• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

mashowのブログ一覧

2014年08月28日 イイね!

Alpina B4とBMW M4の比較記事

BBC Top GearのサイトにB4とM4の比較が乗っていました.特に深い意味はありませんが,趣味で訳してみました.



(以下翻訳)
----


Is the tuning firm’s 406bhp rework of the 435i a worthy alternative to BMW’s own M4 coupe?
チューニングメーカー製の406馬力435iカスタムは,BMW本家のM4に匹敵するライバルとなりうるのか






What is it?
なにそれ?


 Alpina's attempt to out-BMW M4 the BMW M4. The B4 is, in essence, a heavily-pimped 435i, though the German tuning firm's pimping has proved so successful that the humble Alpina now looks a mighty compelling alternative to the M-division's own offering.

 それは,BMW M4を打ち負かそうとするアルピナのもくろみだ.B4は,簡潔に言えば,とても「手が入った」435iである——控えめだったアルピナが今や,M社が送り出すラインナップに代わる選択肢として強力な説得力を持つほどに,ドイツのチューニングメーカーの「イジり」がうまくいっているとしても.


 The B4 - largely through the addition of a second blower to the 435i's single-turbo straight six - makes 406bhp, which falls just short of the M4's 425bhp (also, of course, generated by a blown 3.0-litre six), but trumps the M-car on torque.

 B4は——主に435iの直6シングルターボに二つ目のタービンを追加することによって——406馬力を発揮するのだが,それはM4の425馬力(勿論これも3.0L直6ターボによって生み出される)にわずかに届かない数字に過ぎないし,トルクはMに優っている.


 0-62mph takes 4.2 seconds - within a blink of the DCT-equipped M4 - with top speed standing at a not-so-shabby 188mph.


 0-100km/hは4.2秒——DCT付きのM4に一瞬の遅れをとるだけ——だし,最高速度は303km/hと,悪くない数字を誇る.




So this is more than a bodykit and ECU flash, then?
それならつまり,ボディキットとECUメモリー以上のものがあるってこと?



 Much more. We've always been mightily impressed with the thoroughness of Alpina's conversion jobs, and the B4 is no exception. As well as the reworked engine, the B4 gets fresh suspension, a new Akrapovic exhaust, Alpina's lovely wheels, and heavy modification to the eight-speed ZF transmission (no manual is offered, sadly). And, of course, plenty of Alpina badging and those bodywork ‘upgrades', most noticeably a Jay Leno-esque chin spoiler.

 それ以上だ.アルピナによる徹底したカスタムワークの仕事っぷりは常にとても驚くべきものがあり,B4もその例外ではない.B4が手に入れたのは,改良されたエンジンだけではなく,新鮮なサスペンション,新しいアクラポビッチ製のマフラー,アルピナ製の素敵なホイールとZF製の8速トランスミッション(残念ながらMTの設定はない)の大幅な変更である.そしてもちろん,沢山のアルピナエンブレムと,ジェイ・レノのようなチン・スポイラーに代表されるようなボディのモディフィケーションもそうだ.






How does it drive, then?
で,ドライブフィールはどうなの?


 Interesting one, this. See, our first experiences of the M4 have been something of a mixed bag, with factions of the TG office suggesting it feels less like a standalone, halo-ringed product of the M-division, and more like, well, a bumped-up 435i.


 興味深い一台,これだ.(M4は)唯我独尊でまばゆい光に包まれたM社の製品というよりは,性能アップした435iのようだとほのめかすトップギアオフィス内の派閥と相まって,我々の初めてのM4体験は,そう,なにか寄せ集めのような嫌いがあったのだった.


 The B4, of course, is a bumped-up 435i and, sure enough, feels very, very closely matched to the M4. Like the M4, it's a properly comfortable cruiser, buttering through commuter traffic with consummate ease. And, like the M4, it has a truly ballistic turn of pace when you wind it out.

 B4は,もちろん,性能アップした435iそのものであり,お察しの通りM4にとてもとても肉薄する好敵手だ.M4と同様に,通勤渋滞をすいすいと切り抜けて走るような,全く快適なクルーザーである.そして,M4のように,ひとたび鞭を入れれば,本当に弾丸のような走行ペースに変える能力も持つ.


