前回の「フォードOHV V8エンジンの系譜 ~フラットヘッドからYブロックへ~」の続きです。
前回はフォードのOHV V8エンジンの誕生について書きましたが、今回は「FE」と「MEL」、「スーパーデューティ」について書いてみたいと思います。
フォードOHV V8エンジンの年表
年々拡大する乗用車とトラックの排気量に対応するため、フォードは1958年、新たに3つのエンジンファミリー(FE、MEL、スーパーデューティ)をリリースします。
FEエンジンの"FE"は Ford-Edsel を表し、スモールブロックであるフォードYブロックを置き換えることを目的に開発されましたが、将来的に大幅な排気量の引き上げに対応できる余裕をもって設計されており、ミディアムブロックとして位置づけられています。
1966年 フォード・ギャラクシーに搭載されたフォードFEエンジン(427cu.in.)
FEシリーズのエンジンは、乗用車、トラック、バス、船舶、工業用ポンプ等の機器にまで広く使用され、当初は最大排気量390cu.in.として製造されましたが、1962年には、より大きなシリンダーボアに対応した第2世代のFEブロックが登場しました。
そして1965年、フォードは新たなサイドオイラー・ブロックを発売しました。それまでのトップオイラー・バージョンは、最初にカムとバルブトレインにオイルが供給され、その後、メインベアリングが潤滑される構造であったのに対し、サイドオイラー・バージョンでは、オイルポンプから吐出されるオイルがメインベアリングとカムシャフトに直接供給され、より高い潤滑性能を確保していました。
トップオイラーとサイドオイラーの油圧経路の違い
FEサイドオイラー427cu.in.はキャロル・シェルビーによるAC・コブラに搭載された他、1966年のル・マン24時間レースでは同エンジンを搭載するフォードGT40 Mk II が1 - 2 - 3位を独占し歴史的な勝利を収めたことで有名です。
フォードFEサイドオイラー(427cu.in.)を搭載する1965年 AC・コブラ
1966年のル・マン24時間レースで圧倒的な勝利を収めたフォード・GT40 Mk.II
また、NASCARやドラッグレースにおいても多くの勝利を獲得し、膨大なアフターマーケットのパーツ供給と相まって現代でも多くのカスタム・カーに搭載される人気の高いエンジンです。
フォードFE(428cu.in.)コブラジェットを搭載する1969年 フォード・マスタング
一方、MELエンジンはビッグブロックのリンカーンYブロックを置き換える目的で設計され、1968年までのリンカーン・コンチネンタルや1959~1960年のフォード・サンダーバード等で使用されました。MELエンジンの"MEL"は Mercury - Edsel - Lincoln の略であり、前出のFEエンジンと似通った構造でしたが、吸排気バルブの配列がFEエンジンの「排 吸 排 吸 吸 排 吸 排」ではなく、「吸 排 吸 排 吸 排 吸 排」と交互に配置されている点が大きく異なります。
フォードMEL(430cu.in.)を搭載する1959年 フォード・サンダーバード
1966年、MELエンジンの最大排気量が430cu.in.から462cu.in.に拡大され、リンカーン・コンチネンタルに搭載されました。これは、フォード製乗用車に搭載されたエンジン史上、最大の排気量を持つエンジンであり、1969年に460cu.in.の新しい385シリーズV8エンジンに置き換えられるまで使用されました。
1966年 リンカーン・コンチネンタルに搭載されたフォードMELエンジン(462cu.in.)
フォードMEL(462cu.in.)を搭載する1966年 リンカーン・コンチネンタル
もう一つのスーパーデューティエンジンは、フォードがこれまでに製造した最も重く排気量の大きいV8エンジンであり、中・大型トラックのみに搭載され、乗用車に使用されることはありませんでした。
次回は、ウインザー・エンジンについて書く予定です。
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フォード OHV V8エンジン | クルマ
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2019/07/08 21:08:51