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2026年08月17日 イイね!

メンテナンスの話し クーラント編 後書き

ここで、一度立ち止まれるか

日常の中では、たぶんこんな流れだと思います。

クーラントが減っているのを見つける。

「ちょっと減ってるな。足しておこう」

そう思って、カー用品店やホームセンターへ向かう。

棚には、青や赤、緑など、いろいろなクーラントが並んでいる。

同じような色のものを見比べて、

「こっちは長寿命か。じゃあ、こっちにしよう」

おそらく、そんな選び方をする人も少なくないと思います。

そして、ここで終わってしまう。

なぜなら、売り場で目に入ってくるのは「色」や「長寿命」「何年・何万km対応」といった分かりやすい情報が中心で、

「今、車に入っているクーラントと混ぜて大丈夫なのか?」

という疑問を持つきっかけが、あまりないからです。

「異なる成分を混ぜないでください」と、明確に注意を促しているわけでもありません。

でも、そこで一度だけ立ち止まって、

「色じゃなくて、中身は何なんだ?」

と考えてみる。

今回のクーラント調査は、実はそこから始まりました。

調べてみれば、クーラントにはさまざまな添加剤技術があり、メーカーごとに冷却系の設計思想や要求規格も違っていました。

最初は「ちょっと足すだけ」の話だったはずなのに、気がつけばOATやHOAT、Si-OAT、メーカー規格まで調べることに😅

クーラントは、減ったら足せばいい。

でも、

「何を足すのか」まで考えてみる。

その小さな一歩だけでも、今回ここまで調べた意味はあったのかなと思います。

そして最後に残ったのは、やっぱりこの言葉でした。

規格には、ちゃんと理由がある。
Posted at 2026/08/17 17:07:09 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2026年08月12日 イイね!

メンテナンスの話し クーラント編フォード特別編集

クーラントを深掘りする Ford編

「OATだから」ではなく、Fordの冷却系が求めたもの

いままで、クーラントについて書いてきました。

エンジンオイルには、粘度やメーカー規格を見ながら、自分の使い方に合わせて選ぶ楽しさがあります。

一方、クーラントは少し違う。

「青だから」「赤だから」ではなく、まず車両メーカーが指定している規格を見る。

そして、その規格に適合したクーラントを使う。

これがクーラント選びの基本だと思っています。

では、なぜメーカーによってクーラントの種類が違うのでしょうか。

今回は、私が長く乗っていたFordを例に、もう少し踏み込んで考えてみます。



Fordのクーラントは、昔からOAT系だった

Fordのクーラントについて調べていて、まず面白いことに気付きました。

Fordは、最近になって突然OAT系へ移行したわけではありません。

Fordの代表的なクーラント規格であるWSS-M97B44-Dは、かなり以前から使われてきたOAT(Organic Acid Technology)系の規格です。

つまりFordにとってOATは、最近登場した新しい技術というより、かなり以前から冷却系に採用してきた基本的な技術のひとつだったわけです。

その後も規格は改訂され、現在ではWSS-M97B44-D2などへ発展しています。

Ford自身の資料でも、現在のMotorcraftオレンジクーラントはWSS-M97B44-D2指定車に使用するものとされ、ASTM D3306などの要求も満たすとされています。

技術の方向性を維持しながら、車両側の要求に合わせて規格や処方を更新してきた。

そう考えると、Fordのクーラントの歴史が少し分かりやすくなります。



では、なぜFordはOATを選んだのか?

