前回の「フォードOHV V8エンジンの系譜 ~大排気量時代の到来~」の続きです。
前回は第二世代の大排気量エンジンである「FE」と「MEL」エンジンについて書きましたが、今回は同時期に登場した第二世代のスモールブロック「ウインザー」について書いてみたいと思います。
フォードOHV V8エンジンの年表
1962年、フォードはYブロックの後継として新しいスモールブロックV8エンジンをフォード・フェアレーンのオプションとしてデビューさせました。新型のエンジンは当初、単にフォード・スモールブロックと呼ばれていましたが、後に登場する335シリーズ(クリーブランド)エンジンと区別するため、今日ではウィンザーと呼ばれています(ウィンザーとクリーブランドの名称は製造工場の所在地であるオンタリオ州ウィンザーとオハイオ州クリーブランドに由来します)。
ウィンザー(221cu.in.)を搭載する1962年 フォード・フェアレーン
ウィンザー・エンジンはそれまでのYブロックやFEエンジンと異なり、エンジンブロックのスカートがクランクシャフトの中心線より下には伸びておらず、薄肉鋳造技術の進歩と相まって、当時最も軽量でコンパクトなV8エンジンの一つでした。
排気量221cu.in.で登場したウィンザー・エンジンは、新しいレギュレーションに対応したGT-40のための302や、Trans-Amレースで勝利するために開発され1969年~1970年にかけてマスタングにも搭載されたBOSS302等の著名なバージョンを生み出しました。
1970年 フォード・マスタングに搭載されたBOSS 302エンジン(302cu.in.)
BOSS 302エンジン(302cu.in.)を搭載する1970年 フォード・マスタング
また、1968年にはストロークを3.5in.に伸ばし、排気量を351cu.in.にアップした351Wがマスタングやギャラクシーに搭載されデビューします。このエンジンは、それまでの302cu.in.以下のウィンザーと共通のベルハウジングボルトパターン、エンジンマウントを有していますが、ストロークの延長に伴いブロック高は1.3インチ(32.5 mm)高くなり、より大きなメインベアリングキャップとより太く長いコネクティングロッドが与えられています。
302cu.in.のウィンザー・エンジン
351cu.in.のウィンザー・エンジン(302Wに比較しエンジンブロック高が高くなっています)
ウィンザー(351cu.in.)を搭載する1979年 フォード・サンダーバード
ウィンザー(351cu.in.)を搭載する1980年 コンチネンタル・マークVI
そして、この351Wは、1970年代の本格的な排ガス規制が始まる前に開発されたため、エンジン本体には排ガス対策用の補機類が組み込まれていませんでした。そのため、1970年代に入ってから登場する第一世代の排ガス対策に特化した構造を持つ335シリーズV8と比較し、1980年代以降の新たな排ガス対策手法に柔軟に対応することができたため、結果的にフォード社が販売する最後のプッシュロッドV8搭載車であった、2001年のフォード・エクスプローラーまで39年の長きにわたり、様々な車種に搭載されることになります。
5.0 H.O.エンジン(302cu.in.)を搭載する1982年 フォード・マスタングGT
ウィンザー(302cu.in.)を搭載する1990年 リンカーン・タウンカー(翌年からOHCのモジュラーV8に置き換えられました)
フォード最後のOHV V8エンジン搭載車 2001年 フォード・エクスプローラー
次回は、ビッグブロックの第三世代、385シリーズにいて書く予定です。
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フォード OHV V8エンジン | クルマ
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2019/07/21 21:55:42