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ソーラ・レイのブログ一覧

2015年01月10日 イイね!

『羅生門』デジタル完全版

「第二回 新・午前十時の映画祭」で鑑賞しました。

衝撃を受けました。
この映画、今回が初見ではなく過去に銀幕で2回ほど鑑賞しTV放映やDVDでも何度も観てきました。
ただ、デジタル修復されたモノは今回が初めての鑑賞でした。
いままで観てきた『羅生門』は何だったのだろう。
羅生門であって羅生門ではないモノを今まで観てきたんだ今までは。
レフ版に鏡を使い黒と白と灰色のコントラストで意欲的な映像表現を狙った作品である事は周知のとおりですが、今までのリバイバル上映は傷が多くフォーカスのあまい滲んだ様な映像が常でした。
白黒のコントラストだけは判り、それが黒澤明監督と名カメラマン宮川一夫が作りあげた映像美だとばかり思ってました。
今回、既にネガフォルムさえも現存していないこの作品をデジタル技術で完全復元した「デジタル完全版」を鑑賞し、この『羅生門』という作品を初めて観た気持ちになりました。

とにかくエッジの効いた白黒灰のコントラストの映像がスゴイ。
冒頭の志村喬演じる木こりが山の中に分け入っていく映像だけで、のけ反る様な衝撃を受けました。この映像はいまでも十分通じるし現在でも先を行っています。
この映像を当時(1950年代)に観た観客はついて行けなかっただろうなぁ。
この作品が当時海外で評価され国内では全く評価されなかった理由のひとつは、映像の斬新過ぎだと感じました。
(最大の理由は芥川龍之介作品と云う既に確固たる地位を築いている作品を、新人映画監督が個人的解釈でアレンジを加えた。という偏見からだと思ってます)

そして、完全修復され公開当時の姿に戻った作品を観て、初めて気づいた事がもうひとつ。
ヒロイン真砂を演じた京マチ子の演技と美貌。





この作品で三船敏郎が評価されその後の活躍へと続いていったのは誰もが知ってる事ですが、この映画を支えていたのが京マチ子の演技だったと、デジタル修復版によって初めて気づきました。
もともと女性の顔へは照明を強く当てるから、修復前の映像だとフォーカスが甘く白くのっぺりしていて表情変化が視認できずにアクションと台詞の強弱でしか演技が把握できませんでした。
デジタル復元された画像により、まるで七変化するかのような表情変化の演技をしていたことを知り、同時に作品の主題さえも違ってきたように感じました。
まず、とにかく京マチ子が美しい。
いままで自分は眉を剃った「眉引女性」の顔を美しいと思った事はありませんでした。
ところが京マチ子が演じるヒロインの姿にドキリとしました。
美しいだけではなく、内面に秘めた気性やその魔性。
まさに「女」としての性(サガ)を演じています。

この映画は人間のエゴを描いた作品だとの評価が通説ですが、京マチ子のオリジナルの演技を観た事により別な解釈を想像してしまいました。
この映画に登場する女性はただひとり。
(巫女がでるけど殺された男の霊を降ろして証言する霊媒師の役割なので、霊降ろしの職業(巫女)としての女性の設定)
そして、ひとりの男が殺された事件を巡って当事者たちの証言が食い違う訳ですが、変化するのは京マチ子演じるヒロインの態度なんですね。
男たちの証言の食い違いは皆自分の行動の美化に終着する訳です。
その証言ごとにヒロインの態度が真逆となり、最期にいちばん真実に近いであろう木こりの目撃談に於いても、殺人の元凶はヒロインの態度(エゴ)によるものだと明かされます。

この映画は人間のエゴを曝け出すという主題以外に、女の怖さ。言葉を言い換えれば、女性のバイタリティを描こうとしているのでは?
原作『羅生門』の中では死女の髪を抜く老婆が「必要悪」を唱え、黒澤明の『羅生門』のラストでは捨てられた赤ん坊が登場する。
赤ん坊にはお守りと着物が添えられており、育児費用の足しとしての着物やお守りで泣く泣く母親が捨てたのだろう事を見せています。でも、後悔しながらも捨てる事をしている。捨てる事が出来る。

この映画には、自分のエゴの為に男同士を殺し合わせた女と、後悔しながらもわが子を捨てる母親のふたりの女性が登場しています。
そして、そんな女性の前では男は無力です。
不本意な殺し合いをしたり、人間の良心という理由で捨て子を育てる決意をしたり。

女性のエゴイズムやバイタリティの前では男は無力ってのが、この作品の本質なのでは?
と新しい解釈をしてしまいそーに、デジタル修復された『羅生門』は新鮮で素晴らしい作品でした。


1950年公開 日本映画  ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞 第24回アカデミー賞名誉賞
                                              (現・外国語映画賞)
Posted at 2015/01/11 01:33:52 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画鑑賞 | 音楽/映画/テレビ

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「週末はクルマ2台のオイル交換&フィルター交換。2台とも元気になりました。」
何シテル?   11/01 14:21
基本的に『インドア』で出不精です。 でもじっとしていられない性質なのでアウトドアします。 長時間の寝貯めが出来るので、 活動期と充電期がはっきりしています...

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