ここで、

「OATだから長寿命なんでしょ?」

と考えたくなります。

もちろん、それもOATの大きな特徴です。

しかし、本当に重要なのは、

「OATが優れているからFordが選んだ」

と単純に考えないことだと思います。

クーラントは、エンジンの中だけを冷やしているわけではありません。

冷却系には、

* アルミニウム
* 鉄系金属
* 銅・黄銅系材料
* ラジエーター
* ウォーターポンプ
* ヒーターコア
* 各種樹脂部品
* シールやガスケット

など、さまざまな材料が存在します。

クーラントは、それらと長期間接触します。

だからメーカーが考えるべきなのは、

「どのクーラントが一番優れているか」

ではありません。

「この冷却系にとって、どの防食技術が適しているのか」

です。



クーラントは「エンジン」ではなく「冷却系」に合わせる

ここが、今回一番重要だと思ったところです。

クーラントの処方は、エンジン単体だけを見て決められているわけではありません。

そのクーラントが接触する、

冷却系全体

に合わせて考えられています。

だから、

「OATが新しいから優れている」

「シリケートは古い技術だから劣る」

という話ではありません。

メーカーがシリケートを必要とする冷却系なら、シリケート系を使い続ける。

OAT系が適している冷却系なら、OAT系を使い続ける。

それが自然な考え方です。

そして、ここからは私の考察になります。

冷却系の材質や構造、要求される防食性能などが大きく変わらなければ、メーカーが長年同じ系統のクーラント技術を使い続けることも不思議ではありません。

クーラントは、エンジンが新しくなったからといって、必ずしも別の技術に変わるものではない。

冷却系そのものが求めるものが変わらなければ、クーラントの基本的な技術も簡単には変わらない。

私はこれが、クーラントを理解するうえで大事なポイントだと思っています。



RenaultもOAT系。でも、それはFordと同じという意味ではない

これはRenaultを調べたときにも感じたことです。

RenaultもOAT系のクーラントを採用しています。

では、

「FordとRenaultはOATだから、同じクーラントを入れてもいい」

のでしょうか。

もちろん、そんな単純な話ではありません。

同じOATという分類でも、添加剤の組み合わせや要求性能、メーカー承認規格は異なります。

つまり、

OATというのは技術の分類であって、車両への適合を保証する魔法の言葉ではない。

FordならFordの規格。

RenaultならRenaultの規格。

それぞれの冷却系に合わせて要求される性能を確認する。

ここが重要です。



シリケートを使うメーカーもある

逆に、シリケート系の技術を使い続けるメーカーもあります。

ここも、

「OATの時代になったのに、なぜ?」

と思ってしまうところです。

でも、冷却系の側から考えれば、それほど不思議ではありません。

シリケートには、アルミニウムなどの金属表面を保護するための特徴があります。

その特性を必要とする冷却系なら、シリケートを含む処方を採用する意味があります。

つまり、

メーカーが違えば、冷却系の設計思想も違う。

だからクーラントの処方も違う。

これを「どちらが上か」というランキングにしてしまうと、本質から外れてしまいます。



Fordの規格も進化している

Fordのクーラント規格も、ずっと同じ番号のままではありません。

WSS-M97B44-Dから、その後のWSS-M97B44-D2へと規格は更新されています。

現在のMotorcraft資料では、WSS-M97B44-D2に適合するオレンジクーラントが明確に指定されています。

一方で、現在のFordではWSS-M97B57-A2という黄色のクーラントも使われています。

Fordのオーナーズマニュアルでは、WSS-M97B44-DのオレンジクーラントとWSS-M97B57-A2の黄色クーラントについて、黄色がオレンジ指定車にも使用できることが示されています。

ただし、工場出荷時に黄色のクーラントが入っている車両については、長いサービス寿命を維持するため黄色を使用するよう指定されています。(Ford Service Content⁠)

