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2013年09月07日 イイね!

宮崎監督の引退会見に想う

宮崎監督の引退会見に想う引退会見のノーカット版を見ました。

会見を聴いていていろいろな事を想いましたが、特に悲しいとは感じませんでした。
いま公開している『風立ちぬ』を観れば、今回の引退の件は想像の範囲内の事だと、感じ取れる人は感じとっていた事でしょう。
宮崎監督作品の中で具体的な年数が出てくると、重要なメッセージの鍵になっていると思ってます。
『千と千尋』では釜爺の発言した「30年前にここにやってきた」
釜爺はビジュアル的にも判るとおり大地霊の土蜘蛛です。
大地に祝福をもたらす土蜘蛛に30年前に去られてしまった土地、地域、国はどこだったのか。

『風立ちぬ』では重要なキーワードとして「才能の10年」が語られました。
誰が見ても映画の主人公は宮崎駿監督の分身そのもの。
その主人公が受け入れた「才能の10年」の言葉に息を飲みました。
この場合、10年を単に年数と捉える事は間違っていると感じます。
映像作家に10年は短すぎます。
血を流すような苦しみを味わい全身全霊を込めて世に送り出す事ができる作品本数は10本。
自分はそう受け取りました。

宮崎駿監督の長編監督作品は11本。
長編初監督作品『カリオストロの城』での興行的大惨敗から業界で干され、不遇の4年を送り
それを糧に『ナウシカ』を世に送り出してから『風立ちぬ』まで10本。
会見で監督自らが告白していた『ナウシカ』『ラピュタ』『トトロ』『魔女宅』の4本の創作原動力は「怒りだった」を聴いたとき、奇妙に安堵感を覚えました。
とても人間過ぎるほど人間臭いベタな感情。
世界一の経済大国だと浮かれはじめた社会に対しての怒りだと語っていましたが、不遇のわが身に対しての怒りも当然あった事でしょう。
そんなもろもろの怒りをエネルギーに変え、それを注ぎ込んだ『ナウシカ』から10本目での引退宣言。

昭和の名監督のひとり、故・浦山桐郎監督は、映画監督が(全身全霊を込めて)生涯で撮れる映画の本数は1ダース(12本)だ。という趣旨の言葉を残しています。
巨匠、今村昌平監督は約20本。黒澤明監督は30本の作品を世に遺しました。
実写の巨匠たちに比べるととても少ない本数を遺す事になりますが、実写とアニメーションでは制作内容が全然違う事を理解しないと、今回の引退会見の潔さを理解できません。

実写映画での生みの苦しみの一番大変なセクションは脚本製作だと今でも思っています。
シナリオで映画の良し悪しが決まると言っても過言ではないでしょう。
(丁度いま朝の連続TVドラマがそれを証明してますね)
実写の場合はひとりの専門脚本家がその重圧を担う事もありますが、監督を加えての専門チームで作り上げる事も多いです。
その次に大変なセクションは、もちろん監督業。とくにカット割りは監督の本業です。
ただし、監督が決めたカット割り以外にも色々な構図やパターンを撮影する事ができるのが実写映画製作です。
黒澤監督は同時に複数台のカメラを回し、たくさんの撮影素材を基に編集で映画を作りあげたのは有名な話しです。
時に演技の神様が下りてきた俳優によって奇跡の演技を撮る事も、風景シーンの奇跡の一瞬を撮る事も、実写映画なら可能です。
実写映画の現場撮影は、監督のカット割りに沿っての映像素材作りと同時に、他の素材も作る事が出来る訳です。それを最後に編集で一本の作品に仕上げていく。
そこには偶然が入り込む余地が大いにあります。
ところが、アニメーション制作には偶然が入り込む余地はひとつもありません。
全ての画面内の動きは一枚一枚描く事により動画となり、風景までも描かなくてはなりません。
走る人のスピードや歩幅。人物の振り返りの間。まばたきのタイミング。
全ては絵コンテによって設計されたものです。

この実写とアニメーションでの作り方の違いを知った上で、引退理由の限界を聴くと、なんと潔い幕引きなんだろうろと想います。
画像にUPしているのは、宮崎監督が手掛けた『ドーバーの白い崖』の制作用絵コンテです。
大西洋横断の飛行機郵便の話で、奇しくも飛行機がテーマとなっています。
ページをめくると、完成されたTV作品のカット割りと寸分違わぬ画面がそこにあります。
絵コンテ読むだけでひと作品を鑑賞してしまうほどの完成度です。
完璧な設計図である絵コンテを書きながら、すべての原画に目を通す完璧スタイル。
というか、ワンマン制作体制。
だからこその宮崎駿作品。
その制作スタイルを維持する事に限界を感じての引退宣言。
とても潔い姿を見ました。

僕は自由です。

引退会見では妙にさばさばとした受け取り方でしたが、公式引退の辞を読んだら感情を揺さぶられました。
映画1本作り終えての高揚感の余韻が残っていて、まだ精神のクールダウン時期の文章だとは思いますが、なんだろう、遺言のような、なんだかとても寂しさを感じる引退の辞です。

映像作家とは業の深い職業です。
長編映画監督は今回で幕引きですが、30年前のようにスペシャル参加で脚本とかをTVアニメシリーズに提供したり、ゲスト演出してこれからも楽しませて欲しいなぁ~と想います。
Posted at 2013/09/08 03:11:02 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

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