2009年09月23日
今日は所用でトヨタのプリウスを運転する機会に恵まれました。
私自身は3台BMW 3シリーズを乗り継いでおり、今もE46に惚れ込んでいるのですが、昨今のエコブーム、特にプリウスはその最先端を走り来年まで予約が一杯という大人気車種です。なかなか試乗する機会に恵まれなかったので、今日はたまたま知人が所有していたプリウスを運転させてもらう機会が得られました。試乗はお台場のビーナスフォートにあるトヨタのショールームでほんの触りだけさせてもらっただけなので、貴重な機会です。しかも知人は同乗しないというので思い切り試せそうです(笑)
【おおまかな感想】
う~ん、最初の10mを走っただけで、考え込んでしまいました。ハイブリッドカーというと最先端のテクノロジーが凝縮されたクルマというイメージがありますが、本当のところは単なるエコカーってだけなの?ハイブリッドシステムを除けば、単なる移動手段を提供するだけのクルマ?私にとっては、もし仮にプリウスを所有したとしても、その喜びを感じる要素は残念ながらどこにもありませんでした。ただそれでも素晴らしい点は、驚くような低燃費ということと、すごく静かな走行環境を提供してくれることでした。当たり前ながら、この点はどうひっくり返っても今のBMWには望むべくもないことです。
【試したクルマ】
試しに運転させてもらったクルマは、2008年式のプリウス1.5Gセレクションで、今年モデルチェンジになる前のモデルです。走行キロはまだ1万2千キロで、禁煙車なので少し新車の香りが車室内に残っていました。
【ボディ】
皆さんもよくご存じと思いますが、プリウスは5ドアハッチのボディです。特に後部ハッチに特徴があり、昔CRX(だっけ?)という小型スポーツカーが採用していたような、2枚ガラスのハッチを採用していて、後方視界は大変優れています。それだけでなく、ドアガラスの面積が広くAピラーにも3角窓があるなど、車内はすごく明るく開放感があります。BMWの1シリーズや最新のE90系3シリーズは窓の面積も少なめで車内にいると閉じこめられた感じがしますが、逆にE46以上に開放感のあるプリウスの車室内はそれだけで安心感が持てて、好印象です。
窓ガラスに開放感があるためか、走り出して直ぐ車両のサイズ(車幅と全長)を運転感覚としてつかみ取ることが出来たので、細い道やすれ違いでも全く気になることがありませんでした。
【インパネと操作感】
運転においてここは重要なポイントです。これも当たり前かも知れませんが、やっぱりハイブリッドは普通のクルマとは操作方法が違うんです(笑)キーを差し込む要領は最新のBMW車でも同じですし、差し込んでPOWERボタンをPUSH!するまでは同じです。しかし、その状態では前面にある速度表示LED?の脇にある小さなREADYランプが付くだけで、エンジン音が全くしません。一瞬焦ります(苦笑)
シフトレバーはどこにもなく、ステアリング左脇のダッシュボードに小さなレバーがあって、さらにその上にパーキングスイッチがあります。小さなレバーはこれもスイッチで、つまりメカ的に動く操作は足で踏むアクセル、ブレーキ、フットブレーキ(サイドブレーキ)だけなのです。
後で触れますが、坂道の下りで使用するエンジンブレーキは、その小さなレバー(スイッチ)を操作するだけで、ギアの操作が全くできません。これはかなりカルチャーショックでした(苦笑)そのレバーは一応?シフトのような動き方で操作するのですが、前進(D)、後退(R)、そしてエンジンブレーキ(B)のポジションがあるだけです。通常のATに備えられているニュートラル(N)はおろか、マニュアルポジションやパワーモードなどが全く見当たりません(驚)。
レバーをどれかのポジションに入れても、レバー自身は元の位置に戻ってしまうので、今どのポジションにあるかは前方にあるスピードメーターのパネルに表示されたインジケーターを見なければなりませんでした。ただこれは慣れてしまうと全く不都合は感じませんでした。ただ前進状態で停止しないうちに後退に操作してしまうなどの乱暴な操作をしてしまうとどうなるのかが心配です。知人の車のため、試すことはしませんでしたが(苦笑)