 Get those turbos blowing and the B4 flicks itself into the middle distance with an effortless swat, sounding every inch the classic M-car as it does so.

 ひとたびツインターボを回せば,むかしながらのMモデルとまったく同様のサウンドを発しながら,B4はちょっとした距離など何の苦労もなく飛ぶように走る.


 But, like the M4, the Alpina doesn't feel the most razor-edged companion on a twisty road. Yes, it's more than happy holding grand, daft skids - at least with the £1890 limited-slip differential fitted - but doesn't communicate a whole lot from the rear end as it does so, trading in seat-of-yer-pants feedback for a more relaxed day-to-day experience.

 しかしながら,M4と同様に,アルピナは狭いワインディングにおいて,最もエッジの立った相棒という感じはしない.そう,大げさで基地外じみたドリフトを続けるような能天気さばかりではない——少なくとも1890ポンドのLSDを付けていれば——のだけれども,リヤエンドがスリップしたときに,おきていることの一切合切がそこから伝わってくるというわけではない.それはシート越しにお尻に伝わるフィードバックが,肩の力を抜いた日々のドライビングエクスペリエンスにふさわしい程度のものであることとのトレードオフなのだ.


 We didn't get a chance to test the B4 on circuit, but we'd suspect that, like the M4, it might feel a little woolly round the edges when given die bohnen on a track.

 B4をサーキットでテストする機会はなかったが,M4と同様に,トラックで鞭を入れた時には,角がなめらかに丸められたような印象がすこし感じられるのではないかと思う.




Does it feel exactly like an M4?
M4と全く同じ感じなの?


 Tough to say without testing the two cars back-to-back. The B4's steering felt rather sweeter than the M4's, though that likely has as much to do with the Alpina's slimmer, firmer wheel - the M4 uses a strangely overplumped rim - as any mechanical differences.

 2台を突き合わせてテストしてみないと明言するのは難しい.B4のステアフィールはM4のそれよりもかなり気持ちが良いが,それは,ほかのメカニカルな違いと同じくらい,アルピナのより細くて固いホイールと関係がありそうだ——M4には妙に太すぎるリムが使われている.


 Even on those vast wheels, the Alpina's ride quality is generally more than decent, but the B4 does get a little upset by sharp-edged potholes, a symptom we don't remember the M4 suffering to quite the same extent. The Alpina's eight-speed auto, on the other hand, is so good that you wonder why BMW went to all the effort of fixing a DCT for the new M4.

 そんな大径ホイールを履いていながらもアルピナの乗り心地は全般にとてもまともであるけれど,角の立った地面のくぼみなどでB4はいささか落ち着きをなくす.M4ではそこまでの症状が出た記憶はない.アルピナの8速ATは,一方で,どうしてそこまでBMWが新しいM4にDCTを付けようと頑張っているのかわからなくなるほど,良い.

(訳者注:B4は20インチ,M4は19インチ)



So which should I buy?
どっちが買い?

 The Alpina costs almost exactly the same as the BMW M4 (£58,950 against £59,145) and offers all but identical performance.

 アルピナはBMW M4とほとんど全く同じ値段で,まったく同一といっていい性能を発揮する.


 The B4 seems truer to its stated brief as a road-and-track all-rounder than the newly civilised M4, but which one you prefer will, we suspect, come down to whether you prefer the idea of a BMW badge or something a little more left-field on the back of your super-coupe.

 アルピナは,以前とは違って上品になったM4よりも,「一般道とサーキットにおけるオールラウンダー」という同社のモットーにより忠実のようだが,どちらが好みかということについては,思うに,BMWのエンブレムという理念が好きなのか,あなたのスーパークーペのリヤのもうちょっと左にある何か(訳者注:アルピナのエンブレムのこと)が好きなのかということに落ち着くのではないだろうか.


 And, of course, whether you can get on board with the B4's visuals, particularly that chinny front clip. Another quality effort from the Alpina team either way.

 そしてもちろん,B4の見た目,特にそのアゴのようなフロントの板,に乗り気になれるのか,ということだ.どちらにせよ,それもアルピナ制作チームによる品質努力によるものであるのだけれど.





----
(以上)

さくっと訳すつもりが,意外に難しくて時間がかかってしまいました(途中で一度放棄した).

