
続きましては、同じくドイツのメルセデス・ベンツ、ミディアムクラス(W124)です。
登場は1985年。コンパクトクラスと呼ばれたW123がモデルチェンジして当初は「ニュー」ミディアムクラス、とも言われていました。
ご存知のとおり、1982年にW201こと190シリーズが登場したために「コンパクト」と呼ぶにはムリが生じたためw新たにミディアムという呼び名を用いたのでした。
なお、このカタログは1992年のもので、いわゆる中期の中期wのものです。
また、500EとTEは、別になり、このカタログには載っていません。

先ほどのBMW8シリーズのカタログでも触れましたが、自らのブランドへの誇りが現れるページ。
「自動車」を創り出したのは自分たち、という自負、自尊が感じられます。
こういった説明はともすると「独りよがり」であったり「自画自賛」であったり、と読むほうがシラケたりしがちですが、当時のメルセデスにはそう思わせない気迫がありましたね。
ミディアムクラスのカタログながら、右下にちょっぴりR129の写真があるところが嬉しかったり。

まだ本題ではなく、企業のポリシーを淡々と述べています。

そして、ブランドアイディンティティをとっくりとw強調したら「安全」の講義が始まります・・・。
マルチリンク・リアサスペンション、4輪ABSを量産車で初採用したのは「ウチだ!」と申されてます。
「シャーシはエンジンより速く」というお馴染みのセリフも書かれています。
自分はこのあとに出た中期の後期、即ち後に「E-Class」を名乗る後期モデルとエンジンは共通ながら外観はこの中期モデルとほとんど変わらない、という約1年しか造られなかった320Eに4年ほど乗りましたが、その印象では「シャーシはエンジンより速く」というのはやや誇張かな?と感じたものです。
それは、230や300Dなどには当てはまる「特権」かもしれません。

そして、メルセデス独自の安全装備を紹介したページ。
86%(だったかな?)を拭うと謳った「パノラマワイパー」。
このMの字を描くワイパーの動きは面白いですね。メルセデスとしては至って真面目に考案したものなんでしょうけど。
このワイパーは、この後乗用車ではSクラス以外の殆どに採用されましたが、お題目の広い面積を拭うことに関しては、充分だったものの高速時に能力が不足気味になることや、停車中などに隣の車や歩行者にまで拭った水滴を飛ばしてしまうなどの弱点から徐々に採用車が減り、現在では無くなってしまいました。
確かにこのワイパーの「威力」は凄く、停車時に動かすと車体が揺れるほどの「バッティング」を持っていました(笑)
また、これらも無くなってしまいましたが「リブつきテールレンズ」や「左右非対称のドアミラー」も載っています。

一般的な日本人が、「安全」を想起させるのが、このクラッシュ写真でしょう。
実際には経験しなければわからないとは言え、メルセデスが「大丈夫」というと何となく納得させられてしまいますね。

最近、タカタ製エアバッグの件で、再びよく耳にするようになったエアバッグについての記事。
ここでも、「世界に先駆けて」とか「「私たちが長年の研究で作り上げた画期的なシステム」など
プライドの高いセリフが記されています。

ここでは「Confort」とされながらも、最終的にはそれも「安全につながるもの」として紹介されています。
でも、右下の「ラジオ・カセットリモートコントロール」は、自分の320にもついてましたが、必要なかったナw

230Eの内装
木目がゼブラ(320Eはウオールナット)であること以外は自分の乗っていた320とほとんど変わりません。
前回のブログにも記しましたが、この頃のM/Bの内装はとにかく色気がなく、一言で言うと「ダサい」。
でも、そんなところが良かったのですよ!!「見た目より中身だろ!」という声が聞こえてきそう(笑)
メルセデスというと「やっぱり革でしょう!」という声が多いし、実際自分もそう思っていましたが、この写真の布シートが本当に具合がイイんですよね!!
いつ乗ってもサラッとしていて不快な感じは皆無ですし、1年通して使いやすいシートであったと思います。
1度九州まで一気に走り、帰りは広島に寄りつつ大阪を回って鈴鹿サーキットへ遊びに、なんて使い方をしましたが本当にまったく疲れ知らずなのには感動しました。
蛇足ながら、M/Bの布シートは最高!と言いつつ現在所有のR129は革シートwww
ミレミニア専用カラーの色使いは気に入っているのですが、正直、124のシートの方が完成されていたと感じます。

