけでなくサイドも大きく作り直されている。ともかくこの外観は相当ですよ。

内装も大胆に手が加えられています。見るからに上等な革、それにウッドも。ベース車の倍以上の価格ですが、正直それも納得できます。
最後に中国車。BYDジャパンによる、中国製最新EVの展示です。
== BYD ==
ATTO 3(2023年)

見た目、かなり高水準です。エクステリアはクセがなく街中に自然に溶け込むでしょう。

それに対し内装は奇抜で、これは刺さる人には刺さるでしょう。

ドアポケット部分の装飾、3本のヒモは指ではじくと本当に音が出ます♪
SEAL(2023年)

欧州メーカーから人材を積極的にヘッドハントすることでも有名なBYD。いまのデザイン統括トップは元アウディの人です。

こちらは中国仕様そのままですね。

そこまで大きくないサイズですが、キャビンは大きめで車内はかなり広そうです。
BYDは以前から電動バスを日本でも積極的に展開しており、いよいよ一般向けEVへ進出。さてどうなりますか。
中華人民共和国による一方的な対日政策は、日本人への悪影響が出ています。捕まって帰ってこれない人すらいるほど。
なんの話をしている?そんなのクルマと関係ない?それはそうなのですが、でも簡単に割り切っていいのか。割り切ってしまうのも、それは事なかれ主義あるいは一種の迎合主義(コンフォーミズム)だと思います。
←次回はラスト。日本車編です。