アラビアのオレンスのブログ一覧

　複素数計算ができない大々昔の関数電卓を持つてゐる。内部の接触不良で LED 上の表示がプレデター向けになつてしまつてゐる。安月給の時代に無理をして購入した made in singapore の HP 31E だ。小さい赤色の LED 表示がなんとも格調高いし、筐体やキートップのプラスチック成形の仕上がりがすばらしひ。外観上は 15C より何倍もすばらしひ。以前に何度か分解して接触不良の修理をしたことがあるが、また暇をみつけて分解して修理するつもりだ。
　我が家にある「何でも鑑定団」に出品できさうな品だ。本人評価額壱拾萬圓。中島正之助先生は sinh キーが無いことに気付くだらうか。

　昨日と今日の弐日間某研修の受講に都心まで通つた。「電卓を持つて來ひ」との指示があつたので、何拾年も前に購入した HP15C を持つて行つた。ここ20年ほどは職場では clisp を電卓代わりに使用してゐて、電卓は使用してゐなかつた。実習の段階で三角函数を求めやうとしたところ、ラジアンを選択していないのに、すべての三角函数もアーク三角函数も度でなくラジアンで動作してゐた。
　なぜかと思案して数秒で、数値モードが実数でなく複素数にセットされてゐることに気付いた。「複素数モードでは角度はラジアンに固定される」なんてことは聞いたことがなかつたので電卓のバグかと思ひ、しかしその場を切り抜けるには複素数モードを実数モードに切り替えるしか無ひと思ひ、必死でその切り替えを、講師のヘルプまで求めて、挑戦したが、能はず、「この電卓変..」と思ひながら、三角函数の角度はラジアンとして計算して研修が終了した。
　帰宅して「操作ハンドブック」をみると「複素数計算状態ではどの三角函数もラジアンで計算します」と書かれてゐることを確認した。なんだかバグつぽいが、HP はハンドブックに注を追加してそれをのがれたやうな気配が感じられる。

　何拾年も前から片研ぎ刃のナイフを探してゐた。探すと云つても能動的に探すのでなく、「いつか出会へたらラッキー」程度の乗りで受動的に探してゐたが、本日つひに出会つた。
　この世にある「非エコ」な工具の壱つにオルファの刃がなまつたら折つて捨てるナイフがある。私はこの方式のナイフは嫌いだ。捨てる場所にこまるからだ。"Used cutter blades" と書かれたブリキ缶が家中の彼方此方にある。いらなくなつた刃は始末に手こずる。私はここ数年間は、折らずに #800 のダイヤモンド砥石で研ぎながら使つてゐる。「折つて、捨て場所をみつけ、捨てる」より工具箱に常備してゐる砥石で研ぐほうが短時間でコストも少なくてすむ。
　以上の理由からホームセンターなどの工具売り場のボックスカッター(日本ではなぜかボックスが無視されカッターと略されてゐる)の前は嫌な物を見たくないために常に通りすぎてゐたが、本日は刃渡り 6cm 未満のボックスカッターを探すべく立ち止まつた。そこで目に止まつたのがあの忌まわしきオルファ社製の 26B クラフトナイフ S 型だ。刃渡りは3.5cmで、未登録で所持しても銃刀法には触れない。使い捨てブレードだが、鈍つた部分を折つて使ふタイプでなくブレードごと交換するタイプなので、私のやうに鈍つたら研いで使ふ者には折れ目などよけいな加工がしてなくて理想的だ。
　この時点で購入を決断したが、さらにこのブレードが片研ぎであることに氣づいた瞬間私の何拾年に渡る「片研ぎナイフを探す旅」が終わつた。実は完全な片研ぎではないが、95%片研ぎである。
　私は A4 とか云ふ縦横比が無理数の紙を見ると心が落ち着かなひ。8.5"x11" なら落ち着く。自宅のプリンタには 8.5"x11" の用紙が入れてあるが、(日本人の)他人から受け取るものは大抵 A4 なので長て方向を定規をおいてナイフで約 18mm 詰める。そのために片研ぎ刃のナイフを使いたい。両研ぎ刃のナイフでは切り始めと切り終わりで切断線がぶれるからだ。

　本日買つたオルファ製片研ぎブレードのボックスカッターナイフで紙の束をカットしてみたら、期待通り切り始めも切り終わりも切断線が真つすぐに切れた。僅か 165円の買い物だつたが、このナイフを得た喜びは金額的にはその数拾倍に当る。替え刃は買わなかつた。刃が鈍つたら研いで使うからだ。