ここは非常に興味深いところです。

規格は進化している。

しかし、それは必ずしも「昔の技術を捨てて、まったく別の考え方になった」という意味ではない。

基本的な冷却系への要求を維持しながら、より新しい処方へ更新されていく。

そんな見方もできます。



C-MAXにも、Fordの考え方が入っていた

私は2013年11月からFord Focus C-MAXに乗り始めました。

そして約11年半、この車に乗りました。

手放したのは約1年半前。

つい最近、C-MAXについて13年越しにいろいろ調べていたとき、

「そういえば、C-MAXのクーラントって何だったんだ?」

と気になりました。

調べてみると、C-MAXのFord資料でもWSS-M97B44-Dが指定されています。

つまり、私が長年乗っていたC-MAXも、当然ながらFordが考えた冷却系に合わせたクーラントを使っていたわけです。

走りについては、あれだけ「Focusらしさ」にこだわっていたFord。

そして冷却系についても、

「冷却水なんだから何でもいい」

ではない。

こう考えると、ちょっと面白いです。



「OATだからOK」ではない

ここまで調べてくると、クーラント選びでよくある、

「OATだから使える」

という判断が、かなり危ういことが分かります。

OATというのは、あくまで技術分類。

車両メーカーが指定する規格とは別物です。

例えば、

ASTM D3306を満たしている。

これはクーラントとして重要な情報です。

でも、それだけでFordの特定車種に適合するとは限らない。

FordのMotorcraft資料でも、他メーカー車については車両メーカーが指定するクーラントを使用するよう明確に推奨しています。

メーカー独自規格には、そのメーカーが自社の冷却系に必要と判断した要求が含まれています。

だから、

基本規格を満たしているか

と、

メーカー指定規格に適合しているか

は分けて考える必要があります。



そして、やっぱり「色」は規格ではない

Fordでは、世代によってオレンジや黄色など、異なる色のクーラントが登場します。

現在では、WSS-M97B57-A2という黄色のクーラントもあります。

Fordの資料では、黄色はWSS-M97B44-Dのオレンジクーラントと互換性があるとされています。

ここでも重要なのは、

「黄色だからOK」

ではないということ。

互換性が認められているから使えるのであって、色そのものに互換性があるわけではありません。

クーラントの色は、あくまで識別のための目印。

最終的に見るべきなのは、

メーカー規格と適合性。

前回の記事で書いた、

「青だから、赤だからで選ばない」

という話は、Fordを調べてもやっぱり変わりませんでした。



クーラントは、メーカーの「冷却系設計図」の一部

今回Fordを調べて、私はクーラントの見方が少し変わりました。

クーラントは、単なる消耗品ではない。

もっと正確に言えば、

冷却系の設計思想の一部

なんだと思います。

メーカーは車を設計するとき、

「この材料を使う」

「この部品を使う」

「この温度域で使う」

「この耐久性を持たせる」

という設計をします。

その冷却系に対して、

「では、どんなクーラントなら長期間問題なく使えるのか」

を考える。

だからクーラントの規格が存在する。

そして冷却系の設計思想が大きく変わらない限り、メーカーが長年同じ系統のクーラント技術を使い続けることも自然なのです。



エンジンオイルとは、ちょっと違う

ここが、私がクーラントについて面白いと思うところです。

エンジンオイルは、同じエンジンでも、

粘度が変わる。

添加剤技術が変わる。

メーカー承認規格が更新される。

使用環境によって選び方も変わる。

だから、オイルには「どれを入れよう?」という楽しさがあります。

でもクーラントは、少し違う。

車両側の冷却系が先にあって、その設計に合わせて液体が決まる。

だから私は、

クーラントについては、

「選ぶ楽しさ」より「間違えないこと」の方が大切

だと思います。



結局、Fordから教わったこと

Fordのクーラントを調べてみて、最初に思っていたよりずっと面白いことが分かりました。

Fordはかなり以前からOAT系の技術を使ってきた。

RenaultもOAT系。

一方で、シリケートを必要とするメーカーはシリケート系を使い続ける。

これは、

「OATが正解」

でも、

「シリケートが正解」

でもありません。

それぞれのメーカーが設計した冷却系に、それぞれ適した防食技術を使っている。

そして、その基本的な設計思想が大きく変わらなければ、クーラントの技術も長く受け継がれていく。

だからこそ、

クーラントは色で選ばない。

OATという言葉だけでも選ばない。

まず、

「この車の冷却系は、どんなクーラント規格を要求しているのか?」

を見る。

それが、クーラントと長く付き合う一番確実な方法なのだと思います。

目立たないけれど、冷却系の中で毎日働き続けている。

クーラントは、やっぱり侮れない液体です。
Posted at 2026/08/12 09:14:16 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2026年08月11日 イイね!

C-MAXの記録・エピローグ(終章) ②

C-MAXの記録・エピローグ(終章) ②背が高いというハンデを抱えながら、Focusの名前を冠するに値する走りを成立させた車


あのC-MAXは、なぜあんなに曲がったのか?

13年前、私はフォード フォーカスC-MAXに乗り始めました。

2013年11月に緊急乗換えして、それから約11年半。

約1年半前まで、長く付き合った車です。

今でも強く印象に残っているのが、あの車のコーナリングです。

背の高い車なのに、鼻先がグイグイ入る。

コーナーで荷重を掛けていくと、そこそこ頑張ったところでリアが少し動く。

しかも、それはタックインとは違う。

怖いわけでもない。

むしろ、その動きがものすごく気持ちよかった。

サスペンションがガチガチに硬いわけでもない。

なのに、前後輪の接地感がしっかりあって、思ったラインをトレースしていく。

当時の私は、この車がなぜこんな動きをするのか、うまく説明できませんでした。

ただ、

「この車、もしかして凄いんじゃないか?」

と思った。

そして2016年、自分のブログを読み返してみると、私はC-MAXについて、

「フォードの魔法」

と書いていました。

当時は、それ以上の説明ができなかった。

でも、13年経った今なら少し分かるかもしれない。

あの「魔法」には、ちゃんと理由があったのではないか。

Fordの技術者たちは、背の高いMPVでありながら、Focusらしい走りを成立させるために、何を考えていたのか。

今回、あらためて海外の資料まで掘り返して調べてみました。

すると、思っていた以上に面白いことが分かってきました。

そもそもC-MAXは、単純にFocusを背高にして便利にした車ではなかったのです。




そもそも、なぜC-MAXだったのか

私がC-MAXに乗り始めたのは2013年11月。

日本では、かなり地味な存在でした。

街中で見かけることもない。

「フォードのフォーカス」と言えば分かる人でも、「C-MAX」となると知らない人の方が多かったと思います。

見た目も地味。

背が高く、5人乗り。

スライドドアでもない。

日本のミニバン市場から見れば、かなり独特なポジションです。

ところが欧州では、C-MAXには明確な役割がありました。

それは、

「MPVでありながら、運転する楽しさを失わないこと」

でした。

FordはC-MAXを、単なる実用車としてではなく、Focusの走りのイメージをMPVというパッケージに持ち込む車として成立させようとしていたのです。

だからこそ、「Focus C-MAX」という名前になった。

伊達にFocusの名前を冠していたわけではありませんでした。




「背が高くなったFocus」ではなかった

C-MAXはFocusと血縁関係のある車です。

しかし、単純にFocusの車高を上げて室内を広くしただけではありません。

C-MAXでは、車体のサイズそのものが変えられています。

ホイールベースを延長し、トレッドを拡大。

さらに、車重や重心高など、MPVとしてのパッケージングに合わせてサスペンションも専用にチューニングされています。

特に興味深いのが、Fordが採用していたControl Bladeリアサスペンションです。

このサスペンションは、横方向の剛性を確保しながら、縦方向には適度に動かすことで、乗り心地とハンドリングを両立させることを狙ったもの。

つまり、

「ロールさせないために、とにかく硬くする」

という発想ではありません。

必要なところではしっかり支え、必要なところでは動かす。

C-MAXが「硬い車」という印象にならなかったのも、ここに理由があったのかもしれません。




背が高いのに、なぜ鼻先がグイグイ入ったのか

私がC-MAXで一番好きだったのが、フロントの入り方でした。

普通、背の高いFF車をコーナーに入れていけば、重心の高さからロールが大きくなり、フロントが逃げてアンダーステアに向かっていくことを想像します。

ところがC-MAXは違った。

もちろん、何をしても曲がる車ではありません。

そこそこ頑張って荷重を掛けていく必要があります。

でも、そこまで持っていくと、

「まだフロントが入っていく」

という感覚があった。

そして、その先でリアが少し動く。

このリアの動きが、私はとても好きでした。




「パッシブステアなのかな?」と思っていた

当時、私はこのリアの動きを、

「パッシブステアなのかな?」

と思っていました。

今になって資料を調べてみると、これも完全な勘違いではなかったようです。

Control Bladeのリアサスペンションには、ブッシュやリンクのコンプライアンスによって、コーナリング時にリアが受動的に操舵されるような特性があります。

いわゆるパッシブリアステア的な効果です。