英語の練習のためにやっているので,あえて逐語訳を試みています.そのため,日本語としてかなり読みにくい文章になっています.もとの文章のニュアンスを変えないためなのでご理解ください.

明らかな誤訳などありましたら,ぜひ教えてください.全体的に言い回しが微妙で,特に第8パラグラフなどは苦労しました.英語が好きな方,ぜひこの訳はああしてこうしてなどとああだこうだ言い合いましょう.って居ない?



英語のやさしさで言うと,Newsweek<NYT<TIMEという一般的にな序列があるかと思いますが,訳しにくさだけならTIME誌以上だと思いました.
Top Gearの司会であるJeremy Clerkson自ら書いた記事はもう少し読みやすいのですが,おそらくお抱えのライターが書いたと思われるこの文章は微妙なレトリックが多く,読みにくいです.

読みやすさで言うと「Newsweek<Jeremyの記事<NYT<TIME<この記事」って感じですかね.面白さは「Newsweek=NYT<この記事<TIME=Jeremyの記事」って感じな気がします.



内容としては,アルピナがBMWを打ち負かそうとしているとか,リムが固いなどと書いてあって,一般的な通説と違ったりする疑問点もあります.全体にも,お茶を濁すような思わせぶりな,ていうかぶっちゃけどっちつかずの記事ですね.でも実際に,B4とM4を比べるとそんな感じになってしまうのだということだとは思います.
Posted at 2014/08/28 22:45:54 | コメント(6) | トラックバック(0) | 日記
2014年08月16日 イイね!

お盆キャンプ

お盆休み.妻は仕事で居ない.

「何するー?」
「きゃんぷがいい」
「うみのきゃんぷがいい」
「海は暑いからいやだなあ」
じゃあやまのきゃんぷ!

というわけで,突貫で荷積みをして三人で出掛けた.

----


ソフトトップのカブリオレ乗りは,タープもポリコットン製を選ぶ――というのはテキトウな戯言だが,ともかくポリコットンの風合いは好きだ.雨漏りもしない.70Dのシルナイロン製のテントですら,少し漏ったくらいの雨だったのに.いずれにしても二年間放置してあるので,テントと共にそろそろ撥水加工の手入れが必要だ.




大人一人に子供二人なので,最大限の手抜きを図った.火器はシングルバーナーしか使わなかった.しかも,昼は外食.子連れのミニマルなキャンプの形態を,もうすこし突き詰めてみたいところだ.





カブリオレも濡れる.もちろん,雨漏りはしない(笑.





帰り道,朝霧という地名だけあって朝から霧がかかっていた.河口湖ICに向かう途中で突然日が差してきた.緑のトンネルに包まれた県道71号線をオープンで走ると,本当に素晴らしい気持ちになる.木々の隙間から差し込む朝の光に照らされると,野宿の疲れも洗われるように消えていった.





----
雨のキャンプですこし心配だったが,子供たちは二人とも満足したようだ.雨の中ひたすら露天温泉に漬かったり,長靴を履いて合羽を着てキャンプ場をうろうろ探検したり,夜にランプを頭につけてお手洗いに行ったりしたことが楽しかったらしい.

夏の雨とはいえ,子供たちも多少は自然に鍛えられたのか,いろいろと成長が見られた.長男は,袖を巻き込まないように反対の手で裾を押さえて合羽を脱ぐやりかたを覚えた.次男は,キャンプとあまり関係がないが,なぜかシートベルトが自分で着け外しできるようになった.

妻がいたら,雨を嫌ってそもそもキャンプに行かなかっただろうから,これは怪我の功名かもしれない.
Posted at 2014/08/16 13:36:28 | コメント(3) | トラックバック(0) | キャンプ | 日記
2014年06月27日 イイね!

バッテリー交換とトルク感

バッテリーを交換しました.ぶっちゃけ次からは工賃を払ってもやってもらいたい感じですw





まずはオーディオの音.すこし良くなりました.
低音の切れがよくなって,全体にすっきりしました.
ただこの車はもともとオーディオがかなり良いので,良くも悪くも誤差範囲です.


