さて、解答編です。
この画像に写っている、致命的な欠点・・・
それは
キャスター角です。
このプロトタイプは、後輪のキャスター角がネガティブキャスターになってしまっていたのです。
注:画像だと、ストラットの傾斜=キャスター角のように書いてしまっていますが、キャスター角というのは、転回軸を横からみた時の傾斜角の事なので、ストラットの傾斜角=キャスター角ではありません。
ストラットの場合は、アッパーマウントの回転軸中心から、ロアアーム先端のポールジョイントを結ぶ仮想キングピン軸(最近はキングピンとは言いませんけど)を横から見た傾斜角がキャスター角ですので、ご注意を。
ただし、構造的にストラットの傾きがキャスター角の変化に比例するのも間違いないので、相対的に判断する場合は、ストラットの傾きで判断してもいいと思います。
何故、後輪のキャスターがネガティブでは駄目なのかという事を、一から説明すると、イラスト等を多用し、文章を駆使し、一晩中かけて徹夜で書かないと、とても説明できないので、



今回のブログでは、説明は大幅に端折りますので。(´・ω・`)
今回のお話は、何故プロトタイプフレームは失敗したのかというのが主題ですので。
まず、自分が最初にフレームを作ろうとした時に考えたのは、(インプレッサの)フロントのサスペンション構成を、そのままリアに持ってきていいのか? という問題です。
この時の自分は、サスペンションについての知識は殆ど無く、せいぜいストラットとかダブルウィッシュボーンなどの形式名や、キャンバーやトーがどこの角度の事なのかという初歩のアライメント知識くらいしかなく、サスペンションがどんな働きをしているのか、フロントとリアのサスペンションが、それぞれどんな動きをしているのかといった事は、まったく解りませんでした。
なので、まずはフロントとリアのサスペンションの働きを調べることにしました。
その時点で、
アライメントの勉強の為に色々な本は持っていたのですが、はっきりいって漠然と読んでもまるで理解できず、ただ持ってるだけで本棚の肥やしになっていた
この本を、「フロントのサスをリアに持ってきたらどうなるのか?」という、唯一点の着眼点でのみ読み漁っていったところ、いろいろ解り始めたわけです。
そして、一番最初に解ったことが
一般的に車のフロントはバンプトーアウト、リアはバンプトーイン。
この約束事だったのです。
特にリアのバンプトーインは絶対必要。トーアウトはありえない。
ただ、この時は、どうやって、それらのロールステアを行っているのかまでは
理解してなかったんです。
ですが、早く実際の製作を始めたかった僕は、ここで見切り発車をしてしまうわけです。
この時の僕は思いました。
フロントのサスペンションはバンプトーアウトだから、そのままリアに持っていくのは危険。
だったら、そのサスペンションを前後逆にしたらいいんじゃね?(´・ω・`)
それで生まれたのが、インプレッサのフロントサスを完全に前後逆転にしたレイアウトのリアサス構成だったわけです。
この時、制作上の問題点の一つに、どうやってストラットマウントの位置を決めるかというものがありました。何もない空間座標上に、誤差なくマウントを製作するというのは、とても無理難題でした。
そして、その時に行ったのが、実際にインプレッサのボディから型をとるという手段でした。
そして、件のプロトタイプフレームは、インプレッサのフロントサス形状から3次元的にコピーし、それを前後方向に180度逆にしたアライメント要素を持つリアサスペンションとなったのです。
前後方向を逆転・・・
つまり、キャンバーはそのままですが
トーのプラスマイナスは逆転
そして
キャスターも逆転することになったわけです。
ちなみに、これを作成している途中で、どうやってロールステアが生み出されるのかは理解できたので、トーコントロールリンクの構成は、その理解の下に製作され、この時点でもう前後逆転レイアウトは、当初の目的上の必要性はなくなっていたのですが、実際に作ってみると、他にも利点があったので、このレイアウトはそのまま継続されました。
余談ですが
BRZが発表されたとき、そのフロントロアアームを見て、思わず麦茶吹いた。(´・ω・`)
ここで弁明しときますけど、僕がこの構成で作り始めたのは、BRZが世に出てくるより4年も前ですから、決してパクッたわけじゃないですよ。(´;ω;`)
んで、まぁトーの変化は理解できてたんですが・・・
ここから長い間
キャスターとキャンバーの関係には気付かなかったんですよ・・・(´・ω・`)
気付いたときには、
ここまで出来てしまっていました。(´・ω・`)
ここで半年くらい、ずっと悩みました。
修正するか、やり直すか、このまま行くか
気持ち的には、このまま行きたい気持ちの方が強かったです。なにしろ、かけた時間と金額が膨大です。
なので、いろいろな専門家に機会があるたびに相談してみたものです。
ある時、とある足回りの専門家に質問する機会がありました。その方は、第一回日本GPで、某日本人ドライバーのチームにメカニックとして携わったという方なんですが、そんな方との一問一答
「後輪にネガティブキャスターを持つ後輪駆動車ってどうですかね?」
「とても低い速度域でドリフトできる車になるんじゃない(笑)」
(´・ω・`)デスヨネー
それはそれで楽しそうだとも思いつつ、ミドシップでドリ車なんぞ危なすぎました。
他にも、いくつかの方に教えを請うたりしたわけですが、最終的に廃棄して完全に作り直すという決断に至ったわけです。
まぁ、5年間でメタルワークの環境が、大幅に強化されていたというのも大きいです。
パイプざぐり機の導入により、ラウンドチューブの加工性が劇的に変わっていましたしね。
なにしろ、あのプロトタイプ、ジオメトリ意外にも、重量やらエンジン下のクリアランスなど、色々と問題も抱えていましたので。
そして・・・
プロト廃棄から1年ちょっとで、このあたりまでのフレームをつくり
次の1年間ハーネスで苦しめられ
今年はようやくエンジン始動に成功
といったところまできて、今に至るわけです。
そんなわけで、この改造車製作に注ぎ込んだ20代は、技術と学術の二人三脚のような日々でした。
これからも、それはしばらく続きそうです。
おわり
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Posted at
2014/09/17 01:16:47