もちろん、後輪を積極的にステアリングで操舵する4WSとは違います。

サスペンションが荷重を受けたときに、ほんのわずかにジオメトリーが変化する。

その結果として、車の向きを変えやすくする。

だから私が感じていた、

「タックインではないのに、リアがちょっと出る」

という感覚とも話が繋がってきます。

FF車でありながら、前だけで曲げるのではなく、前後のタイヤを使って車の向きを変えていた。

これがC-MAXの気持ちよさだったのではないかと思います。




そしてステアリングも自然だった

もうひとつ、私が最初から違和感なく感じていたのがステアリングです。

C-MAXのステアリングは電動油圧式。

いわゆるEHPSです。

最初に乗ったとき、

「これ、油圧じゃないの?」

と思ったくらい違和感がありませんでした。

これにも理由がありました。

当時のFordは電動ステアリングの採用を進めていましたが、Focusで評価されていたステアリングフィールを維持することを重視していました。

結果として、C-MAXでは電動油圧式を採用。

単純に「燃費や省エネのために電動化すればいい」という話ではなく、

ドライバーが感じるステアリングフィールまで含めて、Focusらしさを残す。

そこまで考えていたわけです。




「硬いから曲がる」車ではなかった

ここは、今になって改めて面白いと思うところです。

私はC-MAXのサスペンションを、特別硬いと感じたことがありませんでした。

父親が乗っていたアテンザ・ディーゼルの方が、やりすぎと思えるほど硬かった。

C-MAXは、むしろ適度に動く。

車体も、完全にガチガチに固められているという感覚ではない。

それなのに、タイヤが路面を離れない。

ステアリングを切れば鼻先が入る。

さらに荷重を掛けるとリアが少し動く。

これは単純な「硬い・柔らかい」では説明できません。

サスペンションの動きと、ジオメトリー、ブッシュ、車体、タイヤ、ステアリング。

それらをまとめて一台の車として成立させていた。

だからこそ、普通に街中を走っているだけでは分からないのに、少し攻めると急に車の素性が見えてくる。

C-MAXは、そういう車だったのだと思います。




そして藤井オートで、さらに変わった

ただし、私のC-MAXにはもうひとつ大きな出来事がありました。

藤井オートでアライメント調整をしてもらったことです。

藤井親父は、一般的な「数値を規定値に合わせて終わり」というアライメントとは少し違った考え方を持っていました。

車を調整する。

走らせる。

また測定する。

必要なら、もう一度調整する。

藤井親父自身のブログにも、

1回目の調整後は最低1000km走る。ガンガン走る。

そして、その後に2回目、3回目と再調整していくという考え方が書かれています。

場合によっては4回、5回、6回と調整することもある。

私自身もC-MAXで、その変化を体験しました。

そして、ここから私はC-MAXを本格的に攻めるようになりました。

藤井親父から、

「ガンガン乱暴に乗ってね」

と言われたから。

普通なら「大切に乗ってください」と言われそうなところですが、藤井親父は逆でした。

車を走らせて、荷重を掛けて、車を使ってやる。

そして、もう一度整える。

それが藤井親父の考え方だったのでしょう。




2016年の自分が、すでに答えを書いていた

今回、C-MAXについて改めて調べようと思ったきっかけのひとつが、昔の自分のブログでした。

「フォードの魔法」という言葉を、どこかで使った記憶があった。

探してみたら、ありました。

2016年。

私はC-MAXについて、

「フォードの魔法」

と書いていました。

さらに、

「ハイト系5ドアハッチバックとは次元が違うハンドリング」

とも書いていた。

そして、

「減速しなくても曲がれちゃうカモと思わせる前後輪の接地感」

とも。

13年前の自分、ちゃんと感じ取っていたじゃん🤣

当時は、それを技術的に説明することなんてできませんでした。

ただ乗って、

「なんか凄い」

と思った。

それを「フォードの魔法」と表現した。

でも、今回調べてみて思ったんです。

あの「魔法」は、偶然ではなかったのではないか。




魔法の正体は、Fordの「意図」だった

ここは、今回調査して一番興味深かったところです。

「魔法」と「技術者の意図」は、対立するものではありません。

むしろ、

私には魔法に見えたものが、Fordの技術者にとっては意図して作り込んだものだった。