メーターパネルの位置ですが、初代よりは若干運転席寄りになったかな?と思いますが、殆ど気のせい程度で相変わらずセンター前方に位置しており、ステアリング越しの前方にはありません。これでは自然なドライビングポジションが取れません。やはりこれはオーソドックスなステアリング前方にあるべきだと今でも思っています。ただ、メーターといってももはや速度と燃料計以外はインジケータだけという状態なので、今までほどメーター自身に感心が行かなくなっているような気がします。
インパネ中央には純正ナビを含む各種表示用タッチパネル、エアコンやオーディオ関連のスイッチが並んでいて、これはオーソドックスです。殆どが感覚的にすぐ慣れて操作できましたが、気になった点はエアコンをONにした直後はエアー取り込みが内気循環をデフォルトにしていることです。外気導入を初期状態にしてほしいですね。
【動力系】
ここがハイブリッドの最も注目されるところですね。キーを所定のスロットに挿入してブレーキを踏みながらPOWERスイッチをON! 何も起きません。少ししてブルッとエンジンが始動しますが、10秒位すると止まってしまいます。たしか発進加速はモーターだったな~と思い出し、そろそろと駐車場から出発します。
モーターによる加速は・・・まあまあかなという感じです。もともと加速にBMWほどの期待はしてませんでしたから。グレード通り1.5Lのクルマだと思えばこんな感じでしょうか。街乗りなら普通に乗れる程度ですが、高速での追い抜きは結構ヒヤヒヤかもしれません。それでもアクセルペダルの踏み込み加減に応じてモーターのトルクがきちんと可変するのには感心しました。まるで普通にエンジン付きで運転しているかのようです。ただし、インパネの項目でも書きましたが、シフトレバーがないため、パワーをかけて走るとかギアを固定して走るとかの各種ドライビングパターンを駆使することはできません。とにかくアクセルを踏む、ブレーキを踏む。これで終わりです。
モーターで加速するときですが、超低速の場合には殆ど無音に近かったのですが、ある程度速度が付いてくるとモーターの音はやはり聞こえてきます。でもその音は低温域でエンジンに比べればかなり静かでした。加速が終了するとエンジンが起動してモーターを補助するそうです。しかし運転している自分にはその切り替わりやエンジンの起動・停止などはよくわからないほど静かで滑らかにつながりました。この点の技術に開発陣はかなり苦労したのではないかと思います。
試しに山道のワインディングに乗り入れてみました。登りはやはりパワー不足で、一人乗車でももたつきました。もし定員乗車でかつバッテリーの容量が低下する冬場であれば、登坂は少し厳しいかも知れません。逆に下りですが今度はエンジンブレーキの効きが悪いです!普通であれば場合によってはマニュアルモードでシフトダウンすれば強力なエンジンブレーキが期待できますが、プリウスの場合Bモードにスイッチを入れるだけなので、確かに直後から一段シフトダウンしたような感覚にはなるものの、それ以上効かせることが出来ず、結局ブレーキに頼らざるを得ませんでした。技術的にはモーターの回生ブレーキを利用したり、1.5Lのエンジンブレーキを利用したりしているものとは思いますが、それらの制御が難しいのかも知れませんね。
【足回り・ステアリング】
プリウスはスポーツカーではないので、それほど期待はしていませんでしたが、これはちょっと・・・という足回りです。まるで20年前のハイソカー(古っ!)とかアメ車を想像してしまうくらいフワフワのサスペンションに驚きました。バネ自体も柔らかいのですが、ダンパーがまるで効いてない感じです。走行キロがまだ1万2千キロなのでまだ十分効いて良いはずなんですが。これが単に私が乗った車の個体差であればよいのですが、全般的にこのような味付けがされているとしたら、私はトヨタ技術陣の感覚を疑います。走り出して10mでガッカリしたというのは実はこの点にありました。発進加速や交差点の停止時だけで十分ふわふわ感を堪能できます(苦笑)。
