(前回の「リンカーン・コンチネンタル・マークV ~史上最大のパーソナル・ラグジュアリークーペ誕生~」の続きです)
1978年モデルのコンチネンタル・マークVは、ベース車両の価格が1977年モデルの$11,396[$47,386]から$703上昇(インフレ換算すると$625下落)して$12,099[$46,761]となりました。
この年は、1971年から生産されてきた、第7世代のキャデラック・エルドラード最後の年であり、大型ボディ最後の記念として、Custom Biarritz Classicエディションがリリースされましたがコンチネンタル・マークVは72,602台を販売し、キャデラック・エルドラードの46,816台に対し圧倒的な人気を獲得していました。
コンチネンタル・マークVと1978年キャデラック・エルドラードCustom Biarritz Classicエディション
エンジンは引き続き、400cu in(6.6L)と460cu in(7.5L)の二本立てで、カリフォルニア州では400 V8しか選択できないのも同様です。
この年の400cu in(6.6L)エンジンの出力は燃費節減のため166hp(3,800rpm)と433Nm(1,800rpm)にダウンし、そのパフォーマンスはカー&ドライバー誌 1977年6月号の特集記事「Lincoln Continental Mark V」のロードテストのデータによると、0-60mph:11.9秒、0~1/4マイル:18.6秒(@75.1mph)、最高速度:102mphとなっています。
また、460cu in(7.5L)エンジンは210hp(4,200rpm)と484Nm(2,200rpm)の出力となり、0-60mphは11.2秒、0-100mphは34.8秒、最高時速は119mph、そしてSS1/4マイルは18.3秒(80mph)と僅かに向上しました。
カー&ドライバー誌 1977年6月号のロードテストデータ
この年の変更点はより冷却容量の大きいラジエータ、伝達効率が改善されたトルクコンバータ、メンテナンスフリーのバッテリーと新しいボルテージレギュレータ、よりセキュリティの高いドアとイグニッションのキーシリンダの採用などです。燃料タンクは26gal.(98.5L)から25.1gal.(95L)に若干容量が縮小されました。
外装ではベースモデルのホイールキャップが、より立体的な造形に変更され、新たなオプションとしてワイヤ―スポークタイプのホイールキャップが導入されています。このワイヤ―スポークタイプのホイールキャップは1990年代の初めまで継続して使用されました。
1978年 コンチネンタル・マークVのカタログトップページ
また、この年新たなルーフ形状としてキャリッジルーフ($900)が追加されました。これは、コンバーチブルの幌骨やステッチが完璧にシュミレートされており、コンチネンタル・マークVを疑似コンバーチブルに仕立てることが可能な装備です。
キャリッジルーフを装備したコンチネンタル・マークV(キャリッジルーフにパワームーンルーフは共着できません)
内装では、タンク内に残った燃料で航続できる距離をデジタルで表示する、Miles To Emptyゲージ($125)が新たにオプションとして加わりました。 これは、マニフォールドの負圧とタンクの燃料残量を基に計算された数値を表示するもので、現在の水準から考えると非常に粗末なものでしたが、世界で最も古いインストルメントパネルに装備されたデジタル表示による計器です。
デジタル Miles To Empty ゲージ(世界最初のデジタル表示によるインパネ計器です)
人気のあるデザイナーズシリーズも引き続いて提供され、外装色は下記の仕様に変更されました。
1978年 デザイナーズシリーズのカラーバリエーション
1978年 コンチネンタル・マークV ビル・ブラス・エディション(著名なブルー/ホワイトの2トーンカラーの登場は
1979年になるまで待たねばなりませんでした)
1978年 コンチネンタル・マークV カルティエ・エディション(この年に採用されたベージュのテーマは1979年まで継続されました)
1978年 コンチネンタル・マークV ジバンシィ・エディション(前年に続いて前側半分だけのバイナルトップが特徴です)