そう考えると、いろいろなことが繋がります。

背が高くなった。

車重も増えた。

居住性も必要になった。

それでもFocusの名前を冠する。

ならば、走りを諦めるわけにはいかない。

だから、ホイールベースを延ばす。

トレッドを広げる。

リアサスペンションを作り込む。

ステアリングフィールを守る。

そして、MPVでありながら運転する楽しさを成立させる。

そうやって出来上がったものを、私たちドライバーが乗ったとき、

「なんでこんなに曲がるんだ?」

となる。

それを私は、13年前に「フォードの魔法」と呼んだ。

今になってみれば、その魔法の中身は、ちゃんと技術だったのです。




では、なぜ日本では知られていなかったのか

ここまで調べて、もうひとつ気になったことがあります。

これだけ走りにこだわった車なのに、

日本ではC-MAXの走りについて語られた記事が、あまりにも少ない。

なぜなのか。

おそらく、C-MAXが悪かったわけではありません。

日本と欧州では、MPVに求めるものが違っていたのだと思います。

欧州では、

「家族のためにMPVが必要。でも、自分で運転する楽しさも欲しい。」

という需要が成立する。

ところが日本では、当時のMPVやミニバンに求められるものは、

* 多人数乗車
* 3列シート
* スライドドア
* 荷物の積みやすさ
* 室内の広さ
* 使い勝手

といった、分かりやすい実用性が中心でした。

その中で、

「5人乗りだけど、走りが凄いMPV」

というC-MAXの価値は、少し分かりにくかった。

しかも見た目が地味です😩

誰も食いつかない。

「これ、実は凄いんですよ」と言っても、

「へぇ……」

で終わってしまう

でも、そこがC-MAXらしいところでもありました。




「便利にしました」だけではなかった

日本の車にも、もちろん素晴らしいMPVはたくさんあります。

だから、

「国産車は便利さだけで、C-MAXは違う」

と単純に言うつもりはありません。

ただ、C-MAXが目指したのは、

便利さを得るために走りを犠牲にするのではなく、MPVとして必要なものを成立させたうえで、Focusらしい走りまで残すこと。

ここです。

C-MAXは、

「便利なFocus」

ではなかった。

むしろ、

「Focusの走りを捨てずに、MPVとして成立させた車」

だった。

背が高いというハンデを抱えながら、それでもFocusの名前を冠するに値する走りを成立させる。

Fordは、そこを本気でやっていたのだと思います。




13年後の答え合わせ

2013年11月。

私は、見た目も地味で、誰も食いつかないC-MAXに乗り始めました。

最初は、

「悪くはないけど、こんなもん?」

と思っていた。

それが3か月後、少し攻めてみたら、

「アレ? これ、もしかして凄いかも」

となった。

その後、藤井オートでアライメントを整えてもらい、さらに走らせるようになった。

そして2016年には、自分でこの車を、

「フォードの魔法」

と呼んでいた。

そこから約11年半。

約1年半前まで、この車に乗っていました。

あれから13年。

今になって海外の資料を掘り返してみると、その「魔法」にはちゃんと理由があった。

Control Bladeリアサスペンション。

パッシブなリアステア特性。

Focusの走りを維持するためのシャシーチューニング。

そしてステアリングフィールまで含めた作り込み。

全部が一本の線で繋がってきました。

もちろん、私のC-MAXが本来の性能をどこまで発揮できていたのかは分かりません。

藤井親父のアライメント調整がどこまで車の素性を引き出したのかも、今となっては正確には分からない。

でも、

Fordが仕込んだものを、藤井親父が目覚めさせてくれた。

そんなふうに考えると、私には一番しっくりきます。

13年前の私は、C-MAXのことを「フォードの魔法」と呼んだ。

今の私は、その魔法の正体が少しだけ分かった気がする。

魔法に見えたのは、それだけFordが本気で車を作っていたからなのかもしれません。

そして、あの地味なC-MAXを選んだ自分。

約11年半乗り続けた今になっても、まだ「なんであの車はあんなに曲がったんだ?」と調べたくなる。

どうやら私はとんでもない掘り出し物を見つけていたようです。

Posted at 2026/08/11 07:50:58 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記
2026年08月08日 イイね!

