(前回の「リンカーン・コンチネンタル・マークV ~コンチネンタル・マークV ~アメリカ製フルサイズ高級車の終焉~」の続きです)
1979年のコンチネンタル・マークVは、フルサイズのプラットフォームをベースとする最後のパーソナルラグジュアリーカーでした。1979年6月8日、最後のコンチネンタル・マークVが組立ラインを出たとき、一つの歴史に幕が下ろされました。
この大きな節目となるイベントを記念し、リンカーンはアメリカ製大型高級車の最後を歴史に刻む限定版として、リンカーン・コンチネンタル4ドアとコンチネンタル・マークVにコレクターズ・シリーズを提供しました。
リンカーン・マーキュリー部門の副社長兼ゼネラル・マネージャーのWalt Obenは、リンカーンの顧客のために出版されていた、コンチネンタル・マガジン1978年秋号に掲載された顧客へのメッセージの中で、「伝統的な高級車の新車を望むなら、これが最終的な機会であり、長い間それを延期しないことをお勧めします」と述べています。
1979年 リンカーン・コンチネンタル コレクターズ・シリーズ(ホワイト)
1979年 コンチネンタル・マークV コレクターズ・シリーズ
(ミッドナイトブルー・ムーンダストメタリック)
コンチネンタル・マークVのコレクターズ・シリーズに与えられた特別装備は、前年のダイヤモンド・ジュビリー・エディションをほぼ踏襲していましたが、コンチネンタル・マークIIIへの回帰を意図してオペラウインドウが削除されたクォーターピラーと、ボディカラーのバリエーションが異なっています。
ボディカラーは販売当初、ミッドナイトブルー・ムーンダストメタリック(3Q)とホワイト(9D)の2色のみで供給されましたが、生産終了間近の1979年4月にライトシルバー・ムーンダストメタリック(1Y)とダイヤモンドブルー・ムーンダストメタリック(38)が追加され、最終的に4色がラインナップされました。
なお、ホワイトカラーのコレクターズ・シリーズ・マークVには、モールディングやホイールの色をゴールドカラーで統一したモデルと、ベースモデルと同じブラック/ホワイトのモールディングとミッドナイトブルーのホイールを装着したモデルの2パターンが存在します。
これは、当初ゴールドでカラーコーディネートされたバンパー・モールディング、ボディサイド・モールディング及びホイールを装着して販売されていたものが、1979年1月の第3週頃以降、ゴールドバージョンの部品在庫が不足したことにより、ベースモデルと同じブラックのバンパー・モールディングとホワイトのボディサイドサイド・モールディング、ミッドナイトブルーのコレクターズ・シリーズと同じ紺色のホイールを組み合わせたモデルも並行して出荷されるようになったことによります。
1979年 コレクターズ・シリーズのカラーバリエーション
他にもホワイトボディーにミッドナイトブルーのトップやプレーントップを持つコレクターズ・シリーズが確認されています
サイドモール・バンパーモールのミッドナイトブルーはブラックの誤りです
1979年 コンチネンタル・マークV コレクターズ・シリーズ(ホワイトボディにゴールドのモールディングとホイールを持つ車両)
1979年 コンチネンタル・マークV コレクターズ・シリーズ(ホワイトボディにベースモデルと同じモールディングとミッドナイトブルーのホイールを持つ車両)
コレクターズ・シリーズの販売台数には制限が設けられておらず、色別ではミッドナイト・ブルー・ムーンダストメタリック:3,900台、ホワイト:2,040台、ライトシルバー・ムーンダストメタリック:125台、ダイヤモンドブルー・ムーンダストメタリック:197台、コレクターズ・シリーズ合計では6,262台が販売されました。
1979年 コンチネンタル・マークV コレクターズ・シリーズ(ライトシルバー・ムーンダストメタリック)
販売価格はベースモデルの$13,067[$45,355]に対し約1.7倍の約$22,000[$76,365]に達し、前年のダイヤモンド・ジュビリー・エディションと同じく、この年のアメリカ製乗用車の中で最も高価なモデルとなりました。
1979年 コンチネンタル・マークV コレクターズ・シリーズ(ダイヤモンドブルー・ムーンダストメタリック)
内装はミッドナイトブルーのKasman II高級布製バケットシートとセンターコンソールが標準装備となっていましたが、革製のシートを選択することも出来ました。この場合、ベースモデルのラグジュアリーグループ・オプションと同じツインコンフォート・ラウンジシート(色はミッドナイトブルーまたはホワイトから選択)が装備され、コレクターズ・シリーズ特有のインテリアが省かれるため、(安価な)マイナスオプションとして取り扱われました。
また、コレクターズ・シリーズにはダイヤモンド・ジュビリー・エディションと同じく、パワームーンルーフと40チャンネルCBラジオを除く全てのオプションが標準装備された上で、下記の特別な装備が追加されます。
【外装】