しかもステアリングが軽いことと言ったらまるでオモチャのようです。こんな軽いステアリングに慣れたオーナーさんは、きっとBMWの試乗をしたらパワステついてないの?と訊くことでしょう。BMWのオーナーさんがプリウスを運転したら危険です!あまりに軽すぎてステアリングを切りすぎてしまうくらいです(苦笑)
ですからフワフワの足回りと小指でも回るステアリング、効きの悪いエンジンブレーキの三拍子揃ったプリウスを山のワインディングロードで軽快に走り回るのは無理です。少なくともBMWのオーナー諸氏にはアブナイです(笑)本当に驚きました。まるでアメ車を手本にチューニングしているような感じがしました。
【燃費】
残念なことに正確には計らなかったのですが、たぶん20km/L以上は確実でしょう。やはりエコブームだけでなく、じわじわと上がるガソリン価格に悩まされる私たち消費者としては魅力以外の何者でもありません。いつもの愛車(E46)なら絶対に燃料計の針が満タンから下がり始める行程でもプリウスならFULLのままびくともせず、試しに入れたガソリン代も500円でおつりが来たのにはやはり感動ものでした。
【その他】
ひとつ便利だなと思ったことがあります。ハイブリッド車は当然かなりの時間をエンジンなしで走ったり車内の機器を動かしているわけです。エアコンも同様で、例えば駐車場に停止しているときバッテリーでエアコンが動いているのです!確かにときどきエンジンが始動したり停止したりしていますが、普通のクルマだとずっとアイドリングでエンジンをかけっぱなしでないとエアコンを動かしていることが出来ません。ガソリンも無駄だし環境にもよくありません。それがプリウスだとエンジンは二割くらいしか動いていなくて、あとはずっと停止してバッテリーだけでエアコンなどがすべて動作するのです。もちろん静かだし環境にもずっと優しいと思います。夜間の長距離運転中、サービスエリアで仮眠を取りたいときなど重宝すると思います。
ただ、シートのつくりが今ひとつなので(なんか安っぽくフィット感も今ひとつ)、仮眠を取るには不向きかも知れませんが。
【まとめ】
というわけで、プリウス第二世代に乗ってみましたが、確かにハイブリッドという新しい技術の商品化という面で驚くことも多く、今までになかったクルマの利用や素晴らしい燃費など、初めて自分で体験できた有意義さを認めざるを得ません。けれども同時にクルマとしての基本設計のありかたというか、走る・曲がる・止まるという三要素においてBMWを乗り継いできている私から見れば、まだまだ改善すべき点も山ほどあり、言ってみれば安っぽさが目立った試乗となりました。
私自身は素人ですから評論家諸氏のように沢山のクルマを体験しているわけではありません。けれども試乗してみたプリウスよりも10年以上前に存在していた日産プリメーラやR32スカイラインのほうが安くて遙かにしっかりした走りを見せていたことを思えば、ハイブリッドというテクノロジーのコストが未だに高価であるという証拠なのかも知れないと思いました。
そういうわけで、エンジンとモーターという異なる技術の融合と調和というたいへん困難な挑戦はまだまだ続くのでしょう。でも各メーカーの開発陣はすでにその目的地が見えているのかも知れません。すべてのドライバーからみて、動力源の如何に関わらずすべてのドライブフィールや操作体系が同一になったときはじめてその課題を乗り越えるのでしょう。そしてコスト的にも十分対応できれば、地球環境のためにも是非クリーンなエネルギーへと移り変わるべきだと思います。
あとは、今後必ず問題化するであろう、寿命のきたバッテリーをどのように再処理するかという点で革新的な技術開発に期待したいところです。
Posted at 2009/09/25 00:50:34 | |
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レポート | クルマ