C-MAXの記録・エピローグ(終章) ①

C-MAXの記録・エピローグ(終章) ①フォードのクーラントを調べていたら、C-MAXが忘れられない車になった理由が分かった。

きっかけは、クーラントだった。

エンジンオイルと同じように、規格やメーカー指定を調べるつもりだった。

ところが、調べれば調べるほど、クーラントそのものよりも、その背後にあるメーカーの考え方が気になってきた。

なぜ、このメーカーはこの規格を使うのか。
なぜ、この冷却系にはこの添加剤設計なのか。

そしてフォードについて調べているうちに、いつの間にか「フォードの車づくり」そのものを掘り下げていた。

そこで、ジャッキー・スチュワートとリチャード・パリー=ジョーンズの名前に改めて出会った。

スチュワートが重視していたのは、限界領域だけではない。

普通の速度域でも、ドライバーが車の動きを自然に理解できること。
操作に対して車がどう反応するのか。
その一つ一つがドライバーにとって分かりやすいこと。

パリー=ジョーンズも、ハンドリングだけ、あるいは高速安定性だけを追求するのではなく、複数の性能を高い次元で成立させることを重視していた。

「フォードの“脚がいい”という言葉は、単純に限界が高いとか、よく曲がるという話ではなかったんだな」

調べていくうちに、そう思った。

そこで、かつて乗っていた一台のことを思い出した。

2006年式 Ford Focus C-MAX。



実は、C-MAXは昔から気になっていた

C-MAXが発売された当時、一度フォードディーラーへ見に行っている。

カタログももらった。

ただ、試乗はしなかった。

理由は簡単だった。

スライドドアではなかったから。

当時の生活を考えれば、それだけで選択肢に入らない。

むしろ、

「試乗して気づいてしまったら、プレマシーに乗れなくなる」

とも思った。

フォーカスの走行性能が高いことは、初代の頃から知っていた。

独身だったらST170に乗りたいと思ったくらいだ。

Mk2のST225にも興味はあった。

ただ、排気量を考えると、維持費で苦しみそうだと思った。

フォードの脚がいいことは知っていた。

でも、実際に自分で試乗したことはなかった。

だからこそ、C-MAXには興味が残っていた。



何年も後に、もう一度C-MAXが現れた

それから何年も経って、プレマシーからの緊急乗り換えが必要になった。

燃費が突然、半分近くに落ちた。

ディーラーに持ち込んだが、納得のいく答えは返ってこなかった。

ガソリンを以前の倍近く消費する車に乗り続けるほどの愛着もない。

だから、すぐに動いた。

フォーカスMk3狙いでフォードディーラーへ行った。

ただ、半ば無理だろうとも思っていた。

予算に限りがある。

ところが、バックヤードの奥にC-MAXがいた。

値札も付いていなかった。

走行距離は約2万km。

価格は65万円。

「これならいける」

そう思った。



試乗しても、全然分からなかった

契約前に試乗した。

でも、全然分からなかった。

タイヤがボロボロで、ちょっと頑張ったらバーストしそうだった。

車全体もくたびれていた。

そんな状態で、フォーカス由来のシャシー性能が分かるはずもない。

それでも、期待はした。

昔からフォーカスの走りが良いことは知っていた。

C-MAXにも興味を持っていた。

「この車、本来はもっと良いんじゃないか」

という気持ちはあった。

そして、

2万km・65万円。

この条件だったから、その期待に賭けることができた。

ほとんど衝動買いだった。



そこからC-MAXが変わっていった

納車後、自分で磨いた。

コーティングもした。

タイヤはMichelin Primacy LCへ交換してもらった。

見た目はかなりくたびれていたが、少しずつ自分の手で本来の姿に戻していった。

ディーラーへ持って行ったときには、

「見違えるほど綺麗になった」

と驚かれた。

もちろん、ゴム類の劣化までは変わらない。

それでも、自分で手を入れた分だけ、車への愛着も少しずつ増していった。

ここからようやく、本当のC-MAXとの付き合いが始まったのだと思う。



3か月くらい経った頃

購入から3か月くらい経った頃だった。

ふと、

「こいつ、只者じゃない。でも完全ではない」

と思った。

何が凄いのか。

どこが違うのか。

当時は、うまく言葉にできなかった。

ただ、車の動きが自然だった。

ステアリングを切れば、その通りに車が動く。

サスペンションが路面を受け止めながら、車体が無駄に暴れない。

コーナーで頑張っている感じがない。

それなのに、車がちゃんと路面とつながっている。

普通の速度で走っているだけなのに、車から情報が返ってくる。

そんな感じだった。

その感覚は、10年以上乗っても消えなかった。



今なら、少しだけ言葉にできる

今回、フォードの車づくりを調べてみて、当時感じていたものを少しだけ言葉にできるようになった。

乗り心地。

ハンドリング。

高速安定性。

ボディの動き。

ステアリングから伝わる情報。

それぞれを単独で良くするのではなく、車全体としてバランスさせる。

そんな考え方が、フォードには長い時間をかけて培われていたのだと思う。

「2006年式C-MAXにも、その思想が何らかの形で受け継がれていたのかもしれない」

断言はできない。

これは、あくまで推察。

でも、そう考えると、あのとき感じたことが少し腑に落ちる。



C-MAXを降りて、もう1年

C-MAXを降りて、もう1年になる。

特別速かったわけではない。

スポーツカーでもない。

日本では不人気車で、販売期間も短かった。

私が買ったときも、バックヤードの奥に値札すら付いていなかった。

それでも、私の中に残り続ける一台になった。

最初から選び抜いた車ではなかった。

むしろ、一度は選ばなかった車だった。

それが何年も経って、思いがけないタイミングで自分のところへ来た。

そして10年以上、一緒に過ごした。

今回、クーラントを調べていたら、

「なぜ、この車が忘れられないのか」

その理由まで、少しだけ分かった気がする。

断言はできない。

でも、私はそう思っている。

あのとき、C-MAXを選んでよかった。
Posted at 2026/08/08 07:53:48 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記
2026年07月17日 イイね!