・オペラウインドウを持たないランドゥトップとCollector's Seriesのスクリプト
・コーチランプを内蔵したランドゥルーフモールディング
・クリスタルゴールドのフードオーナメント
・ゴールドカラーのフロントグリル垂直バー
・―――〃―――のフロントグリルオーナメント
・トリプルバンド・ペイントストライプ
・フェンダールーバーエッジ部のメッキ加飾
・カラーコーディネートされたトランクリッドのコンチネンタルスペアタイヤ部のパッド(ダイヤモンドブルー及びライトシルバーの車両はミッドナイトブルー)
・――――――〃――――――トランクキーシリンダーカバーのバイナルインサート
・――――――〃――――――バンバーのバイナルストリップ
・――――――〃――――――サイドモールのバイナルインサート
・――――――〃――――――タービンスタイルアルミホイール
クォーターピラーに表示されるコレクターズ・シリーズのスクリプトとコーチランプ(以下の写真は筆者所有車を中心に掲載)
クリスタルゴールドのフードオーナメント
ゴールドのフロントグリルオーナメント(ベースモデルでは赤色です)
フェンダールーバーエッジ部のメッキ加飾
コンチネンタルスペアタイヤ部のパッドとキーシリンダーカバー部のバイナルインサート
エンジンフード上のトリプルバンド・ストライプ
トリプルバンド・ストライプはデカールではなくペイントで描かれます(ベースモデルでは端部のグラフィックがデカール、ストライプはローラーによるペイントです)
【内装】
・Kasman IIマジェスティックベロアを使用したスプリットバケットシート(※1
・ ――――――――――〃――――――――― ドアトリムとクォータートリム(※1
・ ――――――――――〃――――――――― ピラーガーニッシュとリアトレイ(※1
・革張りのダッシュボード
・―〃―のセンターコンソール(※1
・―〃―のシートサイドとバックシェル(※1
・シートバックのアシストストラップとマップポケット(※1
・黒檀木目柄のシートバックインサート
・――〃――のインストルメントパネル
・――〃――と特別なオーナメントを持つステアリング
・――〃――のドアアッパーガーニッシュ
・――〃――のインサート付きイグニッション・トランクキー
・――〃――のライトスイッチ・ワイパースイッチ・シガライターノブ
・ベースモデル(18オンス)の2倍の密度を持つ36オンスカットパイルカーペット
・各ペダル類のメッキ加飾
・リアシートセンターのアームレスト(※1
・トランクルームの18オンスカットパイルカーペット
・トランクリッド裏の18オンスカットパイルカーペット
・オーナーズプラーク
・センターコンソールアームレストに収納された傘
・革張りのオーナーズマニュアル
・革張りの工具セット
※1:革製インテリアを選択した場合装備されません
センターコンソールを備えたKasman IIマジェスティック・ベロアのスプリットバケットシートと黒檀木目柄のインストルメントパネル、特別なオーナメントを持つステアリング(ベース車両はウォルナット柄です)
黒檀木目柄のドアアッパーガーニッシュと
Kasman IIマジェスティック・ベロアを使用したドアトリム
ホワイトの革製インテリアを選択したコレクターズ・シリーズ・マークV(この場合、上記のセンターコンソール、バケットシート、ドアトリム等は装備されません)
革張りのオーナーズマニュアル、傘とトランク右側に固定された革張りの工具セットなど
トランクリッド裏の18オンスティファニーカットパイルカーペット
コンチネンタル・マークV コレクターズ・シリーズはアメリカ製フルサイズ・パーソナルラグジュアリーカーの最後のカーテンコールでした。
この美しさは永遠に人々の感動を呼び起こします
ミシガン州のウィクソム組立工場のある従業員は、最後のコンチネンタル・マークVを送り出したその夜、帰宅して妻に「物語の章の最後のページを見た」と言い、続けて「残りの部分に読むだけの価値があるかどうか分からない」と語ったといいます。
閉鎖されたミシガン州ウィクソム組立工場
人々が自動車に対して求める高級という価値観は急速に変化し、1950年代から四半世紀にわたり続いてきた、アメリカのフルサイズ・パーソナルラグジュアリーカーという文化は1970年代の終わりと共に消え去りました。
文化は消滅しましたが、その魂は世界中で生き続けています
※文中[ ]カッコ内の価格は米国のインフレ率により2018年現在の貨幣価値に換算した価格です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
5回に分けてコンチネンタル・マークVの歴史と、その背景について書いてきましたが、このテーマはこれで終了です。
内容の殆どはアメリカのWebサイトの受け売りで、下手な翻訳と国語力の無さで、大変読みづらい文章となってしまったことをお詫びいたします。
このつたない文章が、日本国内のコンチネンタル・マークVを愛する方々の知識として、少しでもお役に立てば幸いです。