1978年 コンチネンタル・マークV プッチ―・エディション(この年のプッチー・エディションは、バイナルトップに
ワニ革の模様を持つ素材が使用されました)
この年にはフォード社が自動車メーカーとして創業75周目を迎えたことを記念して、コンチネンタル・マークVとフォード・サンダーバードにダイヤモンド・ジュビリー・エディションが設定されました。コンチネンタル・マークVのダイヤモンド・ジュビリー・エディションの価格はベースモデルよりも約$8,000 [$30,919]も高価になり$20,529 [$79,342](ベースモデルの約1.8倍)でした。これは、この年販売されていたアメリカ製乗用車の中で最も高価で贅沢なモデルであり、販売台数は5,159台(概ね販売店毎に1台)に制限されていました。
ダイヤモンド・ジュビリー・エディションはダイヤモンドブルー・ムーンダストメタリック(2,602台)とジュビリーゴールド・ムーンダストメタリック(2,557台)の2色のみで提供され、4種類(460 V8、デュアルエキゾースト、パワームーンルーフ、40チャンネルCBラジオ)を除いた全てのオプションが標準装備された上で次の特別な装備が施されていました。
【外装】
・コーチランプを内蔵したボディ同色のランドゥトップ
・クリスタルゴールドのフードオーナメント
・ボディ同色のバイナルインサートを持つサイドモールディング
・――〃――のフロントグリルの垂直バー
・――〃――のフロントグリルオーナメント
・――〃――のバンパーガードバイナルストリップ
・――〃――のタービンスタイルアルミホイール
・――〃――のトランクリッドパッド
・――〃――のバイナルインサート付きトランクキーシリンダカバー
・トリプルバンドのピンストライプ
・フェンダールーバーエッジのメッキ装飾
・面取りされたオペラウインドウとDiamond Jubileeスクリプトの疑似ダイヤモンドチップ
・イニシャルのモノグラム
1978年 コンチネンタル・マークV ダイヤモンド・ジュビリー・エディション(ダイヤモンドブルー・ムーンダストメタリック)
1978年 コンチネンタル・マークV ダイヤモンド・ジュビリー・エディション(ジュビリーゴールド・ムーンダストメタリック)
ボディカラーとコーディネートされたフロントグリルの垂直バー
クリスタルゴールドのフードオーナメントとカラーコーディネートされたグリルオーナメント
面取りされたオペラウインドウとDiamond Jubileeスクリプト
トランクリッドに装着されるパッドとインサート付きトランクキーシリンダカバー
ボディカラーとコーディネートされたタービンスタイルアルミホイール
【内装】
・外装色とコーディネートされたスプリットフロントバケットシート
・革張りのダッシュボード・シートバック
・革張りのパッド入りセンターコンソール
・センターコンソールのアームレスト内に収納された傘
・黒檀木目のインストルメントパネル
・ ―〃― のインサート付きドア・イグニッションキー
・ ―〃― のライトスイッチ・ワイパースイッチ・シガライターノブ
・ ―〃― のドアトリムパネル上部のインサート
・ ―〃― のドアアームレストスイッチパネル
・ ―〃― のフロントシートバックのインサート
・クロス巻きのAピラー・ルーフエッジトリム
・――〃――のドア・クォーターアームレスト
・リアシートセンターアームレスト
・フロントシートバックのアシストストラップとマップポケット
・アクセル・ブレーキ・駐車ブレーキ各ペダルのメッキ装飾
・客室内の36オンスティファニーカットパイルカーペット
・ラゲッジルームの18オンスティファニーカットパイルカーペット
・トランクリッド裏の18オンスティファニーカットパイルカーペット
・革>張りのオーナーズマニュアル
・革張りのツールキット
黒檀木目のインストルメントパネルを装備したスプリットフロントバケットシートの内装
リアシートに装備されたセンターアームレスト
トランクリッド裏の18オンスティファニーカットパイルカーペット
1978年のコンチネンタル・マークV ダイヤモンド・ジュビリー・エディションは今まで生産された最も豪華なコンチネンタルでした。
次回は1979年のことを書く予定です。
※文中[ ]カッコ内の価格は米国のインフレ率により2018年現在の貨幣価値に換算した価格です。