メンテナンスの話し クーラント編②

規格には理由がある

前編では、「クーラントはエンジンオイル以上にメーカー規格を守りたい」という話を書きました。

ブログを書きながら、一つの疑問が湧いてきました。

「なぜメーカーごとに、こんなにもクーラントの考え方が違うのだろう?」

BMWはシリケート系。

ルノーはOAT系。

日本メーカーの多くはリン酸塩系。

同じエンジンを冷却するクーラントなのに、メーカーによって採用している技術は様々です。

その疑問が気になってしまい、続編を書くことにして、メーカー資料やクーラントメーカーの技術資料を読みながら、少し深く調べてみることにしました。


調べてみると、疑問はさらに増えていきました

私は専門家ではありません。

だから、

「BMWはなぜシリケートを採用しているのか。」

「ルノーはなぜOATなのか。」

「日本メーカーはなぜリン酸塩なのか。」

そんな素朴な疑問を、一つずつ調べていきました。

調べる前は、「ドイツ車とフランス車だから考え方が違うのかな。」くらいに思っていました。

ところが、同じドイツメーカーのVWを調べてみると、BMWとはまた違う考え方でした。

「あれ? 国の違いじゃないのか。」

そこから、メーカー資料を読み比べる時間が始まりました。


BMWはBMWの理由

BMWは長年、G48(HOAT)系クーラントを採用してきました。

特徴は、少量のシリケートを配合していることです。

シリケートはアルミ部品の表面に素早く保護膜を形成し、腐食を防ぐ役割があります。

BMWはアルミ化が進んだエンジンを早くから採用し、高速巡航や高負荷運転も想定した設計を行っています。

そのため、冷却系を素早く保護するという考え方が採用されたのではないかと感じました。

そして近年はHT-12へ移行し、新しいエンジンや材料に合わせてクーラントも進化しています。

エンジン設計が変われば、クーラントも変わる。

そんなメーカーの考え方が見えてきました。


VWは時代とともに進化

VWもG11からG12、G13、そして現在のG12 evoへと規格を進化させています。

これは以前の規格が悪かったということではなく、その時代のエンジンや材料、環境性能に合わせて改良を重ねてきた結果なのでしょう。

クーラントも、エンジンの進化とともに変わっていく。

そんなことを感じました。


ルノーはルノーの考え方

ルノーはBMWとは異なり、OAT系クーラントを採用しています。

即効性のあるシリケートではなく、有機酸による長期間の防錆性能を重視した設計です。

どちらが優れているという話ではありません。

ルノーにはルノーの設計思想がある。

それだけのことなのだと思います。


日本メーカーは水質も考慮している

今回、特に驚いたのが水質との関係です。

日本は世界的に見ても軟水が多い国です。

そのため、日本メーカーではリン酸塩系クーラントが広く採用されています。

一方、欧州には硬水地域が多く、リン酸塩は水中のカルシウムなどと反応して沈殿を生じやすいため、シリケート系やOAT系が発展してきた背景があります。

つまり、販売される地域の水質まで考えながらクーラントは設計されていたのです。


希釈する水にも理由がありました

実は今回、BMWのクーラントを交換したとき、私自身も一つ疑問に思ったことがありました。

G11規格のクーラントを希釈するとき、私は国産の精製水を使いました。

でも、ふと考えたのです。

「BMWは硬水地域を前提に開発されているなら、硬水で希釈するのが正しいのでは?」

調べてみると、現在はBMWをはじめ、多くのメーカーやクーラントメーカーが脱イオン水や精製水など、ミネラル分の少ない水で希釈することを推奨しています。

昔からそうだったのではなく、クーラントやエンジンの進化に合わせて考え方も変わってきたようです。

ここでも、「今、メーカーが何を推奨しているのか」を知ることの大切さを感じました。


調べてみて思ったこと

ここまで調べてみて、最初の疑問の答えが少し見えてきました。

BMWにはBMWの理由。

VWにはVWの理由。

ルノーにはルノーの理由。

そして、日本メーカーにも日本メーカーの理由があります。

どれが優れているという話ではありません。

それぞれのメーカーが、自社のエンジンや冷却系、使用環境、水質などを考えた結果が、メーカー規格という形になっているのです。

だから規格があります。

だからメーカー指定があります。

そして、その規格は単なる形式ではなく、メーカーの設計思想そのものなのだと思います。


規格には理由がある

今回クーラントについて調べたことで、規格に対する考え方が少し変わりました。

以前は、「メーカー指定だから守るもの」と思っていました。

でも今は違います。

メーカーがその規格を指定するのには、きちんと理由があります。

その理由を知ることで、「指定だから使う」のではなく、「納得して使う」に変わりました。

これからもクーラントを補充するときは、「色が同じだから」ではなく、「その車が求める規格だから」という理由で選びたいと思います。

私にとっても今回のクーラント調査は、「規格」の見方が変わる、とても良い勉強になりました。

規格には理由がある。

今回、メーカー資料を読みながら、一番強く感じたことです。
Posted at 2026/07/18 00:08:50 | コメント(0) | トラックバック(0)

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