それとは別にはっきりと変わったことがありました.
加速が良くなりました.トルク感もパワーもかなり改善しました.
立ち上がりで思ったより加速しすぎるので,おもわずすこしアクセルを緩めるほど.

8万キロでプラグを交換したのですが,その時は体感変化ゼロでした.
でもバッテリーでこんなに変わるとは.


もともとのバッテリーはVW純正の80AモデルでCCAは640Aの規格でした.
最近,CCAをチェックしたところ790Aを保っていましたし,始動も問題なく,エンジン停止状態での電圧も問題なかったのですが,4年使ったのでそれなりにやれていたのだと思います.

思えば3年目くらいからトルク感が減ったなあと思っていて,でもそれはミッションのやれで滑りが出ているのかとなんとなく思っていたのですが違ったようです.


余談ですがミッションといえば,最近走り出しでちょっとショックが出るようになりました.とりあえずATFを変えてみようと思います.
Posted at 2014/06/27 18:31:57 | コメント(4) | トラックバック(0) | A4C | 日記
2014年06月16日 イイね!

有頂天ニコルその4――あとがきにかえて

僕はいまだにALPINA D3 BITURBOというクルマが何者であるのかを知らないままだ.


こうして三回にわたって記事を書き,自分の中でもそれなりに整理がついたと思うところもある.けれどもそれは例えば,大きな木に登りたいと思っているのにただその周りをひたすらぐるぐる回って地上の景色を確かめて満足してしまうようなものかもしれない.できることなら登った木の上から見る景色がとうなっているのかを知りたいものである.こんな能天気な妄想ブログを書くだけで満足するほど,僕もお人好しではないはずなのだ.


彼は何者だろうか.もしかしたら羊の皮の中にはとんでもない猛獣が潜んでいるのかもしれないし,もしかしたら「感動の極み」と書かれた一枚の紙切れがひらっと舞い落ちるだけかもしれない.まあでも,実際はそのどちらでもないだろう.


これは完全に予想なのだけれど,中に入っている生き物が何かと言えばそれはたぶん,とっても良くしつけられた,我慢強くて上品なとびきり血統のよい犬なのではないだろうか.まあ犬じゃないにしても,すくなくともたぶん野生の狼とか人食い熊とか凶暴なライオンそういったたぐいのものではないような気がする.


----

すこし話が飛ぶ.実はB3 BITURBOに試乗したときも,得体が知れなくて怖いという気持ちは少しあった.でも二回ほどB3に試乗して思ったのは,少なくともB3の中に入っている「彼」は怒ると手が付けられないのかもしれないけれど,普段は意外と気さくらしいということだ.


動物で言うと例えばボルゾイなんかに似ているのかもしれない.大きさで言えばボルゾイはアルピナならB6クーペみたいなものだから,B3を例えるなら実際にはもうすこしサイズの小さな中型犬あたりなのかもしれない.けれど,僕は犬種にあまり詳しくないのですぐには思いつかない.だから,とりあえずボルゾイのもうすこし小さいやつ(架空の生物)ということで許して欲しい.



もうだいぶ前になるけれど,あるとき知り合いが数日間旅行に行くからと,彼が飼っていたボルゾイを僕に預けていったことがあった.一般にこの犬種はとてもエレガントで賢く足も速い猟犬として知られている.預かったその個体もやはりそういった美点を持ち合わせていた.あまりに美しく,あまりに賢く,聞き分けが良い.あたかも貴族のように超然としている.ある意味やっぱりちょっと怖い犬だ.


けれどもそのような高貴な雰囲気がありながら,実際には意外とおちゃめな性格をしていることが分かった.そのときのエピソードをすこし書きたい.ある日の夕食のあとで,僕はステレオのスイッチを入れ,気まぐれでソニー・ロリンズのサキソフォン・コロッサスをかけたことがあった.するとどうだろう.テナーサックスが奏でるセント・トーマスのテーマがBメロに差し掛かったところ,驚くべきことが起きた.


突然,彼が歌いだしたのだ,ソニー・ロリンズに合わせて.しかも彼は,夕食を食べ終わって団欒する家族たちの合間を練り歩きながらあたかも自分の歌声を聞かせて回るかのように歌った.それは吼えているのはないし,かといって遠吼えでもない.歌っているとしか言いようのない声だった.ボルゾイは生まれの良いハンターであっただけではなく,気さくなエンターテイナーでもあったのだ.このとき彼が残したインパクトのようなこの記憶はいまだに僕の中に鮮烈に残っている.出来ることならこんな魅力的な犬をいつか伴侶にしたいと心の底から思った.


さて一方のD3は,もし例えたらそれが犬だとしても,たぶんもう少し地味な犬種だと思う.これだという犬種がやはり思いつかないが、強いて言えばハウンドやポインターではなくてセントバーナードのようなワーキングといわれるジャンルなのではないだろうか.D3の中に入っている「彼」は,丈夫でとても力強くて我慢が効いて,でもすこしシャイな性格をしているに違いない.僕が試乗しても「分からなかった」のは,たぶん彼のそんな性格のせいもあったと思う.でも,慣れて馴染めばきっと愛しやすい本音も見せてくれるのではないだろうか.




----

実際にD3に試乗してみたことで,僕はこのクルマがよく分からなくなった.でもそのことで逆に,どんなクルマなのかもっと知りたくなった.それは最初に書いたとおりだ.そして羊の中に入っているケモノがなんなのか,それを知るためにはそれなりの代償を払わないわけにはいかないのが現実だ.


先日ポルシェに乗ったときも同じように思ったのだけれど,結局こういうたぐいのクルマは自分で買って好きなように走らせてみないと分からないものだと思う.もしそれが叶うならば,あとは彼が僕と仲良くしてくれること,そして僕にそれだけの甲斐性があることを願うばかりだ.


いつかそう遠くない日に,彼が我が家にやってきてくれたら,そして僕の一家と仲良くしてくれたら,そして時にはその隠しきれない野性の本気も垣間見せてくれたら――そんなふうに僕が「有頂天」になれる日は,はたして来るだろうか?






終わり
Posted at 2014/06/16 01:39:45 | コメント(3) | トラックバック(0) | アルピナ | 日記
2014年06月14日 イイね!

有頂天ニコルその3――きみのDSCを解除してみてもいい?

ALPINA D3 BITURBOというクルマは,ちょっと乗ってみただけではスペックほどは速く感じない.少なくともスポーツプラスモードに入れない限り「速すぎて怖い」とは感じない.けれど,怖いとはあまり感じないにもかかわらず,このクルマはやはりどこか怖い.なにか得体のしれない感じがしてすこし怖いのだ.でもちょっと考えてみても,一体何が怖いのか自分でもよく分からない.


たぶん羊の皮をかぶっているというやつなのだろう.もちろん,羊は怖くない.その羊が華麗な加速をみせながら草原を駆け抜けていっても,やはり怖くはない.でもそうするとやはり,被った羊の革の隙間からわずかに垣間見えるケモノの気配が怖いのだろうか.その中に潜んでいるものが,たとえば狼であると分かっているならいいものの,ちょっとやそっと触れた程度ではそれが何者であるのかがはっきりとは分からないあたりが怖いのだろうか.それは,元気で疲れ知らずの人懐こい中型犬かもしれないけれど、もしかしたらとんでもない魑魅魍魎かもしれない.





このクルマを実際に走らせてみよう.コンフォートモードのD3は極めて高性能で美しい一匹の羊である.ちゃんと皮を被っている.それもかなり上等の羊の皮だ.そして誤解を恐れずに言えば,彼はなんの破たんもなく完全に羊として機能する.ふかふかの羊毛に触れるとどこか家畜の匂いがする。頭をなでてやっても,やはり家畜の目つきでこちらを見る.擬態は完璧であって,そこに破綻はない.


でもその時点ですでに少し変だ。世の中にこんなに速くて美しいヒツジなど存在するわけがないのだ.毛皮に隠されているけれど,その筋肉はしなやかで強そうにみえるし,その毛皮だってあまり見たことのない独特の模様が入っている.彼は普通の羊ではないし,仮に譲ってそうだとしても,中にはなにか絶対に羊ではない別のものが入っている.でもそれは巧妙に覆い隠されていて,それがなんであるのかは一見わからないようになっているのだった.


