皆さん、思い出のルアーってありますか?
大きい魚を釣り上げたルアー
沢山の魚を釣り上げたルアー
やっとの思いで購入した希少なルアー
ナドナド色々とあると思います。
今回のお話は、前回のブログに掲載したルアー達を写真に収めるに当たって、久しぶりに開いたタックルボックスにあった、一つのルアーにまつわるお話をしたいと思います。
今からもう40年以上前のこと、私が小学生の頃に事件が発生しました。
その日は父が珍しく仕事から早く帰宅しました。
珍しく平日と言うのに、家族揃っての夕飯となったのです。
私は父と平日に一緒に夕飯を食べる事に喜びを感じていましたが、同時に何か言い得ぬ不安感も感じていたのを、今でもハッキリと覚えています。
そうして夕飯が一通り済んだタイミングで父が突然発しました。
「実は今度転勤になった。場所は新潟だ」
「えっ!?」
私と4つ上の姉は驚きました。
「転勤すると言うことは、引越しして転校しなくてはいけないの?」
そんな当たり前のことを父に言うと、私は思わず大泣きをしました。
一緒に野球や釣りを楽しんだ近所の友人や幼馴染達と別れなければいけない事と、幼い私でも理解ができました。
その時の姉も本当は悲しかったはずなのに、大泣きをしている弟の私を慰めるため7日、気丈にも決して私の前では涙を流しませんでした。
そんな話が交わされてから幾日が経ち、いつ引っ越しをするのかと思い続けていたのですが、一向にその気配するら感じませんでした。
そんな状況に我慢ができず、思い切って母に尋ねてみました。
「お父さんだけ新潟に行く事になった」
結果は父だけが行く「単身赴任」と言う事になったのです。
引越ししなくて済む
転校しなくて済む
友達と別れなくて済む
父の気持ちなども判らずに、単に自分が悲しまなくて済むことに安堵しました。
さて単身赴任となった父ですが、本社への報告と称して、月に一回は我が家へと帰ってくる事がありました。
大概が金曜日に帰ってきて、日曜日に帰るというスケジュールです。
この頃はまだ私も釣りが大好きでしたので、父が帰ってくると、河川の河口へハゼ釣りに出かけていました。
しかし当時の学校や会社は、土曜日も授業や業務がありましたので、朝から釣りに行けるのは日曜日のみ。
父が月曜日に新潟へ戻ることもしばしばありましたので、そんな時は1日釣りを親子で楽しめました。
しかし、日曜日には戻らなければいけない時もありましたので、そんな時はギリギリまで一緒に釣りをし、他に友人がいた時などは、父が1人で帰宅をして新潟の戻ることもありました。
今にして思えば、子供との時間を少しでも大切にしたいという思いだったのかと思います。
さてさて、そんなる日。
私が住んでいる街に、某チェーン店の釣具店がオープンしたのです。
非常に大量の釣具が陳列されており、見ているだけで飽きのこないお店でしたので、特に買うアテも財力もない小学生が、友人達とよく覗きに行き、ショーケースに飾られた高価なリールを見て、凄い値段にため息をついていました・・・
そんなお店のレジの背面に、非常に綺麗なルアー達が陳列していました。
そのルアーは「ラパラ」でした。
今から10数年前は時もすればワゴンに載せられ投げ売り状態さえあったルアーです。
しかし、この当時は非常に高価だったことを覚えていいます(先日何気に釣具店で確認しましたら、現在も高価格でしたね(汗))。
無論、小学生の私たちが買える値段ではありません。
ただただ掛けられているラパラを美貌の眼差しで眺めているだけでした。
そんなある日、父から電話がありました。
「近所に釣具店ができたんだって?」
どこで聞いたのか判りませんでしたが、今にして思えば母が伝えていたのかもしれません。
「今度帰ったら、欲しいものを買ってあげるよ」
もう、天にも昇る気持ちでした!
あのレジ背面に掛けられているラパラを買ってもらえるのか?
いや、あまりにも高価だから、駄目を喰らうかもしれない・・・
小学生には似つかない、心の葛藤があり、それでも早く父が帰ってこないかと指折り数えていました。
そうして迎えた父の帰宅の日。
はやる気持ちを抑えて、父を連れ立って釣具店へと向かいました。
釣具店へと入店し、恐る恐るレジの後ろにかかっているラパラを指差し、父にあれが欲しいと伝えると・・・
「おお、あれか!わかった。買ってやるよ!」
この時ばかりは嬉しさのあまり、喜びを爆発させていました。
「どうだ、良いだろ!」
周りに居た子供達に伝わるよう、誇らしげに店員さんからそのラパラを受け取りました。
あれから40数年。
いまだにロストをせず、私の手元にあります。

今では非常に珍しい、フィンランド製のラパラです。
すっかり色褪せもしました。
しかしこの思い出は色褪せはしません。
絶対にロストは出来ないからと、子供の頃はほぼ使用した思いではありません。
しかし、トップウォーターの釣りを始めてから、アブ2500Cでこの非常に軽いラパラをキャストし、表層をユラユラと泳がせながら、数々のブラックバスを釣り上げることができました。
このラパラを買ってくれた父とは、私が思春期の頃に確執がありました。
しかし私も2児の父となり、改めてその時の父の気持ちが理解できるようになりました。
そんな今は亡き父との釣りにまつわる思い出の品と言う事で、このルアーは私の宝物となっています。