ブランドアイディンティティ→安全
ときたら、「環境」です。
自分はエコロジーとかリサイクルといったことに関しては無知で語れることはありませんが、どこかのメーカーとは違って表面上だけでなく「本気」なことが伺えます。

80年代後半から90年代にかけて、それまで市販車にはDOHCやマルチバルブといったことには関心がなさそうに見えたメルセデス(や欧州車)でしたが、このミディアムには300E-24VALVEという(6気筒)高性能エンジンが搭載されました。
このエンジンは、若干低速ではトルクが細い感じもありましたが、吹けがシャープで一気に回転が上がるフィーリングが気持ちよかったですね。
このエンジンがやがて排気量をアップして320になるのでしたが、320になると上記の低速のトルクの細さもなくなり「全域高性能」(©三菱サイクロンw)!!
確かに速かったです(もちろん500Eより速い、とは言いませんが)。

俯瞰した図
今見ると、もうクラシックな趣も感じるようになってきたミディアムですが、当時は相当アグレッシブなデザインに見えたものです。

230E シリーズ唯一の4気筒

260E 87年から追加された中間モデル。

フロントフェンダー(右側のみ)に「髭」がついた300D Turbo

300E このアルマンダインレッドが素敵ですねー。

そして6気筒の高性能バージョン300E-24
この頃は、「ベンツはブルブラ」などと言われたブルーブラックですが、すっかり見かけなくなりました。

300E 4MATIC
メルセデスは乗用車に4WDを採用するのは慎重で、なかなか本格的に販売されませんでした。
今でも「壊れたらタイヘン」ということで、人気のW124シリーズの中でもあまり売り物件を見ませんね。(そもそも新車の販売台数も僅かなのでしょうが)

そして、いろいろと物議を醸した400E
ミディアムにV8を載せる、というのは明らかに「レクサス対策」であろうというのが定説ですが、実際そうだったのでしょう。
この400Eの主な市場がアメリカと日本と言われてるので間違いないと思います。
自分は400Eに乗っていませんのでわかりませんが、とにかくメルセデスらしくない、のだとか。
かなりフワフワした乗り味らしく、それまでの欧州車のカチッとしたフィーリングが好きな方には受け入れがたいものがあるらしいです。
孤高な存在だったメルセデスが、日本車に翻弄された、という点である意味非常に重要なモデルと言えそうです。


300CE-24
クーペはそれまで300Eと同じSOHC3ℓエンジンの300CEが販売されていましたが、このDOHCエンジンの登場時にこのグレードのみとなりました。
ピラーレスのハードトップは、いつ見ても優雅さを感じますねー。
そして、何故かこのクーペのみ5速ATなんですね。
エンジンが同じセダンの24Vは4速なのに・・・・。

内装もセダンよりちょっぴり贅沢な雰囲気。
右下の写真(小さくて申し訳ないです)の「シートベルトキャリア」は、C126から採用された装備だと思いましたが、この動きがなかなか面白いんです。

オプションも豊富です。
このW124は、今でも人気のクルマですが自分も乗っていた経験からその理由はよくわかります。
ただ巷言われるような「非の打ち所がない」ということはなく、それなりに欠点や弱点もあるクルマだとは思います。
この頃までは「絶対神」的な扱いをされてきたメルセデスですが、実際に触れてみると意外と「普通」なことに、自分は逆に可愛く愛おしさも感じさせたという点で、目からウロコ、といった印象があります。
でも、その「普通」さも練に練られて開発されていたり、ハッキリとした目的と信念(途中で若干歪みましたがw)を持って造られてるところは非凡だとも思います。
ですから、今でもW124の中古車記事を見ては「ビシッとお金をかけて、足で乗れたら最高だなア。」なんていつも思っています。