スポーツモードにしてみる.足回りがしまり、ハンドリングが重くなってレスポンスも良くなる.走りは一層安定する.けれどもそうなってくるとその安心の中で,忘れかけていたあの不思議な怖さのような感覚がふたたび脳裏をよぎる.毛皮の縫い目が少し開き,その中からわずかではあるがケモノの匂いが立ち上がってくるのだ.羊のような目をしていた羊を再びのぞきこんでみると,その透き通った瞳の奥に小さな闇がわずかにちらつく.かすかな野生の闇.やはり中に何か別のケモノのようなものが入っているに違いないと思う.けれどそれがいったい何者であるのかはいまだにはっきりとは分からない.


スポーツプラスにしてみるとどうだろう.なんとデフォルトでDSCがオフになる.こうなってくると,この車はさすがにもはや羊ではないようだ.そのケモノは「フリ」をすることも辞めようとしつつある.依然として彼には首輪が付いており,人の手に馴染んでいることは確かだ.けれど,その牙とその顔つきはかつて見せた家畜のそれとはちょっと違って見える.それでも彼が何者であるのかは,僕の運転技術とこの試乗コースでは依然としてはっきりとは分からないままだ.彼は何者なのだろう.どうしてこんな変装をかたくなに続けるのだろう.


その先の彼を知りたいと思いながらも僕は,これ以上アクセルを踏み込むのをやめた.とりあえずの理由としては,これは自分のクルマではないからだ、残念なことに.そしてそこで、緩めたアクセルを再びどこまで踏み込もうか躊躇しながら,あることに気がつき僕はハッとする.


いつの間にか自分の中であらぬ気持ちが育っている.試乗ではなくて,このクルマを自分のものにして自分のペースでワインディングを好きなだけ走らせてみたい.彼の鎖を解き放ってみたい.もともとの姿を見てみたい.


そうしたら,こいつもその隠された顔を見せてくれるんじゃないか.ちょっとは本気を出してくれるんじゃないか.時には噛まれて傷を負うかもしれない.命令を無視して脱走したあげく,自然に帰って行ってしまうかもしれない.それでも,本当の姿を見てみたい.彼が自由になるそのさまを.


そしてもし仲良くなることが出来たら,まずはこう聞いてみたい.


「君はどこから来たの?いったいどうしてこんな皮を被ることになったの?」



----

実は,実際にD3に試乗する前は「このクルマは辞めよう」と思っていた.それは,たぶん自分には「速すぎる」からだし,たぶん自分には「早すぎる」からだ.もう少し分相応の身の丈に合った車を選ぶのが良いのではないかと思うのだ..


けれども,試乗を終えてみるとどうだろう.こころがどこかで落ち着かない.大げさに言えば、たとえば世の中の景色がわずかに変わってしまったような感じだ.すこし変性したその世界では、巷の曲がり角を通りすぎるたびに物影の向こうからなにか視線を感じるような気がしてくるのだ.





その視線の先に佇んでいるのは美しい羊の皮をかぶった不思議なケモノ.視線が合うたびに彼はその牙をわずかに見せて上品に笑い、そして誘うように僕を待つ.


「こちらへ来ませんか」
「僕と遊んでくれませんか」



次で終わりです
Posted at 2014/06/14 23:01:58 | コメント(3) | トラックバック(0) | アルピナ | 日記

プロフィール

「@sky315 めっちゃかっこいいじゃないですか笑 色もナイス!」
何シテル?   12/11 14:14
ようやく免許も青色になりました. A4カブリオレは20年乗ってヴィンテージ化を目指します.
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

<< 2025/6 >>

1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     

リンク・クリップ

4気筒のボルボ60シリーズ「ポールスター」 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2016/09/18 17:52:50
成功したい奴はポルシェに乗れ! 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2015/10/01 08:44:00
トヨタ86を斬る 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2015/09/12 03:55:56

愛車一覧

アウディ A4 カブリオレ アウディ A4 カブリオレ
アウディ A4 カブリオレ 2005年式. 正真正銘我が家のファーストカー. 家族四人で ...
BMW 3シリーズ セダン BMW 3シリーズ セダン
縁とは不思議なもので,妻の練習用という名目でなぜかうちにやってきた二台目のドイツ車.同じ ...

過去のブログ

2015年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2014年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2013年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
2012年
01月02月03月04月05月06月
07月08月09月10月11月12月
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation