リストラからの脱出（１９）　接点

前回のつづき

「先に食べてるんですか～？」
彼女はやってきた。

セルフサービスの食堂だったので、少し戸惑った彼女に並ぶ場所を教えた。
しばらくして、彼女は私の前の席に定食を持って座った。
そこで私が思ったのは、やはり彼女はヘルシー定食を選んでいた事だった。

若い女性ならなんとなく選びそうなメニューだと思っていたら、その通りだった。
私はその事を彼女に告げながら笑った。

昼食を取りながら面接の出来栄えを聞いた。
面接官は私と同じ質問をしていたようだが、彼女曰く
直ぐに面接は終わったらしい。

面接官が質問する「もし、ここに通う様になったらどうする？」と言う質問に
彼女は「入ってから勉強します。」と答えたらしい。

雑談も続く、彼女は既婚らしい、住んでいるのは以前私が住んでいた隣の区だ。
出没地点は私達もよく行く大型ショッピングセンター。
食堂で昼食を取るグループを見て、仲良しのコミュがと言っている所を見ると
ミクシーもやってそうだ。
案外接点が多いものだと感心した。
根性の悪いお局３人しか居なかった
前職の事務所を考えると、こんな娘がいたら
前職に未練が残ったろうとふと思い、試験より
そんな事を考えている自分ののんきさに
少し自嘲した。

昼食も終わり、試験会場を後にする事になる。
私のバイク置き場の方に出口があるかと彼女が聞いてきた。
同じ方向から出て、駅に向かうつもりだったらしい。

近所に喫茶店でもあれば、もう少し話がしたかったが残念ながら無い、お互い合格したらこの場所で会おうと言って別れた。
勇気を出してメールアドレスを聞きたかった。
別にやましい考えではない。

おそらく、これで彼女と会う事は無いだろう。
お互いこの倍率だ、運が良くてもどちらかしか受からない。
もし、私が受かったら、登校日に彼女の合否がわかる。
だが、私が落ちたら彼女の合否はわからない。
自分の合否は勿論だが、彼女の合否も知りたかったのだ。
同じ訓練を受けるなら、クラスにきれいな娘が居るのは嬉しい。

のどの奥まで言葉が出かかったが、最後の一言は言えなかった。
彼女に「またね…」と言って、私はバイク置き場に向かった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく